課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

 下記の文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年7月29日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)当社グループの経営の基本方針

 当社グループは創業以来、「お客様第一主義」の経営理念に基づき、全社員が「STILL NOW(今でもなお、お客様は何を不満に思っているか)」を考え、「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」の製品開発コンセプトに基づき、お客様にお喜びいただける製品の開発と、お客様に密着したサービスに努めてまいりました。

 当社グループの考える「お客様」とは、「消費者の皆様・株主の皆様・販売先の皆様・仕入先の皆様・金融機関の皆様・地域社会の皆様」であり、単に消費者の皆様にとどまらず、当社グループと関わりを持たれるすべての方々を「お客様」と定義しております。

 全社員が「STILL NOW(今でもなお、お客様は何を不満に思っているか)」の精神を持ち、「お客様」にお喜びいただける最良のサービスをご提供することが、最良の経営につながるものと確信しております。

 今後も、当社グループは「お客様第一主義」の経営理念に基づき、継続的に企業価値を高め、より一層株主価値を向上させる経営に努めてまいります。

 

(2)当社グループの中長期的な経営戦略

 当社グループは、2022年6月に2027年4月期までの新・中長期経営計画を発表いたしました。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大や世界情勢の急激な変化など、経済・社会が激変するなか、当社グループにおける事業環境も同様に変化し続けていくことを想定しています。

 このような外部環境の変化に対して、グループ経営理念「お客様第一主義」のもと、すべてのお客様からのご期待にお応え続けていく、新たな中長期経営計画を策定しました。新・中長期経営計画では、お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会を実現するため、今後の5年間で「5つの重点戦略」に注力します。また、「収益性重視」「利益・シェア向上のための持続的成長」「株主資本利益率の向上」といった成長に対する考え方のもと、2027年4月期の定量目標を定めました。

 当社グループは、新・中長期経営計画における「5つの重点戦略」を実行するうえで新たな価値の創造に努め、お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会を実現し、唯一無二の永続企業を目指してまいります。

 

 

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(3)当社グループの対処すべき課題

 当社グループは今後法令及び社会的規範の遵守製品の安全性並びに品質管理体制等企業の社会的責任に消費者の厳しい目が向けられる中経営理念でありますお客様第一主義を徹底し企業価値を高め一層の株主価値を向上させるために以下の項目を中心に取り組んでまいります

 

① ブランドの確立

1.製品開発

 当社は、「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしいを製品開発コンセプトに全社員がSTILL NOW(今でもなおお客様は何を不満に思っているか)を考え当社独自の提案制度であるVoice制度(お客様のご不満やご要望を製品開発に取り入れる提案制度)を活用し積極的に新製品の開発及び既存製品の改良を行っております今後もVoice制度を積極的に活用しお客様のニーズに即した製品開発・改良に努めてまいります

 

2.研究開発

 当社製品開発コンセプトの内、特に「健康」、「安全」、「おいしい」に重点をおいて、基礎・応用研究を進めております。当社が提供する製品が、人々の健康維持に有用であることを、様々な試験を通じて検証し、常に最新情報を発信し続けます。更に健康価値を表示できる特定保健用食品や機能性表示食品の開発にも力を注いでいきます。また、飲料のおいしさに関与する成分研究、物性に関する研究を進め、より優れた製品開発に向けた技術提案を行ってまいります。

 

3.ブランド強化政策

 伊藤園(ITO EN)という総称ブランドを軸に、「お~いお茶」「健康ミネラルむぎ茶」「TULLY'S COFFEE」「1日分の野菜などの個別ブランドの強化を図ってまいります

 特に主力製品でありますお~いお茶につきましては1985年の発売から続いている原料と製法にこだわり無香料・無調味の自然のままのおいしさを引き出しお客様へご提供してまいりますまた緑茶飲料が様な飲用シーンでお楽しみいただけるよう容量容器バリエーションの充実を図るとともに緑茶飲料を初めて発売した当社ならではの技術力で季節に合わせた製品や濃い茶・ほうじ茶・抹茶入り・玄米茶など茶葉の特徴を取り入れ飲用価値を訴求した製品を発売し緑茶飲料のNo.1ブランドに甘んずることなく清涼飲料のNo.1ブランドを目指しより一層のブランド強化に努めてまいります今後も品揃えを強化しお客様にご満足いただける本物のおいしさをご提供してまいります

