課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針及び経営戦略

2013年度から2017年度に実施した第5次連結中期経営計画は「成長の基礎を固め、盤石な経営基盤を確立する5年」と位置づけ、石油精製・販売事業の収益力回復を筆頭に、供給部門の合理化等の構造改善を進めてまいりました。

2018年度より開始した第6次連結中期経営計画では、『Oil & New 石油のすべてを。次の「エネルギー」を。』をスローガンに、前連結中期経営計画で収益基盤の中心であった石油精製・販売を強化しながら、風力発電事業や石油化学事業への成長投資を進め、脱化石燃料の動きが加速することを見据えて事業ポートフォリオの拡充を目指しております。

石油製品の需要減少が想定される中、当社グループが持続的に成長するためには将来に向けた新しい事業の柱を作ることが必要不可欠です。第6次連結中期経営計画では「再投資可能な収益力の確保」「将来に向けた成長ドライバーの強化」「財務体質の健全化」「グループ経営基盤の強化」を基本方針として、石油開発事業や石油事業で収益力を強化しつつ、次の成長向けた事業ポートフォリオの拡充を図ってまいります。

 

<第6次連結中期経営計画の基本方針>

 

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下の図は、当社グループの長期的な事業ポートフォリオの移行イメージを示しております。脱化石燃料の動きを睨みながらも、石油関連事業の競争力を強化することで一定規模の収益力を維持しつつ、積極的な投資により成長が見込まれる再生可能エネルギー事業や石油化学事業を新たな柱にしてまいります。

 

<事業ポートフォリオ移行のイメージ>

 

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<経営目標の達成状況>

 第6次連結中期経営計画では「財務体質の健全化」を最重要課題の一つとして認識し、“稼ぐ力”と“財務体質”を強化し、原油価格下落等の環境変化に耐えうる自己資本の厚みを目指しております。中計施策の着実な実行により、当社グループの収益力は大きく改善いたしました。

 当連結会計年度の在庫影響を除く経常利益は1,608億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,389億円と、過去最高益となりました。フリー・キャッシュ・フローは2018年度から2021年度までの累計で1,572億円、自己資本は4,562億円、自己資本比率は23.5%、ネットD/Eレシオは1.04倍、ROEは35.6%と連結中期経営計画の財務目標を1年前倒しにて達成しております。

 

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※ 2020年3月31日実行のハイブリッドローン300億円について、50%を資本とみなして算出

 

(注)各指標は以下の計算式によっております。

自己資本比率:自己資本/純資産

ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現金及び預金)/純資産

有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を払っている借入金、コマーシャル・ペーパー、社債、転換社債型新株予約権付社債を対象としております。

ROE:当期純利益/自己資本(期首期末平均)

 

 なお、以下のとおり、第6次連結中期経営計画の重点施策は、着実に進捗しております。

 

《各事業セグメントの重点施策》

(石油事業)

石油事業においては、2019年度より開始したキグナス石油㈱への燃料油供給により、当社グループは生産数量が販売数量を下回るショートポジションを確立し、製油所の高稼働を維持しております。

また、2020年1月から国際海事機関(IMO)の船舶燃料向け硫黄分規制が強化され、全海域で高硫黄C重油が使えなくなりました。当社グループでは、規制の導入よりも前倒しでコスモ石油㈱堺製油所の重質油熱分解装置(コーカー)を増強し、高硫黄C重油を生産しない体制を構築しました。また、千葉製油所及び四日市製油所において、流動接触分解装置から生産されるスラリー油に含まれる不純物の除去設備を設置し、収益油種であるIMO向け燃料油へ生産構成をシフトさせました。

