業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国の経済状況は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により依然として厳しい状況が続いておりましたが、ワクチン接種の普及や政府・自治体の諸施策等により、経済社会活動は緩やかながら正常化に向かう兆しもみられました。しかしながら、ウッドショックによる建築資材の高騰、世界的な資源価格の高騰、ウクライナ情勢の緊迫化等が、国内外の様々な活動に大きな影響を及ぼしており、先行き不透明な状況が続くことが予想されます。

当社グループの主要な事業領域である国内の住宅市場においては、新型コロナウイルス感染拡大防止のための自粛からの反動、テレワーク普及による働き方・暮らし方の変化もあり、当連結会計年度の新設住宅着工戸数(※)の合計は425,403戸(前年同期比8.4%増)となりました。持家の着工戸数は281,279戸(前年同期比6.9%増)、分譲住宅(一戸建て)の着工戸数は144,124戸(前年同期比11.4%増)といずれにおいても増加となっております。

当社グループの主要な事業である地盤解析サービス・地盤調査サービス・部分転圧工事サービスにおいては、事業規模拡大に向け営業体制の見直しを図り、人員増等の先行投資を第1四半期より実施しており、10月4日に中部エリアにおける事業拡大を目的に中部支社を開設いたしました。また、地盤沈下事故ゼロへの取り組みとして、解析品質の向上のための解析マニュアル及び地盤調査基準書並びに地盤改良工事基準書の改定を実施しました。

新たな事業の拡大と利益確保のため、個人のお客様向けに地盤解析技術及び業務品質の高さを証明する地盤品質証明書の発行と不同沈下の際の補償が行えるサービスの開発に取り組み、新サービス「The Future 10」を4月1日に開始できる準備を整えました。従来の個人のお客様向けサービスである「地盤カルテ®PLUS」及び「地盤セカンドオピニオン®ForYOU」は地盤の良し悪しを判断するための解析結果のみを提供するサービスでしたが、「The Future 10」では、解析結果だけではなく、地盤品質証明書と不同沈下事故が発生した際の補償についても提供できるようになり、より一歩、生活者の不利益解消に向けて前進いたします。

住宅関連サービスにおいては、安全な地盤が多い郊外への住み替えに対応し、中古住宅の仕入・リフォームを行い、個人のお客様に販売を行う「買取再販事業」を拡大しました。また、郊外で災害リスクを減らし安全安心な豊かな暮らしを実感していただくためのコンセプトハウスを地盤の良い埼玉県飯能市で建築を開始しました。コンセプトハウスは6月に完成し、このコンセプトハウスを活用し、各種地盤調査、耐震設計、設計図と完成時のギャップを解消するためのBIMを活用した3Dパース(完成予想図)・ウォークスルー動画・VR等の当社グループの各サービスを総合的に提供する事で実現できる、地盤から考える安全安心な豊かな暮らしのための家づくりを当社グループの提携事業者と一緒に提唱してまいります。

 

(※)国土交通省「建築着工統計調査報告」より、当社グループの事業領域である、持家と分譲住宅(一戸建て)の戸数を合算して、新設住宅着工戸数としております。

 

これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

(資産の部)

当連結会計年度末の資産合計は1,760,339千円となり、前連結会計年度末に比べ43,050千円増加いたしました。流動資産は1,642,109千円となり、前連結会計年度末に比べ68,744千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が367,180千円増加、未成工事支出金が41,153千円増加、有価証券が256,120千円減少、未収入金が116,263千円減少したことによるものであります。固定資産は118,230千円となり、前連結会計年度末に比べ25,694千円減少いたしました。これは主に、ソフトウエアが9,207千円増加、長期貸付金が34,051千円減少したことによるものであります。

 

 

(負債の部)

当連結会計年度末の負債合計は520,106千円となり、前連結会計年度末に比べ80,908千円増加いたしました。流動負債は335,283千円となり、前連結会計年度末に比べ66,145千円増加いたしました。これは主に、工事未払金が11,789千円増加、未成工事受入金が85,938千円増加、未払金が37,376千円減少したことによるものであります。固定負債は184,822千円となり、前連結会計年度末に比べ14,763千円増加いたしました。これは主に損害補償引当金が14,822千円増加したことによるものであります。

