課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、設立50周年を迎えた2019年を、来たる次世代の50年間に向けた「飛躍の年」と位置付け、未来における企業価値の永続的向上に向けて、新たな企業理念である「使命」と「価値観」を再定義しております。本理念は当社グループ社員全員の価値観の共有化を図ると共に、判断・行動の拠りどころとなるものです。本企業理念の下、未来に向けた「あるべき姿」を目指し、グループ一同で一体感を持って、企業価値の向上に努めてまいります。

 

企業理念

「使命」

Fill your tomorrow

社会と自然の調和を育み、未来へ向けた思いを満たす。

 

人や社会、環境の調和を尊重し、また、つながりを大切にしながら、空調を核とする事業を通して、お客様や社会からの期待に応える企業として、これからも社会に貢献します。

 

「価値観」

調和

社会と自然に敬意を払い、つながりを大切にします。
「社会へ向けて」
全ての人・社会・自然とのつながりと多様性を尊重します。

探究

豊かな発想力と熱意を持って、新たな価値の創造に挑みます。
「仕事の姿勢」
未来に対して大胆に挑戦し、創造力を発揮する専門性と人間力を磨きます。

真摯

何事にも強くしなやかに向き合い、期待に応えます。
「個人の資質」
アクティブで且つスピーディーでありながらも誠実さを大切にし、良い品質をお客様に提供します。

仲間と共に、わくわくしながら、成し遂げる喜びを分かち合います。
「仲間へ」
職場の仲間・協力会社の皆さんと、創造し提供する喜びを分かち合い、
また、家族との大切な時間を共有することを大切にします。

 

会社の方針

新日本空調グループは、『会社の方針』として、次のように事業環境を整えることをお約束します。また、万一、本方針に反する事態が発生した場合、経営トップ自ら率先して問題解決にあたり、原因究明、再発防止に努めます。

 

「コンプライアンス」

役員・従業員は、法律・社会規範・社内ルールを守ります。違法や違反する行為の動機が、「会社のため」、「お客様のため」という職務上のことや、上司の指示であっても例外ではありません。違法行為、社内ルール違反には厳正な姿勢で臨みます。また、そのような行為を出来る限り未然に防ぐために、社内外通報制度を整備、公開し、その通報者を守ります。

 

「公正な事業慣行」

役員・従業員は、関係法令および社内ルールを含む腐敗防止や公正な競争、利益相反行為の禁止、贈収賄防止、反社会的勢力との接触禁止、インサイダー取引の防止(以下、腐敗防止等という)に取り組み、公正さ、誠実さおよび透明性を以て事業活動を推進します。また、腐敗防止等に対する取組が不十分と認められる取引先等についても、当社との取引停止を含めた厳しい対応で臨みます。公正さ、誠実さおよび透明性のある事業活動の遂行により、社会、顧客、ビジネスパートナー等のステークホルダーから得られる信用・信頼こそが、かけがえのない財産であることを認識し、活動します。

 

「リスクマネジメント」

事業運営上のあらゆるリスクに的確に把握・対応し、経営の健全性を確保することがコーポレートガバナンスの重要な基盤であると認識し、連絡体制を強化し、訓練等を通して迅速な対応に努めます。

 

「情報セキュリティ管理」

顧客情報や特許権、商標権、著作権等の知的財産の情報と情報システム等の資産を適切に保護・管理し、積極的に活用します。また、従業員に対しては、情報セキュリティに関する意識向上を図ると共に、知的財産や情報管理に関する教育・訓練を実施し、紛失、盗難、不正使用等を防ぎます。

 

「情報開示と社内外コミュニケーション活動」

社会から信頼される企業集団であることを目指し、正確かつタイムリーな情報に基づき、積極的な広報活動を通じて、ステークホルダーとのオープンで公正なコミュニケーションに努め、経営の透明性の向上を図ります。また、ステークホルダーの皆様からの要望を受け止めると共に、建設的な対話を行い、企業価値の向上に役立てます。

 

