業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の概要

当連結会計年度における世界経済は、景気に持ち直しの動きが見られるものの、新型コロナウイルス感染症が再拡大するなか、原材料価格の高騰、世界的な物流混乱とそれに伴う資材供給の制約等、引き続き厳しい状況にありました。加えて、ウクライナ情勢による経済への影響も懸念され、先行きの不透明感は一層高まることとなりました。

わが国経済においては、設備投資や生産、輸出に回復の兆しが見えましたが、繰り返される変異株の出現により感染症収束は見通せず、本格的な経済の回復には至りませんでした。原材料価格の上昇に伴う企業収益や個人消費への影響が景気の下振れリスクとして顕在化し、依然として厳しい状況で推移しました。

このような状況の中、当社グループは、生産面においては、長期化する新型コロナウイルス感染拡大やミャンマーでの政変を受け、工場の一時的な操業制限や稼働停止によって工場稼働率の低下を余儀なくされました。厳しい状況が続きましたが、当社グループの強みの一つである幅広い生産拠点網を活かし、生産量の維持に努めました。コロナ禍や政変等の地政学的リスクから、生産地振替のニーズが高まっており、アイテムや納期、コスト等に合わせて、当社グループの生産拠点網から最適な選択肢を提供し、顧客ニーズに応えるよう注力いたしました。

受注及び販売については、個人消費の低迷からアパレル製品の需要低迷が続きましたが、一部アイテムの需要に回復が見られました。しかしながら、一部の工場での操業制限や国際物流混乱への対応から、その需要を十分な受注につなげられない時期もありました。

 

当社グループが展開する国ごとの生産状況は以下のとおりであります。

(中国)

2021年12月に宿遷茉織華服装有限公司を100%連結子会社(孫会社)化し、中国で増加する縫製需要の取り込みと工場運営の効率化を図る施策を推し進めました。2022年3月からのロックダウン以前は感染拡大が抑えられ、工場の操業度が維持されたことにより、ベトナムをはじめとするコロナ感染拡大で操業制限があった拠点からの振替生産に貢献しました。
(バングラデシュ)

生産体制強化のために子会社化したISHWARDI MATSUOKA BANGLADESH. LTD.第1期工場での生産も軌道に乗りました。既存工場も含めコロナ感染拡大の影響を最小限にとどめて操業を継続できたほか、積極的に設備導入を進め生産性向上に努めました。
(ベトナム)

AN NAM MATSUOKA GARMENT CO., LTD第2期工場が2022年1月に生産を開始し、ベトナムにおける生産基盤の強化に寄与しました。しかしながら、その他の工場も含め、コロナ禍による交代勤務や操業停止といった制約と正常化が繰り返されることで、操業度の低下を余儀なくされ、想定していた売上高の増加には至りませんでした。
(ミャンマー)

新型コロナウイルス感染拡大に加え、2021年2月に発生したクーデターによる政情不安の影響で従業員数が減少し、それに伴い生産量が低下しました。工場独自で積極的に営業活動を進める等、新たな受注の獲得に取り組みましたが、従業員数が回復し、本格的に生産量が復調するのは2023年3月期以降となる見込みです。
(インドネシア)
 PT. MATSUOKA INDUSTRIES INDONESIAにおいて、積極的な営業活動により、生産アイテムの見直しや集約を進める等、生産性向上のための対策が実を結びつつあります。本格的な業績の伸長には至りませんでしたが、継続的な取り組みにより、収益改善の兆しが見えました。

 

以上の結果、当連結会計年度における売上高は510億56百万円前期比5.3%減)、営業利益は1億81百万円同96.0%減)となりました。また、経常利益は為替差益等の計上により10億37百万円同74.5%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は5億59百万円同79.8%減)となりました。

 

