業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」とい

う。)の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日2022年6月28日現在において判断したものです。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、以下のような状況や変化がありました。

・医療関連受託事業においては、病院を中心とした医療機関における医療事務の外部委託ニーズが安定して推移しました。加えて、政府による医師の働き方改革推進により、医師事務作業補助者の派遣ニーズの高まりが顕著に見られました。

・介護事業においては、高齢化を背景に介護サービスの需要は着実に増加しており、2021年の国内の75歳以上人口は1,880万人となり、前年と比較して9万人増加(出典:総務省「人口推計」)しました。

・新型コロナウイルスの感染拡大は、引き続き社会・経済や生活環境に大きな影響を与えました。介護業界においてはデイサービスを中心にご利用者様のサービスの利用控えが散見され、オミクロン株の感染が拡大した2022年1月以降はその動向が顕著に見られました。

・雇用の環境は、依然として新型コロナウイルス感染拡大の影響により回復が鈍く、2021年平均の有効求人倍率は1.13倍(季節調整値)となり3年連続で低下(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」)しました。 一方、介護分野の有効求人倍率は3倍を超える高い水準にある等、医療事務・介護・保育業界において適時適切な人材の採用は引き続き重要課題となっています。

 

 このような事業環境の中、当社グループは、「イノベーション」、「既存事業の持続的成長」、「経営基盤の底上げ」を2021年度の重点取り組みテーマとして掲げ、各施策を推進しました。

 「イノベーション」では、スマートホスピタル事業を新たに立ち上げ、ひととICTによる医療DXパッケージ「iisy」(イージー)の開発を進めました。そして、「iisy」のサービス第1弾として2021年6月より「リ モート医事サービス」の提供を開始し、サービスクオリティの向上やサービス提供体制の拡大に向けて先行投資を積極的に推進しました。また、科学的介護の実現への取り組みとして企業、団体、大学等との共同研究を推進しており、介護が必要な方のADL(日常生活動作)向上を目的とした身体機能可視化の研究等を実施しました。

 「既存事業の持続的成長」では、保育事業で3件のM&Aを実行し、前年度末18ヶ所だった保育施設数が66ヶ所と3倍以上の規模になりました。介護事業のM&Aも継続して実行しており、事業所数は前年度末より15ヶ所増加しました。また、医療関連受託事業の派遣事業では、医師事務作業補助者をはじめとする派遣ニーズの高まりを着実に捉え、営業活動を強化した結果、売上高が前年比24.4%増加しました。これらに加え、全事業を通じてWEB採用やオンライントレーニング等のITを活用した採用力・育成力の強化を進めました。

 「経営基盤の底上げ」では、リスクマネジメント・コンプライアンスの観点で、介護事業所内での事故防止を目的とした教育・研修の強化、見守りカメラ増設を含めた監視機能強化等の取り組みを進めました。また、介護事業において各事業所で行っていた事務業務を本社集約やIT活用により効率化することで費用削減に貢献しました。

 

 なお、当社グループの主要事業である医療関連受託事業、介護事業、保育事業は、いずれもエッセンシャル サービスとして社会機能を維持するために必要不可欠な事業です。新型コロナウイルス禍においては、各種の感染対策を講じながら顧客の安心・安全を確保するとともに、社員の安全にも十分に留意して事業を継続することが平常時にも増して重要な社会的役割を果たすこととなりました。

 

 以上の結果、2021年度は、医療関連受託事業及び介護・保育事業がともに堅調に推移したことで、新型コロナウイルスの影響があったものの、9年連続の増収増益を達成しました。売上高は前年比10.4%増加の117,239百万円となりました。営業利益は前年比4.2%増加の6,319百万円となりました。経常利益は前年比3.6%増加の6,297百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、介護・保育事業において減損損失を計上したことを主因に前年比1.0%減少の3,502百万円となりました。

 

 2021年度の業績結果は以下のとおりです。

(単位:百万円)

 

2020年度

2021年度

増減

増減率

売上高

106,182

117,239

+11,057

+10.4%

営業利益

(同率)

6,062

(5.7%)

6,319

(5.4%)

+257

 

+4.2%

 

経常利益

(同率)

6,075

(5.7%)

6,297

(5.4%)

+221

 

+3.6%

 

親会社株主に帰属する当期純利益

(同率)

 

3,538

(3.3%)

 

3,502

(3.0%)

 

△35

 

