業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しており、財政状態及び経営成績に与える影響の詳細については、「第5 経理の状況2 財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)及び(収益認識関係)」をご参照ください。

 

(経営成績等の状況の概要)

当事業年度の日本経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の進展により、経済活動が正常化に向かうことが期待された一方で、新たな変異株の影響による断続的な感染拡大に加え、年度末にはウクライナ情勢の緊迫化、原油価格や物価の高騰、円安など、先行きは依然として不透明な状況で推移しました。

CM(コンストラクション・マネジメント=発注者支援事業)業界に影響を与える建設投資、設備投資については、公共投資は弱含んで推移し、民間投資においては新型コロナウイルス感染症拡大の影響等で慎重な姿勢が強まる状況となりました。

当社は、経営理念である「フェアネス」と「透明性」に基づき、顧客側に立つプロとして、顧客の建設プロジェクトの目標達成を支援しております。当社のCM(コンストラクション・マネジメント)は、プロジェクトの早期立ち上げを支援し、品質の適正化・コスト縮減・スケジュール短縮を実現しております。

 

当事業年度において、顧客における経営課題として、工期短縮やコスト縮減に加え、脱炭素化やSDGs関連(環境共生・BCP・長寿命化等)が新たに建設プロジェクトでも大きく取上げられるようになりました。当社はこのような変化に対応して、当事業年度より、「脱炭素コンストラクション・マネジメントサービス」の専用相談窓口を新たに設け、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギー導入を検討している企業や自治体向けに、顧客の保有施設全体の脱炭素化の支援を強化しており、その結果それらに関連する引き合いが増加しております。

このような状況の中、公共分野としては、経済産業省のデジタル行政に対応した本省庁舎執務環境整備に関する業務について3期連続で受託した他、国土交通省の2021年度入札契約改善推進事業の支援事業について8年連続で受託しました。また、市原市(千葉県)、国分寺市(東京都)、宇和島市(愛媛県)、大牟田市(福岡県)や、国立大学法人の東京大学、大阪大学、琉球大学等々における庁舎や施設建設に関するプロポーザルに当社が応募し、発注者支援事業者として選定されました。

民間企業からは、数多くの業種をグループ内に持つ大企業や、大学などの教育機関からの新規引き合い及びリピートオーダーが継続しており、公正な調達環境の構築に基づくコスト削減や工期短縮に加え、プロジェクト早期立上げ支援や事業化支援といった、上流工程からの引き合い案件が中心となっています。

引き続き、メーカーや系列に一切とらわれることなく独立・中立性を保ち、近年になって益々高度な専門性と実践力を求められる顧客要求水準を満たす最適なCM手法で、発注者にCMの価値を提供してまいります。

 

当社の従業員数は、今後の当社の業容拡大、サービス品質向上を目的として当事業年度に15名の採用を決定し、当事業年度末においては前事業年度末から7名増加の243名となりました。引き続き、社員教育による早期戦力化と、更なる優秀な人材の採用に向け取り組んでまいります。

 

これらの結果、当事業年度の売上高は4,260百万円(前年同期比0.5%増)、売上総利益は2,281百万円(同0.8%減)、営業利益は865百万円(同4.9%減)、経常利益は865百万円(同5.0%減)、当期純利益は606百万円(同2.3%減)となりました。受注粗利益(※1)は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等で民間企業を中心に顧客における投資判断が慎重になり第3四半期に一時低迷しましたが、第4四半期に巻き返した結果として、前年実績を上回る結果を残すことができました。この受注時期の遅れによる期中のプロジェクト進行分が減少した結果、期中の売上総利益が減少し、営業利益、経常利益、当期純利益は、前年を僅かに下回ることとなりました。

 

事業のセグメントの業績は次のとおりです。

当社では、次の4つのセグメントを設けておりますが、顧客からの期待に応えられる人材が所属セグメントに縛られることなくマルチにプロジェクトに対応することで、サービス品質の向上と、セグメント間の負荷の調整を両立させ、全体としての業務効率を向上させています。

 

