課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは持株会社体制のもと、社会に貢献できる可能性をあらゆる角度から検討し、傘下の事業会社のそれぞれの特性と機能を活かし、活力と調和のとれたグループ経営を推し進めるとともに、世界市場をターゲットとした事業を展開してまいります。

 また、当社グループでは、2019年に創立75周年を迎えたことを機に、これまでの伝統を踏まえつつ、これからの当社グループの方針・理念をより明確にするため、あらたに下記のとおりMission, Vision, Yamato SPIRITを制定いたしました。

 


 

 鉄鋼事業・軌道事業ともに日本国内市場は成熟していることから、当社グループとしてこれからも更に発展していくために、需要が堅実な市場や今後インフラ投資の伸びが期待出来る新興国などに拠点を持ち、その国の成長に寄与していくと同時に成長の果実として収益を取り込んでいく所存です。このMission, Vision, Yamato SPIRITのもと、当社グループの成長の源泉が、海外事業にあることを改めて発信し、今後も海外事業を更に安定・発展・拡大させてまいります。そのためにも、モノづくり企業として技術、経営のベースである国内姫路の工場を当社の海外展開を支えるグループのマザー工場として位置付け、更なる基盤強化を推し進めるとともに、コスト競争力の強化、品質の安定と向上、デリバリーを含む顧客サービスの向上に不断の努力を続けてまいります。また、人材教育・育成にもより一層力を入れ、更なる事業の発展に努めてまいります。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社は、世界的な経済構造の激しい変革に対応できる経営方針として、事業の一極化をさけ、主に海外に事業投資を行い、投資の分散化を進めてまいりました。健全な財務体質を維持しつつ、将来の成長分野へ投資する方針であり、キャッシュ・フローを重視した経営を行ってまいります。なお、当社グループの業績は、製品販売価格と原材料価格の変動に大きく影響され、各々の市場価格は、国内外の経済情勢をはじめ外部環境に大きく影響を受けることから、中長期の収益計画は作成しておりません。

 短期的な業績の見通しにつきましては、ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルス感染症の再拡大が世界経済に与える影響、高騰した資源価格に加え、中国の粗鋼減産及び鉄鋼製品の輸出動向など、予断を許さない状況にあるものの、当社グループの主要製品であるH形鋼等の土木・建築用鋼材は需要・価格とも現時点では比較的安定した推移が見込まれており、各社の業績は概ね堅調を維持するものと予想しております。特に米国におきましては、旺盛な非住宅建設需要が継続していることから、米国の持分法適用関連会社の業績は、2021年度を上回る水準を見込んでおります。

 

 以上を踏まえ、次期の業績予想につきましては、売上高は193,000百万円、営業利益は14,000百万円、経常利益は79,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は56,000百万円を予想しております。

 

 なお、現時点での各国・地域の事業状況の前提は以下のとおりとしております。

 

日本

 形鋼需要が大型建築案件を中心に緩やかな回復基調にあるなか、積極的な新規顧客の開拓の効果もあり、販売数量は前期比で増加を見込んでおります。原料高及び電力料金・燃料費・物流コスト等の上昇により、当面の間はコスト高が先行する局面が予想されますが、コストアップの販売価格への反映を見込み、前期比で増収増益を予想しております。

 

タイ

 中国・韓国メーカー等のASEAN市場への輸出圧力が再び強まることが懸念されますが、ASEAN域内での建設活動の回復に伴う形鋼需要の拡大により、販売数量は前期比で増加を見込んでおります。また、鋼材マージンにつきましては、鉄スクラップ高を受け、前年下期の水準と比べると低下するものの、高い水準で安定的に推移するものと予想しております。一方で、資源価格や物流コスト等の上昇により収益性は下げ圧力が強まる見込みとなっております。業績につきましては、概ね前期並みを予想しております。

 

