業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当期における当社グループの経営成績の状況の概要は、本報告書「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。

 

② 当期末の資産、負債、資本及び当期のキャッシュ・フロー

当連結会計年度末における資産、負債、資本については、下記の通りです。

 

連結総資産は8兆7,523億円と、前連結会計年度に比べて1兆1,783億円増加しました。負債は4兆8,553億円と、前連結会計年度に比べて4,127億円増加しました。資本は3兆8,970億円と、前連結会計年度に比べて7,656億円増加しました。なお、当期末の親会社の所有者に帰属する持分は3兆4,667億円となり、有利子負債は当期末2兆6,533億円となりました。この結果、親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(D/Eレシオ)は0.77倍(劣後ローン・劣後債資本性調整後0.59倍)となりました。

 

(総資産)

現金及び現金同等物は、前期末(3,594億円)から1,915億円増加し、当期末5,510億円となりました。これは、転換社債型新株予約権付社債の発行等によるものです。

 

営業債権及びその他の債権は、前期末(8,053億円)から1,340億円増加し、当期末9,394億円となりました。これは、主に売掛金の増加によるものです。

 

棚卸資産は、前期末(1兆3,493億円)から4,072億円増加し、当期末1兆7,565億円となりました。これは、原料価格上昇や国内外の鉄鋼需要の変化に即した生産対応等によるものです。

 

有形固定資産は、前期末(2兆9,549億円)から977億円増加し、当期末3兆526億円となりました。これは、設備の新鋭化を図るべく、名古屋製鉄所における第3コークス炉リフレッシュ等を実行したこと、注文構成を高度化すべく、九州製鉄所八幡地区や瀬戸内製鉄所広畑地区における電磁鋼板製造設備の増強、東日本製鉄所君津地区第6CGLの建設等を実行したこと、海外事業の深化・拡充に向けたグローバル戦略の推進のため、タイにおいて電炉から熱延製品を生産する一貫ミルであるG Steel Public Company Limited及びG J Steel Public Company Limited等の株式取得・子会社化を実施したこと等によるものです。

 

持分法で会計処理されている投資は、前期末(8,173億円)から2,617億円増加し、当期末1兆790億円となりました。これは、持分法による投資利益(2,144億円)等によるものです。

 

(負債)

有利子負債は前期末(2兆5,592億円)から941億円増加し、当期末2兆6,533億円となりました。これは、転換社債型新株予約権付社債の発行等による増加があった一方で、長期借入金の返済を実行したこと等による減少があったことによるものです。

 

営業債務及びその他の債務は、前期末(1兆3,827億円)から1,439億円増加し、当期末1兆5,267億円となりました。これは、主に買掛金の増加によるものです。

 

未払法人所得税等は、前期末(242億円)から857億円増加し、当期末1,099億円となりました。これは、主に税引前利益の増加による、法人所得税費用の増加によるものです。

 

 

その他の非流動債務は、前期末(1,893億円)から1,086億円増加し、当期末2,980億円となりました。これは、2021年3月5日に公表した中長期経営計画に基づく生産設備構造対策の推進に伴い、瀬戸内製鉄所呉地区及び関西製鉄所和歌山地区の鉄源設備、並びに名古屋製鉄所の厚板ライン及び東日本製鉄所君津地区の大形ライン・UO鋼管ライン等の廃止決定に基づき発生する解体費用等を計上したこと等によるものです。

 

(資本)

 利益剰余金は、前期末(1兆9,103億円)から6,044億円増加し、当期末2兆5,147億円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益(6,373億円)等による増加があった一方で、配当金の支払いによる減少(737億円)があったことによるものです。

 

その他の資本の構成要素は、前期末(953億円)から1,016億円増加し、当期末1,969億円となりました。これは、為替相場の変動による、在外営業活動体の換算差額の増加(750億円)等によるものです。

 

非支配持分は、前期末(3,713億円)から588億円増加し、当期末4,302億円となりました。これは、非支配持分に帰属する当期利益(302億円)、G Steel Public Company Limited及びG J Steel Public Company Limited等の株式取得・子会社化等による、連結範囲の変更に伴う変動等(294億円)等の増加があったことによるものです。

 

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローについては、下記の通りです。

 

