課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「創造:工夫による前進と誇りうる品質のために創造しましょう。奉仕:顧客の利益と住みよい社会の建設のために奉仕しましょう。協力:私達の幸福と堅い心の結びつきのために協力しましょう。」という経営理念の実現を事業目的とし、「世界に、そして未来に誇れる企業を目指して」をビジョンとして掲げております。

また、当社グループは、「世界に、そして未来に誇れる企業」となるために、「企業が社会や人との調和の中に生かされている存在」との認識のもと、地域社会・国際社会発展への貢献と地球環境の保全に役立つ事業活動を推進し、全てのステークホルダーの期待に応え、企業価値を最大化することを経営方針としております。(タダノグループ「CSR憲章より」)

 

(2) 経営環境

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、景気は厳しい状況が続きましたが、2021年10月には緊急事態宣言が解除され経済活動の正常化が進んだことにより、持ち直しの動きが見られました。海外においても、新型コロナウイルスの世界的感染拡大が進んだものの、先進国を中心としたワクチン普及により、経済活動が再開され、景気は回復基調が続いています。

一方、世界的な半導体不足による調達環境の悪化、原材料価格の高騰に加え、ロシアによるウクライナ侵攻や中国におけるロックダウンなど、足許では先行き不透明な状況が深まっております。

私どもの業界は、日本では、大型公共工事を中心に比較的順調な稼働を背景として、需要も増加傾向にあるものの、全体として本格的な需要回復には至りませんでした。海外需要は、ワクチン接種の広がりや経済対策が追い風となり、欧州を除いて増加しました。しかし、調達環境の悪化による生産遅れなどが、需要拡大の重石となりました。

このような経営環境の中、当社グループは、調達環境悪化の影響を最小限に抑えるよう努めるとともに、販売価格の見直しや諸経費圧縮、棚卸資産の適正化に取り組みました。また、環境にも配慮した製品を国内外において投入しました。

 

なお、2021年(暦年)での建設用クレーンの地域別需要台数について、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前からの推移を示すと、以下のような状況になっております。

世界の総需要台数を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前(2018年)の水準まで回復してきておりますが、一方で、当社グループの主要な市場である、日本・欧州・北米・中東などでは、まだその水準までの回復には至っておりません。

(建設用クレーン地域別需要台数推移)

 

2018年

2019年

2020年

2021年

対2020年比

対2018年比

欧州

1,540

1,650

1,390

1,360

98%

88%

北米

1,490

1,650

980

1,090

111%

73%

中南米

220

270

200

370

185%

168%

アジア

1,070

1,290

1,020

1,360

133%

127%

中東

870

650

480

520

108%

60%

その他

1,150

1,240

1,170

2,080

178%

181%

海外計

6,340

6,750

5,240

6,780

129%

107%

日本

1,720

1,870

1,520

1,420

93%

83%

合計

8,060

8,620

6,760

8,200

121%

102%

 

※上の表に中国国産の中国市場向け、ロシア国産のクレーンは含んでおりません。

 

また、2022年3月よりロシアほか関係各国向けの製品・部品の出荷を停止しておりますが、連結売上高に占める影響は軽微であります。この出荷停止については、国際的な対ロシア制裁が解除されるまで継続する予定としております。

今後も、この問題に端を発する各国のエネルギー政策や経済安全保障政策の転換、それらが需要や調達に与える影響について、引き続き注視してまいります。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標と対処すべき課題

当社グループは、2008年度以降、事業領域を「抗重力・空間作業機械=Lifting Equipment(LE)」と定め、「LE世界No.1」・「海外売上比率80%」・「安定的高収益企業(平時の営業利益率20%)」の3つを長期目標としております。

世界の人口動態を考えれば、LE業界は長期的には成長産業であり、今後のポテンシャルは高いと考えております。しかしながら、短中期的には市場変動が激しい事業特性を有しています。

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するために、3年毎に中期経営計画を策定しております。2020年4月には「中期経営計画(20-22)」を発表しましたが、コロナ禍での経営環境の変化が収束後も大きな影響を与えることを見据え、「中期経営計画(21-23)」として見直し、2021年4月より新たなスタートを切りました。

「中期経営計画(21-23)」では、『誇れる企業を目指して、赤い矢印に集中』『「目の前の闘い」と「時代との闘い」を同時に制する』を基本方針として、5つの重点テーマ実現のために、9つの戦略に取り組んでまいります。

・「誇れる企業」とは、「強靭な企業であること」、「進化し続ける企業であること」、「顧客と社会のお役に立てる企業であること」、「世の中から支持される企業であること」そして、「社員が誇りを持てる企業であること」この5つを満たす企業です。

・当社グループでは、「市場:需要・為替(=青い矢印)」というコントロールできない環境の中で、事業に対する「自助努力(=赤い矢印)」に集中し、これに「投資(=黄色い矢印)」の成果を加えたものが、「業績(=黒い矢印)」と位置付けております。「中期経営計画(21-23)」では、「誇れる企業」になるために「赤い矢印」に集中することを基本方針としたものです。