カーライフ事業につきましては、世界的な脱炭素社会へのシフトをはじめ持続可能な社会の実現に向け、電気自動車(以下、EV)の普及が加速するとの長期的な環境認識に基づき、EVを軸とした新たなモビリティサービスの創出を進めております。㈱e-Mobility Powerとの連携により、当社系列サービスステーションへのEV用急速充電器の設置及び関連サービスの開発を推進しております。また、EVと再生可能エネルギー等のパッケージ商品「コスモ・ゼロカボソリューション」の販売を開始しております。電力小売りでは、家庭用電力「コスモでんき」の販売に加え、「コスモでんき ビジネス」「コスモでんき ビジネスグリーン」等お客様のニーズに合わせた多様な商品を展開しております。

またデジタル化への対応として、2019年に開発した「カーライフスクエア」アプリは、2022年3月末時点で434万ダウンロードとなり、多くのお客様からのご支持を頂いております。「カーライフスクエア」ではお客様とのつながり強化を目的として、アプリ上で見積もりから決済まで完了できるコミット車検のほか、燃料油・カーケア商品のお得なクーポンの提供やお勧めの給油タイミングのお知らせ等、様々なサービスを提供しております。

 

(石油化学事業)

石油化学事業は、成長ドライバーのひとつとして位置づけ、石油事業とのシナジーを追求しながら積極的な投資を行っております。国内最大規模のエチレン生産能力を持つ丸善石油化学㈱は、環境に左右されにくい機能化学品等の生産を拡大しております。基礎化学品の高付加価値化を目的として丸善石油化学㈱とコスモ石油㈱が共同で建設しているプロピレン精留設備は、2022年5月に運転を開始しました。また、荒川化学工業㈱と当社グループによる合弁会社である千葉アルコン製造㈱にて、2022年度において水素化石油樹脂製造設備の運転開始を予定しております。

韓国のHyundai Oilbank Co., Ltd.とコスモ石油㈱との合弁会社であるHyundai Cosmo Petrochemical Co., Ltd.につきましては、外部環境の変化には十分留意しながら、中長期的にアジア地域を中心として見込まれるポリエステル需要の増大に対応するべく、競争力強化に努めてまいります。

 

(石油開発事業)

石油開発事業では、2017年度よりヘイル油田において生産を開始しておりますが、当初想定よりも油層の圧力低下が見られるため、生産を意図的に抑制しております。今後、油層圧回復の施策を実行し、生産量の回復・最大化を目指してまいります。このほかの既存油田(ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田)につきましても、安定した生産を継続しました。

また、前事業年度に取得した海上探鉱鉱区(Offshore Block 4)においては探鉱作業を行い、本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査しております。脱化石燃料の流れの中でも、必要とされるエネルギーを継続して供給することは当社グループの責任であると考えており、今後石油需要の減退が進行していく過程でも、その責任を果たすべく本鉱区を取得しております。本鉱区は、豊富な石油・天然ガスの資源量が賦存するだけでなく、単位数量あたり操業費がその他の地域と比べて低いとされるアラビア湾の浅海に位置し、かつ商業生産に至った場合には隣接するアブダビ石油㈱が保有する油田施設を共同で活用できるため、開発・操業コストの大幅な低減が期待されます。今後も、引き続き本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査すべく、探鉱作業を実施してまいります。

 

(再生可能エネルギー事業)

再生可能エネルギー事業で中心となるのが風力発電事業です。コスモエコパワー㈱は、風力発電業界におけるパイオニア的企業であり、国内シェアは第3位となります。陸上風力に関しては、稼働している風力サイト(設備容量30万kW)は順調な稼働を継続しており、またノンファーム型接続の開始により新規サイトの開発も着実に進めています。2021年度は、中紀ウィンドファーム(和歌山県)が運転を開始しており、2022年度は上勇知ウィンドファーム(北海道・2023年3月運転開始予定)及び大分ウィンドファーム(大分県・2023年3月運転開始予定)の運転開始を予定しております。陸上風力では既に運転中の30万kW、FIT(固定価格買取制度)取得済30万kWの合計60万kWに加え、現在開発中の複数のプロジェクトにより、2030年度には約90万kWの規模を目指しております。洋上風力に関しては、秋田洋上風力発電株式会社が、秋田港湾及び能代港湾において2022年度の運転開始を目指し建設工事を順調に進めております。その他にも現在開発中の青森西北沖、秋田中央海域、山形遊佐沖、新潟北部沖、北海道石狩湾沖等のプロジェクトを進め、洋上風力発電のリーディングカンパニーとしての地位を確立し、2030年には陸上、洋上を合わせて150万kW超の設備容量を目指します。

