課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社は、「不動産とテクノロジーの融合が未来のマーケットを切り開く」というミッションを掲げ、「不動産投資マーケットの個人への開放」と「間接金融から直接金融への移行による市場の安定化」を使命としております。

当社は、役職員の不動産業界における豊富な経験とネットワークによる高い情報収集力と、不動産鑑定士や不動産証券化協会認定マスター等の不動産関連資格保有者の高度な物件評価能力を活かし、東京23区を中心とした中規模オフィスビル等への投資を中心に、不動産アセットマネジメント事業、不動産仲介・コンサルティング事業に加え、不動産特化型クラウドファンディング事業を提供しております。

今後も、不動産及び不動産金融に関するプロフェッショナル集団としての知見とITを駆使した事業戦略の差別化により、収益を最大化していきたいと考えております。

(2) 経営戦略等

(コーポレートファンディング事業)

① 安定的な経営基盤の確立

東京23区の潜在的価値の高い中規模オフィスビルへの投資に注力して保有不動産残高を拡大し、賃貸から得られる利益のみで会社固定費を賄える事業規模への到達し、より革新的なビジネスを遂行する基礎を構築することを目指します。また、新規取得と合わせて適度に物件を入れ替えることで、投資ノウハウを社内に蓄積し、案件ごとの利益率の向上を図るとともに、事業成長促進を意識した投資ポートフォリオの運用を行ってまいります。

② 財務基盤の強化

コーポレートファンディング事業の拡大による収益の確保と安定化を図るために、市場環境に応じて効率的な財務戦略を立案し実行しております。また、保有物件を担保とした借入金の返済期間を原則10年以上の長期を中心としたファイナンスにより、安定した財務基盤を構築いたします。

(アセットマネジメント事業)

日本の、特に東京の不動産市場は、世界的には魅力的なマーケットであるため、今後も投資ニーズがある海外投資家及び旺盛な需要をもつ国内投資家の開拓を推進し、投資家に対するアセットマネジメント事業の展開を強化し、年間数百億円程度の受託資産残高(AUM)の積み上げを目指してまいります。

(クラウドファンディング事業)

クラウドファンディング事業のプラットフォームであるOwnersBookは、IT技術によって投資募集業務を効率化し、一口1万円からの不動産投資を可能にしました。貸付型商品の大型化や多様化、エクイティ型商品の安定供給を目指すことで、従来機関投資家等が独占していた不動産投資領域を、少額から始められる新たな不動産投資市場として個人投資家に開放していくとともに、従来、資金供給源が主に金融機関に限定されていた不動産投資市場に個人マネーを引き入れることで同市場の安定化へ貢献してまいります。

(その他事業)

社内に蓄積された不動産ビジネスのノウハウをコンサルティング・仲介事業に活かすべく、継続的に案件の獲得と収益の確保を目指してまいります。

(3) 経営環境

当社が営む事業は多くの競合が存在し、また市場環境の動向を受けやすくなっております。当社は、経験豊富かつ専門性の高い役職員を擁し、その知見とネットワークを活用するとともに、スピーディーな意思決定により競争優位を築いております。また、当社役職員はリーマンショックを経験したメンバーが多く、景気動向を踏まえた事業展開が可能であり、かつ、不動産に紐づく銀行借入の期間については原則10年以上とすることで貸し剥がしやリファイナンスのリスクを低減し、市場環境の変化に対応しております。

アセットマネジメント事業も多くの競合がいるものの、日本の不動産に興味をもつ海外投資家は多く、また最近は国内投資家の需要も旺盛であり、その市場規模も大きいことから、着実に受託資産(AUM)を積上げ、規模の拡大を図ってまいります。

クラウドファンディング事業は近年、同種事業を営む会社が増加傾向にあり、市場規模も拡大が見込まれます。当社は他の事業会社に先んじて、国内で初めての不動産特化型クラウドファンディングを開始しており、その知見が蓄積されていること、上場会社としての信用力、不動産の専門家が提供するサービスであることなどの競争優位を構築しております。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題

① 安定的な経営基盤確立のためのコーポレートファンディング事業における仕入体制の強化・維持

当社は、安定的な経営基盤の確立という経営戦略を実行するために不動産の取得が必須であります。当社の主な投資領域である東京23区は限られた範囲であることから、他社との競争の中でいかに早く情報収集を行い、スピーディーに対応できるかが重要と考えております。当社には、豊富な経験を有する役職員が在籍しており、デューデリジェンスから取得の意思決定までを迅速に行うことで対応しており、また、引き続き、優秀な人材の獲得や業務にかかる知識と経験、投資ノウハウの蓄積等によって、仕入体制の強化に努めてまいります。

 

