業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

当連結会計年度(2021年7月~2022年6月)における世界経済並びに日本経済は、新型コロナウイルス感染症による影響が長期化し、国内では2021年7月から9月には第5波による第4回目の緊急事態宣言が都市部で発出され、また2022年1月から3月には第6波によるまん延防止等重点措置が発出される等、経済活動に大きな影響を与えました。加えて2022年2月下旬からのロシアのウクライナ侵攻による地政学上のリスク、2022年3月以降の中国上海等でのロックダウンに加え、エネルギー・原料価格の高騰とその沈静化対策としての米国などにおける金融引き締め政策、それらの影響による円安ドル高等による国内消費の減退懸念などにより、期待されていた景気拡大に不透明感が高まっている状況です。

当社グループが属するライフサイエンス業界においては、新型コロナウイルス感染症対策としての治療薬・ワクチン等の開発に加え、免疫力向上等の感染症予防を促進するための機能性表示食品開発といった健康管理へのニーズの高まりを受けた研究開発が引き続き増加していると思われます。

このような状況の中、当社グループではWebを活用した営業活動を精力的に行うことで先端研究開発支援事業の受注拡大を図りました。付加価値の高い高感度網羅解析サービスの拡販を行うことで、受注が大幅に増加し、それに伴い売上も増加いたしました。また引き続き一般管理費の削減にも取り組みました。特に2021年12月に欧州子会社の閉鎖が完了したことが、一般管理費削減に大きく貢献しました。

ヘルスケア・ソリューション事業においては引き続き大うつ病性障害(以下「うつ病」といいます。)バイオマーカーの事業化に向けた研究開発を継続するとともに、新規事業開発等にも継続して取り組みました。2021年12月にはバイオマーカー探索の新サービスとしてメタボロインデックスを上市し、2022年5月には皮膚ガス測定サービスを開始いたしました。

 これらの結果、当連結会計年度の売上高は、1,223,281千円(前年同期比8.8%増)となりました。一般管理費削減等に努めた結果、当連結会計年度の営業利益は191,150千円(前年同期比385.5%増)となりました。また急激な円安による米国子会社への融資等に係る為替差益46,092千円の計上等により、経常利益は253,078千円(前年同期比325.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は267,785千円(前年同期比360.0%増)と大幅な増収増益となりました。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載したとおり、当連結会計年度での直接的な影響は軽微であったと考えております。

 

 

2021年6月期

2022年6月期

増減率

売上高

1,124,067千円

1,223,281千円

8.8%

営業利益

39,368千円

191,150千円

385.5%

経常利益

59,503千円

253,078千円

325.3%

親会社株主に帰属する当期純利益

58,214千円

267,785千円

360.0%

 

 

セグメント別には、次のとおりであります。

<先端研究開発支援事業>

 

2021年6月期

2022年6月期

増減率

売上高

1,119,593千円

1,220,425千円

9.0%

(内国内売上高)

926,362千円

1,028,794千円

11.1%

(内海外売上高)

193,230千円

191,630千円

△0.8%

セグメント利益

141,349千円

331,992千円

134.9%

 全社的にアカデミア分野では、医歯薬系の基礎研究においてメタボロミクスがより幅広く活用された結果、大きく売上増加に貢献しました。また製薬分野と化学その他の分野も大きく伸長いたしました。製薬分野は、会計年度における大型プロジェクトの需要の変動の影響もありますが、高感度網羅解析サービスや脂質解析サービスへの需要が拡大いたしました。化学その他の分野では、化粧品の研究開発などへの需要が拡大いたしました。さらにSDGsへの取り組みを進めるための基礎研究開発でもメタボロミクスが活用されるようになり、新規の取引企業も増加いたしました。

 また海外事業につきましては、米国では、アカデミア、製薬企業からの受注が堅調に推移したことに加え、培養肉研究開発へのメタボロミクスの活用が一層拡大した結果、食品分野での売上も増加しました。一方でアジア・パシフィック地域では新型コロナウイルス感染症による影響を受けて、十分な営業活動ができない中、大きく受注が減少し、売上も減少いたしました。この結果、売上高は1,220,425千円(前年同期比9.0%増)となりました。セグメント利益も、売上増加に加えて、欧州子会社の閉鎖などによる一般管理費の大幅削減などにより大幅に増加し、331,992千円(前年同期比134.9%増)となりました。

 

<ヘルスケア・ソリューション事業>

 

2021年6月期

2022年6月期

増減率

売上高

4,474千円

2,856千円

△36.2%

(内国内売上高)

4,474千円

2,856千円

△36.2%

(内海外売上高)

-千円

-千円

セグメント損失(△)

△101,980千円

△140,842千円

当事業セグメントにおいては、PEA(うつ病バイオマーカー)の共同研究・共同開発及び研究用検査受託の拡大等を継続いたしました。2021年12月にはバイオマーカー探索サービスとしてメタボロインデックスを上市し、2022年5月には業務提携による皮膚ガス測定サービスを開始いたしました。これら以外にも新規事業としてのヘルスケア・ソリューション開発支援の研究開発を推進いたしました。

研究用検査受託等を継続した結果、売上高は2,856千円(前年同期比36.2%減)、セグメント損失は、研究開発投資を増加した結果、140,842千円(前年同期は101,980千円のセグメント損失)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ259,693千円増加し、1,504,744千円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは324,033千円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益261,911千円の計上及び減価償却費64,896千円の計上等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは152,314千円の支出となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出141,973千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは80,491千円の収入となりました。これは短期借入金が100,000千円増加したこと等によるものであります。

 

③ 財政状態の分析

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産は1,741,967千円となり、前連結会計年度末に比べ285,073千円増加しました。これは、営業キャッシュ・フローの改善並びに短期借入金の増加等により現金及び預金が259,693千円、受注が好調に推移したことにより仕掛品が11,796千円増加したこと等によるものであります。