 

《その他の重点施策》

(サステナブル経営の推進について)

当社グループは、第6次連結中期経営計画における重点施策の一つとして、「地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざす」というグループ理念と、このグループ理念の原点に改めて向き合い整理した当社グループのサステナビリティの基本的な考え方に基づき、ESGを重視し持続的な企業成長と企業価値向上を図るサステナブル経営を推進しております。

具体的な取り組みとしては、サステナビリティ戦略会議(注)の新設(会議体の再編成)、サステナビリティ方針類の整備、特定した最重要マテリアリティのKPIの設定とモニタリング、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言への対応等を行ってきました。今後は、経営層・従業員のリテラシー向上、当社として取り組むべきESG施策の充実を進めていきます。

顧客・株主・地域住民・従業員等すべてのステークホルダーを含む社会の持続的発展に、サステナブル経営によって貢献してまいります。

 

(注)サステナビリティ戦略会議:社長執行役員が議長となり、執行役員、中核事業会社の社長及び企画部門長をメンバー、監査等委員をオブザーバーとして開催し、サステナブル経営の様々な議題を討議する会議体

 

・マテリアリティについて

サステナブル経営推進の一環として、以下のプロセスで特定した当社グループと社会の持続的な発展と中長期的な企業価値に影響を与える重要なESG課題を、最重要マテリアリティと定義しました。

 

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最重要マテリアリティは、持続的な価値創造のためのマテリアリティである「気候変動対策」「製品仕様とクリーンな燃料ブレンド」「クリーン技術の機会」「収益基盤事業の構造改革」と、事業継続のための基盤となるマテリアリティである「安全操業・安定供給」「労働安全衛生」「ダイバーシティと機会均等」「リスクマネジメント」「コンプライアンス」「倫理と誠実性」に分類されます。

 

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マテリアリティの特定に合わせ、各マテリアリティのリスク及び機会を特定し、リスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすため、様々な取り組みを行っております。当社グループ及び社会の持続可能な発展を目指し、これらマテリアリティのリスクと機会を的確に捉え、経営に反映させていくことが重要と考えております。なお、事業等のリスクについては「第2 事業等のリスク」を参照ください。

 

 

マテリアリティ

リスクと機会

(●リスク、○機会)

主な取り組み内容

気候変動対策

●異常気象(風水害)の影響による製油所、工場、油槽所の操業または入出荷の停止及び給油所の営業停止

●異常気象に対する災害防止対策への投資コスト増加

●カーボンプライシングの導入による製造コストの増加

●炭素規制の強化に伴う排出権購入・省エネ設備投資等のコスト増加

●脱炭素社会への対応遅れによる企業価値の低下

●石油事業に対するダイベストメントが加速(資金調達コスト増加)

○異常気象の影響で発生する災害時のエネルギー(石油製品)安定供給による取引先からの信頼の獲得

・「当社グループ事業から排出する温室効果ガス(GHG)を2050年度までにネットゼロにする」という2050年カーボンネットゼロ宣言を実施

・カーボンネットゼロ宣言の実現に向けた取り組みと工程をとりまとめたロードマップを、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)におけるシナリオ分析や、外部環境・内部環境の分析等を基に策定

