課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中において将来に関する事項が含まれていますが、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は2005年9月の創立50周年を機に、経営に対する普遍的かつ基本的な方針・姿勢を経営理念として制定しました。これは、経営基本方針や中期経営方針、事業別方針の最上位に位置づけられるものです。
 当社は航空業界において、製造と整備をベースとした「技術立社」として、誠実・公正、責任感と義務感をあらわす「士魂」の精神の下に、全役職員が等しく以下の経営理念を強く意識し、その実現に向けて努力してまいります。

 

[経営理念]

技術のジャムコは、士魂の気概をもって

 ○ 夢の実現にむけて挑戦しつづけます。

 ○ お客様の喜びと社員の幸せを求めていきます。

 ○ 自然との共生をはかり、豊かな社会づくりに貢献します。

 

[経営基本方針]

 ○ 飛行安全の確保と品質の向上を図る。

 ○ 航空業界を基軸に、技術力を生かした付加価値の高い製品及びサービスを供給する。

 ○ 株主への還元、社員の幸せを目指し、社業を通じて社会に貢献する。

 ○ 変化に柔軟に対応した企業構造及び事業内容を追求し、顧客満足度と企業価値の向上を図る。

 

又、連結子会社につきましては、各事業の顧客、市場及び所在地域の優位性を考慮のうえ、子会社単独の利益追求にとらわれず、各事業の最適化と企業集団としての企業価値増大を志向した運営を行っています。

当社の事業は4つの事業分野で構成されています。製造事業として航空機の客室内を対象とした「航空機内装品等製造関連事業」と「航空機シート等製造関連事業」、客室外を対象とした「航空機器等製造関連事業」があり、整備事業として「航空機整備等関連事業」があります。

それぞれの事業ごとに、市場、顧客及び必要とされる技術等が異なることから、中期経営方針とは別に事業別方針を定め、事業ごとの経営戦略プランを策定しています。

 

[中期経営方針・事業別方針]

中期グループビジョンであるJAMCO Vision 2030 の達成に向けた、「低重心」・「高効率」・「新視点」のアクションプランを推進し、持続的成長のための事業基盤を構築する。

 ○ 航空機内装品等製造関連事業・航空機シート等製造関連事業
    技術・生産革新へのあくなき挑戦と、安全・品質・コスト・納期の追求により、お客様に喜ばれる付加

   価値の高い製品・サービスを提供するリーディング・カンパニーとなる。

 ○ 航空機器等製造関連事業
    先端技術と熟練技能を融合させた高度な設計・生産技術を追求し、付加価値の高い製品及びサービスを
    提供する。

 ○ 航空機整備等関連事業
    安全最優先の整備体制のもと、国内最大規模の独立系航空機整備事業を確立する。

 

 

 [中期グループビジョン]

当社は、10年後の社会環境を視野に入れた、当社の理想とするありたい姿、グループ全体のビジョンとして「JAMCO Vision 2030」を掲げ、具体的な4つの経営戦略を打ち出し活動していくことといたしました。

 

JAMCO Vision 2030

-技術と品質を翼に、快適で持続可能な未来へ-

航空業界を基軸に培ってきた技術と品質を、先端技術とイノベーションにより進化させながら更なる事業領域の拡大を目指し、航空宇宙産業を通じた価値創造企業グループとして、快適で持続可能な社会へ貢献し続ける。

 ○ 全社事業戦略

・ジャムコの柱である「技術力と品質」をさらに磨き、各事業領域の「経験と知識」を融合し進化させ新たな付加価値を創造する。

・経営環境の変化に対し、事業リスクを予見し適切に対策を実行する。

・One JAMCO としてグループ全社の業務プロセス改革による経営効率化を追求し、事業環境の変化に耐え得る堅固な経営基盤を構築する。

 ○  成長戦略

・ジャムコ技術を進化させ応用出来る事業領域の拡大、新たなモビリティ事業、持続可能な社会の実現に貢献できる事業へ積極的に参画する。

・中長期的な成長性に基づいたタイムリーで適切な事業ポートフォリオへの投資と改革を実行する。

 ○  営業戦略

・One JAMCO の総合力を結集し、グローバルな展開を推進する。

・市場ニーズを先取りし、プロアクティブなマーケティングへ変革する。

・ESG/SDGs の実現に貢献する製品やサービスを提案する。

○  技術戦略

・軽量化・新素材活用技術・認証取得能力・プロジェクトマネージメント能力を基礎に、ジャムコ独自技術を最新技術と共に進化させる。

・持続可能な社会への貢献、衛生環境改善、先端デジタル技術・システムを活用できる製品・サービスの開発を進める。

・次世代航空機及び次世代モビリティ関連に向けた、新たな技術革新を実現する。

 