・「目の前の闘い」とは、足許の景気経済や需要変動に対応し乗り越えていくこと、競合他社との競争に打ち勝つことです。また、「時代との闘い」とは、高速・複雑・極端に変化する「変化の時代」の中で、技術革新や需要構造の変化に対応することです。技術的には急速に広がるIoTやAIの活用への対応、電動化・自動化への対応が必要であり、需要構造においては、大型化、世界的な化石燃料からクリーンエネルギー(風力等)へのシフトが進む中、クレーン業界の需要構造の変化にも対応していく必要があります。この「目の前の闘い」と「時代との闘い」を同時に制し続けていくことにより、企業として持続的に成長し、企業価値を高めていきたいと考えております。

・重点テーマ

 ①グループシナジー最大化

 ②耐性アップ

 ③競争力強化

 ④ESG・SDGs推進

 ⑤DX・GX への取組み

・戦略

 ①市場ポジションアップ

 ②四拍子強化

 ③グローバル&フレキシブルものづくり

 ④ライフサイクル価値の向上

 ⑤電動化と AI の実用化

 ⑥財務体質健全化

 ⑦グループ&グローバル経営基盤の強化(欧州事業再建とインド事業育成)

 ⑧DX・GX への取組み

 ⑨人財活用

 

なお、2021 年4月 28 日に公表しました「タダノグループ中期経営計画( 21-23 )」につきましては、ロシアによるウクライナ侵攻や中国のゼロコロナ政策、原材料価格の上昇や調達環境の制約、各国の金融政策等、先行きが不透明な状況にありますが、当初計画に沿った取組みを引き続き推進してまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき課題

①グループシナジー最大化

 グループシナジー最大化へのキーワードとして、当社グループでは「ONE TADANO」を掲げております。「ONE TADANO」とは、「グループ全体が共通の価値観を持った一つのチームになる」ということです。世界の様々な地域で、ローカルでの活動を強化する中で、グループとして統一した理念・価値・方針をしっかり共有・実践し、グループの総合力が十二分に発揮できるよう各自が考え、一つになることが重要となります。価値観の共有、課題・ゴールの共有、仕事の仕方の共有、部門最適ではなく全体最適での判断と行動、グループ会社間のシナジー発揮等、この「ONE」にはグループ全員が一丸となって世界各地で戦っていこうという思いがこめられております。

 

②耐性アップ

 外部環境、市場、具体的には需要・為替・原油価格がジグザグ走行することに耐えられるだけの企業にならなければなりません。タダノグループが目指す「翌期に需要が半減しても利益が出せる会社」からはまだ程遠い状況にあります。「ふところ深く」「身軽に」「柔軟性」「分散」「俊敏」「質の向上」の6つの鍵の一つひとつに、具体的な取組みを行います。その総和がタダノグループの耐性を高め、黒い矢印をなだらかに、かつ右肩上がりにしてくれるものと考えております。

 

③競争力強化

 競争は相対的なものです。競合メーカーよりも付加価値の高い商品・サービスを提供し、顧客に選ばれる・選ばれ続けるメーカーになる必要があります。そのために「商品力・製品品質・部品を含めたサービス力・中古車流動性」の四拍子そろったメーカーとなり、価格競争に巻き込まれることなくシェアを拡大していけるようになりたいと考えております。

 特に、製品品質とサービス力はタダノのコアコンピタンス。その前後を商品力と中古車流動性の二つで挟み込みたいと考えています。四拍子のそれぞれが、磨き込み・獲得に長期の時間を要します。だからこそ四拍子がバランスよく揃うことにより、強い競争力を持てることになると考えます。

 一方で、四拍子そろったメーカーを目指す中で、競合他社との相対的な競争に注力しすぎて、気が付いたら世の中の流れから取り残されていたということがないよう留意しておく必要があります。競合メーカーとの競争に打ち勝つと共に時代との競争も制していかなければならないと考えております。

 

④ESG・SDGs推進

 当社グループは「次なる100年」を見据え、「誇れる企業」を目指して、企業活動のアウトプットである製品・サービスを中心に、「創る・造る・届ける・サービスする」というバリューチェーンを通じて、持続可能な環境・社会づくりに貢献していきます。2020年度には、グループの活動推進を統括する「SDGs推進委員会」と実行専任組織である「SDGs推進グループ」を設置し、タダノグループとしてSDGsの各ゴールへどのように貢献していくのか、具体的な検討を進めております。

 なお、ESG・SDGs推進に際し、当社グループとして「2050年カーボンネットゼロ」を目指し、その過程として、「2019年度比で、2030年に事業活動における CO2 排出量25%削減、製品における CO2 排出量35%削減、事業活動における産業廃棄物排出量50%削減」を長期環境目標とします。また「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明しております。

 

⑤DX・GX への取組み

 DX・GXともに時代の大きな変化であり、これらに対応し企業として変革していかなければ、世の中に取り残され、企業として存続することができなくなります。まさに「時代との闘い」を制していくための取組みです。

 タダノグループでは、Internal(内向き:社内目線での取組み)とExternal(外向き:ステークホルダー目線)の両面から、これらへの取組みを進めていく必要があると考えており、具体的には、現在、デジタル・AI・通信技術を活用したソリューション提供と業務革新、電動化など環境に配慮した製品・サービスの展開、欧州技術研究所の設立などの取り組みを進めております。

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