 

(純資産の部)

当連結会計年度末の純資産合計は1,240,233千円となり、前連結会計年度末に比べ37,858千円減少いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失46,639千円の計上、為替換算調整勘定が8,494千円増加したことによるものであります。

 

b.経営成績

当連結会計年度における経営成績は、売上高2,216,980千円(前年同期比11.4%増)となりました。なお、当社グループは、地盤解析を主な事業とする単一セグメントで事業活動を営んでおります。サービス別の売上高は以下のとおりです。

 

サービス

  前連結会計年度
(自  2020年4月1日
 至  2021年3月31日)

 当連結会計年度
(自  2021年4月1日
 至  2022年3月31日)

前年同期比

金額

(千円)

構成比

(%)

金額

(千円)

構成比

(%)

増減額
(千円)

増減率(%)

地盤解析サービス

794,953

40.0

757,587

34.2

△37,365

△4.7

地盤調査サービス

491,261

24.7

549,716

24.8

58,454

11.9

部分転圧工事サービス

210,110

10.6

250,591

11.3

40,480

19.3

住宅関連サービス

274,487

13.8

355,276

16.0

80,788

29.4

その他サービス

218,981

10.9

303,808

13.7

84,827

38.7

合計

1,989,794

100.0

2,216,980

100.0

227,185

11.4

 

 

(地盤解析サービス・地盤調査サービス・部分転圧工事サービス)

新設住宅工事において初期に実施される地盤調査サービスは、新設住宅着工戸数の増加に伴う受注件数の増加により、売上高は549,716千円(前年同期比11.9%増)となりました。

部分転圧工事サービスは、新設住宅着工戸数の増加と工事施工体制の拡大により受注件数が増加し、売上高は250,591千円(前年同期比19.3%増)となりました。

一方で、地盤解析サービスにおいては、受注件数は前年同期比で1.0%増となりましたが、新設住宅着工戸数の増加ほど拡大せず、また、競合他社の影響による平均単価の下落により、売上高は757,587千円(前年同期比4.7%減)となりました。

 

(住宅関連サービス)

「地盤適合耐震住宅」「地盤適合耐震リフォーム」の提唱による受注拡大のための取り組みを行いました。その影響に加え、当連結会計年度より開始した「買取再販事業」の売上を計上したことにより、売上高は355,276千円(前年同期比29.4%増)となりました。

 

(その他サービス)

BIMを活用した3Dパース(完成予想図)・ウォークスルー動画・VRの提供を含むBCPOサービスが、ウィズコロナ、アフターコロナにおける有効な営業ツールとして工務店・ビルダーの利用が進みました。さらに今までの戸建業者に加え、ディベロッパーの利用にも繋がり、商業施設や集合住宅の案件も増加しました。その結果、その他サービスに含まれるBCPOサービスの売上高は198,858千円(前年同期は112,666千円 76.5%増)となり、その他サービス全体の売上高は303,808千円(前年同期比38.7%増)となりました。前連結会計年度に引き続き、BIMサービスは当社グループの成長のための主要サービスと位置付け、ダナンBCPOセンターにおける投資を継続し、今後も拡大に取り組んでまいります。

 

販売費及び一般管理費が前年同期に比べ88,771千円増加し817,060千円となった結果、営業損失29,729千円(前年同期は営業利益87,888千円)となりました。

営業外損益では、受取利息1,146千円、有価証券売却益6,647千円を計上したこと等による営業外収益12,850千円、為替差損10,078千円を計上したこと等による営業外費用11,836千円により、経常損失28,715千円(前年同期は経常利益91,684千円)となりました。