営業活動によるキャッシュ・フローは6,156億円の収入となりました(前期は4,031億円の収入)。

投資活動によるキャッシュ・フローは3,788億円の支出となりました(前期は3,890億円の支出)。

この結果、フリーキャッシュ・フローは2,367億円の収入となりました(前期は141億円の収入)。

財務活動によるキャッシュ・フローは613億円の支出となりました(前期は526億円の収入)。

以上により、当期末における現金及び現金同等物は5,510億円(前期は3,594億円)となっております。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税引前利益8,165億円に、減価償却費及び償却費(3,306億円)の加算等による収入があった一方、棚卸資産の増加(3,834億円)、持分法による投資損益(2,144億円)の控除の調整等による支出がありました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

旧東京製造所土地等の有形固定資産及び無形資産の売却による収入(702億円)や投資有価証券の売却による収入(817億円)等がありました。

一方、設備の新鋭化を図るべく、名古屋製鉄所における第3コークス炉リフレッシュ及び第3高炉改修、瀬戸内製鉄所広畑地区における電気炉の新設等を実行したことに加え、注文構成を高度化すべく、九州製鉄所八幡地区や瀬戸内製鉄所広畑地区における電磁鋼板製造設備の増強、東日本製鉄所君津地区第6CGLの建設等を実行しております。この結果、有形固定資産及び無形資産の取得による支出(4,669億円)がありました。また、G Steel Public Company Limited及びG J Steel Public Company Limited等の株式取得・子会社化の実施等による連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出(489億円)等がありました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 転換社債型新株予約権付社債の発行等による有利子負債の増加(639億円)等による収入があった一方、前期末及び当第2四半期末の配当(737億円)等による支出がありました。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

前連結会計年度  金額(百万円)

当連結会計年度  金額(百万円)

製鉄

4,756,489

6,413,794

エンジニアリング

273,669

239,873

ケミカル&マテリアル

161,146

232,481

システムソリューション

253,501

271,643

合計

5,444,806

7,157,794

 

(注) 1  金額は製造原価による。

2  上記の金額には、グループ向生産分を含む。

 

b. 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメント毎に示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

前連結会計年度
受注高(百万円)

当連結会計年度
受注高(百万円)

前連結会計年度
受注残高(百万円)

当連結会計年度
受注残高(百万円)

エンジニアリング

238,090

356,865

337,090

430,895

システムソリューション

195,451

202,434

93,128

90,329

合計

433,541

559,300

430,218

521,224

 

(注)1 上記の金額には、グループ内受注分を含まない。

    2 「製鉄」、「ケミカル&マテリアル」は、多種多様な製品毎に継続的かつ反復的に注文を受けて生産・出荷する形態を主としており、その受注動向は、生産実績や販売実績に概ね連動していく傾向にあり、また、需要動向等についても、本報告書「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」において記載していることから、金額又は数量についての記載を省略している。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における外部顧客に対する販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

前連結会計年度  金額(百万円)

当連結会計年度  金額(百万円)

製鉄

4,190,348

6,105,157

エンジニアリング

276,241

253,415

ケミカル&マテリアル

174,056

245,083

システムソリューション

188,626

205,233

合計

4,829,272

6,808,890

 

 

(注) 1  前連結会計年度及び当連結会計年度における輸出販売高及び輸出割合は、次のとおりである。

前連結会計年度

当連結会計年度

輸出販売高(百万円)

輸出割合(%)

輸出販売高(百万円)

輸出割合(%)

1,633,292

33.8

2,707,068

39.8

 

(注)  輸出販売高には、在外子会社の現地販売高を含む。

2  主な輸出先及び輸出販売高に対する割合は、次のとおりである。

輸出先

前連結会計年度(%)

当連結会計年度(%)

アジア

59.9

57.4

中近東

5.9

4.7

欧州

10.6

12.4

北米

11.5

12.8

中南米

8.5

10.0

アフリカ

2.9

2.4

大洋州

0.7

0.4

合計

100.0

100.0

 

(注)  輸出販売高には、在外子会社の現地販売高を含む。

3  前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりである。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

日鉄物産㈱

946,024

19.6

1,434,515

21.1

住友商事㈱

510,956

10.6

685,136

10.1

 

 

当連結会計年度において、生産及び販売の実績が著しく増加しております。なお、生産、受注及び販売等に関する特記事項については、本報告書「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」等に記載しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(経営成績の分析)

