業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

 当連結会計年度における日本経済は、感染症の拡大と長期化の影響が強く、企業収益の減少や雇用情勢の悪化など、先行き不透明な状況が続きました。一方で、2021年1月以降主要な都道府県及び都市を中心に断続的に発令・適用されていた緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が9月末で解除され、感染者数が低水準でとどまっていることから、今後の経済活動正常化が期待されております。海外経済においても、ロックダウンや行動制限が再発令される国もありましたが、ワクチン接種の普及を背景に景況感が改善しており、全体として今後の回復が期待されます。

 このような環境のもと、当社グループは感染症に対する3つの基本方針「お客様の安全を守る」「社員の安全を守る」そして「交通インフラサービス企業としての使命を果たす」を掲げ、感染症が事業に与えるリスクを最小化することに努めております。各事業においては、現状の需要に合致するサービス供給及びサービス展開を行うと同時に、事業構造改革を推進することで収益の改善を図っております。
 営業概況といたしましては、国内外の事業ともに、当連結会計年度の初めより度重なる感染症拡大と、それに伴う人の移動の抑制による影響を大きく受けましたが、第4四半期連結会計期間後半におきましては、サービスの稼働は各事業ともに回復傾向となりました。
 これらの結果、当連結会計年度の当社グループ業績は、売上高は2,511億2百万円(前期比6.6%減)、営業損失は80億39百万円(前期営業損失146億98百万円)、経常損失は116億19百万円(前期経常損失151億68百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は116億58百万円(前期親会社株主に帰属する当期純損失466億52百万円)となりました。

 

 報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。

 

①駐車場事業国内

 当連結会計年度の初めより感染症が拡大したことに伴い交通量が減少、2021年1月以降は全国で断続的に緊急事態宣言の発令及びまん延防止等重点措置の適用がなされた影響により、人の移動が抑制されたことから駐車場の稼働は低水準で推移しました。一方で、9月末に緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が解除されてからは人の移動が次第に回復し、駐車場の稼働も回復傾向となりました。
 こうした状況を踏まえ、既存駐車場においては現状の需要と供給を合致させる運用施策を継続して行うと同時に、土地・施設オーナー様のご協力に基づく賃料の減免等、感染症禍における不採算駐車場への対応を行い、新規駐車場においては現状の需要環境でも収益化が可能な駐車場を厳選して開発することにより事業の筋肉質化を図りました。

 この結果、国内におけるタイムズパーキングの運営件数は17,879件(前連結会計年度末比5.5%減)、運営台数は562,077台(同5.1%減)、月極駐車場及び管理受託駐車場を含めた総運営件数は19,362件(同4.9%減)、総運営台数は725,697台(同2.7%減)となり、当事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は1,504億46百万円(前期比3.1%減)、営業利益は213億64百万円(同39.9%増)となりました。

 

②駐車場事業海外

 駐車場事業海外においても感染症拡大により、展開する各国で大きく影響を受けましたが、2021年7月以降は回復傾向となりました。主な展開国の状況につきまして、豪州は当連結会計年度の初めより州やエリアごとにロックダウンや行動制限が散発的に実施され、その後一時的に駐車場の稼働は緩やかな回復基調となったものの、6月後半に複数地域でロックダウンや行動規制が実施されたことから、駐車場の稼働は再び抑制されました。英国においては、当連結会計年度の初めより地域ごとにロックダウンや行動制限が発令されましたが、7月にほぼ全面解除されて以降、駐車場の稼働は緩やかに回復しております。一方、アジア各国につきましては、多くの地域で5月に感染症拡大に伴う規制強化が実施されており、駐車場の稼働は一時的に低下いたしましたが、その後は地域ごとに度合いの幅があるものの、回復傾向となっております。

 

