研究開発活動

5 【研究開発活動】

セグメントごとの研究開発は次のとおりであります。なお、「建設事業(建築)」及び「建設事業(土木)」の研究開発費は、建設事業共通でかかる費用のため、「建設事業」として記載しております。

 

 [建設事業]

研究開発活動については、「VISION2030」の達成に向け策定した「長期経営計画“To zero, from zero.”」の中で示した、3つの提供価値「①脱炭素、②廃棄物ゼロ、③防災・減災」に関連する技術ならびに、技術革新による品質向上・生産性向上・安全性向上につながる技術の開発と実用化を目指しております。当連結会計年度においては、以下の技術分野に関して、研究開発を進めました。

 
 1.脱炭素      ・コンクリート材料・木造建築・建物運用管理・建築資材のCO2排出量算定
 2.廃棄物ゼロ    ・先送り材料・廃棄物選別ロボット

  3.防災・減災    ・構造ヘルスモニタリング・グリーンインフラ・耐震補強・インフラ点検・維持管理

  4.品質向上    ・検査支援システム・騒音対策・コンクリート材料・室内快適性

  5.生産性向上   ・位置特定技術・トンネル施工・PCa化・杭/基礎・BIMを活用した部材製作

  6.安全性向上   ・トンネル安全管理・VOC汚染対策

 

更に、大学、公共研究機関及び関連企業との共同研究をはじめとする社外連携を進め、競争的資金の活用等により研究開発の効率を高めております。特に、東京都市大学とは産学連携に関する包括契約を締結しており、2021年度は4テーマの共同研究を実施しました。

当連結会計年度における研究開発費は、1,308百万円であります。

 

 主な研究開発成果は次のとおりであります。 

 
     (1)1時間準耐火構造の大臣認定を取得した「木被覆木製柱」を開発

当社は、実大試験体の加熱試験によって、「木被覆木製柱」(特許出願中)の国土交通大臣認定(1時間準耐火構造)を取得しました。今回開発した「木被覆木製柱」は、木質荷重支持部材に耐火被覆(燃えしろ)として木質被覆材を張ることで構成された木製柱です。本技術により木の温かみを感じられる「木現し」の準耐火柱の提供が可能となりました。

従来、木造で準耐火建築物を建てる場合、木質荷重支持部材を石膏ボードなどの不燃材で被覆する方法や工場へ製作を特注する大断面集成材(燃えしろ設計)を用いる方法が一般的でしたが、木の温かみが損なわれ、コストも高くなっていました。今回開発した「木被覆木製柱」では、耐火被覆(燃えしろ)として木質被覆材を張ることで「木現し」を実現し、木質荷重支持部材は一般の流通材でも使用可能なため工期短縮・コストダウンにつながります。

当社は、今回開発した技術を中大規模木造建築ブランド「モクタス」へ積極的に投入し、企業ビジョン「VISION2030」に掲げた脱炭素社会の実現に貢献します。

 

 
     (2)PPCa(Partial PreCast)ボックスカルバートが先端建設技術・技術審査証明を取得

当社と旭コンクリート工業㈱が共同開発した「PPCaボックスカルバート」(商標出願中)が、(一財)先端建設技術センターより先端建設技術・技術審査証明(技審証第202101号)を取得しました。

PPCaボックスカルバートは、側壁および頂版を部分的にプレキャスト部材に置き換えた大型ボックスカルバートの構築工法です。本工法では、部分的にユニット化したプレキャスト部材のみを工場で製作し、現場でコンクリート打設することで施工機械の制約内で施工を行うことを可能としました。現場での型枠・支保工を大幅に削減することができ、従来の現場打ちと比較し、内空7.0m・内高5.2m・延長10m のボックスカルバートの場合、約35%の工期短縮が可能となりました。

近年、建設業における労働者不足が顕在化しており、建設現場の生産性向上が喫緊の課題となっております。今後、大型ボックスカルバート構築工事に本工法を活用するとともに、建設現場の更なる生産性向上に取り組んでまいります。

 

     (3)建設作業や工場等から発生する低周波音に有効な軽量防音パネルを共同開発

当社は、旭機工㈱、松陽産業㈱と、加圧膜を利用した軽量な防音パネル「(仮称)低周波音用・軽量防音パネル」を共同開発し、当社施工のトンネル掘削工事現場に試験適用しました。