当期の世界経済は、新型コロナウイルスの感染状況に左右されたものの、ワクチン普及等による経済活動の再開に伴い、持ち直しの動きが見られました。日本経済も、新型コロナウイルス変異株の流行による影響はあるものの、設備投資の増加や個人消費の持ち直し等により、緩やかに回復しました。

鉄鋼需要については、上期は国内外の景気が新型コロナウイルスの流行による減速から持ち直したことを受け、製造業を中心に回復基調が続き、中国の鉄鋼減産政策の影響もあり、鉄鋼市況は高水準となりました。下期においては、半導体不足や物流停滞等によるサプライチェーンの混乱に、新型コロナウイルス変異株による感染再拡大に伴う人手不足も相まって、自動車分野の生産回復が遅れたこと等もあり、国内の需要回復は減速しました。

当期の連結業績については、昨年度に断行した抜本的コスト改善による損益分岐点の大幅な引下げに加え、紐付き分野における価格是正や、一貫能力絞込みによる注文選択の効果、生産・出荷数量の回復、海外グループ会社の収益力の向上、在庫評価差等により、通期の売上収益は6兆8,088億円(前期は4兆8,292億円)、連結事業利益は9,381億円(前期は1,100億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は6,373億円(前期は△324億円)となりました。

セグメント別の業績は以下のとおりです。当社グループは、製鉄事業を中核として、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4つのセグメントで事業を推進しており、製鉄セグメントが連結売上収益の約9割を占めています。

 

(当期のセグメント別の業績の概況)

 

 

製鉄

エンジニ
アリング

ケミカル&マテリアル

システム
ソリュー
ション

合計

調整額

連結財務諸表計上額

売上収益

当期

61,536

2,792

2,498

2,713

69,540

△1,451

68,088

(億円)

前期

42,284

3,244

1,786

2,524

49,840

△1,547

48,292

セグメント利益

当期

8,710

63

253

308

9,335

45

9,381

(億円)

前期

635

177

76

239

1,128

△27

1,100

 

 

<製鉄>

製鉄セグメントの売上収益は 6兆1,536億円 となり、前期( 4兆2,284億円 )に対して増加し、セグメント利益は 8,710億円 となり、前期( 635億円 )に対して増加しました。

製鉄セグメント利益の前期に対する増減 8,075億円 の主な要因は次のとおりです。

 

生産・出荷数量増加               800億円

マージン(販売価格・構成・原料価格)     2,450億円

コスト改善                   600億円

国内グループ会社損益              400億円

海外グループ会社損益             1,250億円

在庫評価差(グループ会社込み)        3,050億円

その他                    △475億円

―――――――――――――――――――――――――――

合計                     8,075億円

 

上期の鉄鋼需要は、国内外の景気が新型コロナウイルスの流行による減速から持ち直したことを受け、製造業を中心に回復基調が続き、中国の鉄鋼減産政策の影響もあり、鉄鋼市況は高水準となりました。下期は、半導体不足や物流停滞等によるサプライチェーンの混乱に、新型コロナウイルス変異株による感染再拡大に伴う人手不足も相まって、自動車分野の生産回復が遅れたこと等もあり、国内の需要回復は減速しました。そのようななかで、当社は、紐付き価格の是正及び一貫能力絞込みによる注文構成高度化等に取り組むことで、マージンは前期に対して2,450億円の増益となりました。また、国内外グループ会社の収益力の向上による1,650億円の増益、生産・出荷量の増加による800億円の増益となりました。さらに、生産設備構造対策の取組みを断行すること等により、コスト改善効果は前期に対して600億円の増益となりました。

 

 

<エンジニアリング>

日鉄エンジニアリング㈱においては、カーボンニュートラル、社会インフラのレジリエンス・老朽更新関連への取り組みを中心に成長を目指しており、環境・エネルギーセクターでは廃棄物発電設備等の、都市インフラセクターでは、免制震デバイスや橋梁商品の受注を伸ばしております。当期は大型案件の売上計上が端境期に当たることから、売上収益、事業利益とも減少しました。エンジニアリングセグメントの売上収益は2,792億円(前期は3,244億円)、セグメント利益は63億円(前期は177億円)となりました。

事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。

 

(当期の事業別の売上収益の概況)

 

 