 こうした状況において、特に英国は甚大なる感染症の影響を受けていたことから、4月に英国会社法(Companies Act, 2006)Part 26Aに基づく再建計画を申請いたしました。審理の過程において対案が出されたことで再建計画の早期成立が困難な状況にある一方で、上記に記載のとおり駐車場の稼働は回復傾向にあり、かつ不採算駐車場の解約や契約条件の変更等を通じたコスト構造の再構築に一定の目処をつけることができたことから、2021年12月15日に本申請は取り下げることといたしました。英国以外の各地においても、不採算駐車場の賃料減免や賃料改定交渉を積極的に行うと同時に、オペレーション体制の見直しを通じて管理・メンテナンス費用の削減及び効率化を行いました。また、事業構造改革の一環として、国内におけるタイムズパーキングの特長である「小型・分散・ドミナント化」をベースとした、海外各国の事情に合わせた短期契約駐車場「各国版タイムズパーキング」の開発も推進いたしました。

 また、当社は「タイムズパーキング」のビジネスモデルを海外展開すべく、2006年に韓国においてGS PARK24 CO., LTD.(以下、GS PARK24)を合弁会社として設立し、24時間無人時間貸駐車場の開発・運営を行うことで、韓国の駐車場インフラ整備を担ってまいりました。今後は現地企業のもと成長を目指すことが望ましいと考え、当社が保有するGS PARK24の全株式を、9月に合弁先であるGS Retail社へ譲渡いたしました。なお、第3四半期連結累計期間末時点でのGS PARK24における駐車場運営件数及び台数は、642件、86,567台となっております。
 この結果、海外の駐車場の総運営件数は2,213件(前連結会計年度末比21.9%減)、総運営台数は591,419台(同15.1%減)となり、日本を含む全世界における駐車場の総運営件数は21,575件(同7.0%減)、総運営台数は1,317,116台(同8.7%減)となります。また、当事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は384億98百万円(前期比14.8%減)、営業損失は165億95百万円(前期営業損失144億6百万円)となりました。

※当連結会計年度における海外各国の連結対象期間は2020年10月1日~2021年9月30日となります。

 

③モビリティ事業

 タイムズカー(カーシェアとレンタカーの融合サービス)については、2021年1月から9月にかけて断続的に緊急事態宣言の発令及びまん延防止等重点措置の適用がなされましたが、タイムズカーサービスに対する需要は底堅く、会員数は順調に増加すると同時にサービス利用も堅調であったことから、売上高は期末にかけて回復傾向となりました。
 こうした状況の中、都市部ではタイムズカーの需要が特に強い傾向にあることから、車両配備を都市部に集中させると同時に車両数を増加させることで、1台当たりの稼働を高めながら需要の取り込みを行いました。また、東京都を中心にタイムズカーの営業所を105カ所開設させ、効率的に車両を稼働させるタイムズカー展開を着実に進めました。

 この結果、モビリティ車両台数は52,552台(前連結会計年度末比17.2%増)、会員数は1,725千人(同14.5%増)となり、当事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は668億7百万円(前期比9.1%減)、営業損失は41百万円(前期営業損失25億95百万円)となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は前連結会計年度末に比べて365億26百万円増加し、917億95百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られたキャッシュ・フローは、348億18百万円前連結会計年度末比45億82百万円の減少)となりました。主な内訳といたしましては、減価償却費、減損損失、のれん償却額を加えた税金等調整前当期純利益249億82百万円、たな卸資産の減少額62億25百万円、未払費用の増加額57億3百万円等に対し、法人税等の支払額40億67百万円があったことなどによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動に使用したキャッシュ・フローは、123億49百万円同94億70百万円の支出の減少)となりました。これは、関係会社株式の売却による収入20億40百万円があった一方で、タイムズパーキングへの設備投資やモビリティ車両の取得に伴う有形固定資産の取得による支出124億12百万円、無形固定資産の取得による支出21億74百万円があったことなどによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、131億67百万円の資金の調達(同2億80百万円の調達の増加)となりました。これは主に劣後特約付シンジケートローン等の長期借入れによる収入499億4百万円があった一方で、リース債務の返済による支出143億77百万円、短期借入金の減少額129億94百万円、長期借入金の返済による支出94億21百万円があったことなどによるものです。

 

