課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年6月30日)現在において、当社グループが判断したものであります。将来に関する事項は不確実性を内包しておりますので、将来生じる実際の結果と差異を生じる可能性があります。

(1)経営方針

当社グループは、研究開発型企業として、『医療及び産業機器の分野において、安全と信頼を基盤とする「Only One」技術や「Number One」製品を世界に発信し続けることにより、全てのお客様の「夢」を実現すると共に、広く社会に貢献していくこと』を企業理念としております。また特に、当社グループの医療機器分野事業は、主に、傷口が小さく痛みの少ない「低侵襲治療」の製品を開発・製造・販売しており、患者様の肉体的・精神的・経済的負担を軽減し、そして医療費抑制にも貢献できる、大変意義のある事業であると考えており、今後も、社会に貢献できる企業であり続けることで、社会からも市場からも評価される企業として、更なる成長を遂げたいと考えております。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

① 長期経営ビジョン

当社は、「世界中のプロフェッショナルと共に、「ASAHI TECHNOLOGY」でイノベーションを創出し、次世代の医療や産業のニーズを捉え、グローバルな課題をグローバルに解決する。」という経営ビジョンを定め、長期的な目標として連結売上高1,000億円を超えて更に成長していくことを目指しております。

 

② 中期経営計画

当社グループは、2026年6月期までの5ヵ年の中期経営計画『ASAHI Going Beyond 1000』に基づき、連結売上高

1,000億円を超えて、更に成長するための事業ポートフォリオの構築として、「グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大」を推進することで、これまでの基本戦略の集大成を図り、既存事業の収益基盤を強化、また将来に向けた成長への投資を継続することにより「グローバルニッチ市場における新規事業の創出」を実現し、グローバルニッチ市場における当社のプレゼンスの強化と企業価値の一層の向上を目指し、その成長戦略を支えるためのビジネス基盤として、「グローバル展開に最適な研究開発・生産体制の構築」を進めるとともに「持続的成長に向けた経営基盤の確立」を図ってまいりました。今後におきましても、中期経営計画に基づく成長戦略を着実に進めていくことにより、企業価値の拡大を目指してまいります。

当社グループの重要な経営管理指標としては、売上高、営業利益、営業利益率としております。営業利益率については20%を目安とし、経営の主要パフォーマンスであるEBITDA(営業利益+のれん償却額+減価償却額)の率については30%を目安とすることを、中期経営計画の指標としております。

また、財務指標としては、ROEにも着目してまいりましたが、当期より、新たにROIC(投下資本利益率:Return on Invested Capital)についても、着目すべき指標として定めることにいたしました。これまでは、損益計算書(P/L)重視とし、P/L改善が結果的にバランス・シート(B/S)改善に繋がることから、投資収益性に関する財務指標については基準を定めておりませんでしたが、投資家の皆様との対話を通じて、当社グループのB/S戦略に対する重要性が高まったことを改めて認識したことや、今後はB/Sも意識して、資本コストとの見合いで利益を追求する方向にあることが会社の姿勢であることを明確化することの重要性を鑑み、着目すべき指標の一つとして定めることにいたしました。なお、当社グループのROICにつきましては、「運転資本(注)+ 固定資産」を投下資本として算出しており10%を基本水準としております。

(注)運転資本=売上債権+棚卸資産+未収入金-仕入債務-未払金-前受金

 

(a)グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大

当社グループは現在、世界110の国と地域へ製品を供給しております。当社グループの製品が使用される血管内疾患の症例数は、引き続き新興国を中心にグローバル規模で拡大すると予測されております。こうした中、それぞれの地域において販売・マーケティングの機能をより一層充実させることにより、グローバル規模での収益基盤の強化を図る所存であります。

 

(日本)

日本市場では、病院などに対して自社ブランド製品の直接販売を行っております。この販売体制を活かして更なる市場シェアの獲得に努めるとともに、朝日インテックJセールス株式会社の商社機能を活用して、国内外の他社製品とのシナジー効果による販売拡大を図り、収益構造の強化にも努めてまいります。また、2021年7月より消化器分野の自社ブランド品の一部について直接販売を開始いたしました。日本市場においては、世界に先駆けて新製品の投入を行うなど、第二第三の主力製品の確立を目指すとともに、ロボティクス製品の市場投入を推進することで、収益・事業領域の拡大に努めてまいります。