「環境」

持続可能な地球環境の実現のために、気候変動の緩和と適応や環境への負の影響の最小化に向け、環境問題を経営の重要課題と位置づけ、事業活動のみならず、職場環境に至るまで、全ての業務プロセスにおいて、環境に配慮した活動を推進します。また、調達先や協力会社に対しても、環境に配慮した業務遂行を求め、地球環境の改善に努めます。

 

「労働安全衛生」

働く人々の安全確保が企業にとって最重要基盤であると考え、事業活動において、派遣社員、協力会社を含めた働く人々の安全衛生を最優先し、安全で働きやすい環境を確保します。従業員の心身の健康維持・増進を積極的に支援して、健康経営に関する従業員と会社との円滑なコミュニケーションを図ります。また、従業員の声に耳を傾け、一人ひとりが積極的に仕事に取り組み、自由で闊達な発想力を活かす、平等で差別のない明るい職場環境を提供します。更に、ワークライフバランスの充実、労働時間以外の時間帯の適切な確保をサポートし、働きがいを持ち続けられる会社作りを目指します。

 

「ダイバーシティ」

社会に向けて新たな価値を創造し続けるためには、多様性がもたらすイノベーションが不可欠であると考えています。あらゆる属性の人が平等な雇用と活躍の機会を確保され、多様な個性や能力を十分に発揮できるよう、ダイバーシティ経営を推進します。また、多様性を持った人材の広がりを大切にし尊重すると共に、全ての従業員の公正な処遇を重視します。

 

「人権」

あらゆる事業活動において、全てのステークホルダーの皆様の基本的人権および個人の尊厳を尊重し、人権侵害に加担しません。万一、事業活動や商品・サービスが、人権への悪影響を及ぼしていることが判明した場合は、適切かつ速やかに対処します。また、不適切な言動によるハラスメント行為を許しません。ハラスメントとなる行為には厳正な姿勢で臨みます。

 

「労使関係」

「労使相互信頼と相互責任」を基本に、従業員がそれぞれの立場において、プロフェッショナルとして活き活きと活躍できるよう、均等な雇用機会と公正な労働条件を提供します。

 

「人材育成」

従業員は企業にとって大切な経営資源であり、企業の持続的成長のために人材育成が最も重要であると認識しています。このため、人的資源の高度化を図ることや、従業員一人ひとりがプロフェッショナルとして高い専門性を持って仕事に取り組むことができるよう、それぞれの資質・能力を伸ばすプログラムを提供します。また、過去の経験や先輩から引き継いだ「ナレッジ」の有効活用を図るために、技術に関わる情報の開示に努め、エンジニアの一人ひとりが自信を持って、仕事に取り組むことが出来るように当社技術情報を整備更新します。

 

「地域コミュニティ」

持続可能な地域づくりのためには、コミュニティの機能不全や活力低下、都市生活の基盤の脆弱化は、重要な社会問題であると認識しています。このような認識のもと、行政や地域コミュニティと協働し、コミュニティの育成と活性化を支援します。また、自然災害やパンデミック等、地域コミュニティが機能不全になるような事態には、関係者の安全確保をした上で、被災地域の復旧・復興支援およびお客様事業の早期再開の支援を行うことに努めます。

 

「公平、公正な調達」

規模・実績の有無を問わず、開かれた公平でかつ公正な参入機会を提供し、品質、技術、数量、納期の確実性に加え、経営の安定性、技術開発力、環境や社会への取組等も総合的に勘案して、調達先を選定します。

 

「品質」

顧客が期待する価値を的確に捉え、全ての業務プロセスにおいて、“品質へのこだわり”を持ってSNK品質の提供を行い、信頼され、満足していただける技術とサービスを提供します。そのために各部署、プロジェクトにおいて品質目標を設定し、品質マネジメントシステムを実施し維持すると共に、マネジメントレビュー等を通じて継続的改善を図ります。

 

「技術革新への取組」

技術開発や異業種とのコラボレーションによるイノベーションにも積極的に取り組み、将来に向けて一歩先の先鋭的技術(テクノロジー)の取得と活用に努めます。

 

行動指針 (従業員の日常行動の心構え)

「夢を持とう」

自分の夢を持ち、それに向かって仕事に取り組むことで、次への扉が開きます。

 