親会社株主に帰属する当期純損失は、住宅関連サービスに係る減損損失1,716千円、法人税、住民税及び事業税18,233千円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失46,639千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失33,943千円)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ367,180千円増加し、918,046千円となりました。各キャッシュ・フローの状況と要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、獲得した資金は106,394千円(前年同期58,171千円の使用)となりました。これは主に税金等調整前当期純損失30,604千円、減価償却費27,040千円、貸倒引当金の減少9,321千円、売上債権の増加30,560千円、棚卸資産の増加34,339千円、未払金の減少43,363千円、未払消費税の減少11,439千円、損害補償引当金の増加14,822千円、未収入金の減少112,913千円、前払費用の減少41,911千円、未成工事受入金の増加85,938千円、法人税等の支払8,350千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、獲得した資金は255,675千円(前年同期23,896千円の使用)となりました。これは主に有価証券の売却による収入263,162千円、貸付金の回収による収入33,612千円、無形固定資産の取得による支出20,173千円、敷金及び保証金の差入による支出9,928千円、有形固定資産の取得による支出9,146千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は18千円(前年同期161,352千円の獲得)となりました。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の分析

当社グループは売上高伸び率と売上高営業利益率、ROE(自己資本利益率)を重要な経営指標として採用しております。

(重要な経営指標 推移)

回次

第10期

第11期

第12期

第13期

第14期

決算年月

2018年3月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

売上高伸び率(%)

△1.2

△8.2

△2.3

△17.0

11.4

売上高営業利益率(%)

3.0

1.5

1.6

4.4

△1.3

ROE(%)

4.6

1.2

△7.8

△2.6

△3.7

 

※ROEは以下の計算式により算出しております。

  ROE = 親会社株主に帰属する当期純利益 / 自己資本

 

売上高伸び率に関しては、2018年3月期から4期連続でマイナスとなっておりましたが、当連結会計年度において前年比11.4%とプラスに転じました。当連結会計年度においては営業体制強化のための先行投資を実施しており、その効果が表れてきております。

売上高営業利益率に関しては、先行投資での費用増加と原価の上昇により、マイナス1.3%となりました。原価の上昇については、新たな保険会社と損害保険契約を締結し、翌連結会計年度での原価低減とリスクの分散を図っております。

ROEに関しては、営業損失を計上したことに起因し、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したため、マイナス3.7%となりました。3期連続でのマイナスとなっておりますが、翌連結会計年度は6.5%と想定しております。

 

b.財政状態の分析

当連結会計年度の財政状態については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金需要は営業活動に伴う費用であり、この資金需要につきましては、営業活動から得られる自己資金を源泉としております。当社グループの持続的な成長と企業価値向上を目的とした投資資金需要が生じた場合は、内部資金に加え、金融機関からの借入を中心に機動性と長期安定性を重視した資金調達を実施することとしております。なお、金融機関には十分な借入枠を有しております。

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

(繰延税金資産の回収可能性)

繰延税金資産は、将来減算一時差異の解消により、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると認められる範囲を回収可能性があると判断し計上しております。具体的には、将来の一時差異解消スケジュール、タックス・プランニング及び収益力に基づく課税所得の見積り等に基づいて判断しております。これらは主に事業計画を基礎として見積っておりますが、当事業計画に含まれる将来の収益及び費用は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 追加情報(新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積り)」に記載した一定の仮定に基づき予測しており、不確実性を伴っております。そのため、実際の経済環境や損益の状況が一定の仮定と大きく乖離した場合には、翌連結会計年度の繰延税金資産の回収可能性に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(損害補償引当金)

当社グループは、地盤解析サービスにおいて、地盤品質証明書を提供しており、地盤品質証明書を発行した住宅において、万が一、住宅が傾く不同沈下等の地盤事故が発生した場合には、地盤修復工事費用及び住宅の損害等を補償します。また、当該補償に備え、保険会社と保険契約を締結しております。

損害補償引当金は、地震リスク分析に基づく期待損失や過去の実績等の客観的データ及び保険契約の内容に基づき合理的な見積額を計上しておりますが、地震リスクの変動や保険内容の見直し等により見積額が変動するため、不確実性を伴っており、翌連結会計年度の連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

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