課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の主な課題は、以下のとおりであります。なお、当社グループは、従来「RENOSY(リノシー)」事業を主要な事業としており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント別の記載を省略しておりましたが、翌連結会計年度より報告セグメントを「RENOSYマーケットプレイス事業」及び「ITANDI事業」の2つの報告セグメントに変更することとしましたので、以下、当該報告セグメント別にて記載いたします。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を生む世界のトップ企業を創る。」という経営理念のもと、不動産総合ブランド「RENOSY(リノシー)」の開発・運営を行っております。当社では、“現状”や“常識”にとらわれることなく「ユーザーが未だ体験したことがない、世界を変えるようなサービスを常に創造し、ユーザーに新しい価値を提供する」ことを目指して企業活動を行っております。

 

(2)経営環境及び経営戦略

① 企業構造及び主要サービス

 当社グループは、当社及び子会社10社で構成され、不動産総合ブランド「RENOSY(リノシー)」を中心として、投資用不動産の売買、中古不動産の売買仲介、高級賃貸用不動産の賃貸仲介、マンション賃貸管理、サブリース、リフォーム及びリノベーション、家賃債務保証事業、不動産仲介会社及び管理会社向け業務支援システムの開発・運営、投資不動産用ローン申込プラットフォーム等自社プロダクトの開発・運営・外販、不動産の各領域及び中華圏向けの不動産プラットフォーム「神居秒算」の開発・運営を主たる業務としており、(賃貸、売買、リノベーション、投資等)を網羅し、ワンストップでのサービス提供を行っております。

 

② 競争優位性

 不動産業界の多くの会社は、賃貸、売買、リノベーション、投資の不動産の各領域ごとに分業制を取っていますが、当社グループではこれらの領域全てを網羅し、ワンストップでのサービス提供を行っております。これにより、お客様のユーザー体験の向上が図られております。

 また、RENOSYマーケットプレイス事業における不動産売買、仲介等においては物件検索から申込・契約、アフターフォローまで、ITANDI BBにおける不動産賃貸仲介会社向けSaaSの提供においては物件検索から内見予約、入居申込・電子契約、更新退去まで、オンラインでの一気通貫でのサービス・顧客体験の提供が可能となっております。

 さらに、当社グループはRENOSYマーケットプレイス事業、ITANDI事業におけるBtoC取引で培った様々な事業ノウハウを賃貸仲介会社、賃貸管理会社、売買仲介会社及び投資用不動産販売会社にSaaSで提供(BtoB取引)することが可能となっております。

 

③ 事業を行う市場の状況

あらゆるものがネットワークに繋がり、それを通じて収集・蓄積されるデータがリアルタイムで解析され、結果としてこれまでに無かった新しいサービスやビジネスが出現する時代が本格到来しつつある中、政府は2016年に発表した「名目GDP600兆円に向けた成長戦略」において、IoT・AI・ビッグデータ等の活用を通じた第4次産業革命の実現で30兆円の付加価値創出を目指すことを示しています。

そのような大きな時代の転換点にあって、2020年のわが国の住宅市場は、81.2万戸の新規住宅着工戸数(国土交通省「2021年版 住宅着工統計」)に対して中古住宅の成約件数は18.7万戸(不動産流通推進センター「2021不動産業統計集」)と、新築に大きく偏った市場構造となっています。一方で、少子高齢化、人口飽和、核家族化、所得の伸び悩み、都市部への人口集中等、様々な社会構造的要因により、中古住宅の有効活用が果たす役割は今後より一層大きくなることが期待されています。

また、住宅の購入層に目を向けると、住宅取得適齢期とされる30~40代は、これまでITリテラシーが限定的な層が主な構成員でしたが、今後はいわゆるデジタルネイティブ世代が占める割合が一気に上昇することが予見されています。

換言すれば、IT活用が最も遅れている市場のひとつと言われる不動産市場において、今後はIT活用が必須となる、あるいはIT活用が競争上の大きな優位性を持ち得る状況となることが予想されます。

 

また、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、①店舗来店不要のセルフ内見、②非対面での賃貸、売買契約、③ワンストップでシームレスな顧客・購入体験、④クラウドファンディングによる世界の不動産の手軽な購入、⑤業界のペーパーレス化へのシフト等、テクノロジーによる変革が起きてこなかった不動産業界が大きく変わろうとしています。このような事業環境はいずれも当社グループの事業を加速するための大きなチャンスととらえております。