総資産は、前連結会計年度末に比べて88億77百万円増加し、518億79百万円となりました。

負債は、前連結会計年度末に比べて60億1百万円増加し、224億35百万円となり、純資産は前連結会計年度末に比べて28億75百万円増加し、294億44百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フロー8億21百万円の増加、投資活動によるキャッシュ・フロー28億11百万円の減少、財務活動によるキャッシュ・フロー31億49百万円の増加となった結果、前連結会計年度末に比べて23億54百万円増加し、152億5百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは8億21百万円の増加前期は66億48百万円の増加)となりました。主な要因としては、法人税等の支払額14億94百万円、棚卸資産の増加9億60百万円等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上11億39百万円、減価償却費の計上12億88百万円、売上債権の減少5億63百万円、仕入債務の増加4億60百万円等があったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは28億11百万円の減少前期は3億41百万円の減少)となりました。主な要因としては、固定資産の売却による収入1億82百万円等があったものの、有形固定資産の取得による支出25億22百万円等があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは31億49百万円の増加前期は23億47百万円の減少)となりました。主な要因としては、長期借入金の返済による減少11億82百万円、配当金の支払による減少3億91百万円等があったものの、長期借入れによる収入28億13百万円、短期借入金の純増額19億39百万円等があったことによるものです。

 

 

③生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当社グループは、アパレルOEM事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)

金額(百万円)

前期比(%)

アパレルOEM事業

47,977

108.0

合計

47,977

108.0

 

(注) 金額は、製造原価によっております。

 

b.受注実績

当社グループは、アパレルOEM事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

アパレルOEM事業

57,890

107.7

21,223

147.5

合計

57,890

107.7

21,223

147.5

 

(注) 当連結会計年度において受注残高が著しく増加しております。主な理由は、新型コロナ感染拡大によって減少

     していたアパレル製品の需要が、一部のアイテムで回復基調になったこと等によるものであります。

 

c.販売実績

生産国別の販売実績は次のとおりであります。

国名

当連結会計年度

(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)

販売高(百万円)

前期比(%)

中国

25,357

82.8

バングラデシュ

14,199

131.1

ベトナム

7,930

102.2

ミャンマー

1,982

63.5

インドネシア

1,586

100.1

その他

合計

51,056

94.7

 

(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

 至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

東レインターナショナル株式会社

11,029

20.5

7,388

14.5

Toray Industries(H.K.)Ltd.

9,298

17.2

11,721

23.0

迅消(中国)商貿有限公司

8,248

16.2

株式会社ユニクロ

6,192

11.5

6,091

11.9

厚生労働省

5,948

11.0

 

2.迅消(中国)商貿有限公司の前連結会計年度における販売実績、及び厚生労働省の当連結会計年度における販売実績は、総販売実績に占める割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度も新型コロナウイルス感染症拡大が続き、一部のアイテムで需要の回復が見られたものの、全体としてアパレル製品の需要は低迷いたしました。また新型コロナウイルス感染症拡大によって、現地政府の指示による工場の操業制限や停止、国際物流の停滞等が発生し生産でも影響を受けました。

売上高につきましては、一部アパレル製品の需要回復等により既存アイテムの売上高が増加しましたが、前連結会計年度にあった日本政府からの緊急要請による布製マスクの売上高の剥落による影響が大きく、 前連結会計年度に比べて28億72百万円減少510億56百万円前期比5.3%減)となりました。

生産国別の売上高では、前連結会計年度に一時期、現地政府からの指示で工場の操業停止を余儀なくされていたバングラデシュでの生産が、当連結会計年度では比較的順調に推移し、売上高が増加しました。一方、布製マスクの生産終了や2021年2月に発生したクーデターの影響で中国やミャンマーでの生産がそれぞれ減少いたしました。

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度の売上原価は前連結会計年度に操業度の維持に貢献していた布製マスクの生産の剥落、国際物流の混乱への対応や円安による工場コスト増加等により、前連結会計年度に比べて12億45百万円増加462億84百万円同2.8%増となりました。粗利率も売上原価の増加の他、現地政府からの指示による工場の操業制限や停止等で生産性が低下し、前連結会計年度16.5%から当連結会計年度では9.3%へと7.2ポイント低下しました。この結果、売上総利益は47億71百万円同46.3%減)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、嘉興徳永紡織品有限公司の工場移転費用等の計上により、前連結会計年度に比べて2億64百万円増加45億90百万円同6.1%増)となりました。この結果、営業利益は1億81百万円同96.0%減)となりました。

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

当連結会計年度の営業外収益は、為替レートが円安に推移したことにより為替差益5億50百万円を計上し、 前連結会計年度に比べて6億38百万円増加 10億4百万円 となりました。連結会計年度の営業外費用は、前連結会計年度に計上した持分法による投資損失4億80百万円の剥落等により 前連結会計年度に比べて7億9百万円減少1億48百万円となりました。この結果、経常利益は10億37百万円同74.5%減)となりました。

