研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動につきましては、2021年10月にグループテクノロジーセンターを設置し、グループに点在する幅広い領域に跨る技術を横串で管理し、擦合せ統合による新たな価値の創出に取り組んでまいりました。事業成長に向けた投資効率の最大化を目指し、「地域と密着し、脱炭素社会の実現に貢献する環境システム事業領域」、「行政と連携し、社会課題を解決するウェルネス事業領域」を2つの柱として研究開発戦略を策定しております。これまでに培ったコア技術を日々進化させると共に、様々な分野へ応用展開すること、オープンイノベーションによる積極的な技術導入を行うことで、事業の継続的な成長と社会に貢献できる成果の結実に取り組んでまいります。

 

セグメントごとの研究開発活動について、以下に示します。

 

(産業ガス関連事業)

基幹事業である産業ガス事業においては、ガス製造プロセスの高度化とコスト削減、ガスを利用するアプリケーション開発について、成果を積み上げております。

 

・世界最高水準の効率で、都市ガスから水素ガスを発生させる次世代型水素ガス発生装置「VHR」を開発、現在までに5機の運用を開始しております。今後も鉄鋼・半導体などの底堅い水素需要に対して拡販を推進し、省エネによる環境貢献を進めてまいります。

 

・2050年までにCO2排出量実質ゼロ、2030年までに2013年と比べて46%削減するという政府方針に沿って設定した当社グループ目標に沿い、CO2回収・利活用技術の開発に取り組んでおります。当社がこれまで培ってきたガス分離技術ならびにガスアプリケーションを起点に、産・官・学と連携してCO2回収・利用技術の社会実装に向けた研究開発活動を行っております。

 

(ケミカル関連事業)

デジタル化の急速な進展に伴い、データ量の爆発的増大が引き起こされております。これに対応するため、電子材料では、配線の微細化・多層化と高周波化への対応が求められており、ケミカル関連事業においては、半導体製造の前工程から後工程までの幅広い領域で、技術シナジー発現/差別化商品創出に注力、開発を推進しております。

 

・HDD、シリコンウエハなどの精密研磨に使用させるパッド材において、樹脂技術・プロセス技術の高度化・開発期間短縮のためAIも導入し、お客様の研磨精度向上に対する恒常的なご要請にお応えしております。

 

・回路基板用のレジスト材料は、微細配線化・多層化に対応した高機能化が要望されており、当社の合成技術と光重合評価技術により、お客様の光硬化条件を前提とした最適なキノン系光増感剤を積極的に提案しております。

 

・パッケージ基板分野では低誘電特性に優れ、かつ、高耐熱・低熱膨張の特性を有するビスマレイミド系樹脂の開発を進めており、ポリイミドに対しても低誘電性改質ポリイミド用の原料開発を強化しております。いずれも製品ラインアップの拡充とともにお客様へのサンプル提供を開始しております。

 

・さらに、カーボンニュートラル社会でますます重要となる蓄電デバイスについては、リチウムイオン電池高性能化のために電解液添加剤、負極用真球状ハードカーボンの材料開発を推進しております。

 

 

 

(医療関連事業)

医療事業においては、高度化する先端医療に向けた機器製品の開発や、高齢化社会に対応したサービスの開発を推進しております。

 

・遠隔・在宅医療のスタートアップ企業である㈱リモハブを新たにグループ会社化いたしました。病院から遠隔制御による管理・機器調整を行うことで、在宅で患者が安全に適切な心臓リハビリテーションができるオンライン管理型心臓リハビリシステムを開発しております。

 

・当社グループ会社のアエラスバイオ㈱では、歯髄幹細胞を不要歯から採取し、培養、保管する歯髄幹細胞バンクを事業化いたしました。保管された歯髄幹細胞は、将来、歯髄再生治療に使用することができます。バンク事業に賛同いただける歯科医院及び歯髄再生治療を行う歯科医院との提携を拡大し、より多くの方にご活用いただける体制を築いてまいります。並行して、乳歯や2親等以内の親族から採取した幹細胞による治療や象牙質再生の実施に向け、研究開発を進めております。

 

・誤作動等による水損被害を抑制し、配管設備の長寿命化を図る新型の乾式真空スプリンクラーシステムの開発において、日本消防検定協会の型式承認を取得しました。事業譲受した湿式真空システムと併せ、安全性に優れた商品の提供を進めております。

 

(エネルギー関連事業)

2030年までに2013年と比べてCO2を46%削減するという政府方針の実現に向けて、CO2排出量の少ないエネルギー関連技術について、産・官・学との連携を通じて、技術の蓄積、洗練、高度化を推進しております。

 