本パネルは、鋼板に加圧膜と金網等の軽量な剛性材を組み合わせユニット化することで、低周波音対策でこれまで使用されてきたコンクリートパネルと比べて同程度の遮音効果を確保しながら、重量を6分の1程度まで軽量化し、施工性を大きく高めることを可能としました。

従来、低周波音対策では、コンクリートパネルなどで防音材の重量を大きくする対応をしてきましたが、コスト増加や施工性の悪さというデメリットが生じておりました。

今後、建設現場や工場に設置された発電機の防音対策等での実績を増やしながら、都市部で発生するさまざまな騒音対策への活用も視野に展開していく予定であります。

 

     (4)先送りモルタルの代替材「サスタル」を開発・初適用

当社は、コンクリート工事のポンプ圧送に必要な先送りモルタルに替わる環境負荷低減型先送り材「サスタル」を開発し、(仮称)銀座5丁目プロジェクト新築工事(建物名:CURAGINZA)に初適用しました。

環境負荷低減型先送り材「サスタル」は、高炉スラグ微粉末および電気炉酸化スラグ細骨材を主成分にしており、従来使用されていた生コン工場で製造される先送りモルタルに比べて、材料の製造に起因して発生するCO2を70%以上削減しつつ、他産業から排出される副産物を90%(重量比)以上再利用した環境負荷の低減に大きく貢献する技術です。

「サスタル」は、市販化も予定しており、多くの建設現場に普及させることで、本製品を通じて環境負荷低減に貢献してまいります。


     (5)配筋検査システムをゼネコン21 社とPLTが共同研究開発

当社を含むゼネコン21社(文末参照)とプライム ライフ テクノロジーズ㈱(以下「PLT」という。)は、2020年9月に共同研究開発契約を結び、鉄筋の立体配置を認識する「配筋検査システム」の開発を進めております。本システムは専用カメラで撮影し、検査部位の鉄筋の本数、鉄筋径、間隔、配置を立体的に捉えて認識する仕組みとなっています。当社を含むゼネコン21社とPLTは2022年度に建設現場にて実証実験を行い、検査業務時間の60%削減と2023年度からの本格運用を目指します。

当社とPLT以外の共同研究参画会社は次の通りです。青木あすなろ建設㈱、㈱淺沼組、㈱安藤・間、㈱奥村組、北野建設㈱、㈱熊谷組、五洋建設㈱、佐藤工業㈱、大末建設㈱、髙松建設㈱、鉄建建設㈱、戸田建設㈱、飛島建設㈱、西松建設㈱、日本国土開発㈱、㈱長谷工コーポレーション、㈱ピーエス三菱、㈱松村組、村本建設㈱、矢作建設工業㈱

 

 
     (6)「バイオスティミュレーション」技術の開発

当社は、VOC(揮発性有機化合物)汚染地下水に対する特殊薬剤を用いた「バイオスティミュレーション」(※)技術を開発いたしました。

本技術は、塩素系のVOCを対象とした「バイオスティミュレーション」の課題(浄化期間、適用性等)に対し、既存の薬剤に加えて微生物生育環境を早期に醸成させる補助薬剤を添加することで浄化短縮を実現し、地下水中に阻害物質がある場合、従来技術と比較して20~40%の浄化期間の短縮を確認いたしました。

また、土壌を対象とした浄化工法のCO2排出量は、補助薬剤を添加した特殊薬剤を用いた浄化では、一般的な浄化工法である掘削除去工事と比較して約88%のCO2排出量削減が可能と試算いたしました。

今後、土壌地下水汚染の原位置浄化が求められる事業に対して、環境に配慮したより効率的な土壌地下水汚染対策技術を提供してまいります。

※「バイオスティミュレーション」:汚染地域に元々生息している土着微生物を“活性化”して、汚染物質の分解を促進させようという手法

 

   (7)「トンネル点検システム(iTOREL:アイトーレル)」の現場試行の実施

当社は、2014年から2018年度にかけて実施された内閣府「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」で開発したトンネル全断面点検・診断システム「iTOREL」の現場試行を実施いたしました。

