課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは社是である「信頼」を基に、グローバル企業として世界中の人々に信頼される企業グループであり続けたいと考えています。この「信頼」を合言葉に「人と人のつながり」を大切にする精神を育みながら、社員全員の瞳が輝く企業を目指してまいります。

 

(2) 企業を取り巻く課題

 2000年代前半には日本の水晶メーカーは世界市場で70%近いシェアを有していました。しかし、主に中国や台湾の水晶メーカーが低価格を武器にシェアを伸ばし、直近でのシェアは50%を切る水準となっています。

 この間、日本の水晶メーカー各社は中国や台湾の水晶メーカーと低価格市場での競争を避け、高付加価値市場である通信分野や車載市場向けにシフトしました。しかし、通信分野向けにおいて大手チップセットメーカーが主導する形で水晶デバイスの標準化が進んだ結果、複数社購買がベースとなり差別化が難しくなりました。このような状況の中、台湾の水晶メーカーの通信分野への参入も始まったことで、日系企業は投資回収がこれまで以上に困難となり利益の創出が難しい状況が続きました。また、小型化へのシフト鈍化も加わり、水晶デバイスのコモディティ化が加速しました。なお、アジアメーカーの乱立も含め、業界リーダーが不在であることも価格変動要因の1つであると考えています。

 

(3) 経営戦略等

 これら構造的な課題を解決するため、2019年11月の創業60周年を機に、当社初となる「10年長期経営計画」を策定しました。長期経営計画は、7つの基本戦略「OCEAN+2戦略」を掲げ、高い技術力と強い企業力によりお客様に必要とされ続けるリーディング企業を目指しています。

<10年長期経営計画>

「OCEAN+2戦略」の7つの基本戦略

One

Arkh.3Gの薄型化を武器とした「一社供給」

Cost

Arkh新シリーズの世界最安直材費による「低コスト域への挑戦」

Element

育成/研磨技術を活かしたウエハ販売による「材料ビジネス」

Alliance

オープンイノベーション/コラボレーションによる「共創」

Niche

ニッチな市場で安定的な利益を確保する「残存者利益」

+1

新たな結晶の育成に挑戦する「新たな結晶」

+2

新しい要素技術の確立による価値創造を目指す「新たなデバイス」

 

 長期経営計画は3つのフェーズに分け、それぞれマイルストーンを設定しています。策定2年目となる2021年4月からの3ヵ年は、第1中期「基盤整備フェーズ」となり、次の取組みを推進しております。市場環境としては、あらゆるアプリケーションに通信機能が融合され、マーケットの拡大が進むことで、水晶デバイスの需要が高まるものと予想しております。水晶デバイスに対しては、低遅延、高周波、高精度、超小型、低電力といった要求が高まることが想定されるため、「フォトリソ仕様の小型/高周波品」、「価格競争に追随したモノづくり」、「環境に配慮した安定供給体制」を重点的に取組んでおります。具体的には、フォトリソ品の材料から組立てまでの生産能力の増強、Arkh.3Gの本格量産とArkh新シリーズの拡充を進めております。そして、既存品とArkhシリーズ、それぞれモノづくりの概念を刷新した製造ライン/プロセスを開発し、利益率No.1の水晶業界のリーダーを目指してまいります。

<中期経営計画>

第1中期 2022-2024年3月期 基盤整備フェーズ

第2中期 2025-2027年3月期 基盤確立フェーズ

第3中期 2028-2030年3月期 成長発展フェーズ

 

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 今後の経済環境におきましては、新型コロナウイルスの感染再拡大によるロックダウンを伴う経済活動の混乱、ウクライナ情勢に端を発するエネルギー資源の高騰やFRBの金融引き締めによる為替レートの変動など様々なリスクが懸念され、依然として経済活動の安定化には時間を要すると思われます。

 タイミングデバイスマーケットにおいて、自動運転を含め無線通信が必要不可欠な「IoT」を中心に拡大を疑う余地はありませんが、当社を取り巻く環境としては、半導体不足の影響などが顕在化し、スマホや無線通信モジュールなど通信市場の動きに停滞感が継続しています。特に中国セグメントにおいては、新型コロナウイルスの感染再拡大によるロックダウンの影響を受け、物流やお客様の稼働状況に混乱が生じています。

 しかし、そのような市場環境においてもスマホの5Gシフトは進展すると見込んでおり、フォトリソタイプを中心に小型/高周波製品を増産いたします。また、車載や産業マーケットは引き続き堅調なマーケット環境が継続しており、前期から準備を進めていた生産能力の増強が寄与すると考えています。

 一方で、部材不足や材料の高騰による生産活動への影響などのリスクも想定されます。これらのリスクに対し、当社グループでは外部調達比率を低減した当社オリジナルの「Arkhシリーズ」や、その技術を応用した「モールドタイプ」の量産立ち上げ、BCP(事業継続計画)も考慮し機種や場所を問わず単位面積当たりのアウトプットを向上させる「フレキシブルライン」の構築など、「安定供給」と「環境対応」をキーワードに当社オリジナルの新たな価値を創造し、持続的な社会の成長/発展を可能とするサスティナブル企業として邁進してまいります。

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、収益力の強化、経営資源の有効利用、財務戦略による有利子負債の削減を進めるとともに、経営環境の変化に柔軟に対応できる経営基盤の確立と業績の向上に努めてまいります。また引き続きキャッシュ・フローを重視した経営を推進し、更なる財務体質の改善、バランスシートの健全化を目指していきます。

 

 

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