「誠実に生きよう」

約束や規範を守り、自分に誇れる言動が、他者や社会からの信頼を厚くします。

 

「当事者意識を持とう」

当事者としての意識を持ってチームの課題に取り組むことで、自信と謙虚さが生まれます。

 

「学び続けよう」

日々の仕事を通じて専門性や人間性を磨くことが、自己の成長とやりがいにつながります。

 

 

「やってみよう、そしてやり遂げよう」

失敗を恐れず挑戦し、その経験を活かすことで、課題を乗り越えることができます。

 

「支え合おう」

他者への敬意を忘れず、お互いの成功をともに喜び合い、励まし合うことで、強いチームワークが生まれます。

 

「感謝を伝えよう」

明るい笑顔で心から感謝の気持ちを伝えることで、強く温かい信頼の輪が広がります。

 

(2) サステナビリティ活動

当社グループは、サステナビリティに取り組む基本的な考え方として「サステナビリティ方針」を下記の通り策定し、サステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ活動を推進してまいります。

 

[サステナビリティ方針]

新日本空調グループは、「社会と自然の調和を育み、未来へ向けた思いを満たす。~Fill your tomorrow~」を企業理念に掲げています。この理念の下、本方針においてサステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置付け、この理念を支える「会社の方針」と「行動指針」に従いESG経営を推進し、社会と環境との調和、つながりを大切にしながら、空調を核とする事業を通して、お客様や社会からの期待に応える企業として成長し続けるとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

[サステナビリティ委員会設置(サステナビリティ推進体制のガバナンス強化)]

当社グループは、取締役会がサステナビリティを巡る課題に対応するために、中長期的な企業価値向上の観点から、「サステナビリティ委員会」を設置し、これらの課題に積極的・能動的に取り組んでまいります。

具体的には、サステナビリティを巡る課題への対応を取締役会として検討し、方針を決定し、決定した方針に沿って目的が達成されているかをモニタリングしてまいります。「サステナビリティ委員会」で策定した方針に基づき、「サステナビリティ推進委員会(元CSR・ESG戦略委員会)」が、サステナビリティを巡る課題に対応する戦略を策定・推進する役割を担ってまいります。

 

[当社が取り組むマテリアリティ(重要課題)]

サステナビリティ活動に取り組むべき課題として、企業理念である「使命」と「価値観」に加え、15項目の「会社の方針」並びに「SNK Vision 2030」等に沿って整理された社会課題に鑑み、「マテリアリティ(重要課題)」を特定し、ステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションに努め、サステナビリティ活動の推進に繋げております。

2022年度に特に優先して取り組む「マテリアリティ(重要課題)」は、「人権」「ダイバーシティ」「環境」の三つと定め、それぞれを推進する社内体制を構築し、サステナビリティ活動に取り組んでまいります。

 

 

 


 

 

 

(3) 経営環境

当連結会計年度における経済状況は、新型コロナウイルスの全世界的まん延が依然衰えず、人々の暮らしや企業活動に大きな影響を与え続け、加えてロシアのウクライナ侵攻により、景気の先行き不透明感が高まりました。日本経済においては、新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置が解除され、企業の景況感にはバラつきがあるものの、ようやく回復の兆しが見えだしました。

建設業界におきましては、都心を中心とした再開発案件や製造業の設備投資は引き続き堅調でしたが、資機材・労務費・運搬費の上昇傾向や技術者・技能労働者不足は継続しております。また、AIやIoTを活用した技術革新と、カーボンゼロへの対応、デジタルトランスフォーメーション、働き方改革による生産性向上への取組みは不可欠となり、更に、気候変動などの地球環境問題への配慮、従業員の健康・労働環境への配慮など、サステナビリティを巡る課題への対応は、今後の事業の継続・成長には欠かすことのできない経営課題となりました。

