課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2022年3月25日)現在における当社グループの将来に関する見通しおよび計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。

 

①  企業理念 THE SHISEIDO PHILOSOPHY

当社は、1872年に創業し、今年創業150周年を迎えます。その創業当時から「『美と健康』を通じてお客さまのお役に立ち、社会へ貢献する」ことを目指して活動してきました。そして、2019年には、100年先も輝き続け、世界中の多様な人たちから信頼される企業になるべく、新・企業理念THE SHISEIDO PHILOSOPHYを定義しました。国・地域・組織・ブランドを問わず、この企業理念を常によりどころとして、世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指しています。

THE SHISEIDO PHILOSOPHYは、以下で構成されています。

1. 私たちが果たすべき企業使命を定めた OUR MISSION

2. これまでの140年を超える歴史の中で受け継いできた OUR DNA

3. 資生堂全社員がともに仕事を進めるうえで持つべき心構え OUR PRINCIPLES

 

〔THE SHISEIDO PHILOSOPHY〕


〔OUR MISSION〕

BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD

ビューティーイノベーションでよりよい世界を

資生堂は多様化する美の価値観、ニーズをとらえ、
人々に自信と勇気を与え、喜びや幸せをもたらすイノベーションに挑戦します。 

美でこの世界をよりよくするためにイノベーションを

おこし続けていくことが私たちの責任であり、使命です。

 

THE SHISEIDO PHILOSOPHYの詳細については、当社企業情報サイトの「会社案内/企業理念」( https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy/ )をご覧ください。

 

②  中長期経営戦略 「WIN 2023 and Beyond」

当社は、スキンビューティー領域をコア事業とする抜本的な経営改革を通して、2030年までにこの領域における世界No.1の企業になることを目指す中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」を遂行しています。外部環境が急激に変化する中、2021年~2023年の3年間で、収益性とキャッシュ・フロー重視の戦略へと転換し、“スキンビューティーカンパニー”としての盤石な基盤を構築します。

この戦略のもと、2021年は、「変革と次への準備」の期間としてWithコロナへの対応を進めるとともに、困難な決断も先送りすることなく、事業ポートフォリオの再構築を短期間で実行し、2022年以降の再成長に向けた準備を確実に行いました。創業150周年を迎える2022年は「再び成長軌道へ」の年と位置づけ、グローバルブランドの成長促進やDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速・進展に取り組みます。

また、2023年の「完全復活」とそれに続く成長を見据え、3年間にわたり、ブランド・イノベーション・サプライチェーン・DX・人財の強化に向け、積極的な投資を継続していきます。

 


 

③  2022年の重点方針 ~構造改革を経て、再び成長軌道へ~

新型コロナウイルス変異株の発現により、経済の先行きに対する不透明感は継続していますが、当社では、一部の地域を除き、2022年中の市場回復を見込んでいます。こうした中、2022年は以下の取り組みを重点的に実施し、「WIN 2023 and Beyond」で掲げた2023年における売上高1兆円程度・営業利益率15%達成に向け、市場の変化にも迅速・的確に対応できる柔軟性を備えた経営体制を整えていきます。

 

[2022年の重点方針]

●  スキンビューティーブランド育成、M&A機会探索

●  欧米収益性改革の続行

●  日本・中国事業 下期の本格回復を目指す

●  中国・トラベルリテール 成長基盤を維持

●  全社DX加速

●  構造改革継続、収益力・生産性の拡大

●  長期取り組み強化(ESG、サプライネットワーク、R&D、“FOCUS”、人財)

※最先端のテクノロジーを活用して会社のシステムをグローバルに統合し、データの標準化、業務プロセスの最適化を目指す全社的なプロジェクト

 

上記取り組みにより、2022年12月期の連結売上高は、事業譲渡影響などを除く実質14%成長の1兆1,000億円を見込んでいます。利益については、売上増に伴う差益増の一方、市場の回復を見据えた戦略的投資を織り込み、営業利益600億円を見込んでおりますが、今後の市場回復によるプレミアムスキンビューティーブランドを中心にした売上のさらなる拡大、原価率改善、マーケティング投資効率の向上を通じて、さらなる増益をめざします。また、経常利益635億円、親会社株主に帰属する当期純利益400億円を見込んでいます。