 米国

 足元では原料高等のコスト上昇要因があるものの、形鋼販売価格の値上げが顧客に受け入れられている状況となっております。形鋼や鉄骨等加工品の輸入量増加の懸念はありますが、堅調な非住宅建設需要を背景に高い利益水準が継続する見通しとなっております。業績につきましては、前期比増益を予想しております。

 

中東

 GCC域内での建設活動の本格的な回復には時間を要する状況に変化はありませんが、GCC域外からの輸入材の圧力低下や、鉄スクラップ高を背景とした鉄鋼製品・半製品価格の高値推移などの市場環境が維持される見通しとなっております。特に、足元では世界的な鉄鋼製品・半製品価格の上昇を受け、流通顧客に在庫積み増しの動きが見られております。業績につきましては、前期比増益を予想しております。

 

 ベトナム

 新型コロナウイルス感染症対策として実施されていたロックダウン措置は解除され、経済回復の兆しが見られていることから、建設活動や形鋼需要は徐々に回復に向かうことが予想されております。一方で、鉄スクラップ高を受け、鋼材マージンが圧迫される見込みから、業績につきましては、一定の収益を確保する見通しながらも、前期比では減益を予想しております。

 

韓国

 住宅建設の先行指標が良好に推移していることから、堅調な鉄筋需要が継続する見通しとなっております。原料高等のコスト上昇の影響を受けるものの、堅調な鉄筋需要を背景に鉄筋価格の値上げが浸透する見込みであります。また、大韓製鋼社との製販両面での連携強化が進むことから、前期比増益を予想しております。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、グローバルな鉄事業を通して、国際社会の発展や豊かな地域社会の実現に貢献するため、更なる事業成長を図るとともにサステナブルな社会の実現に向けた取り組みを継続してまいります。

 更なる事業成長に向け、当社グループは、成長の源泉である海外事業を更に安定・発展・拡大させていく所存です。そのためにも、グループのマザー工場であるヤマトスチールにおいて、積極的に最新技術・設備を導入し、安全性の向上、コスト競争力の強化、品質の安定と向上に取り組み、国内事業の基盤強化を推し進めるだけでなく、そこで培ったノウハウをグループ展開することで海外事業の更なる発展を実現してまいります。また、それを支える人材教育・育成にもより一層力を入れてまいります。これら取り組みの一環として、圧延ライン更新などの戦略的設備投資をここ数年掛けて実施する計画としております。

 海外におきましては、成長市場であるASEAN地域を米国事業に次ぐ第二の収益の柱に育成すべく、ASEANでの形鋼300万トン体制構築を目指してまいります。具体的には、既存拠点であるタイのサイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッドを当社ASEAN展開のマザー工場と位置付け、技術力の向上と競争力の強化を図るために圧延ラインの戦略的更新を計画しております。また、ベトナムのポスコ・ヤマト・ビナ・スチールジョイントストックカンパニーにおきましては、操業改善の継続に加え、今後成長が見込まれるベトナム国内の形鋼需要に対応すべく、上工程の製鋼能力の余剰を活用した中小型形鋼圧延ラインの増設を合弁パートナーとともに検討していく所存です。これら既存の海外拠点の充実に加え、M&Aを通じたASEAN地域での新拠点の獲得にも積極的に取り組んでまいります。

 なお、当社グループにおきましては従来から鉄鋼製品製造会社間で技術会議を定期的に開催し、技術情報の交換と技術向上に努めておりますが、人材育成面や更なる技術交流の機会を創出していくためにも、海外の関係会社と姫路のヤマトスチール株式会社との間でエンジニアの交流等を一層活発化させることでグループの技術情報の共有及び人材の底上げを図り、競争力の強化にも努めていく所存です。

 サステナブルな社会の実現におきましては、当社グループは社会的公正性の実現や地域貢献、環境への配慮を経営のなかに組み込んでいくことが、企業における最も基本的なCSR活動であるとの認識のもと、安全で品質のよい製品の提供により社会に貢献し、サーキュラーエコノミーの重要な担い手として環境保全への配慮に重点を置いた事業活動を行っています。