このような環境下、当社グループは、10年ビジョン「SNK Vision 2030」を、「新日本空調グループは、持続可能な地球環境の実現とお客様資産の価値向上に向け、ナレッジとテクノロジーを活用するエンジニア集団を目指します。」と定め、達成に向けた第1フェーズとして中期経営計画[SNK Vision 2030 PhaseⅠ](2020年度~2022年度)を策定し、5つの基本戦略である①事業基盤増強戦略、②収益力向上戦略、③人的資本戦略、④デジタル変革戦略、⑤企業統治戦略 を掲げ、計画2年目の事業運営を進めてまいりました。

 

国内建設市場では、持続可能な社会の実現に必要な低炭素化社会への移行、技術革新などに対する投資は堅調に推移すると見込んでおり、社会からの課題に的確に応えられる技術開発、技能労働者減少を見据えた施工体制の構築および生産性の向上などが一層求められると考えています。

 

(4) 経営計画

当社グループは、将来起こりうる変化やその先の見通しに対して、柔軟且つ機敏に対応できる組織であるために、2030年を節目とした10年ビジョン「SNK Vision 2030」を定めております。

 

 [ SNK Vision 2030 ] の基本方針

 

新日本空調グループは、

持続可能な地球環境の実現と、お客様資産の価値向上に向け、

ナレッジとテクノロジーを活用するエンジニア集団を目指します。

 

当社グループが提供する建築設備システムは、お客様の重要な資産となり、事業活動の源泉となるものです。従い、当社グループは建築設備システムを構築、提供し、維持更新する活動を通じ、お客様のみならず、多くのエンドユーザーの生活や環境を当社のナレッジとテクノロジーで支え続けていきます。

 

そして、2030年における当社グループのあり姿を以下の通り想定し策定しております。

 

ビジネス環境の基盤は、情報通信技術の急速な進歩に伴い、「モノ(所有価値)」から「コト(利用価値)」といった価値定義の変化の中で、高効率・大量生産による消費社会から、変化対応型の発想重視の社会へ変化してきており、知的資本の創造やその活用が今後の企業競争力に影響を与えることが考えられることから、知的資本を構成する、人的資本、組織資本、関係資本にサステナビリティ資本を加え、これらを価値創造の根幹として、その堅固な根幹に支えられたビジネスモデルが当社グループの将来価値を創造することになります。従い、自然資本の持続的成長を約束しつつ、知的資本の変革と研鑽による持続的成長が当社グループの企業価値を向上させると考えております。

 


 

4つの知的資本を活かし続ける変革、研鑽と将来への跳躍をスローガンとして、2030年における経営計画目標に対する5つの基本戦略を掲げ企業価値の向上に取り組みます。

 

 

 

 

 

1. 人的資本戦略

 

 

2. デジタル変革戦略

 

 

3. 収益力向上戦略

 

 

4. 事業基盤増強戦略

 

 

5. 企業統治戦略

 

 

 


 

(5) 中期経営計画「SNK Vision 2030 PhaseI」(2020~2022年度)の経営課題と対処すべき施策

SNK Vision 2030の第1フェーズとなる2020年から2022年の3ヵ年は、人的資本、関係資本、組織資本にサステナビリティ資本を加えた4つの知的資本を活かし続ける変革の期間ととらえ、SNK Vision 2030で掲げる5つの基本戦略に基づく対処すべき課題を以下の通り定めます。

 

事業基盤増強戦略

資本コストを意識した事業ポートフォリオの実現と新たな事業領域の展開による収益基盤の拡大を目指す。

①資本コストを意識した収益性評価による事業ポートフォリオの実現に向けた当社グループの成長戦略の実行

②新たな関係価値創造による事業領域の拡大と新分野への事業展開

③社会や顧客の要請に応えるための積極投資によるSNKブランドの差別化

④海外事業領域の将来性を見据えた事業基盤拡大

 

収益力向上戦略

事業収益力の向上と施工遂行力の持続的成長を実現する現場機動力の増強に資する安全品質管理体制の強化と生産性向上を目指す。

①事業収益力の源泉である現場収益性を見据えた原価構成の最適化追求

②新工事管理システムの運用による安全品質管理の徹底とIoT、AI技術を駆使した設備資産管理手法の確立

③現場機動力の増強に資する協力会社を含めたサプライチェーンの関係性強化と施工遂行力の持続的成長を見据えた現場人材確保

 

 