① オフィス事業

当社のCM手法によるプロジェクト立上げ支援及び、PM(プロジェクト・マネジメント)サービスは、オフィス移転の可否や働き方改革の方向性を検討する構想段階およびビルの選定から引越しまで高度な専門性を有し、ワンストップで支援することが可能であります。当事業年度においては、経済産業省のデジタル行政に対応した本省庁舎執務環境整備において、働き方の可視化やペーパーレス化への取組みと共に執務環境の改装を支援しました。また民間においても、多くの企業がコロナ禍やアフターコロナを見据えたオフィス再編を模索する中、大企業におけるグループ企業の統廃合、多拠点の集約化、また、大規模な新築ビルの竣工時同時入居プロジェクトなど、「難易度の高いオフィス新・改築案件」に関するサービスを提供しました。

また、当社自身がテレワーク先駆者として総務大臣賞を受賞したことや、コロナ禍においてDX(デジタルトランスフォーメーション)導入に取り組む先進企業としての認知度が高まり、リモート環境整備を含むオフィス再編プロジェクトの引き合いが増加しました。

当事業年度のオフィス事業の売上高は、933百万円(前年同期比10.4%減)、セグメント利益65百万円(前年同期比68.8%減)となりました。

 

② CM事業

CM事業は、数多くの地方自治体庁舎や学校を始めとする公共施設において当社のCMサービスが評価されました。地方公共団体では小田原市(神奈川県)の市民ホールや中野区(東京都)の小学校の完成、国立大学における学舎整備事業の実績が増加しております。また民間企業においては、グローバル企業の国内拠点となる大型研究施設、生産工場、商業施設及び私立学校法人施設の再構築や、鉄道会社による日本有数の大規模商業施設及び各地方拠点施設での電気・機械設備更新等の実績を重ね、新規案件が増加しております。

その中で、一般社団法人日本コンストラクション・マネジメント協会が主催する「CM選奨2022」において当社がCM業務を行った「中野区 みなみの小学校他2校校舎新築工事に伴うCM業務」「株式会社資生堂 那須工場新築工事 CM業務」「タカノフーズ株式会社 水戸第三工場新築計画 CM業務」の3件で「CM選奨」を受賞し、6年連続の受賞となりました。

当事業年度のCM事業の売上高は、2,460百万円(前年同期比5.8%増)、セグメント利益561百万円(前年同期比18.8%増)となりました。

 

③ CREM事業

大企業や自治体向けを中心に、顧客保有資産の最適化をサポートするCREM(コーポレート・リアルエステート・マネジメント)事業については、当社技術者集団による透明なプロセス(CM手法)とデジタル活用による情報の可視化やデータベース活用によって、多拠点施設同時進行の新築・改修・移転や基幹設備のLCC、脱炭素を考慮した機能最適化更新支援等を効率的に行っております。個別プロジェクト毎の工事コストやスケジュール管理及び保有資産のデータベース化による資産情報の一元管理、多拠点同時進行プロジェクトの一元管理、そして個々のプロジェクトの進捗状況を可視化し、効率的に管理する運用実績をもとに、これまでになかった発注者支援業務として、CMの価値提供を全国に複数の施設や支店等を保有する大企業、金融機関等に提供しております。

当事業年度のCREM事業の売上高は、731百万円(前年同期比11.2%減)、セグメント利益193百万円(前年同期比11.9%減)となりました。

 

④ DX(デジタルトランスフォーメーション)支援事業

当事業年度より、新たなセグメントとしてDX支援事業を展開しております。昨今、DX化に取り組む企業や団体が増えている中、働き方改革において働く人が自らのアクティビティを可視化して業務効率改善につなげるシステムMeihoAMS(※2)や、新規建設プロジェクトや施設の維持管理業務の可視化・一元管理等、顧客のDX化を支援するシステムMPS(※3)への関心が高まっております。それらに対して、当社で運用実績が10年以上ある自社開発システムを活用することによって、顧客のDX化(働き方改革)を支援しております。

当事業年度のDX支援事業の売上高は、134百万円(前年同期比177.1%増)、セグメント利益43百万円(前年同期比663.2%増)となりました。

 

