業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、金融緩和に伴う金融市況が活況となるなどの好影響が一部で見られたものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的規模の流行は継続しており、変異株の出現等によって繰り返される感染再拡大とそれに伴う世界的な経済活動の停滞のため、景気の先行きは厳しいものとなっております。

医薬品業界におきましては、患者の受診抑制、顧客への訪問自粛等による販売営業活動への影響に加え、移動制限等に伴う、国内出張の自粛、海外渡航の実質的禁止、臨床試験施設の閉鎖により研究開発ならびに事業開発活動への影響が残存し、業績が厳しい企業がある一方で、新型コロナウイルス感染症を標的とした新薬やワクチン開発への取り組みは活況を呈しており、新たなワクチンや治療薬の開発競争も加速しております。

このような業界の動向は、創薬事業を営む当社グループのような創薬ベンチャー企業の事業開発活動におきましても少なからず影響を与えております。

このような環境下において、当社グループは、自社による単独研究、または提携先の企業もしくはアカデミアとの共同研究に基づく医薬品の開発候補化合物(*)の創出活動や研究開発ポートフォリオ(*)の拡充を図る一方、保有する開発候補化合物(*)の導出活動ならびに価値向上のための研究開発を推進してまいりました。

 

当連結会計年度の事業活動につきましては、以下のとおりとなりました。

ヒト用医薬品につきましては、HK inno.N Corporation(韓国、以下「HKイノエン社(韓国)」)が韓国で販売中の胃食道逆流症治療薬K-CAB®(一般名:tegoprazan、以下「tegoprazan」)の売上が前年に引き続き総じて好調に推移いたしました。

第1四半期連結会計期間において在庫調整等の影響がありましたが、第2四半期連結会計期間以降は伸びを拡大し、当社の販売ロイヤルティ収入は大幅に増加いたしました。

tegoprazanのグローバル開発につきましては、中国において、HKイノエン社(韓国)の中国のライセンス先であるShandong Luoxin Pharmaceutical Group Co., Ltd.(中国、以下「Luoxin社(中国)」)が2020年に中国当局に行った新薬承認申請(NDA:New Drug Application)に基づき、中国当局による承認審査が進行中であります。HKイノエン社(韓国)は、tegoprazanの中国での承認取得時期の目標を2022年上半期と見込んでおります。

 

米国及びカナダの2カ国においては、HKイノエン社(韓国)が米国で第Ⅰ相臨床試験を開始したほか、2021年12月、Braintree Laboratories, Inc.(米国、以下「ブレインツリー社(米国)」)との間でサブライセンス契約を締結しました。

アジア諸国においては、モンゴルで承認取得となったほか、フィリピン、タイ、ベトナム、シンガポール及びインドネシアで新薬承認に向けた取り組みがサブライセンス先企業によって進められております。

また、中南米諸国においては、メキシコにおいて医薬品承認審査に携わる機関のひとつである新分子委員会(Comité de Moléculas Nuevas)の審査を通過し、現在は2023年度の承認取得を目指した準備がサブライセンス先企業によって進められております。

このほか、HKイノエン社(韓国)は、2028年にグローバル100カ国に進出するという目標のもと、その他の地域におけるサブライセンス先の探索を進めております。

一方、日本においては、当社とHKイノエン社(韓国)との協力関係の築き方等を含め、早期の上市を目指した臨床開発の実施に向けたあらゆる可能性について検討を行っております。

 

ペット用医薬品の売上も総じて堅調に推移いたしました。

Elanco Animal Health Inc.(米国、以下 「エランコ社(米国)」)に導出した犬の骨関節炎治療薬GALLIPRANT®(一般名:grapiprant)及び犬の食欲不振症の適応を持つcapromorelin(グレリン受容体作動薬、販売名:ENTYCE®)とも売上は堅調に推移しました。また、capromorelinにつきましては、エランコ社(米国)が販売名ELURA®として、慢性腎疾患(CKD:chronic kidney disease)の猫の体重減少を管理する薬として米国で販売を開始いたしました。

 

当社グループが強みとする「イオンチャネル創薬」につきましては、当社グループと旭化成ファーマ株式会社(以下「旭化成ファーマ社」)との共同研究から創出されたP2X7受容体拮抗薬(RQ-00466479/AK1780)、EAファーマ株式会社(以下「EAファーマ社」)との共同研究により創出された化合物、マルホ株式会社(以下「マルホ社」)に導出した選択的ナトリウムチャネル遮断薬、あすか製薬株式会社(以下「あすか製薬社」)との共同研究案件、以上4つのプログラムが着実に進展しております。

