業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要
 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大があったものの、ワクチン接種が進んだことなどで規制緩和が進み、持ち直しの動きが見られましたが、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、消費者物価、原材料価格の上昇や円安進行もあって、先行きの不透明な状況が続いております。

 

当社グループは、原子力・火力発電所用バルブの製造・メンテナンスを主としたバルブ事業を中核に、鋳鋼製品の製造事業などを展開しており、当連結会計年度から主に東日本の原子力発電所(以下、「原発」)で放射線管理業務等を行う太陽電業株式会社をグループに加え、事業領域の拡大を図っております。

 

バルブ事業の主要顧客である原発向けビジネスは、東日本大震災の津波による東京電力福島第一原発事故以降、依然として厳しい状況にあります。加えて、温室効果ガスによる地球温暖化問題から、脱炭素社会へ向けた取り組みが一段と加速し、もう一方の主要納入先である石炭火力発電所の将来について不確実性が高まりつつあります。

しかし一方では、政府のグリーントランスフォーメーション(以下、「GX」)実行会議において、原発の再稼働や運転期間の延長、次世代革新炉の建設による原発の新設やリプレースの検討など、短期的には電力需給ひっ迫の解消、中長期的にはGX推進のため、原発推進の必要性が示され、当社グループにとって明るいニュースとなりました。

 

このような環境下、当連結会計年度におきましては、主力事業であるバルブ事業で、九州電力、関西電力の原発で定期検査工事が完了し売上を計上しましたが、前期に比べ、定期検査工事件数、再稼働前点検工事等の案件が減少したことに加え、火力発電案件についても大型案件がほとんどなく、売上高は85億14百万円(前年同期比18.5%減)に留まりました。

 

この結果、採算面においても、絶対的な売上不足により固定費の回収が十分に進まず、加えて特に製鋼事業において材料高騰の影響を著しく受け、当連結会計年度より新たに太陽電業株式会社を連結に加え挽回を図りましたが、営業損益は86百万円の赤字(前年同期は6億96百万円の黒字)、経常損益は27百万円の黒字(前年同期比96.4%減)、親会社株主に帰属する当期純損益は60百万円の赤字(前年同期は4億55百万円の黒字)となりました。

 

以上のように事業環境が急速に変化する中、「中期経営計画2019」の見直しとこれまでの振り返りを行い、2022年11月改定版として開示いたしました。現状の課題を再確認し、経営基盤の構造改革、既存3事業の深化、新領域への挑戦、という3つの戦略のもとに、企業価値向上を目指してまいります。

 

表:報告セグメント内の種類別売上高

  報告セグメント

種類別の売上高

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

前年同期比(%)

 バルブ事業

 バルブ(新製弁)

2,272

1,721

△24.3

 バルブ用取替補修部品

1,179

913

△22.6

 原子力発電所定期検査工事

1,724

795

△53.9

 その他メンテナンス等の役務提供

3,865

2,811

△27.3

 小計

9,041

6,241

△31.0

 製鋼事業

 鋳鋼製品

913

1,056

15.7

 電気設備関連事業

 電気設備関連工事

1,032

 その他

 地域復興事業

314

104

△66.7

 リファインメタル事業

333

160

△51.9

 消去又は全社

△152

△81

 合計

10,451

8,514

△18.5

報告セグメント別では、バルブ事業の売上高は、九州電力川内原発1号機・2号機、同玄海原発4号機、関西電力高浜原発3号機、同大飯原発4号機、同美浜原発3号機で定期検査工事が完了し売上計上しましたが、これら以外には火力発電所向けを含め大型案件が乏しく、売上高は62億41百万円(前年同期比31.0%減)、セグメント利益も10億96百万円(前年同期比38.7%減)となり、前年同期に比して大幅な減収減益となりました。

 

製鋼事業は、一部顧客からの受注が安定的に推移した結果、売上高は10億56百万円(前年同期比15.7%増)となりましたが、材料の仕入価格の高騰などの影響もあり、セグメント損益は3億41百万円の赤字(前年同期は2億31百万円の赤字)となり赤字幅は前期に比して拡大しました。

 

当連結会計年度から報告セグメントに追加した電気設備関連事業は、2022年1月より新たに子会社となった太陽電業株式会社における事業であり、原発における設備・放射線計測器類の保守や電気設備工事などを主に行っており、売上高は10億32百万円、セグメント利益は86百万円となりました。

 

なお、前連結会計年度まで報告セグメントとしておりました除染事業は、地域除染事業の規模縮小により、売上高、セグメント利益が少額となったことから、当連結会計年度の期首より、その他に含めて表示しております。

 

新型コロナウイルス感染症の感染拡大による業績影響については、主にメンテナンス工事の現場においてクラスターが発生するなどで工事日程に影響が生じ、売上計上に時期ズレなどが生じる可能性を危惧いたしましたが、当連結会計年度におきましては、そういった重大な事象は発生しておらず、格段の影響はありませんでした。

今後も同様のリスクは続きますが、事業の性質上、工事そのものが中止になるということはほぼありません。しかし工期変更や工事現場への入場規制による効率低下などが業績にマイナス影響が出る可能性について、状況に変化は無いものと考えております。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は41億26百万円となり、前連結会計年度末に比して9億29百万円減少しました。この内訳は次のとおりであります。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 減価償却を3億30百万円実施した上で税金等調整前当期純利益を16百万円計上したところに、売上債権の減少で3億30百万円の増加がありましたが、棚卸資産の増加で3億66百万円、未払消費税等の減少で4億50百万円の減少などキャッシュ・アウトの要因が上回ったことから3億82百万円のキャッシュ・アウト(前年同期は27億88百万円のキャッシュ・イン)となりました。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出を中心に8億6百万円のキャッシュ・アウト(前年同期は5億36百万円のキャッシュ・アウト)となりました。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

