課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社グループは、年々重要度が高まる海洋石油・ガス開発の分野において、浮体式設備の設計・建造・据付、販売、リース及びオペレーションを中核事業とし、海洋石油・ガス開発プロジェクトに関わるトータルサービスを世界各国の石油開発会社に提供しております。

事業の展開にあたっては次の経営目標を掲げ、21世紀の資源エネルギーを支えるグローバル企業として、幅広く社会に貢献してまいります。

・ 浮体式設備の分野で、世界的に信頼される企業を目指します。

・ 浮体式設備の建造・販売、リース、オペレーション等の営業形態の多様化により、事業ポートフォリオの最適化を図り、当社グループの安定的発展を推進します。

・ 事業領域を拡大し、顧客に対してトータルソリューションを提供します。

・ 上記の企業活動を通じ、海洋開発事業の担い手として広く社会に貢献します。

 

(2) 経営環境等

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の停滞により、企業業績の悪化や個人消費の落ち込みなど、厳しい経済環境となりましたが、年後半には、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中で持ち直しの動きが見られました。世界経済も同様に、新型コロナウイルス感染症の全世界的蔓延の影響により経済活動の停滞が継続し、厳しい状況で推移したものの、年後半には総じて持ち直しの動きが見られました。

原油価格は、その時々の情勢により上下することはあったものの、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種の進展により経済活動が徐々に正常化に向かい、需要回復期待が強まったことや、OPECプラスによる協調減産などの影響もあり、1バレル50米ドルから80米ドル前後で推移しました。こうした環境下、世の中の脱炭素の流れは避けられないものの、安定したエネルギー供給を維持する観点から、石油会社による一定の深海油田開発プロジェクトは継続すると見られ、当社グループの主要事業である浮体式海洋石油・ガス生産設備に関する事業は、当社グループが強みを持つ超大水深大型プロジェクトにおいて、今後も安定した成長が期待されます。

しかしながら、当社グループを取り巻く事業環境は、脱炭素化、再生可能エネルギーの更なる普及、デジタル技術の進化など大きく変化しています。当社グループではこうした事業環境の変化を確実に捉え、既存事業で確実に収益を確保しつつ、浮体式洋上風力発電、海底資源開発、デジタルソリューション事業など、将来の収益源の育成を着実に進めてまいります。

 

(3) 経営戦略等

当社は、サステナブルな社会の実現に貢献することを当社の長期ビジョンとして描くとともに、「本業の収益力徹底強化」、「新規事業の研究開発・育成への投資」及び「環境・社会的要請への取組」という3つの中長期戦略の実現を目指します。

2021年からの3カ年の新たな中期経営計画においては、重要テーマとして①アセット・インテグリティ(安定操業を実現する生産設備の設計・建造及び機能の維持)の改善、②デジタライゼーション戦略推進、③研究開発:FPSOに次ぐ将来の収益源の育成、④環境・社会的要請への取り組みの4つを設定いたしました。

・アセット・インテグリティの改善: 

船齢が上昇している初期ブラジル船の集中メンテナンス及び継続的なアセット・マネジメントにより、安全に石油・ガスを生産し続ける為のトータルサービス提供に注力いたします。

・デジタライゼーション戦略推進:
 「更なるFPSO操業の効率化」、「操業から上流工程へデジタル適用領域拡大」及び「デジタルソリューション事業の立ち上げ」をデジタル戦略の柱として事業モデルを進化させます。

・研究開発:
 FPSOに次ぐ将来の収益源の育成に向け、独自の浮体構造及び係留技術(TLP)を活用した浮体式洋上風力発電設備の事業化への取り組みを加速させ、環境配慮型のFPSOの開発を推進し、また次世代のエネルギーとして期待される海底資源(メタンハイドレート)の回収技術開発を進めます。

 

・環境・社会的要請への取り組み:
 国連の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals (SDGs))が掲げる17の目標のうち、当社が最も貢献できると考える5つの目標を選定し、達成に向けた重点的な取り組みを推進いたします。

目標5、「ジェンダー平等を実現しよう」
目標7、「エネルギーを皆に、そしてクリーンに」
目標8、「働きがいも経済成長も」
目標13、「気候変動に具体的対策を」
目標14、「海の豊かさを守ろう」

これらの活動の成果として、2023年に達成すべき数値目標は親会社の所有者に帰属する当期利益200百万米ドル、ROE 12.0%を掲げております。

指標

2023 年度目標

2021 年度実績

目標との差異

ROE

12.0%

△52.7%

64.7%

 

 

(4) 継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、当期末において363,975千米ドル(41,860百万円)の親会社の所有者に帰属する当期損失を計上しており、これによる利益剰余金の減少から、借入金及び社債等に付されている財務制限条項に抵触しており、このことから継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していると認識しております。しかしながら、当社グループは当該状況を解消するため、主要金融機関に対して当社グループの状況を説明し、当期末において財務制限条項に抵触する借入金または社債等について、期限の利益喪失の請求権を行使しないことについての合意を得ており、以上から、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

(5) 対処すべき課題

① アセット・インテグリティの改善

大水深大規模な海洋油田の開発が進み、FPSO等も大型化・複雑化する傾向にあります。当社グループは、2000年代前半より業界に先駆けて大水深大規模な海洋油田開発向けのFPSO等を受注してまいりました。しかしながら、初期の段階で受注したFPSO等につきましては、現在もなお様々な技術的課題に直面しており、安全性の確保が最重要であることから生産を中断せざるをえない例が起こっております。

石油・ガスの安定かつ安全な生産は当社グループの最重要課題の一つであり、アセット・インテグリティの改善を中期経営計画の重要テーマに設定し、集中メンテナンス及び継続的なアセット・マネジメント等の対応を進めてまいります。

② 大水深大規模プロジェクト同時遂行能力の強化

原油・天然ガスの確保に向けてFPSO等の潜在需要は底堅く、新規案件の開発も着実に進むものと予想されております。良好な市場環境が続く中、当社グループは、これまで積み上げてきた多くのプロジェクト遂行実績を基に、更なるコスト競争力の強化に努め受注機会の増加に向けた取り組みを進めております。

一方で、FPSO等の建造工事の工期は一般的には3年から4年ほどかかるため、受注機会が増加することにより複数の建造工事を同時に遂行する能力が必要となります。当社グループは、プロジェクト・マネジメント力の強化を進めプロジェクト・マネジャーをはじめとする人材育成を続けるとともに、実績のある企業との協業等を行うことで同時遂行能力の強化に努めてまいります。

③ 資金調達の多様化

FPSO等のチャータープロジェクトの増加及び大型化に伴って当社グループの資金需要は拡大しており、当社では、資本市場からの調達や金融機関からの借り入れによる資金調達力の強化に努めております。チャータープロジェクトの遂行に際してプロジェクトファイナンスを活用すると共に、総合商社をはじめとするパートナーとの提携など、資金調達手法の多様化及び資金調達ソースの拡大に取り組んでおります。

 

 

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