・GHG排出量の削減に向け、低炭素燃料(LNG、バイオ燃料等)、脱炭素燃料(水素、アンモニア等)への燃料転換や再エネ導入の検討

・カーボンクレジットの検討

クリーン技術の機会

●電気自動車(EV)や代替燃料の普及による石油製品需要の減少

○EV関連サービス事業及びカーシェア等の新たなサービス事業の拡大

○再生可能エネルギー(風力発電事業)及び低炭素エネルギーの需要増加の事業機会の増大

○再生可能エネルギー事業等への投資拡大

○CCUS技術の進展によるCO₂排出削減事業の拡大

・モビリティサービスの取り組みとして、給油所へのEV用急速充電器の設置、コスモMyカーリースでのEV供給、EVカーシェアの提供等の事業を更に拡大

・再生可能エネルギー事業の拡大として、2030年に陸上、洋上風力で合計150万kW超の設備容量を目指す

・ネガティブエミッション技術の活用として、当社グループが利権を有す油田等でのCO₂-EORの可能性検討。また、主要な装置におけるCO₂回収とその活用(CCS/CCUS)の可能性を検討

製品仕様とクリーンな燃料ブレンド

●脱化石燃料の進展による石油製品需要減による収入減

○資源循環社会への移行(バイオ製品需要の増加、ケミカルリサイクル事業の拡大)

 

・バイオガソリン(バイオETBE配合)の供給への取り組み

・バイオジェット燃料(SAF:Sustainable aviation fuel)サプライチェーン構築に向けた事業開発を一層加速させ、2025年までにSAF燃料製造設備の稼働、供給開始を目指す

・カーボンリサイクル(合成燃料・化学品)製品の供給を検討

・水素・アンモニアの供給を検討

・ケミカルリサイクル製品の供給への取り組みを検討

 

 