(米国)

米国市場では、自社ブランド製品について直接販売を行っております。更なる販売促進のために、最終顧客である医師に密着して市場動向をより早く把握できるマーケティングや販売機能の体制を構築するとともに、コロナ禍の制約がある中、オンライン営業などの活用により営業活動の効率化も進め、拡販に努めます。また、末梢血管領域を重点市場と位置付け、新製品の積極的な投入によりシェア拡大に努めてまいります。

また、自社ブランド品のみならず、ODM・OEMビジネスの拡大を積極的に進め、収益拡大に努めてまいります。

(欧州)

欧州市場では、直接販売や、現場に密着した複数の代理店を通じて、主力製品のPCIガイドワイヤーや貫通カテーテルなどを販売し、高いシェアを獲得しております。今後におきましても、既存製品のシェア拡大を図るとともに、日本で高い評価を得ている新製品などを積極的に市場投入するなどし、総合的な製品供給を進めてまいります。また、欧州市場の一部の地域におきましては、段階的に、直接販売化を進めており、2019年7月よりフランス、2021年1月よりドイツ、2021年7月よりイタリアにおいて直接販売化に移行しております。今後も、これらの活動を通じて、更なる収益拡大を図ってまいる所存です。

(中国)

中国市場では、現地代理店を通じた販売を行っております。グローバル市場の中でも中国は特に成長が著しく、更なる発展が見込まれております。新製品の投入や、複数代理店制による販売体制強化などにより、市場シェアを更に拡大しつつあります。入札制度などの取り巻く環境変化が進むものの、今後におきましても、市場の状況を鑑みながら、代理店数の増加推進や、連結子会社である朝日英達科貿(北京)有限公司を通じたマーケティングや販売活動の充実、現地代理店に密着したバックアップ体制の強化などにより、更なる収益拡大に努めてまいります。

(その他地域)

中国以外のアジア地域や南米地域を中心に、潜在成長力のある新興国市場における営業体制を強化し、更なる収益拡大を目指してまいります。一部の地域においては、新型コロナウイルス感染症の影響が引き続き残るものの、今後も、ウェブ営業なども活用し、現地に密着した活動を通じて、更なる販売強化を図ってまいります。

(Number One製品戦略)

循環器分野の主力製品PCIガイドワイヤーにつきましては、当社が強みを持つ治療難度の高いCTO(慢性完全閉塞)用の製品開発に注力するとともに、一般的な通常病変用の製品の拡充にも努めることにより、総合的なナンバーワンのポジションを盤石化してまいります。

また、PCIガイドワイヤーに次ぐ第二第三の主力製品の確立に向け、カテーテル分野の製品群を一層強化・拡大してまいります。

さらに、循環器分野から末梢・腹部・脳血管系などの非循環器分野への製品展開を継続して進めてまいります。非循環器分野については、循環器分野で培った技術を応用した横展開を行うと同時に、積極的な海外展開を図り、グローバル規模での市場シェアの獲得に努めてまいります。

 

(Only One製品戦略)

現在、治療が困難とされているCTOに対するPCI治療は、PCI治療の先進国である日本においても完全というわけではなく、海外市場を中心にバイパス手術で対応するケースが残っております。このような中、当社グループは、他社にはない高い製品優位性を持ち、CTO治療も可能なPCIガイドワイヤーや貫通カテーテルなどの低侵襲治療に必要な製品群を開発・販売し、CTO領域におけるPCI治療選択率の拡大に寄与してまいりました。

今後も、研究開発型企業として、競争力の高い独創的な製品や、機能の進化した新製品を開発・製品化し続けることにより、低侵襲治療の普及や発展に寄与してまいります。

 

(b)グローバルニッチ市場における新規事業の創出

研究開発型企業である当社グループは、4つのコアテクノロジー(伸線技術、ワイヤーフォーミング技術、樹脂コーティング技術、トルク技術)を主体とした、高度で独自性の高い素材加工技術を備えております。