人的資本戦略

多種多様、多才な人材を有し、様々な専門領域にて、自己のキャリアプランと会社のキャリアパスが有機的に結びつく人的資本の育成と、働き方改革を実現する現場や事業基盤増強戦略に基づく事業分野への人材を傾斜配分する。

①多種多様、多才な人材の発掘、育成、活用に資する人事制度改革の推進

②ゆとりのある労働環境の実現に向けたワークスタイルの変革と現場人材の増強

 

デジタル変革戦略

デジタル変革社会に則した高度情報活用の推進と業務機動性の更なる向上を目指すために、デジタルによる情報活用を推進し、情報通信技術の高度化による当社独自のICTプラットフォームを構築し、存在価値を高める。

①ナレッジを最大限に活用するマネジメントシステムの構築と運用

②デジタル変革の進化に追従するデジタル化戦略の実行と情報解析技術の研鑽

 

企業統治戦略

持続的地球環境の実現とステークホルダーの長期的価値向上を見据えたCSR・ESG経営の浸透展開と、それを支えるコーポレートガバナンス体制の強化を推進する。

①心豊かな社会そして地球環境の維持を組織の命題ととらえ、SDGsの目標達成に資するCSR活動の推進

②持続的成長を確実にするコーポレートガバナンス変革への挑戦

③エンゲージメント経営の実践によるインフラ型組織への変革

 

(6)目標とする経営指標

「SNK Vision 2030 PhaseI」における最終年度(2023年3月期)の連結経営数値目標を次の通り定めます。なお、当社グループはこの新3ヵ年中期経営計画の実施に対し、中長期的視野での経営体質強化および新事業展開等を図るための研究開発や設備投資等を勘案するとともに、今まで以上に収益性や効率性向上に努め、結果としてROEを高める中長期的な成長を重視し、2030年への持続的成長と新たな企業価値の創造を目指します。

 

科目

2022年度

受注工事高(百万円)

120,000

完成工事高(百万円)

115,000

営業利益(百万円)

6,500

経常利益(百万円)

6,900

親会社株主に帰属する

当期純利益(百万円)

4,600

ROE(%)

10.0 以上

 

 

(7)新型コロナウイルス感染症に伴う事業への影響

新型コロナウイルスの全世界的まん延が依然衰えない中で、オミクロン変異株の感染が急拡大し、社会経済や消費に様々な影響を及ぼすものと予測しております。しかしながら現時点では、当社グループの業績に及ぼす影響を見通す事は困難な状況にあります。今後の同感染症の動向を見極め、当社の事業活動や経営成績に影響を及ぼすおそれが生じた場合は、速やかに開示いたします。

また、当社グループでは、感染拡大防止の観点から、三密の回避、テレワークや時差出勤の推奨、施工現場における監督官庁の予防対策ガイドラインの遵守・実行を継続し、グループ職員並びに関係者の安全確保に取り組んでまいります。そして、これまで培った保有技術を通して社会的課題を解決し、社会に貢献する事でグループ全体の企業価値向上に努めてまいります。

 

 

(8)気候変動への取り組み(TCFD提言に基づく気候関連の情報開示)

当社グループは、2021年8月に、カーボンゼロ達成のために、企業が気候変動に関する情報開示を行い、投資家が適切な投資判断を行うことを目的としたTCFD「気候変動関連財務情報開示タスクフォース」提言に賛同表明しました。賛同表明と並行して、TCFDが推奨する気候関連のリスクおよび機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目の検討を行いました。

 

[ガバナンス]

新日本空調グループは、気候変動対策など環境問題を始めとした社会課題の解決への取り組みを推進するため、取締役会の委員会として位置付けられる「サステナビリティ委員会」を設置しました。委員会は、代表取締役会長を委員長とし、[当社が取り組むべきマテリアリティ]の推進はもとより、気候変動対策を含む環境推進活動におけるサステナビリティ基本方針に基づく理念整理および方針策定、各部門における環境推進活動の目的・目標・計画の調整、進捗状況のモニタリング・評価の機能を担っています。取り組みの推進にあたっては、所管事業部門毎の年度活動目標とKPIを設定し、進捗管理等を行っています。また、気候変動リスクについては、サステナビリティ推進委員会が、国や地方公共団体をはじめとし、様々な業界団体から国内外の動向・要請等の情報の収集を行い、リスクの特定を行い、影響を評価しています。取締役会では、気候変動を始めとした環境問題について、経営会議に報告された目標及び活動の進捗状況の評価はもとより、活動方針の実効性を監視しています。