収益基盤事業の構造改革

●金融不安、政情不安、景気の急変動等による既存事業の強靭性の低下

●市場変化や政策への対応の遅れによる事業採算性の低下

●技術革新への対応の遅れによる主要事業の競争力低下

○新規事業の収益化による事業基盤のアジリティ確保

○技術変化への早期対応による競争優位の獲得

・再生可能エネルギー事業等、次代の成長を担う投資の実施

・再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業の参画

・「スマートシティ会津若松」におけるICT・環境技術等を活用した地域モデルの創出。地域創生、地域との協創における事業の機会の検討

労働安全衛生

●従業員及び協力会社の労働災害被害

●製油所、物流基地及び油槽所等の操業停止

●人的や機械的なエラーによる事故の発生

●労働紛争

○従業員の離職防止、定着化

・グループ全体の労災件数、製油所等の度数率・強度率の実績管理

・再発防止策や労災件数低減に関する取り組みをグループ内に水平展開

・労災の定義と責任所在の明確化

・全国安全週間に、社長メッセージをグループ内に発信

ダイバーシティと機会均等

●労働人口減少に伴う人材不足に対する採用コストの上昇

●多様な人材不足による競争力の低下

○モチベーション向上による企業成長

○イノベーションが起きやすい環境の醸成

○優秀な人材確保、定着化を促進

・女性活躍を優先課題とし女性管理職比率、採用女性比率をKPIとして管理

・育児、介護支援制度の充実

・健康診断受診率と総労働時間をKPIとして管理・公平かつ透明性のある評価制度

倫理と誠実性

●社員のモラル低下による信頼の失墜

●法令違反による行政処分

●顧客からの信頼の失墜、ブランドイメージの低下

○健全な企業風土の醸成

・企業行動指針の浸透

・社員向けメールマガジンの発行による企業行動指針の浸透

・倫理意識の醸成を目的とした企業倫理研修を実施

・従業員意識調査による現況把握

リスクマネジメント

●予期せぬ障害、損失、組織の機能不全

●事故、災害時の被害の拡大、復旧の遅れ

○適切なリスクテイクによる競争力の向上

・グループ各社に係る各社重点取組リスクの管理

・グループ全体に係るコスモエネルギーグループ重点取組リスクの選定と対策推進

・リスクマネジメント研修の実施

コンプライアンス

●コンプライアンス違反による信頼の失墜

●損害賠償責任や罰金の課金

●法令違反による行政処分

・企業行動指針と規定類の整備

・内部統制システムの整備、運用及び強化

・ヘルプライン(内部通報制度)の整備

安全操業・安定供給

●事故や労働災害による製油所、物流基地及び油槽所等が操業停止

●給油所、タンカー及びローリーでの事故及び地震等の災害による事業継続障害

○企業価値の向上

○いかなる時にも安定供給を実現することによるレピュテーションの向上

・企業行動指針や「コスモ石油安全の日」の設定による安全文化を醸成

・操業マネジメントシステムの導入、高度化

・千葉製油所の高圧ガス保安法における特定認定事業者(スーパー認定)の認定

・災害時の石油製品の安定供給を目的とした系列サプライチェーンBCPを構築、高度化

 

(ブランディング活動)

 これまで当社グループは「コスモ石油」として親しまれてきましたが、時代にあったエネルギーを提供したいとの思いを込め、グループ全体の力を「COSMO」へ結集し、石油事業だけでなく再生可能エネルギー事業も含めたグループとしての一体感・一貫性を醸成しております。

 コスモブランドフレームは時代や環境の変化に合わせた「コスモらしさ」の土台となる価値観です。4つのブランドコアバリューである「先見性」「信頼」「安心の供給」「CS主義」を、コスモエネルギーグループ全社員が企業活動全般にわたって一貫性を持って体現していくことで、ブランド価値を高めてまいります。

 

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 誰が、いつ、どの接点で関わっても「コスモらしさ」を感じてもらえるように、当社は「一貫性」を大切にしながらブランディング活動を推進しています。アウターブランディング活動として、広告や店舗、商品・サービス、接客態度まで一貫した「コスモらしさ」を表現しております。

 

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またインナーブランディング活動として、当社グループ26社を対象に、コアバリューを体現する優秀な活動事例を表彰するイベント「COSMOブランドAWARD 2021」を2022年3月に開催しました。

 

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(DX戦略と取り組み)

デジタル化を通じた顧客体験(CX)・価値向上を目的とし、根本的なビジネスモデル変革を迅速に進めていくことを目指す姿として掲げております。目指す姿の実現に向けて、デジタルケイパビリティの向上と、チェンジマネジメントの企業文化の推進を重点に、デジタルナレッジの向上、パートナリングの推進、データ活用基盤の強化、DX人材の育成、多様性のある組織の構築、さらに革新と伝統の企業文化の両立を具現化してまいります。また個々の社員のやる気と、自分ゴト化する意識改革を促すために、5つの指標である「Cosmo's 5C」を掲げ、全社員参加型のDXを推進しております。

 

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(人的価値向上への取り組み)

当社グループが持続的な成長を遂げるために欠かせない源泉のひとつが人的資本です。多様な働き方の実践やダイバーシティ、女性活躍の推進により、2021年度「なでしこ銘柄」に選定されました。

 

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当社グループにおける人材活用の取り組みについての基本的な方針として、人材活用方針に下記の内容を定めております。

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また、当社グループは、企業価値創造の源泉である役員及び従業員の心身の健康が持続的な成長基盤になると認識しています。また、品質の高い製品・サービスを安全かつ安定的に供給するためには、役員及び従業員が心身ともに健康で、能力を最大限に発揮する環境が不可欠であると考えており、当社グループにおける健康経営の取り組みを健康経営方針に定めています。

 

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(新型コロナウイルス感染症への対応)

当社グループは、自分と大切な人の命を守るとともに石油製品をはじめとした製品やサービスの安定供給の責任を果たすことを、一人ひとりが強く自覚し日々行動するよう徹底しています。

2020年2月から2022年1月までに危機対策本部合同会議(全39回)と危機対策合同会議(全6回)を開催いたしました。当社グループに関わる全ての関係者の安全を第一に、感染症対策の徹底、新型コロナウイルス感染症関連情報の周知、検査キットの配布、職域接種の実施、日勤者の在宅勤務等、グループ全体における各種取り組み方針を策定し、グループ各社へ展開いたしました。

