当社グループの研究開発活動には、新規事業を目指した新規技術開発及び製品開発と、既存分野における製品開発及び改良・改善業務があります。
当社の研究開発及び新規技術開発を伴う製品開発は開発センターが担当し、新型圧力センサ素子、各種産業向圧力センサとその応用製品、圧力計、システム製品などの製品開発は、技術本部内の各部門が担当しました。また、車載用圧力センサ開発は車載センサ部が担当しました。
子会社においては、圧力計、圧力センサ、圧力制御機器、計測制御機器の研究開発活動を推進しました。
当社グループにおける研究開発、技術スタッフは212名(内、子会社94名)で、当連結会計年度の研究開発費は
圧力計、圧力センサに続く第3の柱とする「新たな事業領域の拡大」として、
極限環境での計測を可能とする計測システムの開発、および高付加価値システム・サービスの提供を目標としたモニタリングシステムの実用化を進めてきました。
極限環境センサでは、光干渉を用いて高温から極低温までの広い温度範囲で安定に圧力計測が出来る計測技術を開発しました。
本技術を用いた製品の一つとして、水俣条約における計測機器の非水銀化に向けて、水銀を全く使用しない400℃対応光学式溶融樹脂圧力センサの製品化を完了して発売を開始しました。更に本技術を用い、カーボンニュートラル実現に向けて成長が期待される水素関連事業向けに、液化水素用計測機器の開発を進めていきます。
また、グリーンイノベーション戦略に呼応した省人化、省エネ化につながるロボット産業の高度化に貢献できるトルクセンサ開発および、計測制御機器のシステム化も当社の「成長戦略」に位置付けて売上拡大分野として注力しています。
モニタリングシステムの実用化では、橋脚基礎の洗堀をモニタリングする装置に加え、桁の定期検査を自動化する装置についても大手鉄道事業者様、大手情報関連機器メーカー様と開発を進めました。
また、海上輸送の分野では、大型化する船舶のDX化(デジタルトランスフォーメーション)、船体構造応答モニタリングシステムの開発を大学や造船会社などと連携して進めました。
「既存事業の競争力拡大施策」として、
産業計測分野では、2050カーボンニュートラル実現に向けたエネルギー政策として掲げられている水素・アンモニア利用に関わる圧力計測について、国際規格IECEx/ATEX/国内防爆規格の本質安全防爆認証を取得した圧力センサをリニューアルし、EU市場展開に向け圧力機器指令適合のCEマーク対応の高圧水素用圧力計を発売しました。
また、デジタル化進む中で半導体装置産業向け圧力計測製品として、IO-Link対応デジタル微差圧計を開発し発売開始しました。
圧力センサ、圧力計に関する研究・基礎開発においては、市場のニーズや成長分野の予測を基に、コアとなるセンサ素子の性能向上やレンジ拡大のためのプロセス開発を推進しました。
半導体歪みゲージ式センサ素子は、応用製品への組込みを考慮し、高安定・高精度化に向けた性能改善を推進しました。
また、微差圧を検出するシリコンキャパシタンスセンサ素子については、コロナ禍で、陰圧室内圧力の監視義務化需要の高まりに対応するため、検出できる最低圧力レンジを従来の50Paから10Paへ高感度化させるべく、センサ構造設計およびプロセス開発を行い、デジタル微差圧計への搭載を開始しました。今後、これらコアとなるセンサ素子を用いた新製品を開発していきます。
IoT(internet of things)を考慮したワイヤレス型圧力センサ・圧力計については、顧客ニーズの探索を行い、機種拡充やシステム化開発を進めました。
車載用途では、大手自動車向けの第3世代燃料電池(FC)システム用圧力センサの技術検証を大手自動車と共同にて推進しました。FCシステムの用途拡大に向け、自動車以外の用途への対応にも参画しています。
また、大手Tier1との協業で開発をした次世代ガソリン直噴エンジン用圧力センサの量産準備を推進し、2022年3月から量産を開始しております。本製品はプラグインハイブリッド用の新型直噴エンジンに適用されることから、従来よりも高圧、高精度が要求されており、今後の数量拡大に備え、徹底したパラメータ管理に取り組んでいます。
計測制御機器分野では、自動車の電動化が進むことで生産設備における漏れ検査装置の市場縮小が見込まれる中、市場転換を意識した高感度ポータブル水素検出器の開発、好調が続く電子部品向けの漏れ検査機器の拡充、FA市場などに向けたネットワーク対応型高機能エアリークテスタの開発を推進しました。
また、医薬包装関連では、ワクチンなどを充填するバイアル瓶の漏れ検査装置の装置開発を行いました。
「グローバル戦略の強化」として、
圧力センサの地産地消を促進させるため、当社製センサ素子を利用した米国でのニーズを考慮した(多品種・少量を実現できる)新規圧力センサの開発を進めました。
また、中国の関係会社においても当社素子を用いた新規圧力センサの組立ラインが完成しました。
欧州自動車産業市場においては、ドイツカーメーカーのEV(電動車)搭載のヒートポンプ式エアコン用圧力センサ半製品の量産を開始しました。また新たにトランスミッション用圧力センサ半製品の生産準備に取り組んでいます。