(2)目標とする経営指標

目標とする経営指標につきましては、中期経営計画に沿った目標値として次のとおり設定し、効率的経営に努めてまいります。

・収益性指標: 連結売上高経常利益率 7%以上

・効率性指標: 連結ROA 7%以上 (総資産経常利益率)

・安全性指標: 自己資本比率 30%以上

・配当方針 : 持続的な成長や事業リスクに備えた財務の健全性とのバランスにも配慮の上、
         連結配当性向 20~30%を目安とする  

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

主な事業とその経営環境は次のとおりです。

 

航空機内装品等製造関連においては、ボーイング社と双通路型旅客機向けラバトリー及び787型機向けギャレー供給契約を結び、エアバス社とA350型機向けICE(Increased Cabin Efficiency)リヤギャレー供給契約を結んでいます。又、国内外の主要なエアラインへ新造機用ギャレーに加え、客室内改修用の各種内装品の供給とエンジニアリング・サービスを提供すると共に、航空機メーカーと主要なエアライン向けのサービス拠点(米国、欧州、アジア地域)を設置してサポートを充実させています。特に当社製品は国内外100社を超えるエアラインにご利用頂いていることから、内装品の補用部品(スペア・パーツ)販売は重要な収益基盤となっています。

航空機シート等製造関連においては、2014年4月に航空機用シート事業に本格参入してから8年間でお客様から高い評価を得ております。しかしながら、ボーイング787型機の生産スケジュール先送りに伴う出荷量減少により安定した利益創出に至らず、コスト削減に向けた業務プロセス改善と効率的なサプライチェーン構築に取り組んでいます。

航空機器等製造関連においては、エアバス社と炭素繊維構造部材の供給契約を結んでいます。更に当社製品が他の機体部位に採用されるよう研究開発に取り組んでいます。

航空機整備等関連においては、防衛省、海上保安庁、他官公庁等の機体整備のみならず、機体改修等技術的な支援サービスを充実させています。又、国内エアライン向けのサービスの拡大に向けた事業展開を進めています。

いずれの事業においても、航空旅客需要の拡大を受けて堅調に事業拡大を進めてきましたが、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を受けて経営環境が変化すると共に、品質事案に関する是正・再発防止施策も含めて、対処すべき課題を次のように認識しています。

 

世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により経済活動が大きく影響を受けましたが、ワクチン接種の普及・治療法の開発により、2021年から徐々に回復してきました。

為替変動に関しては、各国の経済政策の動向と地政学的リスクの高まりにより先行き不透明な状況にあり、足元では急激な円安が進行しており、2022年度も予断の許さない状況が続くと見込まれます。

航空輸送業界においては、航空需要の急激な減少に伴い、大規模な減便や運休が発生するなど航空会社へ甚大な損失を発生させておりますが、移動制限の緩和が進むにつれ各国の国内線では回復基調が鮮明となっております。国際線についてはその兆しは見えるものの、いまだ国境をまたぐ移動制限が続いている国もあり本格的な回復にはもう少し時間がかかる見通しです。このことから2019年並みの需要に回復するのは2024年頃の見通しです。

航空機産業では、機体開発のスケジュール調整及び減産を実施しており、今後の需要回復に向けては、単通路機の需要が先行するものと見込まれています。航空旅客数は、長期的には4%の成長率を維持し、今後20年間で43,000機の需要が予測されています。その間、サプライヤー間の競争激化が予想され、加えて、ESG・SDGs等、持続可能な社会環境に向けた取組みが企業に要求されます。

 

このように経営環境の変化が著しい航空業界に事業の軸足を置く当社グループは、航空旅客需要の変動に対し、より筋肉質な企業構造への変革、柔軟な対応ができる経営体制を目指しグループ全体の規模を適正化してまいります。同時に、今後数年で戻ると予想される旅客需要の回復を見据え、グループ全体で業務プロセス改革やDigital Transformation(DX)等を推進し、収益力向上にスピード感をもって取り組んでまいります。