 

気候変動に関するガバナンス体制図

 


 

 

 

 

気候変動に関するガバナンス

 

 

機関

役 割

取締役会

・経営上の重要事項の審議・決定

・職務執行監督

・気候変動に関する重要事項の審議・決定

・気候変動課題の指示・監督

サステナビリティ委員会

・社会課題解決に向けた取り組み推進

・気候変動関連課題への対応方針の決定とモニタリング

・委員長は代表取締役会長

経営会議

・業務執行方針・業務案件の審議・決定

・サステナビリティ活動内容の検討

サステナビリティ推進委員会

・社会課題解決に向けた活動の遂行

・気候変動関連課題への具体的施策の実行

 

 

 

 

[戦略]

新日本空調グループは、持続可能な地球環境の実現のために、気候変動に対する緩和と適応の対策や環境への負の影響の最小化に向け、環境問題を経営の重要事項と位置づけ、全ての業務プロセスにおいて、脱炭素社会の実現に向けた活動を推進しています。

そのような中、気候変動に対する対応を加速するために、気候関連リスク・機会に対応していくガバナンス体制を構築し、シナリオ分析を全社横断的に行う専門の作業部会であるTCFDワーキンググループを立ち上げ、目標や指標の特定・設定等を進めてきました。

TCFDワーキンググループにおいては、新日本空調グループを取り巻く気候変動に関連するリスクと機会の洗い出しを行い、想定される時期や事業活動への影響度を分析したうえで重要なテーマを選定しました。影響度の分析にあたっては以下の二つのシナリオ(※1)を用いて、選定したテーマごとに事業活動に与える財務的影響を算出し、新日本空調グループの対応を検討しました。なお、事業活動に与える財務的影響については、「大」「中」「小」の3段階で表現しています。また、想定される時期は、「中期」を3年(2024年)、「長期」は10年程度(2030年前後)と想定しています。

2021年度は、影響度が「大」になるテーマとして、移行リスクでは「テクノロジー」、物理的リスクでは「慢性的」「急性的」、機会では「市場」を選定しました。取締役会では、これらに対する新日本空調グループの対応を経営上の重要事項と捉え、審議・決定しました。

 

(※1)リスクと機会の検討にあたって用いたシナリオ

移行シナリオ:国際エネルギー機関(IEA)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇1.5℃以下に抑えるシナリオ(SDS)

物理的シナリオ:国際気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇が4℃を越えるシナリオ(RCP8.5)

 

 

 

 

①想定される気候関連のリスク

 

リスクの分類

事業への影響

想定
される
時期

影響の
大きさ
1.5℃

影響の
大きさ
4℃

当社の対応

移行
リスク

政策・法規制

・建築物の省エネルギー基準が見直され、ZEBの推進や省エネルギー性能の高い建築物の要求が高まる。
・高効率機器やシステムの導入が必須となり、建設コストの上昇に繋がるため、顧客が満足するコストパフォーマンスを提供できない場合は受注機会が減少する。

長期

・省エネルギー関連の新技術開発の積極的な推進や、熱源最適制御システム「EnergyQuest」をはじめとした当社が保有するエネルギー関連技術の機能向上を図り、コストパフォーマンスを高める。

テクノロジー

・顧客の要求する技術水準が高まると同時に、競争条件が厳しくなり、受注機会が減少する。
・独自技術の開発費用が増加する。

長期

・省エネルギー、施工省力化技術やCO2回収技術開発のために、計画的な開発投資を行う。

市場

・多くの顧客が、より効果的なGHG削減や環境対策を求めるようになる。
・建設時のGHG削減技術や、建物運用時の省エネルギー等の環境対策技術の保有が発注先の選定要件として重視されるようになる。