 

(2)経営環境

当連結会計年度における日本経済は、ウクライナ情勢の緊迫化等による不透明感はありながらも、ワクチン接種の進展に伴う行動制限の緩和や消費抑制の和らぎがあったことから、徐々に回復してまいりました。

原油価格は、期初に1バレル61ドル台であったドバイ原油が、経済の正常化等に伴って石油需要が増加する一方で、供給はOPECプラスのさらなる減産縮小の合意に進展がない等の制約要因がみられたことから80ドル台まで上昇しました。その後、新型コロナウイルス変異株の蔓延懸念から一時60ドル台までの急落をみせましたが、影響は限定的との見方から年明けには回復しました。2月に開始されたロシアのウクライナ軍事侵攻による供給懸念から、ドバイ価格は120ドル台まで高騰しましたが、その後、米国の戦略石油備蓄放出の影響等もあり、期末は107ドル台で終えました。

為替相場は、期初は1ドル110円台から始まり、前半は世界的な新型コロナウイルス変異株の拡大による金利低下により、横ばいとなりました。後半はFRBの早期利上げ観測を背景に円安傾向となり、1月から3月にかけてはウクライナ情勢の悪化に伴い、国際基軸通貨であるドルの需要が高まり円安が進行し、期末は122円台で終えました。

石油製品の国内需要は、ほぼ横ばいで推移しました。ジェット燃料については、新型コロナウイルス感染症の影響による前期の大幅な縮小の反動を受け、前期を上回りました。一方で、需要の減退と原油高に伴う製品価格高騰の影響によりガソリンや灯油は前期を下回りました。

石油化学製品は、海外のプラント新増設の影響等により、主要製品であるパラキシレン等の市況が低調に推移し、厳しいマーケット環境が継続しました。

国内経済の今後の見通しにつきましては、徐々に回復することが期待されます。一方で、ウクライナ情勢、原材料価格の上昇、金融市場の動向、新型コロナウイルス感染症等による影響には引き続き留意する必要があります。中長期的には世界的に脱炭素社会への流れが加速し、エネルギー分野においても再生可能エネルギーへのシフトの重要性が高まると予想され、また国内における燃料転換や人口減少等の構造的要因による石油需要の減少傾向も継続するものと予想されます。このような経営環境の中、当社グループは、前連結中期経営計画から全社を挙げて懸命に進めてきた構造改革により、燃料油の中期的な需要減少に備えた体制構築が完了していたため、新型コロナウイルス感染症による需要減の影響、また構造的な需要が低迷する環境下においても、当社グループでは製油所の稼働率を低下させることなく対応することができました。

今後も長期的な大きな潮流を捉えつつ、短期的な変化に柔軟に対応しながら、石油関連事業の競争力の強化と再生可能エネルギーへのシフトを同時に進める「Oil & New」の基本方針を着実に、かつスピード感をもって実行することで、企業価値の向上を目指してまいります。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは第6次連結中期経営計画において、足元の経営環境を注視しながら長期的な方向性を見据え、事業ポートフォリオを拡充し、石油開発や石油事業で収益力を強化してまいります。第6次連結中期経営計画を実行する上で、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりとなります。

 

《各事業セグメントにおける課題》

(石油事業(石油精製事業))

中長期的に石油需要の減退が予想されるなか、キグナス石油㈱への燃料油供給、デジタルを活用した販売施策の推進等により、燃料油販売数量の維持に努めてまいります。また、石油化学事業へのシフトやシナジーの創出、製油所のIT化等、競争力の強化を検討してまいります。

 

(石油事業(石油販売・カーライフ事業))