年間の主要な為替レートを、1米ドル=114円、1ユーロ=131円、1中国元=17.5円として計画を策定しています。

なお、2021年11月10日に発表したとおり、当社は2022年第1四半期より、従来の日本基準に替えて国際財務報告基準(IFRS)を任意適用します。同基準による2022年12月期の連結業績予想につきましては、2022年第1四半期の決算発表の際に公表予定です。

 

スキンビューティーブランドの拡充

2021年は、当社が強みを持つスキンビューティー領域をコア事業と位置づけ、スキンケアを中心としたスキンビューティーブランドを核とする事業ポートフォリオに再構築しました。2022年は、従来のスキンケアに加え、肌だけでなく体の内面を整え、健やかで美しい肌を目指すインナービューティーや、美容機器と皮膚科学技術を組み合わせたエイジングケア、そして自然や環境に配慮したサステナブル・クリーンといった領域も強化することにより、スキンビューティーブランドをさらに拡充していきます。

具体的には、「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「イプサ」「エリクシール」「dプログラム」といった既存のコアスキンケアブランド(敏感肌含む)やサンケアブランド「アネッサ」の強化、メンズカテゴリーの拡大に加え、メイクアップブランド「マキアージュ」においても、スキンケア効果を兼ね備えた美容液リキッドファンデ―ションを発売するなど、スキンビューティーを充実させていきます。

また、サステナブル・クリーンなブランド「バウム」や「Drunk Elephant」の成長を促進し、今後の伸長が期待できるサステナビリティに配慮するお客さまの需要にも積極的に対応していきます。

その他、1996年の誕生以来進化を続ける「ザ・コラーゲン」ブランドに加え、新しいインジェスティブル(摂取型)ビューティーブランド「INRYU(インリュー)」を、日本では2022年1月より発売し、中国でも発売を予定するなど、インナービューティー領域も展開していきます。

これらの取り組みにより、当社グループ全体の売上高に占めるスキンビューティーブランドの構成比を、2022年には75%超まで高めていきます。

※インジェスティブル(摂取型):経口で体内に摂取することを意味する。

 

日本事業における今後の戦略

当社は2022年後半に日本市場の回復を見込んでおり、これを視野に入れながら、成長性の回復と収益性改善に取り組んでいきます。

成長性回復に向けては、プレステージブランドの価値を強化するとともに、プレミアムブランドでは革新的な商品開発により魅力的な商品を提供していきます。加えて、DXの推進により進化したデジタルデータ・ツールを活用し、お客さま一人ひとりの価値観に寄り添ったパーソナルな接客を強化していきます。これらの取り組みにより、愛用者基盤の盤石化を加速します。

収益性の改善に向けては、スキンビューティーカテゴリーの構成比だけでなく、その中の重点ブランドの構成比を高めることにより、プロダクトミックスの好転に伴う原価率の改善を目指します。同時に、Eコマース比率も引き上げて収益性の拡大を図ります。また、マーケティング投資の管理・分析を徹底して投資リターンを最大化するとともに、原価および物流費の低減、組織の効率化に向けたオフィス再編、人的生産性を高めていくことにより、収益性を改善していきます。

 

中国事業における今後の戦略

中国では、新型コロナウイルス感染症の変異株拡大によるロックダウンなど短期的な影響はあるものの、中長期的にはEコマースとプレステージがけん引し成長が継続すると見込んでいます。こうした中、当社は、既存のブランドに対する投資を最優先し、主力ブランドが、プロダクトラインの拡充やカテゴリーの拡大を通じて、新たな成長領域の構築を図ることで成長を目指します。一方、2021年に新たに導入したブランドについては、そのユニークなブランドポジションを最大限発揮できるオペレーション構築に取り組みます。また、新規のオンライン・オフラインともにチャネル拡大を図り、お客さまとの接点を新たに創出していきます。