 これらの取り組みをESG(環境、社会、ガバナンス)の観点から一層強化すべく、「CSR委員会」を設置し、2025年度をターゲットとした「CSR中期計画」を策定しております。当社グループは、6つのマテリアリティ「1.気候変動」「2.資源循環」「3.環境配慮型商品」「4.製品責任」「5.人材育成」「6.企業経営の基盤」に基づき、中期的な視点から活動を推進してまいります。

 なお、6つのマテリアリティのうち「1.気候変動」につきましては、2022年4月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同いたしました。当社グループの国内事業を対象としたガバナンス体制、リスクマネジメント、戦略、指標とターゲットにつきましては以下のとおりです。

 

気候変動関連のガバナンス体制

 当社グループは定期的に開催されるCSR委員会※1の環境部会において審議された気候変動問題に関する事項を、その都度、大和工業株式会社の取締役会に報告しております。取締役会は事業計画や年度予算などを検討する際、気候変動が経営に与えるリスク、機会といった影響を考慮し判断しております。また、取締役会はCSR委員会がCSR中期計画の重要テーマとして定めた「気候変動」に関する目標や進捗を点検、監督しております。

  CSR委員会の委員長は大和工業の代表取締役社長が、また環境部会の推進責任者はヤマトスチール株式会社執行役員安全環境管理部長が務めております。

※1 通常は年に1度の開催としているが、2021年度は立ち上げ時期のため2カ月に一度程度開催

 


 

気候変動に関わるリスクマネジメント

 当社グループは、事業における気候関連リスクをTCFDの提言に沿って、移行リスク、物理的リスクに分類し、さらに短・中・長期の時間軸及び関連する法規制等を考慮したうえで重要性を検証し、リスクを評価いたしました。リスク評価については、取締役・監査役が参加する経営会議において検討・協議の上、決定いたしました。

 

 

気候変動関連の戦略

<シナリオ分析の前提>

 シナリオ分析においては、パリ協定目標やIPCCの第6次評価報告書を踏まえつつ、低炭素移行シナリオである2℃シナリオと、より高い温暖化結果とより重大な物理的影響を予測する4℃シナリオを軸に検討いたしました。なお、今後は「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑える努力を追求する」と示すパリ協定目標を踏まえ、1.5℃に向けた移行シナリオについても検討を重ねていく考えであります。

 

世界平均地上変化予測(1986~2005年平均との差)

 


 

(出典)IPCC第5次評価報告書

 

<シナリオ分析の範囲>

 シナリオ分析に当たっては、日本政府が掲げる温室効果ガス削減目標(2030年度46%削減、2050年度カーボンニュートラル実現)を踏まえ、2050年までの中長期の時間軸で検討を行っております。

 

① 日本国内

② 事業に与える可能性が高い気候変動に伴うリスクと機会

③ バリューチェーン全般にわたる潜在的な気候変動の影響

を分析範囲といたしました。

 

現時点での分析内容は以下の通りであります。

 

気候変動関連シナリオ分析


※2 2℃シナリオ:産業革命時期に比べて気温の上昇を2℃以下に抑制するために必要な対策が講じられるシナリオ

※3 4℃シナリオ:気候変動に対して特別な対策が講じられず平均気温が4℃程度上昇するシナリオ

 

指標とターゲット

シナリオ分析に基づき、気候変動関連の指標とターゲットとしてCSR中期計画の中で中期目標と短期アクションを設定し、CSR委員会で進捗状況を把握・検証し取締役会に報告しております。CO2排出量削減目標については、当社グループの事業特性やこれまでの取り組み状況、今後の社会動向を勘案し、まずは国内事業を対象とし、2025年をターゲットにScope1、2において2013年比38%削減を目標として設定しております。

 

その他、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みについては、当社ホームページをご参照ください。(https://www.yamatokogyo.co.jp/yamato/yamato1/csr/index.html)

 

 

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