 

② 営業基盤の強化

1.ルートセールス

 ルートセールスとは、「製品、サービスをお客様へ直接ご提供する販売システム」のことであります。当社はこのシステムを採用することにより、当社とお客様をダイレクトに結びつけ、地域に密着した営業活動を展開しております。

 また、機能性、携帯性に優れたルートセールス担当営業員用のポータブル端末を活用することで、お客様に効率的かつ的確なサービスをご提供できるよう努めております。

 

2.お客様へのサービスの強化

 これまでもルートセールスにより、お客様へのサービスに努めてまいりましたが、確固たる営業基盤を築くため、新しいお客様の開拓に努めるとともに、既存のお客様への訪問の強化を行っております。また、お客様のご不満を聞き、お客様にご満足していただける製品開発や魅力的な売り場づくりなど、総合的なご提案をルートセールスにより行っております。

 

③ 総コストの削減

1.委託生産方式

 飲料製品におきましては、「ファブレス(fabless 工場を持たない)」方式により、設備投資リスクの軽減を図り、市場環境の変化に迅速に対応できる体制にしております。

 また、全国を5つの地域に分けて生産管理を行う5ブロック生産体制を敷くことにより、迅速な製品供給を行うとともに、物流の効率化も可能となっております。

 

 

2.原材料調達力の強化

 当社は、緑茶のトップメーカーとして国内荒茶生産量の約4分の1を取扱い、長年にわたり生産者との信頼関係を築き上げた結果、高品質の原料茶を安定的に確保できる極めて強力な原料調達力を持っております。また、これまでに蓄積したノウハウと高い製造技術により、高品質の飲料用原料茶を自社製造で調達することができる飲料メーカーであります。国内では就農者の高齢化と後継者不足のため、就農人口、茶園面積の減少が進んでおります。そこで当社は、日本農業の課題解決と、今後も需要増加が見込まれる緑茶飲料用を中心とした原料の安定調達の両立を目指して1976年より茶産地育成事業を行っております。各地の茶農家から茶葉を全量買い取りする“契約栽培”と、耕作放棄地などを大規模な茶園に造成して茶葉を生産する“新産地事業”とで茶産地をサポートしています。新産地事業では、九州5県に加え静岡県及び埼玉県にて、苗木の選定から茶園づくり、そしてその茶園を機械化、IT化により低コストで管理できる栽培及び荒茶加工ノウハウを、当社から農家に対し提供することで、生産性と環境保全を両立した茶園経営を推進し、より高品質な原料茶の安定調達を目指すとともに、耕作放棄地の活用及び生産農家の後継者育成ならびに雇用の創出など茶業界と地域の活性化にも寄与しております。

 

④ 海外事業の強化

 連結子会社であるITO EN(North America)INC.が米国における緑茶市場の創造と開拓を進めるため、全米のナチュラルフードマーケットや、ナショナルチェーン店等に対し営業活動を行い、本物の緑茶を米国に普及させると同時に、「ITO EN」ブランドの確立を図っております。ティーバッグ製品ITO EN「MATCHA GREEN TEA」につきましては、これまで米国市場には無かった高品質の緑茶ティーバッグとして、お客様に大変なご好評をいただくとともに、緑茶市場の拡大に大きく貢献しており、今後も強化してまいります。また、中国、東南アジア、豪州につきましても、引き続き販売強化を進めてまいります。

 