製鉄プラント

環境・エネルギー

都市インフラ

その他調整等

連結財務諸表
計上額

売上収益

当期

415

1,823

603

△49

2,792

(億円)

前期

563

1,931

761

△11

3,244

 

 

製鉄プラントセクターは、高炉改修等の大型完工案件が少なかったこと等により、415億円と前期(563億円)に対して減少しました。環境・エネルギーセクターは、海外海洋でのガス田開発案件や廃棄物処理・発電施設等運営受託の売上は堅調でしたが、廃棄物処理・発電施設工事の売上が端境期にあたることから、1,823億円と前期(1,931億円)に対して減少しました。都市インフラセクターは、建築鉄構、免制震デバイス、港湾鋼構造事業等で一定規模の売上を確保しましたが、総合建築事業で大型物流倉庫の完工案件が少なかったことにより603億円と前期(761億円)に対して減少しました。

 

<ケミカル&マテリアル>

日鉄ケミカル&マテリアル㈱においては、新型コロナウイルスの影響の継続や、原材料価格高騰、世界的半導体不足や物流停滞等の影響はありましたが、高騰した原料コストの販売価格への転嫁や高度化するお客様のニーズに応える高付加価値製品の拡販への取組み等により、前年度比で増収・増益となりました。ケミカル&マテリアルセグメントの売上収益は 2,498億円 (前期は 1,786億円 )、セグメント利益は 253億円 (前期は 76億円 )となりました。

事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。

 

 (当期の事業別の売上収益の概況)

 

 

コールケミカル

化学品

機能材料

複合材料

その他
調整等

連結財務諸表
計上額

売上収益

当期

390

1,200

710

200

△2

2,498

(億円)

前期

260

760

600

170

△3

1,786

 

 

コールケミカル事業では、黒鉛電極向けニードルコークスの需要が回復し、価格も堅調に推移し、390億円(前期は260億円)となりました。化学品事業では、ベンゼンやビスフェノールAの市況が概ね堅調に推移し、1,200億円と前期(760億円)に対して増収となりました。機能材料事業では、半導体関連材料をはじめ、回路基板材料や液晶ディスプレイ材料、有機EL材料の販売が好調を維持し、710億円(前期は600億円)となりました。複合材料事業では、半導体パッケージ基板向けエポキシ樹脂、土木・建築補強向け炭素繊維複合材料や産業用ロール、スポーツ・宇宙分野向け炭素繊維の販売が伸長し、200億円(前期は170億円)となりました。

 

 

<システムソリューション>

日鉄ソリューションズ㈱においては、今後の日本企業のDX本格展開を見据え、お客様との関係性を深化させながら、全社を挙げてDXニーズを最大限に獲得し、事業拡大を目指しております。注力領域の一つであるデジタル製造業領域では、同社の提供するソリューションやサービス、ノウハウを統一ブランド「PLANETARY(プラネタリー)」として集約し、製造業のお客様のDX推進支援を進めてまいりました。その他の注力領域については、新しい働き方へのITニーズに対し、デジタルワークプレースソリューションの拡販や、プラットフォーマー支援としてネットサービス、EC事業者や金融サービス分野のDX推進に取り組みました。このように、DX推進を背景とするお客様のIT投資は増加傾向にあり、前期比で増収・増益となりました。システムソリューションセグメントの売上収益は2,713億円(前期は2,524億円)、セグメント利益は308億円(前期は239億円)となりました。

事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。

 

(当期の事業別の売上収益の概況)

 

 

業務ソリューション

サービスソリューション

その他調整等

連結財務諸表計上額

売上収益

当期

1,757

947

10

2,713

(億円)

前期

1,622

897

5

2,524

 

 

業務ソリューション事業は、産業、流通・サービス分野における運輸及びプラットフォーマー向けの増加に加えて、金融分野における規制対応案件が堅調に推移したこと及びプロダクト販売の増加、公共公益分野での官公庁向け基盤構築案件及びテレコム分野向けの増加により、1,757億円と前期(1,622億円)に対して増加しました。サービスソリューション事業は、ITインフラ分野においてセキュリティ及びプロダクト販売の増加に加えて、鉄鋼分野において当社向けの増加により、947億円と前期(897億円)に対して増加しました。

 