また、これらの技術に加え、原材料から製品までの一貫生産体制を構築することにより、当社独自の素材及び機能を有した製品の開発・製造が可能となっております。これは、医療機器分野以外に、産業機器分野を有する当社グループならではの強みであり、医療機器分野での競合先とのコスト面・技術面における差別化を図る大きな要因となっております。

今後もグローバル競争に勝ち、連結売上高1,000億円を超えて永続的に成長発展する企業であり続けるために、その礎となる施策に今から着手していくことが必要であると認識し、当社の高い技術力の強化により消化器分野・ロボティクス分野・脳血管系分野などの新領域への進出を目指します。また、新テクノロジーとの融合が必要な場合には、より積極的に技術提携、M&A、少数株主投資などを駆使し、外部からの新技術導入を含め、有力パートナーとの戦略的提携についても推進しております。

グローバルニッチ市場における新規事業の創出により、事業ポートフォリオの強化に努め、グローバルで持続的に成長する企業を目指してまいります。

 

(C)グローバル展開に最適な研究開発・生産体制の構築

研究開発体制のグローバル化として、米国の直接販売の拠点である連結子会社ASAHI INTECC USA, INC.において、最終顧客である医師からのニーズや評価をダイレクトに反映でき、試作レベルまでの対応を可能とした研究開発体制を構築しております。また、連結子会社ASAHI INTECC THAILAND CO., LTD.の研究開発拠点を更に拡充させ、製品仕様の検討を含めた既存製品の改良などをより積極的に進めてまいります。

国内においては、当社グループの研究開発拠点の中心である瀬戸工場の敷地内に2018年に新社屋を建設し、臨床現場に近い研究開発環境整備を実現いたしました。さらに、基盤技術開発強化を目的とした大阪R&Dセンターの拡充や、次世代医療機器技術の研究開発を目的とした東京R&Dセンターの開設を実施いたしました。また研究開発機能強化を目的に、グローバル本社・R&Dセンター(愛知県瀬戸市)に新棟を建設し拡充することを予定しており、国内の研究開発体制についても、より充実させてまいります。

当社グループでは、現在、日本においては研究開発・試作に特化し、量産品については原則として海外の連結子会社に生産移管しており、素材から完成品までの一貫生産が海外工場(ASAHI INTECC THAILAND CO., LTD.(タイ工場)、ASAHI INTECC HANOI CO., LTD.(ハノイ工場)、及びTOYOFLEX CEBU CORPORATION(セブ工場))で実現できる体制が整っております。その中で、リスク管理や事業継続計画(BCP)の観点から、グループ全体での生産拠点の最適化を図っており、現地事情などにより、一部の工場が操業不能に陥った場合においても、別の工場にて代替生産の大部分を担えるよう、3工場で同じ製品が製造できる体制の構築を進めております。また、現在は量産機能を有していない当社においても、本社の新棟などを活用し、今後代替生産が可能な量産設備の保有に努めてまいります。

今後も、グローバル展開に最適な研究開発拠点や生産体制の構築・拡充により、当社の成長戦略を下支えしていく所存であります。

 

 

(d)持続的成長に向けた経営基盤の確立

サステナビリティへの取組みを推進する体制を構築し、各サステナビリティの重要課題につき基本方針をとりまとめ、戦略的に推進するための仕組みづくり、取組みに関する情報整理を実施しております。

今後、この7つの重要課題を中心に、全社的な取組みを進めてまいります。サステナビリティに関わる当社の考え方や、取組みにつきましては、ウェブサイトにて随時開示してまいります。

重要課題1 イノベーションを通じた現場の課題解決

重要課題2 環境負荷低減への取組み

重要課題3 サプライチェーンマネジメント

重要課題4 安全・安心な製品の供給

重要課題5 グローバル人財基盤の強化

重要課題6 リスクマネジメントの強化

重要課題7 コーポレート・ガバナンスの強化

 

〔注釈説明〕

注:CTO/(慢性完全閉塞)

長期間完全に閉塞した状態の病変のことをいいます。従来は、このような病変は外科手術(バイパス手術)の領域でしたが、当社がCTOにも使用可能なPCIガイドワイヤーの開発に成功したことから、現在では、国内においてはPCI治療(循環器分野における低侵襲治療)が主流となっております。

 

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