 

△1.0%

 

 

<事業セグメント別の状況>

[医療関連受託事業]

 医療関連受託事業は、サービスクオリティの維持・向上、生産性の改善を目的としたトレーニングやIT活用等の取り組みを継続的に推進しています。当連結会計年度においては、新型コロナウイルス関連業務の受注に加え、既存の請負事業や派遣事業の売上が増加したこと等により、売上高は前年比8.4%増の66,042百万円となりました。営業利益は、引き続き処遇改善に努める一方で、増収による増益、生産性改善のほか、前年度第1四半期に支給した慰労金の反動等により、前年比9.5%増の8,450百万円となりました。

 

[介護・保育事業]

 介護事業は、2020年10月に株式会社日本エルダリーケアサービス及び株式会社ファイブシーズヘルスケアを子会社化したこと等により増収増益となりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響としては、当連結会計年度においてもデイサービスを中心としたご利用者様のサービス利用控えや事業所の一時休業の発生が継続しました。サービス利用控えの状況は、依然として新型コロナウイルス感染拡大前の水準には至らないまま推移しており、一時は感染者数の減少に伴い回復傾向にあったものの、オミクロン株の感染急拡大により、再度悪化しました。

 保育事業は、2021年4月に認可保育所2ヶ所を新規開設したことに加え、認証保育所1ヶ所を認可保育所に移行したこと等により園児数が増加しました。また、2022年2月に株式会社こころケアプラン、はぐはぐキッズ株式会社、2022年3月に株式会社なないろの計3社を子会社化しました。これにより当社が運営する保育施設数(2022年3月末時点)は前年より48ヶ所増加し、66ヶ所となりました。

 以上の結果、介護・保育事業の売上高は前年比13.3%増の50,681百万円、営業利益は前年比22.2%増の2,797百万円となりました。

 

介護事業所数及び保育施設数

 

2021年3月末

2022年3月末

増減

介護事業所数

633

648

+15

保育施設数

18

66

+48

 

[その他]

 教育事業は、2021年度の介護報酬改定に伴い、通信講座や教材の刷新等が売上に寄与しましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で法人向けサービスの営業活動が滞ったこと等により売上が減少しました。

 スマートホスピタル事業は、2021年6月に医療機関へのリモート医事サービスの提供を開始し、2022年3月31日時点での申込契約件数が当初の目標であった100件を突破しました。損益面においては、サービスクオリティの向上やサービス提供体制の拡大に向けて先行投資を積極的に推進したことにより、当連結会計年度は損失を計上しました。

 以上の結果、その他の売上高は前年比1.6%減の516百万円、営業損失は352百万円となりました。

 

[全社費用]

 全社費用は、2021年7月に稼働を開始した勤怠・給与・販売管理システムの導入費用や減価償却費、その他 IT関連投資等により増加し、4,575百万円となりました。

[売上高]

(単位:百万円)

 

2020年度

2021年度

増減

増減率

医療関連受託事業

60,926

66,042

+5,115

+8.4%

介護・保育事業

44,730

50,681

+5,950

+13.3%

 

 

介護事業

42,303

47,602

+5,299

+12.5%

保育事業

2,427

3,078

+651

+26.8%

その他

524

516

△8

△1.6%

合計

106,182

117,239

+11,057

+10.4%

 

[営業利益]

(単位:百万円、( )内は営業利益率)

 

2020年度

2021年度

増減

増減率

医療関連受託事業

 

7,720

(12.7%)

8,450

(12.8%)

+729

 

+9.5%

 

介護・保育事業

 

2,288

(5.1%)

2,797

(5.5%)

+509

 

+22.2%

 

 

 

介護事業

 

2,033

(4.8%)

2,575

(5.4%)

+542

 

+26.7%

 

保育事業

 

255

(10.5%)

222

(7.2%)

△33

 

△13.1%

 

その他

 

44

(8.4%)

△352

(-)

△396

 

 

全社費用

 

△3,990

(-)

△4,575

(-)

△585

 

 

合計

 

6,062

(5.7%)

6,319

(5.4%)

+257

 

+4.2%

 

(注)上記<事業セグメント別の状況>に記載している“売上高”は、P.82「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」の“外部顧客への売上高”を、“全社費用”は“調整額”の数値を記載しています。なお、“調整額”は、主に報告セグメントに帰属しない費用等であり、各報告セグメントに配分していないものです。