⑤ サステナビリティ経営の推進

 当社グループは、「お客様第一主義」の経営理念に基づき、サステナビリティ経営の推進と実践により、環境・社会課題の解決と企業価値向上の両立(共有価値の創造:CSV)を目指すため、「伊藤園グループサステナビリティ基本方針」を策定しました。また、新・中長期経営計画の策定に伴い、気候変動、健康志向の高まり、サプライチェーンの変化などの外部環境の変化を踏まえ取り組むべき7つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定しました。持続可能な成長と企業価値向上のため、この7つのマテリアリティ(「食生活と健康への貢献」「持続可能な国内農業への貢献」「環境」「地域社会・コミュニティとのつながりの深化」「持続可能なサプライチェーンへの貢献」「多様な人財と全員活躍の推進」「コーポレート・ガバナンス」)を経営戦略に据え、新・中長期経営計画と相互に連動させながら取り組みを進めてまいります。

 環境課題につきましては、「伊藤園グループ環境方針」のもと「伊藤園グループ中長期環境目標」を設定し、目標達成に向けて積極的に取り組むとともに、各環境課題への対応を推進しています。また、環境活動の持続的な改善に有効な手段として、ISO14001に沿った環境マネジメントシステムを導入し、全社全部署において認証を取得しております。

 気候変動への取り組みにつきましては、CO排出量削減目標を見直し、「2050年度カーボンニュートラル」を目標として掲げ、2030年度CO排出量削減目標(基準年2018年度比)Scope1、2を総量50%削減、Scope3を総量20%削減に引き上げました。また、TCFD提言に基づき、気候変動に関わるリスクと機会が事業活動に与える影響について、2020年度は主力原料である緑茶を対象にシナリオ分析を実施しました。2021年度は、シナリオ分析の対象を当社事業のバリューチェーン全体に拡大し、「1.5℃/2℃」、「4℃」シナリオにおけるリスクと機会を分析し、当社事業への影響評価と対応策の検討を進めました。また、2022年4月にTCFD提言への賛同を表明しています。詳細につきましては、統合レポート及び当社コーポレートサイトで開示しております。

 水資源への取り組みにつきましては、自社飲料工場及び協力工場における自社専用ラインの、2030年度水使用量原単位16%削減(2018年度比)を目標に、製造工程における循環水の利用促進等による取水量の削減に取り組んでいます。また、協力工場と協働し水源地の保全活動にも取り組んでいます。

 プラスチック問題につきましては、「伊藤園グループプラスチックに関する方針」に基づき、ペットボトルの軽量化などに加え、2030年度までにペットボトルに使用するリサイクル材等(生物由来素材を含む)の割合100%を目標に掲げ、資源循環に取り組んでおります。

 生物多様性につきましては、「伊藤園グループ生物多様性保護の基本的方針」に基づき、茶産地育成事業における減農薬や有機栽培の技術開発による環境保全型農業に取り組んでいます。また、茶産地育成事業においては、農業における食品安全・環境保全・労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の認証制度「GAP認証(※)」を取得しています。今後もこれらを継続するとともに、生物多様性リスクの調査にも取り組んでまいります。

 (※)食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられるGAP認証制度には、世界基準である「グローバルGAP」のほか、日本GAP協会が展開する「JGAP」「ASIAGAP」などがあり、ここではこれら3つの認証のうちいずれかを取得した農園を指します。

 

 人権などの社会課題につきましては、2020年4月に国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた「伊藤園グループ人権方針」を策定し、公表しております。

 当社グループの経営理念「お客様第一主義」のもと、社会に求められる企業としてESGへの取り組みを強化し、「世界のティーカンパニー」の実現に向けて、新たな食文化の創造と生活提案を行い、社会課題解決と企業価値の両立を目指すCSV(共有価値創造)経営を実践してまいります。

 

<ESG評価>

 当社グループのESGへの取り組みが評価され、2021年6月に世界の代表的なESG指数である「FTSE4Good Index Series」及び、日本企業の株式で構成される「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に初選定されました。また、サプライヤーとの協働による環境負荷低減と資源循環への取り組みが評価され、2022年2月には、国際的な環境非営利団体であるCDPの「サプライヤー・エンゲージメント評価」において、最高評価である「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に初選定されました。

 

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