長期

・社会ニーズと顧客動向の適時把握に努め、あらゆる機会を通じパートナーとの連携を図り、環境対策技術の開発を加速する。

評判

・気候関連情報の開示に消極的な上場企業に対して、株主からの開示要求が高まる。
・カーボンゼロに向けて、企業間での優秀な人材の獲得競争が加速する。

中期

・カーボンゼロに向けた設備投資を増加し、研究開発を活発化させると共に、積極的な開示を行う。
・研究開発に必要な専門領域において能力が高いスペシャリスト採用を強化する。

物理的
リスク

慢性的

・夏期の平均気温上昇により建設現場での労働環境が悪化し、労働者の熱中症発症リスクの増加や、集中力・注意力低下による不安全行動リスクの増加や作業効率の悪化につながる。

長期

・施工現場における日中労働時間の短縮、夜間工事への変更を実施するなど、労働環境改善に向けた対策の構築や安全対策の強化を行う。

急性的

・急激な気象変化(台風・豪雨等)により、サプライチェーン等の被災による工事遅延が発生する。また、納入した設備に不具合が発生し、その対応が求められる。

中期

・サプライチェーン全体で取り組む緊急時対応策を強化することで、事業継続性の向上を図る。
・気候変動を考慮した設計を顧客と共に検討し採用可能なビジネスモデルを整える。

生物的リスク

・気温上昇による熱帯性の細菌・ウイルスの増加により、日本の気候では発生し得ない感染症がまん延し、現場休業要請が多発化・長期化する。その結果、サプライチェーン全体にも影響が及ぶことで、調達遅延や工期延長が起こりやすくなる。

長期

・感染症に関する情報を把握する共に、発生が予測される段階で施工現場における予防対策を徹底し、サプライチェーン全体のBCPを拡充する。

 

 

②想定される気候関連の機会

 

機会の分類

事業への影響

想定
される
時期

影響の
大きさ
1.5℃

影響の
大きさ
4℃

当社の対応

資源効率

・社会における脱炭素化の動きの進展につれ、製品・サービスの調達・物流段階におけるCO2排出削減の必要性がより高まり、重要視されるようになる。

中期

・効率的な資機材管理となる物流システムの開発を強化し、資機材の集中調達や建設現場へのジャスイトインタイム配送を通じて輸送の効率化と物流段階でのCO2排出削減を図る。
・この新物流システムにより、現場生産性向上を図り、受注機会拡大を目指す。

エネルギー源

・再生可能エネルギー源として太陽光、風力はもちろんのこと、地中熱利用が脚光を浴びるようになる。

中期

・従来工法より低コストで採放熱効果の高い保有技術の地中熱利用技術「地熱トルネード工法」の積極的導入を通じた受注機会拡大を目指す。

製品とサービス

・建築物の省エネルギー基準の見直しにより、ZEBの推進や省エネルギー性能の高いシステム、高効率機器の導入が必須となる。
・建設コストの大幅な上昇に伴い、コストパフォーマンスを考慮した高い環境性能設備が求められるようになる。

長期

・機器メーカーや他業種とのアライアンスを通じた省エネルギー性能の高い新技術の開発強化、ならびに保有技術の熱源最適制御システム「EnergyQuest」の性能向上を図ることにより、受注機会の拡大を目指す。

・ゲリラ豪雨などの異常気象の増加を受け、BCPの観点から、建築物に対する水害対策設備の導入要望が高まる。
・強風や水没等による災害の早期復旧需要が高まる。

長期

洪水・ゲリラ豪雨などでの浸水被害を防止する保有技術の「ジャバッShut」(※2)、「水断羽」(※3)等の積極的な提案を通じて顧客のBCP対策への要求に応える。
水没などで被災した顧客に対するBCPルーチンを策定し、迅速に対応できる体制を整える。

市場

・気候変動に伴い新たな感染症がまん延する。
・自然災害(堤防決壊等)による土壌や水資源の汚染が発生する。

中期

・微粒子可視化技術等の技術革新・開発、ソリューションの提供を通じて、感染症対策に貢献し、受注機会を拡大する。
・他業種との協働によるCO2施肥制御技術やポリエステル培地を用いた営農支援等、新たな事業領域への拡大を図る。