 

  ②キャッシュ・フローの状況

 “営業活動によるキャッシュ・フロー”は、税金等調整前当期純利益5,641百万円に、のれん償却額等の非資金費用の計上及び法人税等の支払額等を加減した結果、5,519百万円の収入となりました。なお、前年は6,728百万円の収入でした。

 “投資活動によるキャッシュ・フロー”は、M&Aに伴う支出7,151百万円があったこと等により、7,446百万円の支出となりました。なお、前年は3,816百万円の支出でした。

 “財務活動によるキャッシュ・フロー”は、借入金による収支差が、短期借入金及び長期借入金の増加に伴い5,241百万円の収入となったことや配当金の支払額1,888百万円等により、3,201百万円の収入となりました。なお、前年は5,721百万円の支出でした。

 以上の結果、“現金及び現金同等物の期末残高”は前年度末より1,274百万円増加し、10,228百万円となりました。

 

③財政状態の状況

 前年度末と比較し、“資産の部”においては、株式会社プラス、株式会社こころケアプラン、はぐはぐキッズ株式会社及び株式会社なないろの子会社化による有形固定資産やのれんの増加等により、資産合計が10,641百万円増加しました。

 “負債の部”においては、M&A用の資金調達に伴う短期借入金及び長期借入金の増加等により、負債合計が8,964百万円増加しました。

 “純資産の部”においては、配当金の支払が1,889百万円あったものの、親会社株主に帰属する当期純利益3,502百万円を計上したこと等により、純資産が1,676百万円増加しました。

 

④資本の財源及び資金の流動性

 当社グループは中長期的な成長に向けて、M&AやICT投資等を積極的に推進していきたいと考えています。これらの資金需要には、営業活動から得た自己資金を最優先として対応する予定です。不足する分については、資本効率やリスク管理に配慮しながら、金融機関からの借入等を活用する予定です。

 当連結会計年度においては、今後の積極的なM&Aを支えるための安定的な資金調達を目的として、金融機関と総額100億円の当座貸越契約を締結しており、当連結会計年度末における当該契約に係る借入実行残高は30億円です。

 

⑤重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。これら連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わねばなりません。経営者は、以下に関する見積り及び判断について、継続して評価を行っており、過去の実績や状況に応じて合理的と思われる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っています。また、その結果は資産・負債の簿価及び収益・費用の報告数字についての判断の基礎となります。見積りには特有の不確実性が存在するため、実際の結果は、これら見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。

 

固定資産の減損処理

 当社グループは、キャッシュ・フローを生み出す最小単位として、支社、介護事業所及び保育施設を基本単位として資産のグルーピングを行っています。

 当該資産グループについて収益性の低下等により減損の兆候があると認められる場合には、資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって、減損損失の認識の要否を判定しています。判定の結果、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回り減損損失の認識が必要とされた場合、帳簿価額を回収可能価額(使用価値と正味売却価額のいずれか高い金額)まで減額し、当該帳簿価額の減少額を減損損失として認識します。

 当該資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの見積りは、当社グループが今後実施する施策に基づいた事業所等の稼働率及び利用者数の推移予測等を主要な仮定として策定した事業計画によっています。

 なお、翌連結会計年度の事業計画の策定にあたっての稼働率及び利用者数の推移予測では、新型コロナウイルス禍の事業運営が継続することを前提とし、翌連結会計年度第1四半期は当連結会計年度第4四半期からのオミクロン株の影響を受けるものの、翌連結会計年度を平均すると前連結会計年度(2020年度)第3四半期並の感染状況、緊急事態宣言発出等による大規模な行動制限が発生しないとの仮定を置いています。

 当社グループの業績が計画通りに推移しない場合には、将来キャッシュ・フローの見積りに重要な影響を及ぼす可能性があり、翌連結会計年度以降において追加の減損損失が発生する可能性があります。

 なお、当連結会計年度において、使用価値の算定に使用された割引率(税引前)は9.0%ですが、翌連結会計年度以降は変更される可能性があります。

 

⑥生産、受注及び販売の実績

[生産実績]

 該当事項はありません。

 

  [受注実績]

 該当事項はありません。

 

  [販売実績]

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

(単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年比

医療関連受託事業

66,042

+8.4%

介護・保育事業

50,681

+13.3%

報告セグメント計

116,723

+10.5%

その他

516

△1.6%

合計

117,239

+10.4%

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得