なお、新型コロナウイルスの感染拡大については、主に前連結会計年度において金融機関の稼働減に伴う販売活動の停滞、管理会社の営業停滞に伴う仲介可能物件数減少及び仲介業界の冷え込みによる電子申込利用減等の影響が出ておりましたが、非対面販売体制の早期確立、自社メディアの強化及び賃貸業界のDXシフト等、長期的な業界変化を見据えたDX推進に注力しており、当連結会計年度において、これらの影響はほぼ発生しておりません。

一方、中華圏の投資家向け不動産プラットフォーム事業におきましては、国境を越えた取引の困難化に伴う販売活動の停滞が継続しており、翌連結会計年度も一定程度影響が残るものの、2023年度以降徐々に回復見込みであり、当社グループの業績への影響は限定的であると考えております。

 

④ 経営戦略

 当社グループの中期目標及びそれに対する強化ポイントは以下の通りです。

事業

3年後のありたい姿

3年間の強化ポイント

全社共通

■不動産投資、賃貸、管理をデジタルで牽引し、マーケットプレイスでの確固たる地位を確立

■日本で成功したマーケットプレイスのグローバル展開をより進め、海外展開の基盤を構築

・DX、グローバル人材の確保

・不動産取引データのインフラ構築

・ブロックチェーンNFT不動産

・コンプライアンス、ガバナンス

RENOSYマーケットプレイス

■不動産取引のオンライン化を進め、マーケットリーダーになる

・売却、購入共にマーケットを牽引する立場に

・商品ラインナップを拡充し、顧客のニーズに応え、信頼を獲得

・サードパーティ含めてマーケットシェア20%以上獲得

・ファイナンス

・商品ラインナップの拡充

・売却と購入の顧客獲得

・オンライン・オフライン施策

ITANDI

■リアルタイムな物件情報が流通するマーケットプレイスを確立し、全ての不動産会社が毎日必ず利用しているインフラとなる

■不動産会社のコアな業務システムとして最も信頼され、電子申込以外においてもSaaSの各領域でシェアNo.1を獲得

・DX人材の採用・育成

・SaaSサービスラインナップの拡充

・toB/toCのユーザー獲得

・ネットワーク性の構築

その他(グローバル)

■グローバルにおいての認知度向上

■複数ヶ国に事業基盤があり、クロスボーダーでの不動産取引を展開

・グローバルでの事業構築

・マーケットプレイスのユーザー獲得

・オンライン・オフライン施策

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 不動産取引のオンライン化への取り組み

 不動産業界はオンライン化が最も遅れている業界の一つであり、今後は「非対面化」や「電子書面化」が加速することが想定されています。特に電子書面化においては、今後法改正により規制緩和が予定されており、係る規制緩和をビジネスの機会にしていく必要があると考えております。当社グループは従前から積極的に不動産取引のオンライン化におけるプロダクトの開発・製品化を行っており、今後も競争力の強化を図っていく方針であります。

 

② 安定的収益の確保を実現するSaaS型ビジネスの強化

 現在、当社グループは不動産投資事業(いわゆるiBuyer事業)からの収益が大きく、当ビジネスは急拡大を続けておりますが、中期的には安定的な収益の確保が可能となるSaaS(Software as a Service)型ビジネスの強化が必要であると考えております。当社グループにおいては、イタンジ株式会社が主に賃貸領域におけるSaaS型ビジネスを、株式会社RENOSY Xが売買領域におけるSaaS型ビジネスをBtoBビジネスとして手掛けており、SaaS型ビジネスの拡大によりグループ全体の収益の安定性の確保を図っていく方針であります。

 

③ 「RENOSY(リノシー)マーケットプレイス」事業の強化

(a)マーケットシェアの拡大

 当社グループは、従前より知名度の向上等によるマーケットシェアの拡大に努めてまいりましたが、ネットワーク効果による参入障壁を強固にする観点から、更なるマーケットシェアの拡大が必要と考えております。RENOSY会員の獲得を成長ドライバーとし、買い手、売り手を増やすことで取引件数を向上させ、取引件数増加による認知度向上によりRENOSY会員を獲得するという循環を加速したいと考えております。また、商品ラインナップを拡充することによる更なる取引量の拡大も図ってまいります。

 

(b)マージンの改善

 他事業者の中古マンション再販事業への参入による競争激化等により、マージンが低下傾向となっており、早急な改善が必要な状況となっております。当社グループから見た売り手に対するDXによるオーナーからの直接調達の強化、マージンの高い商品ラインナップの拡充、RENOSY会員への付帯サービスの提供等に加え、シェア拡大によるネットワーク効果により、マージンの向上を目指してまいります。

 