この期間の開発成果として、以下の新製品他を発売し出荷を開始しました。
(KF10 樹脂圧センサ リリース)
KF10は、圧力伝達媒体に水銀を使用しない光学式非封入の溶融樹脂圧力温度センサです。400℃と非常に高温で圧力温度を測定する必要があるため、従来は水銀を圧力伝達媒体として圧力計測を行っておりましたが、水俣条約の準拠、SDGs推進など、社会的要請にこたえられる製品として発売しました。
(KJ91・KJ92リニューアル IECEx/ATEX/国内防爆対応)
KJ91・KJ92は防爆規格に対応した、表示付き2線式圧力・差圧センサです。海外市場も視野に入れ、国際防爆規格であるIECExに対応しました。また、EU市場で有効なATEX指令への適合と、日本国内で新たに防爆規格の取得も併せて行いました。今後需要が見込まれる、水素/アンモニア計測において、市場ニーズにこたえられる製品として発売しました。
(ATE-2ハンドキャリブレータ 高圧レンジ拡張 5⇒50MPa)
ATE-2は現場への持ち運びが容易な携帯型高精度圧力校正器として、市場で好評を得ています。市場要求の多い、高圧レンジ帯(0~5MPa⇒0~50MPa)の圧力レンジを拡張しました。電力やプラント関連での現場校正でご使用いただき、校正の省力化に貢献できる製品として発売しました。
(GC30・GC62・GC63 レンジ拡張 10/25Pa)
微差圧計測において、長野計器では様々な製品をラインアップしています。近年の医療現場や半導体製造装置の市場では、省力化や管理基準の厳格化が求められ、より微圧計測への要求が高まってきました。本製品は、それらの要望に応える為、更なる微圧(10/25Pa)レンジへの拡販をねらう製品として発売しました。
(EK30 IO-Link対応デジタル微差圧計)
IO-Linkはデバイスの設定や状態監視が容易になる為、各種センサのデジタル通信技術として近年急速に普及しており、本製品も半導体製造装置組み込み用IO-Link対応デジタル微差圧センサとして製品化を行い発売しました。今後、各種センサのデジタル化を踏まえ対応機種拡大を行います。
(ZT61半導体産業用デジタル圧力計 出力仕様拡充 0~10V DC)
ZT61は半導体製造プロセスでガス供給系の1.125”集積化システムに対応したデジタル圧力計です。今回、出力4~20mA DC、1~5V DCに加え0~10V DCをラインアップし仕様拡充しました。出力0~10V DCは海外での要求が強く、特にEUでの拡販を行う製品として発売しました。
(KH55舶用圧力センサ レンジ拡張 20kPa⇒0.2MPa)
KH55は安定性と信頼性に優れる舶用圧力トランスミッタです。今までの半導体蒸着形センサを用いた高圧レンジ(0.3MPa⇒35MPa)に加え、接液部SUS316Lに対応したステンレスダイアフラムセンサを用いた低圧レンジ(20kPa⇒0.2MPa)を新たにラインアップしレンジ拡張しました。タンクのレベル計測等、更なる舶用製品の拡販を行う製品として発売しました。
(高圧水素用圧力計GF,GVのCEマーキング対応)
カーボンニュートラル実現に向けた水素計測用途に高圧水素用圧力計をラインナップしていますが、EU市場での販売に必要な圧力機器指令への適合について確認を行い、CEマーキングに対応した製品として発売しました。
(小型電子部品気密検査装置「MSZ-6201,6202」)
10㎜角程度の比較的大きめの電子部品のグロスリーク用気密検査装置を開発しました。これによって、これまでの製品ラインアップである1㎜×0.8㎜サイズの水晶振動子用超小型気密検査装置では対応できなかった大型の水晶振動子やアルミ電解コンデンサなどの電子部品の気密検査用途にも新たに対応できるようになりました。
(ガス封入式温度計 「S5500」/海外実施)
目盛径100mmと160mmサイズのオールステンレス製ガス封入式温度計S5500を開発し発売しました。計測可能な温度レンジは-200℃から800℃と広範囲に対応しています。感温部は本体に直結式と隔測式が選択可能です。隔測式はキャピラリで最大100mまで延長可能です。本製品は非常に厳しいEN規格に準拠しています。
(汎用圧力センサ「S1」/海外実施)
当社製圧力センサ素子を応用した汎用圧力センサS1を開発しました。圧力導入継手との接合にメタルフロー技術を採用したことにより、継手材質の選択幅が広がり、アルミ、黄銅、軟鋼、ステンレス鋼から用途に応じて最適な材質を選択できます。当社グループの最新工場であるメキシコ・ケレタロにて生産を計画しています。
このような研究開発活動を進める一方、現製品の改良・改善業務に技術要員を割り当て、既存製品に対するユーザーからの要求に対応して、性能向上とコストの改良改善を進めております。
当社グループは以上のような開発体制を形成しており、生産技術を含む全技術スタッフは254名、全従業員の10.8%となっております。
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