カーライフの変化に対応したビジネスモデルへの変革により事業領域を確保しつつ、石油精製と併せて競争力を確保してまいります。また、デジタル化への対応としてデジタルにおけるお客様とのつながりの強化を目的として「カーライフスクエア」アプリの機能拡大に取り組んでおります。また、再生可能エネルギー・EV等のパッケージ商品「コスモ・ゼロカボソリューション」により、脱炭素社会に向けた取り組みを強化してまいります。

 

(石油化学事業)

長期的には石油化学製品は世界の人口増加を背景に国際市場が拡大していくことが予想されるため、燃料油から石化原料へのシフトを推進してまいります。エチレン・パラキシレン生産での競争優位性を最大限活用しながら、未利用分の活用等の石油精製と石油化学のシナジーを享受し、環境に左右されにくい機能化学品の事業拡大を目指してまいります。

 

(石油開発事業)

半世紀にわたるアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国での安定した海上油田の生産実績による強固な信頼関係と自社操業を強みとして、既存油田の安定的な生産の継続と操業コストの削減を行ってまいります。また、前事業年度に新たに取得した現在調査中の鉱区(Offshore Block 4)からの生産により生産量規模の維持を図り、低油価環境でも利益を出せる事業ポートフォリオの構築を目指してまいります。

 

(再生可能エネルギー事業)

世界的な脱炭素化の潮流のなか、今後大きな成長が期待される風力発電事業を中心に、引き続き積極的に規模拡大を進めてまいります。陸上風力においては、2021年4月に運転を開始した中紀ウィンドファーム(和歌山県)に続き、2022年度には上勇知ウィンドファーム(北海道)と大分ウィンドファーム(大分県)の運転開始を予定しております。その他にもあぶくま南ウィンドファーム(福島県)、中紀第2ウィンドファーム(和歌山県)等の開発を着実に推進することで、2030年において陸上風力の設備容量約90万kWの達成を目指しております。さらに2050年のカーボンニュートラル達成に向けた事業環境の整備・投資機会の拡大が見込まれる洋上風力においては、日本における同分野のリーディングカンパニーを目指しております。運転開始を予定しているプロジェクトとしては、秋田県の秋田港湾及び能代港湾における秋田港・能代港プロジェクトが2022年度下期の運転開始を予定しており、開発中のプロジェクトとしては、青森西北沖、秋田中央海域、山形遊佐沖、北海道石狩沖等5つの洋上プロジェクトの開発を進めております。洋上風力における競争が激化する中、当社グループでは建設・O&M・売電先を含めた全てのサプライチェーンを精査し、徹底的なコスト競争力の強化を図ります。

 

《気候変動への取り組み》

・TCFDへの賛同表明

当社グループは気候変動関連情報の開示検討に伴い、2020年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明し、TCFDコンソーシアムに参画いたしました。

 

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・2050年カーボンネットゼロへ向けたロードマップの開示

株主・投資家をはじめ幅広いステークホルダーとの円滑なコミュニケーションを目指し、TCFDのフレームワークに基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の推奨開示項目ごとに、気候変動に対する考え方や情報の整理を行いました。今後、当社グループとして気候変動対策を加速させるために、継続的に取り組み及び開示のレベルアップを図っていきます。また、2021年5月の「カーボンネットゼロ宣言(グループ事業から排出する温室効果ガス(GHG(注))を2050年までにネットゼロにする)」の実現に向けた取り組みと工程をとりまとめたロードマップを、TCFDにおけるシナリオ分析や、外部環境・内部環境の分析等を基に策定しました。当社グループは、Oil & Newとカーボンニュートラル社会の形成を2つの大きな柱として、「2050年カーボンネットゼロ」への取り組みを進めてまいります。エネルギーの安定供給の責任を果たしつつ、石油分野以外の事業を拡大すると共に、2050年までにGHG排出をネットゼロにすることを目指します。脱炭素燃料への転換やネガティブエミッション技術等、以下6つを重点取組テーマとし、カーボンネットゼロに取り組んでまいります。

 

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(注)GHG:Greenhouse Gasの略称。当社グループはスコープ1及びスコープ2を対象としています。

 

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