※1 粗利益は、顧客との契約金額から外注費を控除したもの。

※2 MeihoAMSMeiho Activity Management System)は、個人のアクティビティの可視化・定量化・気づきの確認、そして一人ひとり及び全社での生産性や働き方向上を目的とするマンアワーシステム。

※3 MPSMeiho Project Management System)は、新設プロジェクト管理情報や施設の維持保全に関する情報を可視化することで、効率的なプロジェクトの推進や計画的な維持保全を目的とする、情報の一元管理システム。

 

・ESG/SDGsの取組みについて

当社では発注者支援事業を「明朗経営」と称し、各プロジェクトに関するプロセスや成果等及び企業業績等に関する情報を可視化し、「隠し事」が出来ない仕組みの構築及び各種法令を遵守するための体制や規程等を整備し、内部統制システムを構築しております。その中で、社内研修や社内教育コンテンツを展開し、「フェアネス・透明性・顧客側に立つプロ」の企業理念を企業風土として定着させ、社員一丸となって行動しております。

当社では「環境CM方針」を定め、建築や設備のプロがオフィスやビルの環境負荷の低減や環境に配慮した技術の導入・運用等に関する支援を、顧客側に立って行う発注者支援事業を通じて、顧客の脱炭素化やSDGs関連(環境共生・BCP・長寿命化等)の実現に貢献しております。このような取り組みの中で、我が国初のZEB(ゼロエネルギービルディング)やオフグリットシステム(電力会社などの送電網につながっていない、独立型電力システム)を実現したプロジェクトをマネジメントする等、新たなCM需要の創出に取り組んでおります。

当社の社会貢献活動としては、近隣地域のCSR団体に加盟し、他の加盟社の活動やボランティア情報を収集し、長年に亘ってマスクや車椅子の定期的な寄贈等会社として活動する他、日本学生支援機構が発行する「ソーシャルボンド」への投資や、東京都発行の環境施策に貢献する「東京グリーンボンド」への投資を行っております。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同し、気候変動に伴うリスクを適切に管理し、環境と成長の好循環を実現しております。

引き続き、透明性や信用を基盤とした持続可能な社会の実現に貢献し、ESG/SDGsを重視した経営に取り組んでまいります。

 

・DXの推進と社員教育について

世界的に拡がる新型コロナウイルス感染症の影響により、ニューノーマルに向けて社会が大きく変わる中、当社では、自社で開発したDX・デジタル基盤を活用し、全てのプロジェクトプロセスと情報をデジタル基盤上で共有できる完全なペーパーレス、テレワーク環境でサービスをご提供し、事業継続の実現とワークライフバランスを推進しております。

そのような職場環境の中で、社内に10数年に亘って整理・蓄積された社員一人ひとりの「行動分析に関するビッグデータや顧客に提出する成果物の進化の度合」を解析し、コロナ禍においても各人が自らのアクティビティの改善やキャリアビジョン実現に向けた上司との協働などによって、主体的に能力の向上や働き方の改革を図っております。また、今期からナレッジセンターを設立し、デジタル基盤上で業務上のベストプラクティスを共有する仕組み等を取り入れております。これらの取組みにより、当社の一人当たりの労働生産性は着実に向上するなど、仕事の仕組みやプロセスの改革を実行しております。

昨今、施設の新築や維持保全に、DXの活用に取り組む企業や団体が増えている中、前述のとおり、自社の10数年に亘るDX活用事例を活かした新たな事業のセグメントとして、DX支援事業を展開する等、顧客向けサービスの提供についても新たに取り組んでおります。

また、今後の事業拡大や人員増に合わせた体制強化の一環として、創業者である代表取締役会長を中心として今日の明豊ファシリティワークスを造り上げてきた役職員を講師とした社員研修会開催の頻度を高め、「明豊のCM」による、更なる価値の提供やCMサービス品質向上への取り組みを強化しております。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1)生産実績

当社における生産状況は、施工管理、施工技術、機械力、資金力及び資材調達力等の総合によるものであり、工事内容が多様化しており、また当社自体で生産している割合が低いことから具体的に表示することが困難であるため、記載を省略しております。