(c)サブスクリプション事業におけるDX

 当社グループの株式会社RENOSY ASSET MANAGEMENTは不動産投資運用の資産管理を”賃貸管理”にとどまらない、独自の長期的・安定的、豊富なサービスサインナップを備え、月額のサブスクリプションでサービスを提供しております。事業の更なるDXを通じて、オーナー、入居者、原状回復・リノベーション業者等、当事業に関連する全ての人々の顧客体験及び生産性の向上を目指してまいります。

 

(d)サードパーティーサービスの拡大

 当社グループは、RENOSYマーケットプレイスで獲得した会員に対して、更なる顧客接点の拡大が可能と考えており、顧客の老後資金、資産形成、相続といったお金にまつわる不安や不便に対して、DXを活用して様々な商品ラインナップの提供を開始しております。今後、RENOSY会員に対し、顧客体験、業務生産性の向上に努め、マーケットシェアの拡大を図ってまいります。

 

(e)海外事業の展開

 世界各国の買い手、売り手をマーケットプレイスでマッチングし、クロスボーダーでの不動産取引を実現できるようになる、そのような世界の実現に向けて、テクノロジーとリアルの融合により、今までにない顧客体験の創造を追求するとともに、海外事業にも積極的にチャレンジしていく方針であります。

 

④ ITANDI事業の強化

(a)管理会社向けSaaSの新規顧客獲得及びARPU(1ユーザー当りの売上金額)向上

 管理会社と仲介会社、入居希望者間のやり取りの自動化を実現するITANDI BBでは賃貸物件のお部屋探し業務の後工程(物件空き確認、内見予約、入居申込)で提供システムの機能強化を行うことで、独自のポジションを築くとともに、大手管理会社の生産性向上のニーズを捉えることにより、着実に掲載物件数も増加し、多くの仲介会社が閲覧するマーケットプレイスへ成長しております。今後は、中小企業もターゲットに空室率対策のニーズに応えていくことで、ロングテール市場における新規顧客獲得を目指してまいります。また、電子申込利用数No.1の申込受付くんの顧客基盤を活用し、電子契約くん他1社あたりサービス利用数を増やし、ARPUの向上を目指してまいります。

 

(b)仲介会社向けSaaSの新規顧客獲得

 賃貸仲介会社向けCRMツールであるノマドクラウドについて機能強化により、リアルタイムな物件情報が集まる業者間サイトであるITANDI BBとの連携強化を進めております。これにより、仲介会社の電話確認コストを減らし、エンドユーザーへの速やかなレスポンスが可能となる等、顧客体験の向上を図り、競合他社と差別化することにより新規顧客の拡大を図ってまいります。

 

 

(c)OHEYAGOのコンテンツ強化

 セルフ内見型お部屋探しサイトOHEYAGOは、テクノロジーを用いたスマートなお部屋探し体験により、高い顧客満足度を獲得しております。OHEYAGOリリース以降の物件増加とサイト改善によりSEOが強化され、利用者数も増加しております。今後も高い顧客満足度を活かしながら、ITANDI BBの拡販を通じて継続的に掲載物件数を増加させることにより、集客力の強化を図ってまいります。

 

⑤ 新規事業の創出及びM&A

 既存の主な事業であるRENOSYマーケットプレイス事業及びITANDI事業は、コア事業として更に強化を行っていく一方で、新たな収益の柱として、新規事業の創出も必要となってくると認識しております。

 不動産領域においては、当社の既存事業とのシナジーが期待できる事業への進出を積極的に検討しております。また、不動産に隣接する新たな領域(建設、金融、保険)への進出についても検討を進めていく方針であります。M&Aの実施、社内システムの外部販売や、不動産に隣接する領域に対してのテクノロジーでの進出などにより、新規事業へのチャレンジを進めていく方針であります。

 

⑥ 内部管理体制の強化

 当社グループの更なる事業の拡大、継続的な成長のためには、内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスの強化が重要な課題であると認識しております。当社は、2020年1月28日から監査等委員会設置会社へ移行しましたが、今後も監査等委員と内部監査の連携、定期的な内部監査の実施、経営陣や従業員に対する研修の実施等を通じて、内部管理体制の一層の強化に取り組んでいく方針であります。

 

⑦ 人材の採用、育成

 当社グループは今後の事業の拡大のために優秀な人材の採用、育成が重要な課題であると認識しております。そのため、新卒者の定期的な採用や経験者の中途採用を積極的に実施しております。また、新たに入社した社員に対しては研修を実施する等により人材の育成に取り組んでおります。優秀なエンジニアやセールスの採用は競争が激しくなっておりますが、既存社員の紹介等も積極的に活用することで、当社の成長の根幹を支える人材の採用強化を図っています。今後も積極的な採用を計画しており、社員への研修・教育制度を整備することで、優秀な人材の採用、育成に取り組んでいく方針であります。

 

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