課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

当行は、1932年5月の創業以来、基本姿勢である「地域社会の発展に貢献する」ならびに「健全経営に徹する」の2つを経営理念として堅持し続けております。

また、2011年3月に発生した東日本大震災の影響により取り巻く経営環境が大きく変化したことから、2013年4月の中期経営計画策定と同時に今後10年間の長期ビジョンとして「地域の牽引役として圧倒的な存在感を示すとともに、トップクオリティバンクとしての地位を確立する」を新たに設定しております。これにより、当行が黒子役から地域の主体的牽引役に変革して圧倒的な存在感を示すとともに接遇力等のソフト面を充実・強化することでクオリティーNo.1の地位を確立することを目指しております。

 


(2)中期経営計画

① 中期経営計画の概要

 地域との共存共栄の実現を目指していくうえで、これを具現化するため進めているのが中期経営計画「いわぎんフロンティアプラン~To the Next~」(2019年4月~2023年3月)です。「To the Next」には、地域の課題解決に向けたさまざまな取組みを進めることにより、地域と当行の次の時代「To the Next」を切り拓いていくといった思いを込めています。

現中期経営計画のテーマは、「地域の未来を共に創るCSVの実践」です。CSVは「Creating Shared Value」の略で、「共通価値の創造」を意味します。これを岩手銀行版CSVとして言い換えたものが、「お客さまとの関係性強化に努め、地域の課題に正面から向き合い、その解決に取組んでいくことで、お互いの社会的価値と経済的価値を高めていく」ということであり、現中期経営計画ではこのテーマを具現化することによって、当行の目指すべき姿である主要な営業基盤である地域との共存共栄を目指していくこととしています。

現中期経営計画の基本方針は4つです。1つ目は「地域やお客さまの成長を実現するための質の高い付加価値の提供」です。従来型のファイナンス面の機能に加えて、事業領域の創出やデジタルトランスフォーメーションなどの専門性・利便性の高いサービスにより、地域やお客さまに対して質の高い付加価値を提供することを目指すものです。2つ目は「BPRの推進とリソース配分の最適化による業務効率性の向上」です。デジタル技術の活用などにより自らの生産性を高め、ヒトや時間などの経営資源を対お客さまビジネスにシフトするとともに、コスト削減も図ることを目指すものです。3つ目は「環境の変化に柔軟に対応できる市場運用・リスク管理・収益管理態勢の構築」です。銀行業務の中で、業務の取捨選択やリスクテイクの範囲、目標とする収益などを明確にして、リスク管理や収益管理を高度化させ、最終的にはリスクに対する収益の増加を目指すものです。4つ目は「一人ひとりが知恵と行動により主体的に課題解決に取り組む組織風土の醸成」です。これは、課題解決に主体的に取り組む人材を育成するとともに、職員が能力を最大限に発揮できる環境を整備することを目指すものです。

現中期経営計画では、この4つの基本方針のもと各種施策に取組むことによって、テーマである「地域の未来を共に創るCSVの実践」の実現を目指しています。
 


 

② 中期経営計画の進捗状況 

中期経営計画では前半2年間で「収益構造の改革・体制の再構築」と「新事業・デジタル分野等への積極投資」に取り組み、後半2年間でこの取組成果を発現させる期間と位置づけており、前半2年間では事業領域拡大を目的として子会社2社を設立、デジタル戦略を担う部署を新設したほか、経営体質強化プロジェクトを進め、収益基盤を強化しました。3年目は前半の施策効果を収益に結びつけていく期間に入り、銀行・リース・カード・コンサル・地域商社などで構成される「いわぎん総合金融グループ」として連携や共同を進めるとともに、デジタル化への取組みを促進しました。また、新型コロナウイルス感染症の影響長期化で疲弊するお取引先企業に対しては、資金繰り対応に留まらず幅広く本業への支援を行いました。このほか、昨今高まりをみせる脱炭素に向けた活動に対しても積極的に取り組みました。さらに、今後新たな環境変化への対応が必要となることから経営体質強化をより一層進め、コスト構造改革を中心として、グループ会社の再構築や本社集約などを実施し、銀行業務の部門別収益改善に向けて業務改革にも着手しました。以上より、主要計数目標の進捗状況としまして、2022年3月期は「連結当期純利益」「ОHR」「自己資本比率」「事業承継・М&A支援先数」の全ての項目について、目標を達成しました。