(特別利益、特別損失及び親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の特別利益は、中国での土地使用権及び建物売却に伴う固定資産売却益1億1百万円の計上があったものの、 前連結会計年度に比べて5億71百万円減少 しております。当連結会計年度の特別損失はなく、前連結会計年度に比べて6億81百万円減少いたしました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は5億59百万円同79.8%減)となりました。

 

 

b.財政状態の分析

(資産)

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて88億77百万円増加し、518億79百万円となりました。 主な要因としては、有形固定資産の増加36億62百万円、現金及び預金の増加27億29百万円、棚卸資産の増加16億84百万円等があったことによるものです。

棚卸資産の増減については、商品及び製品の納期に連動しております。仕掛品や原材料及び貯蔵品の期末金額は毎年変動いたします。

(負債)

当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて60億1百万円増加し、224億35百万円となりました。主な要因としては、一年内返済長期借入金の減少7億81百万円、未払法人税等の減少6億15百万円等があったものの、短期借入金の増加23億11百万円、長期借入金の増加21億10百万円、支払手形及び買掛金の増加19億73百万円等があったことによるものです。

長期借入金の増加については、主に子会社への投資を行うために金融機関より借入をしたものです。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて28億75百万円増加し、294億44百万円となりました。 主な要因としては、配当金の支払3億91百万円等があったものの、為替換算調整勘定の増加26億4百万円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加5億59百万円等があったことによるものです。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容)

内容につきましては本書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」のとおりであります。

 (資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

当社グループの運転資本需要のうち主なものは、原材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

当連結会計年度末において借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は96億10百万円、現金及び現金同等物の残高は152億5百万円となっております。

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による事業活動に支障が生じるような資金繰りの悪化は発生しておりません。

 

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、新型コロナウイルス感染症が当社グループの経営成績等に及ぼす影響については、連結財務諸表作成時点で入手可能な情報に基づき見積りを行っております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

固定資産の減損

 当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、主として会社別にグルーピングを行い、収益性が低下した資産グループについて、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。

 収益性の低下の評価において用いる将来キャッシュ・フローについては、各社及び各工場の事業計画等に基づき見積っていますが、経営環境の変化等により当初見込んでいた利益が得られなかった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失が発生する可能性があります。

 

(3) 経営者の問題認識と今後の方針について

生産地における「つくり場」が減少したことや、国際物流の混乱により、生産地の見直しや代替え地での生産を検討する顧客が増えております。ものづくりが困難な時期だからこそ、顧客の求めるタイミングで良質な製品をお届けできる生産体制の整備が最重要な課題であるとの認識のもと、当社グループでは2022年3月期から引き続き、ベトナム・バングラデシュにおいて新しい生産拠点の建設を推進し、更なる生産能力拡大とサプライチェーンの多元化、強靭化に取り組んでまいります。新工場建設の計画を着実に推進し、第2期での成長再加速を下支えする生産体制の構築を進める所存であります。

新型コロナウイルス感染症の拡大が当社グループに与えるインパクトは依然大きく、世界的な物流の混乱により資材調達が遅延、停滞する等、どの工場でも生産への影響が懸念されます。一方で、各種規制の緩和、解除が進む等、経済活動が正常化に向かう環境も整いつつあり、今後、個人消費の持ち直しやアパレル需要の本格的な回復が期待されます。当社グループでは、それに対応し得る生産能力の拡大と、市場の変化や顧客ニーズを的確にとらえ、柔軟に対応する多元化、強靭化されたサプライチェーンの構築を進めてまいります。

また、当社グループの強みの一つであるグローバルな工場展開をベースに、国・拠点ごとの特性を活かし、アイテムやロット、納期等の顧客ニーズに最適な生産地を提案することにより営業力を強化し、同時に展示会等を通じて新規顧客へもその優位性を訴求してまいります。

素材開発を得意とするグループ子会社においては、これまでに培った生地加工技術や素材特性に関するノウハウを活かし、お客様の製品戦略に沿う潜在的なニーズを引き出し、それに見合った素材を積極的に提案あるいは開発することにより、新領域への製品展開を目指してまいります。

 

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