(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

2021年3月に策定した「日本製鉄グループ中長期経営計画」に掲げた収益・財務体質目標、株主還元とそれに対する当期の状況は以下のとおりです。

2021年度の連結業績につきましては、昨年度に断行した抜本的コスト改善による損益分岐点の大幅な引下げに加え、紐付き分野における価格是正や、一貫能力絞込みによる注文選択の効果、生産・出荷数量の回復、海外グループ会社の収益力の向上、在庫評価差等により、通期の売上収益は6兆8,088億円(うち上期3兆1,639億円、下期3兆6,449億円)、連結事業利益は9,381億円(うち上期4,778億円、下期4,602億円)、ROSは13.8%(うち上期15.1%、下期12.6%)となりました。

 

 

2021年度(実績)

 

2025年度経営計画

売上収益事業利益率(ROS)

13.8%

 

10%程度

親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)

20.5%

 

10%程度

D/Eレシオ(*)

0.59

 

0.7以下

連結配当性向

23.1%

 

30%程度を目安

 

(*) 劣後ローン・劣後債資本性調整後

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析については、本報告書「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②当期末の資産、負債、資本及び当期のキャッシュ・フロー」 に記載しております。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(資本政策)

 一定水準の財務健全性が維持されることを前提として、当社グループは投下資本の運用効率を重視し、投資先への資本の投入(資本的支出、R&D、M&A含む)によって企業価値を最大化する資本政策を推進しています。それは、資本コストを超過する収益の創出が期待され、持続的な成長を可能にすると同時に、株主への利益還元によって株主の要求を満たすものです。

 当社グループは、上記資本政策の達成に必要な資金を、主として「稼ぐ力」の維持と向上によって生み出される営業キャッシュ・フローから獲得することに加え、必要に応じて銀行借入や社債の発行等、外部からの資金調達も実施しております。

 また当社グループは、ROS、ROE及びD/Eレシオを中長期的な収益の成長と財務体質の健全性を達成する上での主要な経営管理指標としております。

 剰余金の配当等につきましては、本報告書「第4 提出会社の状況 3配当政策」に記載しております。

 また、自己株式の取得については、機動性を確保する観点から、定款第33条の規定に基づき取締役会の決議によることと致します。取締役会においては、機動的な資本政策等の遂行の必要性、財務体質への影響等を考慮したうえで、総合的に判断することと致しております。

 

(資金需要の動向に関する経営者の認識と資金調達の方法)

 1)中長期経営計画の実行状況

 2021年3月に公表した「日本製鉄グループ中長期経営計画」では、成長の実現に向けた経営資源投入として、5年間で2兆4,000億円規模の設備投資と6,000億円規模の事業投資に加え、カーボンニュートラル生産の実現に向けた研究開発や設備投資の実行、デジタルトランスフォーメーション戦略への資金投入を計画しております。これら経営計画に必要な投資を実行する前提で、2025年度断面では、D/Eレシオ(※)0.7以下を実現することを目標としております。(※)劣後ローン・劣後債資本性調整後

 

 上記方針のもと、設備投資については、強靭な国内生産体制を再構築するための投資や戦略商品の対応力強化に資する投資等を積極的に進めてまいりました。具体的には、自動車業界において一層高まっていくと想定される車体の軽量化・高強度化ニーズに応えるべく、超ハイテン鋼板等の高級薄板の生産体制を抜本的に強化するため、戦略的な投資として約2,700億円を投入し、自動車鋼板製造の中核拠点である名古屋製鉄所に次世代熱延ラインを新設することを決定致しました。また、電磁鋼板についても、カーボンニュートラルに向けた社会的ニーズを踏まえ、既決定投資に加え、生産能力・品質向上対策のための追加投資を検討しております。

 

 また、事業投資については、将来的なグローバル1億t体制に向けた施策として、海外市場における需要地での一貫生産体制の拡大を進めております。2021年度においては総投資額555億円を投入し、タイ電炉・熱延メーカーのG Steel Public Company Limited及びG J Steel Public Company Limitedの買収・子会社化を実施致しました。

 

 環境面では、カーボンニュートラルの実現に向けて、2021年4月に専任プロジェクトを設置し、3つの超革新技術(高炉水素還元、100%水素直接還元プロセス、大型電炉での高級鋼製造)を他国に先駆けて開発・実機化するための取組みを推進しております。2021年度は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」に、当社を含む4社による共同提案を行い、2021年12月に採択されました(支援規模:1,935 億円)。

