業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概況

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 ① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により国内外の経済活動が抑制され、急速に悪化しました。緊急事態宣言の解除後は、各種政策を背景に企業業績の向上や雇用・所得環境の改善がみられ、総じて緩やかな回復基調で推移しておりましたが、オミクロン株の影響によって感染者数が再度増加しており、今後の世界経済の先行きは予断を許さない状況が続いております。医薬品の研究開発の現場では、新型コロナウイルス感染症の患者に対する治療優先のため、世界的に新薬の臨床試験の遅れが生じており、新薬開発に大きな影響が出ています。

 

このような状況下、当社は「未来のがん治療にパワーを与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくこと」をビジョンとし、経営の効率化及び積極的な研究・開発・ライセンス活動を展開いたしました。

特に、がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301) 、新型コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心に研究・開発・ライセンス活動を推進させています。また、核酸系逆転写酵素阻害剤OBP-601(censavudine)においては、Transposon社とのライセンス契約の下、同社の全額費用負担により臨床試験が進められています。

当社活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。

なお、当社は従来「医薬品事業」、「検査事業」の2つを報告セグメントとしておりましたが、当社売上高の99%以上が医薬品事業により構成されており、今後も継続が見込まれることから、当事業年度より業績管理の方法を変更し、「創薬事業」の単一セグメントへ変更いたしました。このためセグメント別の記載を省略しております。

以上の結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当事業年度末の資産合計は、現金及び預金の増加1,386,786千円、売掛金の増加281,549千円、前払費用の減少120,402千円、投資有価証券の減少458千円、長期前払費用の減少46,906千円等により、前事業年度末に比べ1,495,463千円増加し、4,291,876千円となりました。

当事業年度末の負債合計は、短期借入金の増加88,872千円、未払金の減少100,362千円、長期借入金の減少111,104千円等により、前事業年度末に比べ95,202千円減少し、697,884千円となりました。

当事業年度末の純資産合計は、資本金の増加1,602,979千円、資本剰余金の増加1,602,979千円、利益剰余金の減少1,615,439千円等により、前事業年度末に比べ1,590,666千円増加し、3,593,992千円となりました。

 

b.経営成績

当事業年度の経営成績は、売上高642,494千円(前期は売上高314,179千円)、営業損失1,454,554千円(前期は営業損失1,674,652千円)を計上しました。また、営業外収益として受取利息494千円、為替差益37,369千円等を計上し、営業外費用として支払利息4,169千円、譲渡制限付株式報酬償却68,525千円、新株予約権発行費413千円、株式交付費11,652千円等を計上し、経常損失1,500,888千円(前期は経常損失1,723,537千円)になりました。さらに、新興感染症ワクチンの開発を行うPrecision Virologics Inc.の株式の関係会社株式評価損や当社が保有する蛍光顕微鏡などのテロメスキャンに関する固定資産の減損損失などを中心に、特別損失として合計110,825千円を計上した結果、当期純損失1,615,439千円(前期は当期純損失2,095,087千円)を計上しました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物は、3,209,635千円(前期比76.1%増)となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローは次のとおりです

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは1,741,827千円の支出(前期は1,465,199千円の支出)となりました。これは主として、税引前当期純損失1,611,714千円、株式報酬費用208,951千円の計上、関係会社株式評価損90,980千円の計上、減損損失19,845千円の計上、売上債権の増加281,549千円、前払金の増加190,659千円、未払金の減少100,336千円等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは942千円の支出(前期は37,577千円の支出)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出1,437千円、投資有価証券の売却による収入486千円等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは3,091,384千円の収入(前期は242,261千円の収入)となりました。これは主に株式の発行による収入3,085,424千円等によるものです。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

(1) 生産実績

該当事項はありません。

 

(2) 受注実績

該当事項はありません。

 

(3) 販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社は、創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載は省略しております。

 

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

前年同期比(%)

創薬事業(千円)

642,494

204.5

合計(千円)

642,494

204.5

 

(注) 1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2020年1月1日

至 2020年12月31日)

販売高(千円)

割合(%)

ア社

90,831

28.9

イ社

88,297

28.1

 

 

相手先

当事業年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

販売高(千円)

割合(%)

A社

302,707

47.1

B社

287,652

44.8

 

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.当社顧客との各種契約においては秘密保持条項が存在するため、社名の公表は控えさせて頂きます。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行なっておりますが、実際の結果は特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

当社が財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下の通りであります。なお、新型コロナウイルス感染症による今後の影響等を含む仮定に関する情報は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。