 

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産は326,761千円となり、前連結会計年度末に比べ160,485千円増加しました。これは、最新の測定機器の導入に伴い工具、器具及び備品が111,025千円、建物及び構築物が35,500千円、繰延税金資産の回収可能性を検討した結果、繰延税金資産が36,627千円増加した等によるものであります。

 

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債は546,279千円となり、前連結会計年度末に比べ228,952千円増加しました。これは、短期借入金が100,000千円、未払金が69,238千円、未払法人税等が16,929千円及び賞与引当金が40,089千円増加したこと等によるものであります。

 

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債は35,871千円となり、前連結会計年度末に比べ9,841千円減少しました。これは、リース債務が9,864千円減少したこと等によるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は1,486,577千円となり、前連結会計年度末に比べ226,448千円増加しました。これは、為替換算調整勘定が33,393千円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益267,785千円を計上したこと等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

(1) 生産実績

 生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2020年7月1日

  至 2021年6月30日)

当連結会計年度

(自 2021年7月1日

  至 2022年6月30日)

生産高(千円)

生産高(千円)

 先端研究開発支援事業

1,920

3,187

合計

1,920

3,187

(注)1.上記の金額は、先端研究開発支援事業のうち、試薬キットに係る部分を記載しております。

2.その他研究開発支援事業及びヘルスケア・ソリューション事業については、業務の性質上生産として把握することが困難であるため、記載しておりません。

 

(2) 仕入実績

 仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2020年7月1日

  至 2021年6月30日)

当連結会計年度

(自 2021年7月1日

  至 2022年6月30日)

仕入高(千円)

仕入高(千円)

 先端研究開発支援事業

17,976

20,150

合計

17,976

20,150

(注)1.上記の金額は、先端研究開発支援事業のうち、限外ろ過フィルターに係る部分を記載しております。

2.その他研究開発支援事業及びヘルスケア・ソリューション事業については、業務の性質上仕入として把握することが困難であるため、記載しておりません。

 

(3) 受注実績

 受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2020年7月1日

  至 2021年6月30日)

当連結会計年度

(自 2021年7月1日

  至 2022年6月30日)

受注高(千円)

受注残高(千円)

受注高(千円)

受注残高(千円)

 先端研究開発支援事業

996,967

199,325

1,400,598

398,361

 ヘルスケア・

 ソリューション事業

4,474

3,000

2,856

3,000

合計

1,001,442

202,325

1,403,454

401,361

 

(4) 販売実績

 販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2020年7月1日

  至 2021年6月30日)

当連結会計年度

(自 2021年7月1日

  至 2022年6月30日)

販売高(千円)

販売高(千円)

 先端研究開発支援事業

1,119,593

1,220,425

 ヘルスケア・

 ソリューション事業

4,474

2,856

合計

1,124,067

1,223,281

(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10に満たないため、記載しておりません。

 

(2) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表において、損益又は資産の状況に影響を与える見積りの判断は、一定の会計基準の範囲内において、過去の実績や判断時点で入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 売上高につきましては、先端研究開発支援事業においては、Webを活用した営業活動を精力的に行うこと、付加価値の高い高感度網羅解析サービスの拡販を行うことで、受注が大幅に増加し、それに伴い売上も増加いたしました。これらの結果、先端研究開発支援事業において当連結会計年度末の受注残高は398,361千円(前連結会計年度末は199,325千円)となりました。ヘルスケア・ソリューション事業においては、引き続き大うつ病性障害バイオマーカーの事業化に向けた研究開発を継続するとともに、新規事業開発等にも継続して取り組みました。2021年12月にはバイオマーカー探索の新サービスとしてメタボロインデックスを上市し、2022年5月には皮膚ガス測定サービスを開始いたしました。これらの結果、当社グループ全体の売上高は1,223,281千円となりました。

 生産面では先端研究開発支援事業においては、設備増強に伴う減価償却費及び新サービス売上増加に伴う外注費の増加等で売上原価が増加しました。

 販売費及び一般管理費につきましては、効率的な営業活動を推進したこと、人員配置の最適化を進めたこと、欧州子会社の閉鎖手続き完了による一般管理費の大幅な削減等により、大幅なコスト削減を行うことができました。これらの結果、営業利益は191,150千円、経常利益は253,078千円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は267,785千円となりました。営業外収益として、急激な円安により当社が保有する外貨建資産及び在外連結子会社の債権債務などにかかる為替差益46,092千円を計上しております。

 当社グループ全体といたしましては、持続的に収益を計上できる企業体質へと転換が進んだと考えております。引き続き必要な投資は継続しつつ、収益の持続的成長に向けた取り組みを推進してまいります。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 資金の財源及び資金の流動性について

 当社グループは、新サービス・新事業開発のための研究開発資金や、最先端の測定解析を可能とする設備購入のための資金、需要の繁閑に伴う短期的な運転資金などの資金需要が発生します。これらに対し、保有する現預金などの自己資本で研究開発投資、設備投資並びに運転資金需要に対応することを基本としています。必要に応じて主に新規研究開発事業への投資等に必要な資金は新株発行等により調達し、設備投資や短期的な運転資金については、銀行借入により調達いたします。

 

⑤ 新型コロナウイルス感染症による経営成績等への影響について

 新型コロナウイルス感染症の影響については、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載したとおり、当連結会計年度での直接的影響は生じておりません。

 今後の状況につきましては、現在の政府の感染対策方針に基づき経済優先の施策が継続することを前提にいたしますと、研究開発などに大きな影響を与える可能性は低いと考えられます。
 新型コロナウイルス感染症の更なる拡大を考慮し、業績への影響については引き続き注視してまいります。

 

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