・沖縄エリアの水素社会構築及び脱炭素、産業振興を一体的に実現する「吉の浦マルチガスタービン発電所を核とした地域水素利活用トータルシステム」の確立を目指し、沖縄電力㈱、㈱日本総合研究所と共同調査を実施しております。本調査を通じて持続可能なエネルギーシステムを構築し、安定供給と地球温暖化対策の両立に取り組み、社会へ貢献してまいります。

 

・小型LNG供給設備である「Vサテライト」をさらに小型化した「マイクロサテライト」を開発いたしました。また、LNGを燃料とする大型トラック向けに省スペースに設置可能な小型LNG充填設備を、三菱商事㈱と共同開発いたしました。お客様のニーズに合わせたLNG供給体制を整え、LNGへの燃料転換を通じてCO2排出量の削減に貢献してまいります。

 

・家畜糞尿などに由来するバイオガスを活用した新たなバイオエネルギーサプライチェーンの構築に取り組んでおります。環境省が推進する「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」の優先テーマとして、バイオガスを用いて液化バイオメタン(LBM)に加工することでLNGの代替燃料として活用する実証に向けた取り組みを開始しております。自治体と連携し、環境負荷の少ない地産地消エネルギー社会の実現に貢献してまいります。

 

 

(農業・食品関連事業)

農作物の保存技術や食品・飲料の品質向上、機能性向上に向けた開発を推進しております。

 

・農業・食品のイノベーションを創出する技術開発を目的として、2018年6月より室蘭工業大学と「包括的連携研究協力等に関する協定」を締結し、農作物の栽培技術に関する研究、栽培支援システムの開発に取り組んでおります。

 

・ロボットやドローンを活用したスマート農業による農業生産性の向上及び品質向上を目的として、2020年12月に東京大学と社会連携研究部門を設置いたしました。国内外の農業生産性を高め、高品質な農産物及び食品の安定的、持続的な供給に貢献してまいります。

 

・当社独自の糖化技術を活用し、オーツ麦のほか様々な原料による植物性ミルクの開発に取組んでおります。ビタミンやミネラル、植物繊維を豊富に含んでいることに加え、動物性ミルクと比較し環境負荷が低いことから、様々な飲食料品の原料としての活用を進めております。

 

(海水関連事業)

「海が由来」をキーワードに海水から製塩を行う塩事業を柱として、多角化により様々な技術開発・事業展開を行っております。

 

・環境事業

水処理用吸着剤「READシリーズ」の拡販、及び海外への展開を図るため、従来の高性能品に加え中性能品を開発し、上市手続きを進めております。また、「ブルーカーボンリサイクル技術の開発」についてNEDOの研究開発委託事業に採択され、産学官協働で発電所や工場などから排出されるCO2の固定化、資源化に向けた新技術開発と実用化を加速しております。

 

・都市インフラ事業

下水道管更生において、従来品より高強度・薄肉化を実現することで施工時間を短縮し、CO2排出量削減を図ったオールライナーHM工法を開発、(公財)日本下水道新技術機構の建設技術審査証明を取得しました。また、マンホール鉄蓋交換工事において施工面積の最小限化、施工時間短縮を可能としたクイックカッター工法が国土交通省運営のNETIS(新技術情報提供システム)に登録されました。

 

・マグネシア事業

半導体封止材に用いられる難燃剤ECOMAG Z-10は好調に推移しておりますが、汎用封止材への展開による拡販を目論み、Z-10よりも安価なPZ-4を開発し、サンプルワークを始めております。

また、今後も半導体製造装置用のセラミックなど、半導体業界に貢献する商品の開発に積極的に取り組んでまいります。

 

 

(その他の事業)

・SiC事業

電源用パワートランジスタに用いるGaN基板に続き、通信用高周波トランジスタに用いるGaN基板(GaN on SIC on Si基盤)の開発にも成功し、実用レベルの高周波特性(6GHzやミリ波:30GHz)が確認できました。現在、パワーデバイス用に加えて、高周波用途でのサンプル生産、種々の客先への評価用サンプル出荷を開始しております。今後、電源用パワーデバイス、5Gなどの通信用高周波デバイスの両方で、事業拡大を目指します。

 

・エアゾール事業

人体用品から家庭用品、塗料、工業・自動車用品まで多種多様なお客様のニーズに対応した研究開発を推進しております。また、化粧品受託業界にも本格参入し、高品質・高付加価値な化粧品の開発にも取り組んでおります。

 

 なお、当連結会計年度の研究開発費用の総額は5,338百万円であり、産業ガス関連事業が331百万円、ケミカル関連事業が1,493百万円、医療関連事業が1,290百万円、エネルギー関連事業が179百万円、農業・食品関連事業が458百万円、物流関連事業が30百万円、海水関連事業が363百万円、その他の事業が1,189百万円であります。

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