 

(2)受注実績

当事業年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

オフィス事業

836,535

81.1

CM事業

2,734,655

104.3

CREM事業

883,276

119.8

DX支援事業

75,640

100.0

合計

4,530,107

101.4

 

 

(3)販売実績

当事業年度の販売状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

オフィス事業

933,850

89.6

CM事業

2,460,120

105.8

CREM事業

731,862

88.8

DX支援事業

134,439

277.1

合計

4,260,273

100.5

 

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2022年3月31日)現在において当社が判断したものであります。

(1)重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されており、財政状態及び経営成績に関する以下の分析が行われております。

当社経営陣は、財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。経営陣は、収益の認識、対応する原価の計上、貸倒損失、税効果、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判断しにくい資産・負債の簿価及び収入・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 2財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(2)財政状態の分析

当社の当事業年度の財政状態は、以下の通りであります。

①資産の部

流動資産は、前事業年度末に比べて、94百万円増加し、4,780百万円となりました。これは、現金及び預金が496百万円増加したことなどによります。
 固定資産は、前事業年度末に比べて、119百万円増加し、938百万円となりました。
 この結果、総資産は、前事業年度末に比べ214百万円増加し、5,718百万円となりました。

②負債の部

流動負債は、前事業年度末に比べて、149百万円減少し、750百万円となりました。これは、未払法人税等が90百万円減少したことなどによります。
 固定負債は、前事業年度末に比べて、46百万円増加し、684百万円となりました。 
 この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ102百万円減少し、1,435百万円となりました。

③純資産の部

純資産合計は、前事業年度末に比べて、317百万円増加し、4,283百万円となりました。これは、利益剰余金が296百万円増加したことなどによります。

 

(3)経営成績の分析

当社の当事業年度の経営成績は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等で民間企業を中心に顧客における投資判断が慎重になったことにより第3四半期に受注が一時低迷し、第4四半期に巻き返しましたが、この受注時期の遅れによる期中のプロジェクト進行分が減少した結果、期中の売上総利益が減少し、営業利益、経常利益、当期純利益は、前年を僅かに下回ることとなりました。

 

区分ごとの主な内容は、以下の通りであります。

①売上高

当事業年度の売上高は4,260百万円となりました。

②売上原価

当事業年度の売上原価は1,978百万円であり、完成工事原価が5百万円、マネジメントサービス料原価が1,969百万円となり、全体では前期に比べ37百万円増加しました。

③販売費及び一般管理費

当事業年度の販売費及び一般管理費は1,416百万円であり、前期に比べ26百万円増加しました。これは主として、採用教育費の増加34百万円であります。

④営業利益

当事業年度の営業利益は865百万円であり、前期に比べ44百万円の減少となりました。

⑤営業外収益・費用

当事業年度の営業外収益は2百万円であり、主として新株予約権戻入益0百万円であります。営業外費用は2百万円であり、主として固定資産除却損2百万円であります。

⑥経常利益

当事業年度の経常利益は865百万円であり、前期に比べ45百万円減少しました。

当事業年度の経常利益目標920百万円(実績865百万円)を下回りました。

 

(4)流動性及び資金の源泉

①キャッシュ・フロー

当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前事業年度末に比べ496百万円増加し、1,935百万円となりました。

当事業年度末の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果取得した資金は、971百万円となりました(前事業年度は590百万円の取得)。
 取得の主な内訳は、税引前当期純利益の増加865百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は、166百万円となりました(前事業年度は135百万円の支出)。
 支出の主な内訳は、投資有価証券の取得による支出120百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は、308百万円となりました(前事業年度は850百万円の支出)。
 支出の主な内訳は、配当金の支払額308百万円であります。

②資金需要

当社の運転資金需要のうち主なものは、顧客の要望に基づきアットリスクCM方式にて対応することになる一時的な資金負担部分であります。当該部分について支払と回収のタイムラグを回避する工夫を行う等、運転資金需要を抑制するようにしております。

 

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