(受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当社グループは、国内と海外における駐車場事業及びモビリティ事業を行っており、生産実績として表示すべき適当な指標はありません。これにかえて、セグメントの売上高及び事業規模と比較的関連性が強いと認められる国内及び海外における駐車場数・駐車能力(駐車台数)及び営業所数・車両数(台数)を次のとおり示しております。

セグメント

当連結会計年度末

2021年10月31日現在)

前連結会計年度末比増減(%)

駐車場事業国内

 

 

 駐車場数(ヵ所)

17,879

△5.5

 駐車能力(駐車台数)

562,077

△5.1

駐車場事業海外

 

 

 駐車場数(ヵ所)

2,213

△21.9

 駐車能力(駐車台数)

591,419

△15.1

モビリティ事業

 

 

 営業所数(ヵ所)

235

△17.3

 車両数(台数)

52,552

+17.2

 

 

(2) 販売実績

セグメントごとにおける販売実績は以下のとおりであります。

区分

当連結会計年度

(自 2020年11月1日 至 2021年10月31日

前期比増減(%)

駐車場事業国内(百万円)

145,925

△3.0

駐車場事業海外 (百万円)

38,498

△14.8

モビリティ事業(百万円)

66,677

△9.1

合計

251,102

△6.6

 

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 記載の金額には消費税等は含まれておりません。

 

 

(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。また、連結財務諸表の作成にあたっては、固定資産の減損、繰延税金資産の計上等の重要な会計方針に関する見積り及び判断を行っております。これらの見積りは、過去の実績や当該事象の状況を勘案して、合理的と考えられる方法に基づき行い、必要に応じて見直しを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性によって異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

(売上高と営業利益)

当連結会計年度の売上高は前期比178億1百万円減少2,511億2百万円前期比6.6%減)、営業損失は80億39百万円(前期営業損失146億98百万円)となりました。

これは、国内外の事業ともに度重なる感染症拡大に伴う駐車場の稼働の低下や、緊急事態宣言の発令及びまん延防止等重点措置の適用による車両の稼働の低下を主な要因とするものです。売上高及び営業損失の内訳は「(業績等の概要) (1)業績」をご参照ください。

 

(営業外損益と経常利益)

営業外収益は前期比7億73百万円減少し26億67百万円、営業外費用は同23億36百万円増加し62億47百万円となりました。助成金収入が減少し、支払手数料と支払利息が増加しました。

この結果、経常損失は116億19百万円(前期経常損失151億68百万円)となりました。

 

(特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益)

特別利益でGS PARK24 CO.,LTD.の全株式を売却したことによる関係会社株式売却益を計上したこと等により、税金等調整前当期純損失は99億50百万円(前期税金等調整前当期純損失491億92百万円)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は116億58百万円(前期親会社株主に帰属する当期純損失466億52百万円)となりました。

 

(3) 財務状態の分析

(資産)

総資産は、前連結会計年度末比238億52百万円増加して3,196億28百万円となりました。主な増減といたしましては、増加で現金及び預金を含む流動資産が379億22百万円、減少で機械装置及び運搬具を含む有形固定資産が155億24百万円となっております。

 

(負債)

負債合計は、同385億66百万円増加し、3,031億95百万円となりました。主な増減といたしましては、増加で劣後特約付シンジケートローン等による借入金が320億44百万円、未払費用が85億40百万円、未払金が33億56百万円となり、減少でリース債務が89億68百万円となっております。

 

 

(純資産)

純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失の計上による減少116億58百万円、為替換算調整勘定の減少23億74百万円等により、同147億13百万円減少し、164億32百万円となりました。

 

(4) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況は、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

(5) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、事業活動に必要な資金を営業活動によるキャッシュ・フローの他、金融機関からの借入金や新株予約権付社債により調達しておりましたが、感染症拡大の影響により純資産を大きく毀損したため、成長投資の長期性資金の確保をすると同時に財務健全性の維持・向上を目的に2020年12月に500億円の劣後特約付シンジケートローンを実行しております。この資金の運用については、車両やIT投資の資金需要に対して充当してまいります。

 

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