本システムは、これまで人が行っていたトンネル点検に代わり、覆工コンクリートのひび割れと浮きを自動検出するひび割れ検出ユニット、打音検査ユニットによって、定量的かつ経時的な変化も把握可能な点検データが取得できるだけでなく、点検から帳票作成までの作業効率を向上させることで、点検業務の効率化・高度化が可能となります。

今回の現場試行の結果、従来の方法に比べて、点検作業の人員が最大4割削減、帳票作成などの内業時間が18.5%削減可能であることを確認いたしました。

今後、トンネル点検を実施する企業と連携しながら実用化を進め、当社の目指すお客様への提供価値の1つとして掲げる「防災・減災」の取り組みの一環として、トンネル点検システム「iTOREL」の社会実装に努めてまいります。

 

     (8)BIMを活用したPCa部材製造における鉄筋の自動加工システムを実証

当社は、PCa(プレキャストコンクリート)部材製造の生産性向上に向け、バルコニー板のBIMモデル作成から鉄筋加工までのフロー自動化を目指したプロトタイプシステムを実案件で2022年2月に実証いたしました。

今回の実証は、当社設計施工案件において、当社標準PCaバルコニー板の一部を対象に、BIMモデルへの鉄筋データの自動生成、PCa製造図面の自動作成、鉄筋自動加工機への連携を図った製造を行いました。その結果、PCa製造図面の自動作成や鉄筋加工手間の削減を実現し、生産性向上と省力化が可能となることを確認しました。また、PCa活用は材料ロスの削減にも繋がり、当社の目指す3つの提供価値の1つ「廃棄物ゼロ」にも貢献いたします。

さらに、当社の「長期経営計画“To zero, from zero.”」で「競争優位の源泉」の1つとして掲げている「デジタル技術」の領域において、今回の実証を機に「PCa製作の自動化」を推進し、BIMによるプラットフォームの構築とそれによる建築事業のデジタルシフトを加速させてまいります。このシステムは、今回の実証を経て2022年度中に更に改良すると共に、柱・梁等の構造部材での実用化に向けた開発フェーズへと進めてまいります。

 

 

(9)積み上げ式による建築資材のCO2排出量算定ツールを開発

当社のサプライチェーンで多くを占める、建築資材に係るCO2排出量について、従来よりも精度が高く、かつ即時に算出できる独自のツール「積み上げ式CO2排出量算定シート」を開発いたしました。当社が受注した建築工事(新築)において、お客様のご要望に応じ算定結果を提供しております。

本ツールは、見積段階で精度の高いCO2排出量が把握できるため、低炭素型資材の採用などが促進されCO2排出量削減に寄与するものと考えております。今後の建物建設における脱炭素の動向を踏まえつつ、お客様のご要望に合わせ「積み上げ式CO2排出量算定シート」のカテゴリ拡大および精度向上を行い、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

 

(10)最新技術を活用した高品質・低コストのクリーンルーム「TQ-MaPS(Tokyu Making Purified System)」提供開始

HACCP(※)の義務化により、全ての食品製造事業者は、HACCPに基づいた衛生管理が求められることとなりました。それに伴い、製造空間の清浄度や温湿度、室圧を高い精度で維持する事が重要となります。

そこで当社では2020年12月に、クリーンルームの低コスト化実証実験施設を新設いたしました。本施設では、様々な条件にあわせてクリーンルーム内で発生する粉塵や発熱を再現し、最適な風量の設定や処理能力の検証が可能となります。また、クリーンルーム内の循環空気の吸込位置やバランスを変更し、現存する実証実験施設では難しかった、壁・床等さまざまな空気循環経路の再現も可能です。これらにより、お客様の使用状況に近い空間を再現でき、高精度な予測・検証が可能となりました。

今回提供を開始する「TQ-MaPS」は、本施設でのさまざまな実証実験に基づき、新たな技術を導入し開発した高品質・低コストのクリーンルームです。排水口を兼ねた床吸込口の採用により、清浄度の低い空気をより効率的にクリーンルーム外に排出し、クリーンルーム内の空気の清浄度を従来以上に高めることで、清潔で安全なクリーンルームの設置が可能となります。また、コスト面では、循環空気風量の低減が可能となるため、イニシャルコスト、ランニングコストともに低コスト化を実現しております。

  HACCP(ハサップ):食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法

 

なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われておりません。

 

       [不動産事業等]

研究開発活動は、特段行われておりません。

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