一方、成長とともに持続的な収益性を高めるために、自社データベースを拡充し、よりお客さま一人ひとりとつながるパーソナライズされたコミュニケーションを実現させます。中国最大のソーシャルメディア事業者であるTencent(テンセント)グループとの提携により、ソーシャルコマース売上の拡大を目指します。売上増に伴う差益増のほか、物流センターの統合やサンプルの現地生産化、間接購買の一元化などによりコスト構造を改善し、固定費率を低減していきます。

※ソーシャルメディア(SNS)とEコマース(EC)を掛け合わせて商品の販売促進を行う。

 

DXの加速

DXの推進については、2021年の資生堂インタラクティブビューティー株式会社の設立や、テクノロジー企業との戦略的パートナーシップの締結を通じ、デジタルを活用した事業モデルへの転換に向け、様々な取り組みを実行していきます。

具体的には、オンライン肌診断プログラムを多言語対応としグローバル展開することにより、幅広い消費者とエンゲージメントを高め、多様な肌データを蓄積していきます。また、先端のデジタルテクノロジーを積極的に活用し、さらに充実したデジタルマーケティングを実現させていきます。「NARS」では、臨場感あふれる世界観と革新的なデジタル技術を融合させ、ゲームの世界や仮想空間でブランドコミュニティを共創し、次世代の参加型マーケティングを展開しています。

これらの取り組みにより、2021年には34%に達したグローバルでのEコマース売上比率を、さらに引き上げていきます。

 

サプライチェーンの確立:供給能力と生産性の向上

今後のさらなる成長性を確保するためには、中長期的に安定した供給体制の確立が不可欠です。当社では、中長期経営戦略で掲げている“高収益構造への転換”、“スキンビューティーへ注力”、“成長基盤の再構築”を実現するため、2019年の那須工場、2020年の大阪茨木工場の稼働に続き、2022年の福岡久留米工場の稼働により、さらに自社供給体制の強化と生産性の向上を進めます。

大阪茨木工場は、西日本物流センターを併設しており、プレステージスキンケア製品の生産と、物流を担うサプライチェーン拠点として始動しました。生産から輸送にかかる作業効率を上げ、輸送時にかかるコストや環境負荷を軽減していきます。

また、福岡久留米工場は、次世代型工場として、IoTなどの最先端の技術や最新の設備を活用し、既存工場より少ない要員で高い生産性を実現するとともに、周囲の自然と調和し、環境に配慮した工場を目指します。

市場の回復に伴う需要の拡大に迅速かつ的確に対応できるよう、生産・供給体制を整えていきます。

 


  福岡久留米工場(2022年5月稼働予定)                  デジタル化による生産性向上

 

 

環境・社会・ガバナンス(ESG)

長期的な成長を実現するために、当社では環境、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)、コーポレートガバナンスの強化を重要視し、これらを経営戦略の一部として統合していきます。

環境面※1においては、環境関連の中期目標達成に向け、再生可能エネルギーへの切替えやエネルギー効率改善などによるCO2排出量の削減、水や廃棄物量の削減、サステナブルパッケージへの切替えなどに継続的に取り組んでいきます。

社会面においては、D&I、特に女性活躍をさらに推し進めており、国内外の当社グループ全体の女性管理職比率は58%※2に達しています。一方、日本国内の女性管理職比率は37%※2に留まっており、これを長期的に50%にまで高めていきます。また、「30% Club Japan」への参加や「資生堂女性研究者サイエンスグラント」の実施などにより、社外の女性活躍を後押しする活動も継続していきます。

コーポレートガバナンスにおいても、取締役会における社外役員や女性役員の比率を高め、実効性と透明性を向上させていきます。

※1 詳細は、16ページ「6. 社会価値創造に向けた取り組み」を参照ください。

※2 2022年2月時点(速報値)

 