 

 a.偶発債務

  当社は、米国の委託製造開発先より、製造過程において生じた逸脱に関する費用負担に対する請求を受けて

おり、現在その内容について協議中であります。当社は外部の専門家に相談した結果、当該費用負担請求に応

じる理由はないと判断しておりますが、今後の推移によっては当社の経営成績に影響を及ぼす可能性がありま

す。

 

なお、当社の財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。

 

 ② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当事業年度の経営成績等の状況については、上記「(1)経営成績等の状況の概況」をご参照ください。

当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、創薬バイオ企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性の高い遺伝子改変ウイルスによるがん治療薬、重症ウイルス感染症治療薬及びがん検査薬などの開発と事業化を推進しています。特に、がんのウイルス療法テロメライシン、次世代テロメライシンOBP-702、がんの早期発見・再発予測を行うテロメスキャンを揃え、がんの発見から治療までのパイプラインを網羅する「がん領域」と、コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症感染症領域」でパイプラインを構成しています。さらに、これまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601は神経難病治療薬として開発をスタートし、「ウイルス創薬企業」という世界でも例を見ないバイオ企業としての成長を目指しています。今後は、各パイプラインの製薬企業へのライセンス活動を推進して商業化を早め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。

 

当事業年度は、新型コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011の前臨床試験および原薬のGMP製造を推進させ、またOBP-601のライセンス先であるTransposon社による神経難病患者を対象とした臨床試験を開始させました。さらに、当社ではテロメライシンの米国での臨床試験を推進させました。一方、テロメライシンの日本・台湾でのライセンス並びに中華圏を除く全世界のオプション契約先であった中外製薬とは双方合意により、2022年10月15日までにライセンス契約を終了させることに合意しました。また、2021年12月にはテロメスキャンの北米でのライセンス先であったLiquid Biotech社とのライセンス契約を、資金調達および開発の遅延を理由として終了しました。

 

当社の経営に影響を与える大きな要因としては、研究開発の進捗度合い、ライセンスに伴う資金獲得、医薬品市場動向、為替動向等が挙げられます。

研究開発については、特に臨床試験では適格な症例を組み入れる事が、その試験を成功させる大きな要因となりますが、そのために症例の組み入れが大きく遅延することがあります。特に、当社はアウトソーシングを中心としているため、その経費が症例の組み入れ延長の分だけ増大するリスクがあります。その為に臨床試験委託会社(CRO)を的確にオペレーション出来るよう人財を育成し、CROとの定例会議を実施し、さらに臨床試験担当医師との情報交換を頻度高く行うなどの努力を最大限行うことを重要視しています。

ライセンス契約に関しては、研究開発の大幅遅滞や失敗、医療行政の変動、競合薬の進展などのリスクに加え、ライセンス契約締結先の経営戦略変更により契約が解消されるリスクなどが挙げられます。これらのリスクを回避・低減するため、ライセンス契約条件をより当社に有利に出来るよう、コンサルタントや弁護士の助言を最大限利用し、より良い契約が完遂できるよう努力していきます。

市場動向については、国内外の大手製薬会社やバイオ企業との熾烈な研究開発競争が今後も展開され、さらに薬事審査のハードルが年々上がってくると予測されることから、当社を取り巻く経営環境は依然として厳しい状況で推移するものと認識しています。

為替動向に関しては、当社の海外における臨床試験や製造などが主に外貨建てで行われているという理由により、経営成績が大きく影響を受けるため、為替変動リスクを最小限に抑える必要があります。今後は外貨建て収入を増加させることで、外貨建て債務に係る為替リスクの低減を図っていきます。

このような中で、当社はグローバル市場におけるリスクへの対応力を高められる人財を育成し、「ウイルス創薬」という新しい業態において名実共に存在感のある企業として成長していくために、収入増大による経営基盤の強化を図り、企業統治を高度化していきます。  

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

a.資金需要

当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、医薬品及び検査薬の研究開発に伴う研究開発費、各種ライセンス契約や戦略的アライアンス契約に伴う特許関連費、一般管理費があります。また、設備・投資資金需要としては、各種機器や戦略的投資に伴う固定資産投資等があります。

 

b.財務政策

当社は事業活動の維持拡大に必要な資金を、ライセンス契約による一時金やマイルストーン収入のみならず、商業化によるロイヤリティー収入を軸とした事業収入によって確保することを第一に考え、内部資金を活用し、必要に応じて資本市場からの資金調達を行っています。また、運転資金及び設備・投資資金は当社において一元管理しています。

「ウイルス創薬」による医薬品や検査薬の研究開発という成果を実現させるまでには、相対的に時間を要する事業を行っているために、資本性の高い長期資金を得ることで、資金特性のバランスを考慮しています。

 

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