新型コロナウイルス感染症の影響によって試験実施に遅れが生じたものの、あらかじめ定めていた成果を達成したことにより、第1四半期連結会計期間において、旭化成ファーマ社及びマルホ社からマイルストン収入を受領いたしました。また、P2X7受容体拮抗薬につきましては、旭化成ファーマ社とEli Lilly & Company(米国、以下「リリー社(米国)」)との間でライセンス契約が締結されたことにより、当社はリリー社(米国)に対して旭化成ファーマ社を通してライセンスすることとなりました。P2X7受容体は、慢性疼痛症状の原因となる神経炎症に関係している分子で、リリー社(米国)が今後のグローバル開発の実施に向けて第Ⅱ相臨床試験の開始に向けた準備を進めております。

あすか製薬社との共同研究は順調に進展し、2021年7月に当社はマイルストン達成に伴う一時金を受領したほか、2021年11月には新たな共同研究契約を締結いたしました。

 

また、第3四半期連結会計期間においては、Xgene Pharmaceutical Co. Ltd.(香港、以下「Xgene社(香港)」)との間で、慢性疼痛治療薬の開発を目的としたTRPM8遮断薬に関するライセンス契約を締結いたしました。当社はXgene社(香港)に対して、日本を除く全世界を対象とした独占的な開発・製造・販売権を供与し、今後はXgene社(香港)が前臨床段階以降の開発を進めることとなります。

このほか、2021年12月には、久光製薬株式会社(以下「久光製薬社」)との間で、慢性疼痛治療薬の開発を目的としたナトリウムチャネル遮断薬(RQ-00350215)に関するライセンス契約を締結いたしました。当社は久光製薬社に対して、全世界を対象とした独占的な開発・製造・販売権を供与し、今後は久光製薬社が、同社が強みを有する経皮吸収型薬剤の開発を目的として前臨床段階以降の試験を進めることとなります。

 

当社連結子会社のテムリック株式会社(以下「テムリック」)がSyros Pharmaceuticals Inc.(米国、以下「シロス社(米国)」)に導出したレチノイン酸受容体α作動薬(タミバロテン/TM-411/SY-1425)につきましては、第1四半期連結会計期間において、RARA陽性未治療高リスクMDS(HR-MDS; higher-risk myelodysplastic syndrome:骨髄異形成症候群)患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(SELECT-MDS-1)が米国で開始されたほか、第3四半期連結会計期間において、ベネトクラクス、アザシチジンとの3剤併用療法の、RARA陽性未治療Unfit AML(Acute Myeloid Leukemia:急性骨髄性白血病)を対象とした第Ⅱ相臨床試験(SELECT-AML-1)が同じく米国で開始されました。これらのマイルストン達成によりテムリックはマイルストン収入を受領しました。

 

開発候補化合物(*)の導出や共同研究に向けた取り組みにつきましては、新型コロナウイルス感染症の影響で、対面での面談の機会が限定される状況は継続しておりますが、オンライン会議等を利用しつつ事業開発活動及び共同研究を着実に進めてまいりました。

産学連携につきましては、2020年10月に締結した産学連携に関する基本協定書に基づき、2021年4月1日付で、岐阜薬科大学との間で共同研究講座(講座名:創薬イノベーション共同研究講座)を設置しました。本共同研究講座は、岐阜薬科大学で初めての共同研究講座設置であります。

一方、当社連結子会社のラクオリア イノベーションズ株式会社につきましては、昨今の経営環境から同社の事業継続は困難と判断し、2021年1月22日付で同社を解散し、4月1日付にて清算結了いたしました。

 

また、2021年3月25日開催の第13期定時株主総会において、株主提案議案が承認可決されたことにより代表取締役の異動を含む新経営体制となり、企業価値向上のために自社シーズの拡充と価値の最大化に重点をおいた施策を進めております。

株式会社東京証券取引所が2022年4月4日に予定している市場区分の見直しに関する対応としましては、新市場区分「グロース市場」を選択し市場選択にかかる手続きを行いました。

 

以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

(A)財政状態

(資 産)

当連結会計年度末における総資産合計は、前連結会計年度末に比べ982百万円増加(前連結会計年度比23.1%増)し、5,234百万円となりました。これは主に、現金及び預金の増加951百万円、売掛金の増加674百万円、有証券の減少405百万円及び投資有価証券の減少149百万円によるものであります。

(負 債)

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ206百万円増加(前連結会計年度比85.8%増)し、446百万円となりました。これは主に、未払金の増加60百万円、未払法人税等の増加59百万円及び未払消費税等の増加37百万円によるものであります。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ776百万円増加(前連結会計年度比19.4%増)し、4,788百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益755百万円の計上によるものであります。

 

以上の結果、自己資本比率は91.3%(前連結会計年度末比2.8ポイント減)となりました。

 

(B)経営成績

事業収益2,776百万円(前期比150.7%増)、営業利益707百万円(前期は、営業損失486百万円)、経常利益863百万円(前期は、経常損失527百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益755百万円(前期は、親会社株主に帰属する当期純損失606百万円)となりました。