指標

算出方法

2021年度

目標

2021年度

実績

2022年度

(中計最終年度)

目標

連結当期純利益

財務諸表上の数値

33億円

41億円

50億円

OHR

経費(除く臨時処理分)÷コア業務粗利益

84.6%

75.0%

70%台

連結自己資本比率

自己資本の額÷リスクアセット等の額

10%以上

11.62

10%以上

事業承継・M&A支援先数

M&Aまたは事業承継の支援を行っている先数

1,800先

1,856先

2,400

※計画期間累計

 

 

(3)経営環境

現在の地域金融機関を取り巻く経営環境は、低金利の長期化から預金と貸出を主体とした従来型のビジネスモデルが先細りしていることに加え、異業種の銀行業務参入など競争環境もさらに厳しくなっています。

当行が主要な営業基盤とする岩手県におきましては、急速に進む人口減少や若者の県外移転などに歯止めがかからず、後継者不在を主な理由とした廃業・解散が増加し、事業所数が減少するなど地域の活力が徐々に失われている状況です。一方で、岩手県はモノづくり産業が盛んな地域であり、自動車や半導体関連産業を中心とした産業集積が進んでいます。このほか、海外にも通用する「食」や「工芸品」が数多くあり、3つの世界遺産、海や山などの観光資源に恵まれています。また、豊かな自然を拠り所とした再生可能エネルギーのポテンシャルも全国トップクラスです。さらに、2021年12月には三陸沿岸道路(復興道路)が全面開通したことで、内陸部と沿岸部だけでなく県外へのアクセスも大幅に改善し、産業や観光の進展が期待できます。

このように当行が立脚する地域はさまざまな課題を抱えていますが、強みや可能性も多く存在します。当行は地域が抱える課題に対してその解決を支援しつつ、強みや可能性を引き出す取組みにより、さらなる成長発展を促すことで、地域との共存共栄を実現していきたいと考えています。
 

(4)対処すべき課題

当行では中期経営計画の最終目標に向けて、確立した事業基盤と新たな事業領域への取組みを確実に成果へ結びつける期間にありますが、昨今の取り巻く経営環境への変化はさらに大きく、数年後の予想も困難となっており、これから起こりうる変化に対応していくため、収益基盤をさらに強化していく必要があります。よって、次の取組みを特に強化しています。

① 持続可能な収益体質の確立

a 業務改革

当行では2017年10月から、経営体質強化プロジェクトとして本部および営業店のBPR、店舗再編を中心とした経営体質の強化に向けた取組みを進めています。本部および営業店のBPRは業務内容に応じて人員を適正化させ、人員の再配置を行うものです。BPRや店舗再編、コスト構造改革など本プロジェクトが目指すところは、業務の効率性と生産性を向上させて営業人員を創出することによってお客さまとの接点を増やし、収益力を強化する、同時にコスト構造の最適化を図り、将来的にいかなる環境にあっても地域を支え得る経営体質の構築です。

現在は、この取組みを高度化させるため、銀行業務を区分し、業務毎に収益分析を行ったうえで、収益改善を目的とした業務改革に取り組んでいます。特に、「事業性理解に基づく法人営業業務」を将来的な収益増強分野と位置付け、優先的に人員を配置していきます。そのために、個人ローンと店頭業務については、Web完結型サービスやタブレットの導入などのデジタル化を進めると同時に、営業店で対応している様々な業務を本部へ集中化させていきます。また、預り資産業務は統括店へ営業人員を集約させることで効率的な運営体制を目指します。

b デジタル分野等への積極的投資

デジタルトランスフォーメーション推進の専担部署「DX Lab」ではお客さま志向のデジタル環境の構築を目指し、引き続き①デジタル接点強化、②オムニチャネル、③データ利活用、④職員の営業活動支援などへの取組みを進めていきます。