 

 

 

 2)資金調達

 上記経営計画に関して多額の資金所要が見込まれるなか、調達コストを抑制しながら成長投資資金を確保し財務基盤を強化することを目的として、2021年10月に転換社債型新株予約権付社債3,000億円を発行致しました。

 また、フリーキャッシュ・フローの状況に応じて、調達環境、金利条件等を勘案して、最適なタイミングで資金調達面での対応を図ります。具体的には、手許資金残高を5,510億円と前期末(3,594億円)に対して1,915億円多く持つことで、ロシア・ウクライナ情勢下で増幅したリスクの発現によるキャッシュ・フロー悪化に備えております。

 

 2022年3月末における劣後ローン・劣後債資本性調整後のD/Eレシオは0.59倍となり、2025年中長期経営計画の目標である0.7倍以下を維持しております。中長期的に機動的かつ確実な成長戦略の遂行を継続するため、財務規律を重視した キャッシュ・マネジメントを引き続き実行してまいります。

 

 (流動性管理及び資金調達の方針について)

当社グループの円滑な事業活動に必要な資金を確保するため、手許資金及び外部借入を有効に活用しております。手許資金については、実需に見合った最低限の現預金を保有する方針としており、過去及び将来の資金繰りを勘案し、最適な保有残高を志向しております。外部借入については、安全性・安定性・柔軟性を担保する観点から基本的な調達の枠組みを決定しております。具体的には、不測の事態発生時における、当社の支払余力を確保すべく、適正な長期固定適合比率を維持するとともに、安全性の補完のためにコミットメントライン(当社連結:6,078億円)契約を締結しております。

また短期資金と長期資金のバランスを踏まえた有利子負債残高の設計により自由度を確保しており、当該枠組みの範囲内で、最適な資金調達の実現を志向しております。

 

 ③会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、本報告書「第一部企業情報 第5 経理の状況」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、引当金の計上、非金融資産の減損、繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っております。但し、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。

 

当社が特に重要と判断している会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下です。

 

 a.非金融資産の減損

当社グループは、資産が減損している可能性を示す兆候のいずれかが存在する場合、資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額を回収可能価額として見積り、回収可能価額が資産又は資金生成単位の帳簿価額を下回る場合、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として認識しており、使用価値は見積将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引くことにより算出しております。当該キャッシュ・フローは中長期経営計画及び最新の事業計画を基礎としており、これらの計画には鋼材需給の予測及び製造コスト改善等を主要な仮定として織り込んでおります。鋼材需給及び製造コスト改善の予測には高い不確実性を伴い、これらの経営者による判断が将来キャッシュ・フローに重要な影響を及ぼすと予想されます。なお、当期においては、当社の普通鋼シームレス鋼管に係る一部の事業に関連する事業用資産を中心に244億円の減損損失を計上しており、当期末における有形固定資産の残高は3兆526億円、無形資産の残高は1,304億円となっております

 

 

 b.繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、鋼材需給の予測及び製造コスト削減等の仮定に基づいて算定された将来における課税所得の見積り等の予想など、現状入手可能な全ての将来情報を用いて、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。当社グループは、税務上の便益が実現する可能性が高いと判断した範囲内でのみ繰延税金資産を認識していますが、経営環境悪化に伴う中長期経営計画及び事業計画の目標未達等による将来における課税所得の見積りの変更や、法定税率の変更を含む税制改正などにより回収可能額が変動する可能性があります。なお、当期末における繰延税金資産(繰延税金負債との相殺前)の残高は3,071億円です。

 

 (新型コロナウイルス感染症及び足元のロシア・ウクライナ情勢が当社グループにおける重要な会計上の見積りに与える影響について)

新型コロナウイルス感染症及び足元のロシア・ウクライナ情勢が当社グループの非金融資産の減損及び繰延税金資産の回収可能性に与える影響については、鉄鋼需給構造の変化が新型コロナウイルスの影響で加速化し、さらに厳しい事業環境が継続すると仮定した中長期経営計画、最新の事業計画及び足元のロシア・ウクライナ情勢による多岐にわたる影響を勘案し会計上の見積りを行っています。この仮定は高い不確実性を伴っており、翌期以降において、仮定の見直しにより、見積り額及び財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

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