さらに、航空機市場を基盤に持続可能な社会へ貢献できる製品やサービスの開発・提供にも更に注力してまいります。

 

航空機内装品等製造関連においては、安全・品質第一の企業文化の更なる醸成により品質不具合の未然防止活動を定着させると共に、品質システムの改革に取り組んでまいります。また、グループ一体となった生産プロセスとシステムの最適化にスピード感をもって取り組み、業務効率と収益性の向上を図ってまいります。さらに、顧客の社会貢献へのニーズの高まりに応える製品やサービスの開発へ投資を行い、競争力を強化してまいります。

航空機シート等製造関連では、安定的な収益基盤の構築のため、標準型プラットフォームを活用したビジネスクラス・シート(Venture)の販売拡大に取り組み、マネジメント力の向上及びサプライチェーンの連携強化を図り供給体制の整備を行うと共に、次期標準型シートの開発により、継続的な成長戦略を実行してまいります。

航空機器等製造関連では、選択と集中により収益構造を見直し、同時に業務のムリ・ムダ・ムラを排除する施策を推進することで収益改善に努めてまいります。設計製造能力の向上、NADCAP認定を取得している特殊工程技術力の活用により競争力を強化し、技術的付加価値の高い製品の受注促進に努めてまいります。ADP事業は新製品の開発、新規分野への展開を含めてビジネスモデルの再構築に取り組み、又、機器製造の技術力を内装品・シート事業へ展開しシナジー効果を高めてまいります。

航空機整備等関連では、安全最優先の整備体制のもと当社の技術・整備能力を活用した新たなサービスの提供により、付加価値の高いMRO(Maintenance Repair Overhaul)事業を追求し、安定した収益をあげることのできる事業ポートフォリオの構築に取り組んでまいります。

 

最後に、当社は、2019年11月12日付「当社航空機内装品製造事業における業務改善命令に対する改善措置の提出について」にて公表した再発防止策をはじめ、安全・品質を第一にコンプライアンス重視を徹底する企業風土への改善と信頼回復に向けた活動を推進しております。2021年1月には、「安全最優先の原則」「関係法令等の遵守の原則」「安全管理体制の継続的改善の原則」の3つの原則からなる全社の安全方針を新たに定め、安全管理体制を統括する組織として本社に安全推進統括部(現在の安全品質統括部)を設置し、グループ会社を含めた安全文化の醸成を目指しております。

 

 

事業別の対処すべき課題は次のとおりです。

[航空機内装品等製造関連]

① 安全・品質第一の文化の醸成により品質不具合の未然防止活動を定着させる共に、品質システムの改革に取組む。

② 需要の回復を見据えた生産体制、サプライチェーンの強靭化を図る。

③ グループ全体における業務プロセスを見直しDXによる進化を推し進め、将来の更なる成長への基盤整備に取組む。

④ 客室内装備品における衛生面に配慮した機能の開発や高付加価値製品の市場投入を目指すと共に、軽量化部材の開発等を通じて航空業界の脱炭素化や環境要求に配慮した新製品・サービスの提供に取組む。

 

[航空機シート等製造関連]

Venture Seatの受注拡大に向けて販売を強化すると共に、安定的な生産による量産化を進め、安定収益化を図る

② 標準型プラットフォームを活用した次期プレミアム・シートへの投資と魅力的な製品開発を進め、継続的な成長戦略を策定して事業を推進する。

③ グループサプライチェーンの連携強化を図り、生産効率を向上する。

 

[航空機器等製造関連]

① 収益構造の見直しと業務プロセスの合理化により生産性の向上を図り、収益改善に取組む。

② 技術的付加価値の高い製品の受注拡大を図り、競争力を強化する。

③ 設計製造能力の向上を図り、提案型の新たな製品開発により事業域拡大を推進する。

④ 機器製造の技術力を内装品事業・シート事業へ応用し、内製化製品の生産数増大を図り、新たな内製化製品の検討を進める。

⑤ 次世代機を見据えた、ADP、複合材及び特殊工程技術を活用した新たな製品開発を継続する。

 

[航空機整備等関連]

① 飛行安全の確保と品質保証体制のたゆまぬ強化を図る。

② 付加価値の高い新たなビジネスへの取組みを強化する。

③ 安定した収益を上げることのできる事業基盤を構築する。

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