また、Web完結ローン商品のさらなる拡大や預り資産におけるマス層へのPR、いわぎんアプリを活用したスマート通帳の利用促進など各方面でデジタル化へ取り組み、積極的な投資を行っていきます。

c 秋田銀行とのアライアンス

2021年10月、当行と秋田銀行は包括業務提携(アライアンス)の合意を発表しました。両行ではこれまでもNetbixなどにより多角的に協業を進め、協力関係を築いてきましたが、それぞれの地域の発展に向け、規制緩和を積極的に受け入れ、今後対応すべき新たな分野においてノウハウを共有、蓄積するなど、相互の営業基盤・経営資源を最大限に活用することを検討してきました。その結果、現在の協力関係を深化させる本アライアンスが、経営の独立性および健全な競争関係を維持しつつ、トップライン収益の拡大・バック業務の共同化等によるコスト削減において、さらなるシナジー効果の発揮に寄与し、それぞれが目標とする金融グループ像の実現に資するとの結論に至りました。現在、7つの分科会(①コーポレート・地方創生、②事務・システム、③コスト構造改革、④DX、⑤リテール営業、⑥審査管理、⑦地域商社)が主力となり、具体的施策の協議や検討を重ねており、定量効果や目標などを設定のうえ取り組んでいきます。

※Netbix…Network For Business Information Exchange(ビジネス情報交換ネットワーク)の略 称。当行、青森銀行、秋田銀行の北東北三行が、相互の支店網や情報収集力を生かして法人のお客さまに対するサービス向上を図るため、2003年4月に発足した連携組織。

 


 

② 職員一人ひとりが活躍できる態勢の整備および人材の育成

職員一人ひとりが活躍できる態勢の整備に関しては、職員が自律的、効果的に労働時間を配分することにより、生産性向上や労働時間の削減、育児・介護・通院など「仕事と生活の調和」をより一層促進することを目的として、2020年4月よりフレックスタイム制度を導入しています。また、自由闊達で風通しのよい組織風土を醸成し、より一層柔軟な発想を生み出すことなどを目的として、2021年4月からはTPОにふさわしく、清潔かつ機能的で業務遂行にふさわしい服装にて営業する「就業時における服装の多様化」を実施しております。さらに当行では、「多様な行員が互いを尊重し、一人ひとりが安心して成長と活躍ができる職場」を目指して、ダイバーシティ&インクルージョンの取組みを推進しており、2030年度まで推進するKPIとして「役席者の新規登用女性割合40%以上(2025年度以降)」、「男性行員の育児休業等取得率80%以上」の2項目を設定しました。その取組みを本格化させることで、今後誰もが多様なキャリアや働き方で活躍できる組織づくりを進めていきます。

人材の活用に関しましては、当行の将来を担う若手行員の育成と定着化が極めて重要な課題と捉えています。近年は業務が多様化してきているほか、お客さまのライフプランニングやコンサルティング、フィンテックなど、より深い専門知識やノウハウを兼ね備えた人材が必要となってきていることから、専門人材向けのキャリアデザインに関する検討も行っています。また、専門的な知識の習得と活用を目指し、若手行員のグループ会社への出向を積極的に進めており、グループ会社において、銀行業務にとどまらない幅広い業務を経験することで、視野の拡大と知識の高度化も目指しています。

 ③ 新型コロナウイルス感染症の影響長期化や原油高騰などへの対応

 新型コロナウイルス感染症の影響は長期化しており、収束の気配は見えておりません。また、原油をはじめとした原材料不足・高騰の影響は拡大しており、ロシアのウクライナ侵攻も加わり、その影響度合いは不透明感を増しています。当行は引き続き、地域金融機関としての責務である金融インフラの維持、また安定的かつ円滑な資金供給にしっかりと対応していく考えです。

当行では、現在、本部組織を横断した「地域支援チーム」を設置しているほか、全営業店に経営相談窓口を設置し、影響を受けられているお取引先の資金繰り支援を継続するとともに、事業再構築やデジタル化への支援などの本業支援も強化しています。

昨今のお取引先を取り巻く経営環境の変化は大きく、抱える課題も様々であります。当行ではお取引先の実態を把握したうえで、本業支援や経営改善支援、金融支援といった各支援を迅速かつ適切に行い、お取引先の抱える様々な課題の解決に向けて、今後より一層グループの総力を結集し取り組んでまいります。

 

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得