人財、組織ケイパビリティ:グローバルリーダーシップチーム

当社は、グローバルビューティーカンパニーの実現のためには、強いリーダーシップチームと、高い組織ケイパビリティが重要と考えています。

当社は、2022年1月より執行役員制度を廃止し、エグゼクティブオフィサー体制へ完全移行しました。エグゼクティブオフィサーは、当社グループの全社経営の視点から必要となる重要な職責や役割に対して、CxO(シーエックスオー)として領域ごとに責任を持つポジションです。ダイバーシティ経営を加速させるため、ジェンダー・国籍・年齢などの枠にとらわれることなく、これまで以上に適材適所を実現し、多様な人財を社内外問わずグローバルで登用していきます。

 

 

④  全社員参加型の未来プロジェクト Project Phoenix 始動

当社のコア事業である化粧品事業のグローバルな復活・成長を目指して、2021年11月に「Project Phoenix」を立ち上げました。「Project Phoenix」は、化粧品事業に関連する社員一人ひとりが、成長と発展のための大胆なアイディアを出すボトムアップ型のプロジェクトです。各地域で、リージョンCEOのリーダーシップの下、各職場で多様性に富んだ意見やアイディアを収集していきます。

「WIN 2023 and Beyond」で掲げた”2030年スキンビューティーカンパニー世界 No.1”を確実に達成するために、ブランド、商品開発、イノベーション、サステナビリティ、デジタル、サプライチェーン、人財・組織など多岐にわたる視点から、社員が自発的に課題を洗い出し、改善策を模索・提案していきます。こうして集まった提案を経営戦略に反映させ、全社がさらなる連帯感をもって”世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー”を目指していきます。

 


 

⑤ 株主還元と創業150周年記念配当

株主への利益還元については、直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」 を目指しています。フリー・キャッシュ・フローの状況を重視し、自己資本配当率(DOE)2.5%以上を目安とした長期安定的かつ継続的な還元拡充を実現します。

また、創業150周年を記念して、記念配当を実施する方針です。これは、株主を含むステークホルダーからの長期にわたる支援に対し感謝するとともに、当社の未来の発展への決意を込めて実施するものです。

なお、2022年12月期配当予想(創業150周年記念配当)に関しては、当社企業情報サイトに掲載している以下のニュースリリースを参照ください。

https://bit.ly/362vDoq (短縮URL)


 

⑥ 社会価値創造に向けた取り組み

サステナビリティの推進体制

資生堂では、ブランド・地域事業を含む、全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。

2020年にサステナビリティ関連業務における迅速な意思決定と全社的実行を確実に遂行するため、サステナビリティ関連課題について専門的に審議し決議するSustainability Committeeを設置しました。グループ全体のサステナビリティに関する戦略や方針、TCFD開示や人権対応アクションなど具体的活動計画に関する意思決定や、中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。社長 CEOを含む、経営戦略、R&D、サプライネットワーク、広報、およびブランドホルダーなど各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論しています。

2021年は、従来のSustainability Committee開催に加えて、サステナビリティ課題を経営へ取り込むべく、関係するエグゼクティブオフィサーや主要組織の実務推進責任者と実行における対応を議論・決定する会議を追加実施し、全社での推進を強化しました。また、業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合は「Global Strategy Committee」や取締役会にも諮り、審議しています。

2022年1月には、サステナビリティ活動を強化・拡充し、経営戦略・事業戦略と一体的に運用・推進していくため、組織改正を行いました。具体的には、経営革新本部内に全社のサステナビリティに関する戦略・推進機能を担う「サステナビリティ戦略推進部」を設置し、社内外に向けて当社のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)アクションを加速するために「D&I戦略推進部」を新設しました。

 

〔環境関連の中期目標〕

項目

目標値

達成時期

CO₂排出量

カーボンニュートラル※1

2026年

水 

水消費量 △40% (対2014年)※2

2026年

廃棄物

埋め立てゼロ※3 

2022年

容器包装

サステナブルな容器100%※4

2025年

パーム油

サステナブルなパーム油 100% (RSPO MB方式以上)

2026年

サステナブルな紙 100% (認証紙・再生紙など)※5

2023年

 