また、事業費用の総額は2,068百万円(前期比29.8%増)であり、その内訳は、支払ロイヤルティ304百万円(前期比125.8%増)を事業原価320百万円(前期比132.4%増)に計上した他、研究開発費1,127百万円(前期比20.9%増)、その他の販売費及び一般管理費620百万円(前期比18.6%増)となりました。

なお、当社グループは、単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ179百万円増加(前連結会計年度比8.7%増)し、2,240百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により獲得した資金は、前連結会計年度末に比べ655百万円増加し366百万円(前年同期は、資金の使用289百万円)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益880百万円及び減価償却費141百万円を計上したことのほか、売上債権の増加674百万円による資金の使用によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は、前連結会計年度末に比べ504百万円増加し279百万円(前年同期は、資金の獲得225百万円)となりました。これは主に、有価証券の取得による支出200百万円、投資有価証券の取得による支出200百万円、投資有価証券の売却による収入221百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用した資金は、前連結会計年度末に比べ9百万円増加し16百万円(前連結会計年度比136.2%増)となりました。これは主に、リース債務の返済による支出18百万円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

(A)生産実績

当社グループは研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績は記載しておりません。

(B)受注実績

当社グループは研究開発を主体としており、受注生産を行っておりませんので、受注実績は記載しておりません。

(C)販売実績

当連結会計年度の販売実績は、以下のとおりであります。

 

当連結会計年度

(自 2021年1月1日

  至 2021年12月31日)

前年同期比(%)

事業収益 合計 (千円)

2,776,233

150.7

 

(注)1.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、それぞれ以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年1月1日

  至 2020年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

イ社

530,063

47.9

ロ社

455,370

41.1

 

相手先

当連結会計年度

(自 2021年1月1日

  至 2021年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

A社

609,752

22.0

B社

600,000

21.6

C社

552,089

19.9

D社

415,360

15.0

E社

394,357

14.2

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.当社顧客との各種契約においては秘密保持条項が存在するため、社名の公表は控えさせて頂きます。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(A) 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは、2019年(2019年度)より地母神「ガイア」のような創造力で「グローバル」規模の進化を目指す中期経営計画『Gaia 2021』(2019年12月期~2021年12月期)を推進しておりましたが、2021年3月25日開催された当社の第13期株主総会において、株主提案が承認可決され代表取締役の異動を含む新経営体制に変更となりましたので、2021年6月30日に新経営体制による事業計画を公表いたしました。

当連結会計年度は、自社による単独研究、または提携先の企業もしくはアカデミアとの共同研究に基づく医薬品の開発候補化合物(*)の創出活動や研究開発ポートフォリオ(*)の拡充を図る一方、保有する開発候補化合物(*)の導出活動ならびに価値向上のための研究開発を推進してまいりました。

以上の結果、事業収益2,776百万円(計画比23.6%増)、事業費用2,068百万円(計画比5.3%減)、営業利益707百万円(計画比1,059.0%増)、経常利益863百万円(計画比369.0%増)、親会社に帰属する当期純利益755百万円(計画比539.8%増)となりました。

当連結会計年度を含む3ヶ年の経営成績は、以下のとおりであります。

(単位:百万円)

 

2019年度

2020年度

2021年度

3ヶ年累計

(計画)

(実績)

(計画)

(実績)

(新計画)

(実績)

(計画)

(実績)

事業収益

2,022

1,702

2,129

1,107

2,246

2,776

6,397

5,585

事業費用

1,835

1,718

2,059

1,593

2,184

2,068

6,078

5,379

営業利益又は営業損失(△)

187

△15

70

△486

61

707

318

206

経常利益又は経常損失(△)

195

21

85

△527

184

863

464

357

親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

153

13

△606

118

755

284

154

 

(B) 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

 

(C) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループは研究開発型の創薬企業であり、開発化合物(*)の導出による契約一時金収入、研究開発の進捗に応じたマイルストン収入、医薬品の上市後において医薬品販売高に応じたロイヤルティ収入等の対価を受領することにより収益を得る契約形態を採用しております。しかしながら、依然として開発化合物(*)の導出に伴う契約一時金収入、あるいは開発の進捗に基づくマイルストン収入の割合も大きいことから、導出交渉及び開発の成否が全体の事業収益に大きな影響を与える可能性があります。

詳細は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。

当社グループは、事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び市場から理解を得られる株主価値向上に根ざした明確なEquity storyを持った資金調達戦略の提示と実行を基本方針としております。

資本の財源につきましては、医薬品の上市品目が増えたことにより、長期的かつ安定的なロイヤルティ収入が主要な財源となってきております。

資金の流動性につきましては、当連結会計年度末における流動比率は999.6%となっており、十分な流動性を確保できているものと認識しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

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