 前連結会計年度に係る期末配当及び当連結会計年度の中間配当の実施、短期借入金の増加などにより2億14百万円のキャッシュ・イン(前年同期は2億5百万円のキャッシュ・アウト)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

(1) 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

    (自 2021年10月1日

     至 2022年9月30日)

前年同期比(%)

バルブ事業(千円)

1,737,136

△13.9

製鋼事業(千円)

1,364,972

27.9

合計(千円)

3,102,109

0.6

 (注)1.金額は製造原価によっております。

2.バルブ事業のメンテナンス等、電気設備関連事業及びその他については、事業の性格上生産実績の概念は馴染みませんので金額及び前年同期比を記載しておりません。

 

(2) 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

バルブ事業

7,059,756

44.0

4,062,819

25.2

製鋼事業

1,006,357

6.1

368,455

△12.1

電気設備関連事業

1,123,855

91,797

その他

269,872

△28.5

40,460

13.3

消去又は全社

△82,009

合計

9,377,831

54.4

4,563,531

23.3

 (注)1.金額は販売価格によっております。

    2.当連結会計年度より太陽電業株式会社を連結の範囲に含んだことにより、「電気設備関連事業」の期首受注残高232,278千円を当期受注高に含んでおります。

 

(3) 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

    (自 2021年10月1日

     至 2022年9月30日)

前年同期比(%)

バルブ事業(千円)

6,241,990

△31.0

製鋼事業(千円)

1,056,934

15.7

電気設備関連事業(千円)

1,032,058

その他(千円)

265,138

△59.1

消去又は全社(千円)

△81,829

合計(千円)

8,514,291

△18.5

 (注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先別

前連結会計年度

    (自 2020年10月1日

     至 2021年9月30日)

当連結会計年度

    (自 2021年10月1日

     至 2022年9月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

三菱商事パワーシステムズ株式会社

4,666,367

44.6

3,162,247

37.1

三菱重工業株式会社

1,642,614

15.7

858,991

10.1

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態の分析

(資産の部)

当連結会計年度末の資産残高は129億74百万円となり、前連結会計年度末に比して6億34百万円増加しました。その内訳は、流動資産が90億43百万円で同2億19百万円減少し、固定資産は39億30百万円で同8億53百万円の増加となっております。

流動資産では、有価証券が14億円減少し、現金及び預金が4億70百万円増加となっております。固定資産では、リース資産が27百万円減少しておりますが、建物及び構築物が3億66百万円増加となっております。

 

(負債の部)

負債残高は35億84百万円となり、前連結会計年度末に比して6億11百万円増加しました。主な要因は、短期借入金が4億50百万円、電子記録債務が94百万円、受注損失引当金が73百万円それぞれ増加したことなどによるものです。

 

(純資産の部)

純資産の残高は93億89百万円で、前連結会計年度に係る株主配当金の支出、当連結会計年度に係る株主中間配当金の支出、当連結会計年度での親会社株主に帰属する当期純損失を計上しましたが、その他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定の増加により、前連結会計年度末に比して22百万円増加しました。

 

② 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は85億14百万円となり、前連結会計年度と比べ19億37百万円減少(前年同期比18.5%減)しました。

当連結会計年度では、新たに連結の範囲に含めた太陽電業株式会社による電気設備関連事業が10億32百万円及び製鋼事業において前連結会計年度に比べ鋳鋼製品が1億43百万円それぞれ増加しましたが、バルブ事業においてバルブ新製弁、取替補修部品、原子力発電所の定検工事及びその他メンテナンス等の役務を合わせて27億99百万円減少となり、前連結会計年度の売上高を大幅に下回ることとなりました。

 

(営業利益)

当連結会計年度の営業損益は86百万円の赤字(前年同期は6億96百万円の黒字)となりました。

当連結会計年度では、バルブ事業において前連結会計年度に比べ、原子力発電所の定期検査工事件数、再稼働前点検工事等の案件が減少したことに加え、火力発電案件についても大型案件が減少したこと等で、前連結会計年度を下回る営業利益となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、上記の営業利益に営業外損益の純額1億14百万円を加算し、これに特別損益の純額10百万円を減算し、次に法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額及び非支配株主に帰属する当期純損失を加減算した結果、60百万円の赤字(前年同期は4億55百万円の黒字)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資本の財源は、自己資金及び金融機関からの借入によっており、金融機関からの借入金については適宜に長期・短期の借入金により資金調達を行うほか、取引金融機関と特定融資枠契約、コミットメントライン契約を締結することで必要な財源の確保を図っております。

資金の流動性は、営業活動によるキャッシュ・フローを確実に獲得することを基本に、適正な投資活動と財務活動を組み合わせることで十分な流動性の確保と財務体質の健全性を維持するよう努めております。

当社グループの事業は主に完全受注生産型であることから、売上時期の偏重や製品の仕掛期間長期化による影響が、営業活動によるキャッシュ・フローの変動につながる傾向にあることから、これら事象について、キャッシュ・フローへの影響を十分に考慮した業務運営を社内に指示・徹底しております。

またこれら事象へ対応する目的も含め、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結し、機動的な資金調達体制を維持するとともに、運転資金の効率的な運用を図っております。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。詳細については、「第5経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による会計上の見積りへの影響については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。

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