※1 資生堂全事業所、Scope1+2 ※2 資生堂全事業所、売上高原単位 ※3 自社工場のみ 

※4 プラスチック製容器について ※5 製品における

 

TCFD提言に基づく気候変動リスクと評価のシナリオ分析

資生堂は、気候変動問題が事業成長や社会の持続性に与える影響の重大性を踏まえ、2019年4月にTCFDへの賛同を表明し、TCFDフレームワークに沿った情報開示に着手しました。2020年はリスクと機会の定性分析の結果を開示、2021年は定量的に分析する手法を開発し、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会、および気候変動にともなう自然環境の変化によって引き起こされる物理的リスク・機会について、1.5℃シナリオと4℃シナリオそれぞれにおいて、分析結果と主な対応アクションを開示しました。

 

シナリオ分析の内容

1.5/2℃および4℃の気温上昇を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示したRCP(代表濃度経路)とSSP(共通社会経済経路)シナリオに沿ってリスクと機会について分析を行いました。リスクについては、1.5/2℃シナリオでは、脱炭素の移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による要因を分析し、積極的な気候変動対策がとられない4℃シナリオにおいては、気温上昇に伴う洪水の発生や気象条件など急性/慢性的な変化による物理的影響について分析を実施。その中で、特に影響の大きな炭素税、市場や消費者動向、洪水、水不足などに伴うリスク要因について、2030年時点での財務影響を定量化しました。

一方、機会に関しては、1.5/2℃シナリオでは、消費者の環境意識の高まりに伴い、サステナビリティに対応したブランドや製品への支持が高まることが予想され、4℃シナリオでは、気温上昇に対応した製品の販売機会が拡大することが予想されます。

 

今後は、事業と連携して対応アクションを策定し、経営・事業計画に反映させることでバリューチェーンを通じたリスクの緩和に努めるとともに、機会創出につながる取り組みについて、順次開示していきます。同時に、イノベーションによる新たなソリューションの開発により、サステナブルな製品を提供していきます。

 

環境対応パッケージ開発促進

CO₂排出量や海洋プラスチックごみ問題などは、グローバルで喫緊に解決すべき環境課題であり、当社はサステナブルな容器の開発などで対応を強化しています。当社はサーキュラー・エコノミーの考えに賛同し、2025年までに100%サステナブルな容器※1とすることを目標として定めました。環境負荷軽減に向けて、容器包装に関するポリシー5Rs(Respect(リスペクト)・Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)・Replace(リプレース))に基づき、製品のライフサイクル全体を通じた取り組みを推進します。

2021年においても、環境に配慮した様々な容器包装の取り組みを実施しました。例えば、プラスチック使用量の削減だけでなく、本体容器の繰り返し使用が促進できる「つめかえ・つけかえ」容器のグローバル展開、容器を再利用するプラットフォームLoop※2での製品の発売、リサイクルに適した単一素材容器、石油由来に比べCO₂排出量の少ないサトウキビ由来ポリエチレンを使った容器、そして株式会社カネカとの共同による優れた生分解性が期待される素材「カネカ生分解性ポリマーGreen Planet™※3」の化粧品容器への応用を実現しています。また、製品だけでなく、日用品/化粧品4社協働※4にて販促物に使用するプラスチックを紙製に変更する取り組みも実施しています。

加えて、小売店や競合他社と協働し、お客さまから使用後の空き容器を回収・リサイクルし、資源として再活用しています。

このように、当社の独自の技術や社外とのコラボレーションを通じたイノベーションにより、製品の使いやすさや美しさとともに、環境課題解決も追求していきます。

※1 プラスチック製容器について

※2 Loop: 米国に本社を持つテラサイクル社が開発した容器を回収・洗浄し再利用する循環型ショッピングプラットフォーム。米国、フランスなどではすでにスタートし、2021年に日本においてEコマースで販売

※3「カネカ生分解性ポリマー Green Planet™」: 株式会社カネカが独自に開発した100%植物由来のポリマーであり、海中や土中など幅広い環境下で優れた生分解性が期待される素材