・社会の電源構成における再生可能エネルギーの比率が高まることで、エネルギーの安定供給確保に向けた再生可能エネルギーとLNG等との併用が注目されるようになる。

長期

・国や自治体が進める脱炭素政策に基づき、省エネルギーやカーボンゼロ、レジリエンス技術を組み合わせ、新たな事業領域の拡大を目指す。
・再生可能エネルギー分野ではPPA事業への参入を目指す。

レジリエンス

・気候変動の激化に伴い、様々なレジリエンス技術に対する需要や要望が拡大する。

中期

・新たなレジリエンス技術の開発や、保有技術「ジャバッShut」、「OT-9」(※4)等の積極的な提案を通じて受注機会の拡大と新規事業への展開を目指す。

 

※2 ジャバッShut:津波や洪水によるダクトからの水の浸入防止。電源不要で確実に作動し、原子力施設への導入実績のあるBCP対策技術

※3 水断羽:浸水防止対策用ダンパでダクトからの水の浸入を防止。電源不要で確実に作動し、ジャバッShutの一般建物向け商品

※4 OT-9:吊り機器の落下防止工法で、機器吊りボルトに金具とワイヤを取付けるだけの新工法

 

[リスク管理]

当社グループでは、気候変動リスクを含む事業運営上のあらゆるリスクを的確に把握・対応し、経営の健全性を確保することが重要であるとの認識のもと、リスクの防止および会社が被る損失の最小化を図ることを目的とし、グループ全体のリスク管理に関する必要な事項を「リスク管理規程」に定めています。

リスク管理に関する会議体としては、代表取締役社長を委員長とし、社外有識者を含む委員による「リスク管理委員会」を設置し、リスクの回避、低減および管理の強化を図っております。特に気候変動関連リスクについては、2021年度にTCFDワーキンググループを立ち上げ、本社部門・事業部門を含む幅広いメンバーで気候変動による当社グループ事業に将来的に与えるリスクと機会について全社横断的に検討を重ねています。ここで検討したリスクは、当社グループの事業運営上のリスクとして捉えられ、リスク管理委員会でリスクの回避、提言及び管理の強化を図り、経営会議または取締役会へ報告されます。

新日本空調グループはこれらのリスク管理を通じて、今後も継続的に気候変動に関するリスクや機会に対応してまいります。

 

リスク管理体制

 


 

 

 

[指標と目標]

新日本空調グループは、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CO2)を指標とし、今後のSBT認定を見据え、SBTに基づいた削減目標を設定しました。

2030年そして2050年の目標を達成するよう、省エネ設計・施工提案、および、積極的な再生可能エネルギー導入を実施し、今後も引き続き環境負荷低減に取り組んでまいります。

(※5) SBT(Science Based Targets)

世界の平均気温の上昇を「2℃(1.5℃)未満」に抑えるための、企業の科学的な知見と整合した温室効果ガスの排出削減目標

 

温室効果ガス(CO2)削減目標と実績                         (単位:t-CO2)

対象Scope

区分

前年度排出量

実績

基準年排出量
実績
(前年度比)

次年度排出量

(前年度比)

目標年排出量

(基準年比)

2020年度

2021年度

2022年度

2030年度

2050年度

Scope1

個別

1,122

970

(▲13.6%)

関係会社

338

( - )

グループ全体

1,308

( - )

Scope2

個別

904

747

(▲17.4%)

関係会社

218

( - )

グループ全体

965

( - )

Scope1+Scope2

個別

2,026

1,717

(▲15.3%)

2,013

(▲11.4%)

1,224

(▲46.2%)

0

(▲100%)

関係会社

556

( - )

グループ全体

2,273

( - )

Scope3

個別

4,280,761

4,170,450

(▲2.6%)

4,350,000

(▲11.0%)

0

(▲100%)

関係会社

718,797

( - )

グループ全体

4,889,247

( - )

 

※2020年度実績は個別のみの排出量、2021年度以降はグループ全体の排出量として算出、及び目標設定

 

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