② アセットマネジメント事業の強化

日本の不動産に興味を持っている海外投資家は多数いるものの、海外向けに不動産情報の提供サービスを行っているのは主に大手不動産会社であり、各社の窓口も比較的少ないことから需要に供給が追いついていない状況であります。当社は、海外の投資ファンドや外資系アセットマネジメント会社に勤務経験を有するメンバーを多数擁しており、海外投資家への不動産関連サービスに強みがあるため、今後も引き続き海外投資家や、海外投資家とのネットワークを多く抱える会社を取引先として、収益獲得を目指してまいります。また、昨今の新型コロナウイルス感染症の動向も踏まえ、旺盛な需要をもつ国内投資家へのアプローチも強化しております。

 

③ 不動産投資市場の個人への開放を目的としたクラウドファンディング事業の拡大

クラウドファンディング事業の対処すべき課題としては、案件組成数の増加、及び投資家会員数と投資金額の拡大が挙げられます。これらの課題を解決するため、営業人員を増加するとともにSFA(セールス・フォース・オートメーション)等の導入といったDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、案件組成数の増加を図っております。また、案件組成数の増加と合わせて、システムの増強、サイトリニューアル等を通じUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)の向上に努めることで、投資家会員の投資金額拡大を企図しております。さらに、投資家会員数の拡大を図るため、メディアへの露出やセミナーの実施を通じて、クラウドファンディング市場と当社のクラウドファンディング事業のプラットフォームである『OwnersBook』の認知度の向上に力を入れております。

クラウドファンディング事業は、新しいビジネスモデルであることから、法制度や経済環境など時勢に合ったビジネスモデルを創出・採用することが重要と考えております。そのため、同事業のビジネスモデルについては、定期的に検討を重ねております。また、競合他社が引き起こした不祥事により、クラウドファンディング業界全体のイメージが悪化した場合や、当社グループにとって不利益な法規制の改正がなされることにより、クラウドファンディング事業の推進に影響が生じる可能性があります。かかる課題を解決すべく、業界不祥事等に関しては広報・取締役会とも協議しながら、法改正については社内において内容をキャッチアップしながら、対応を図ってまいります。

 

④ 人材の確保・育成について

当社グループの持続的な発展のためには、優秀な人材の確保が必要であります。このため、優秀な人材の採用を強化することはもちろんのこと、優秀な人材の流出を防ぐために、風通しの良い社風の醸成、より個々人が成長できる職場環境の提供等に努めてまいります。また、DE&Iの推進に向け社内規則・規程を改定し、従業員等がしなやかに活躍できる環境を整えることに努めております。

※ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン。人材の「多様性(ダイバーシティ)」と「包括性(インクルージョン)」を表す「D&I」に、「公平性(エクイティ)」を付加した概念のことをいいます。

⑤ 内部管理体制の強化について

当社グループは、これからも急速な事業成長を見込んでおり、求められる機能も拡大しております。今後も、各部門でコア人材となりうる高い専門性や豊富な経験を有している人材の採用活動を継続するとともに、さらなる内部管理体制の強化を図ることで、コーポレート・ガバナンスの充実により一層努めてまいります。

⑥ 新型コロナウイルス感染症による影響について

現況において、新型コロナウイルス感染症が当社事業に与える影響は軽微であり、業績への影響もほとんどなく、経営戦略の見直しは不要であると判断しております。

しかしながら、同感染症の流行が今後継続することにより、世界経済又は日本経済が大幅に景気後退する可能性があります。当社グループは、資金の借入期間の長期化を図っており、日頃より現預金と保有不動産ポートフォリオの適切なマネジメントを行っておりますが、コロナ関連融資の動向により金融機関からの融資も不安定になる可能性があることから、金融機関との情報交換を密にしております。また、同感染症の流行により、当社主力市場である東京における働き方の変革がオフィス需要の構造的な変化を引き起こす可能性があり、引き続きマーケットの状況を注視してまいります。

一方、同感染症の沈静化を見据え、世界的に金融緩和政策が継続している状況において、国内外の資金が東京の不動産マーケットに向かっている動きもあり、当社としては当社の強みである物件の目利きとスピーディーな意思決定を活かして優良な物件の獲得にも注力し、将来の経営基盤の確立を進めてまいります。

 

⑦ SDGsへの貢献

SDGsへの貢献に取り組むため、当社グループでは、2021年より「SDGs推進委員会」を設置し、役職員が意欲的に働き成長できる環境の整備を行いつつ、グループ全体として取り組むべき社会課題を明確にして、「SDGs達成への取り組み」ページを開設し公表しております。また、SDGsへの取組の一環として、当社が保有する一定の不動産については、電力源を再生エネルギー由来の電源に切り替え、CO2排出量の削減に努めているほか、公正で差別のない社内規則を整備するなど、事業単位でもサステナビリティ推進に向けて具体的に取り組みを進めております。

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、売上高と税金等調整前当期純利益を重要な経営指標ととらえ、これらを中長期的に成長させていくことを基本的な考え方としております。また、持続的な事業拡大を測るために、アセットマネジメント事業については受託資産残高(AUM)を、クラウドファンディング事業については投資案件への年間投資金額を、それぞれの事業の重要な経営指標としております。

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