※4   資生堂ジャパン株式会社、株式会社ファイントゥデイ資生堂、ユニ・チャーム株式会社、ライオン株式会社

 

 

メイクを通じた社会貢献活動、「メセナアワード 2021」で優秀賞を受賞

当社のがん患者さんを支援する活動「LAVENDER RING MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」が、公益社団法人 企業メセナ協議会が主催する「メセナアワード 2021」において、優秀賞を受賞しました。2017年より開始した本プロジェクトは、化粧のちからで、がん患者さんが、「がんに支配されることなく自分らしく、生きていく」という意思を表現することを支援する活動です。今後も社会課題に対して真摯に向き合い、経営資源および当社が本業を通じて培った知見や経験を活かしながら、企業や団体、病院、学校などとの連携を一層強化することで、同様のお悩みを持った方々への支援を展開していきます。

 

創業150年の歴史を未来へとつなげるヘリテージ教育の強化

創業から150年にわたって積み重ねてきた、資生堂のヘリテージは私たちの強みです。この強みとナレッジを未来のイノベーションの糧とするため、社員に向けたヘリテージ教育を強化しています。

日本国内の営業担当・ビューティーコンサルタントに向けて、「BEYOND OUR HISTORY」と題した講演を実施し、創業から近代の歴史とその背景にある先人の想いをエピソードとともに伝え、リアルとオンラインを組み合わせて2,000人以上の社員に直接語りかけました。あわせて講演内容を映像コンテンツとして制作し、より多くの社員が資生堂の創業からの想いを学べるよう配信しました。グローバルな取り組みとしては、資生堂企業資料館が収集保存してきた資料および情報を全世界の社員が閲覧できるデータベース、「SHISEIDO ARCHIVES」をイントラネット上に整備しました。現在は約13万件のアーカイブが公開され、今後さらに閲覧可能なデータを増やすとともに機能を強化し、社員によるアーカイブ活用を加速させていきます。価値開発に携わるブランドホルダーやR&D部門に向けては、資生堂のDNAのひとつである「アート&サイエンス」を体感するための特別プログラムを構築し、最先端のアートや資生堂の美意識がこめられたヘリテージと向き合うことを通じて、ユニークで新しい価値を生み出すための感性を刺激しています。

こうした活動により、一人ひとりの社員が資生堂のヘリテージにインスパイアされ、他社にはない独自の価値を創造していくことを目指しています。

 

資生堂健康宣言および資生堂ビジョン・ゼロ宣言(安全宣言)

私たちは、本業であるビューティービジネスそのもので社会課題の解決や人々が幸せになるサステナブルな社会を実現することが、資生堂の使命であると考えています。それを実現するため、「資生堂健康宣言」および「資生堂ビジョン・ゼロ宣言(安全宣言)」を策定しました。

 

サステナビリティ関連銘柄・インデックスへの選定

当社は、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する令和2年度「なでしこ銘柄」に選定されました。「なでしこ銘柄」とは、女性活躍推進に優れた上場企業を中長期の企業価値向上を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することにより、そうした企業に対する投資家の関心を一層高め、各社の取り組みを加速化していくことを狙いとするものです。

加えて、当社は、世界の代表的なサステナビリティ指標である「Dow Jones Sustainability Index(DJSI)World」および、アジア・太平洋地域を対象とした「DJSI Asia Pacific」の構成銘柄に選定されました。同インデックスは、企業の「経済・環境・社会」の3つの側面から企業活動を分析・評価し、持続可能性に優れた企業を選定するもので、企業の社会的責任に関心を寄せる投資家の意思決定にとって、重要な指標の一つとなっています。

当社は、今後も、ジェンダーや環境など様々な社会課題に、本業であるビューティービジネスを通して取り組むことにより企業価値をさらに向上させるとともに、「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現を目指していきます。

 

当社はこれらの活動を通じて、“世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー”を目指し、100年先も輝き続ける企業となれるよう取り組みを継続してまいります。

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