業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中に将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項については、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 また当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号 2020年3月31日) 等を適用しております詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)に記載のとおりであります

 

(1)経営成績

 当連結会計年度における株式市場は、新型コロナウイルスの影響があったものの、4月には29千円台でありました日経平均株価は、その後30千円台をピークにやや弱含みで推移し、一時24千円台に下落したものの3月末には27千円台に回復し、その後横ばいで推移しております。しかしながら引き続き新型コロナウイルスの影響や諸外国の政策動向の影響や地政学リスク等の影響が懸念され、先行きは不透明な状況となっております。

 一方で、新規上場市場においては、当連結会計年度における新規上場社数が135社と、前年同期の99社と比べて大幅に増加しており、その中で新型コロナウイルスの影響を受けて4社が上場を中止し、6社が上場を延期するという状況ではありますが、新規上場市場は回復傾向にあるものと思われます。

 このような環境の中、当社では新規上場のみに依存しないビジネスモデルを形成するため、事業領域の拡大及び安定収入の獲得に向けた取り組みを進めております。

 安定収入の獲得につきましては、新規ファンドの組成に注力するとともに、将来のキャピタルゲイン及び成功報酬の獲得に向けた国内スタートアップへの投資、事業承継支援のための投資を行っており、新規ファンドの設立につきましては、地方創生ファンドとして株式会社京葉銀行、株式会社京葉銀キャピタル&コンサルティングと共同で中小企業の事業承継を支援する京葉銀事業承継投資事業有限責任組合を、創業・第二創業支援、成長支援(軽度の再生支援含む)、事業承継支援を目的とし、京都信用金庫、株式会社京信ソーシャルキャピタルと共同で京信イノベーションC2号投資事業有限責任組合を、大阪信用金庫と共同でおおさか社会課題解決ファンドの後継ファンドとしておおさか社会課題解決2号投資事業有限責任組合を、また同金庫と共同でだいしん創業支援ファンドの後継ファンドとしてだいしん創業支援2号投資事業有限責任組合をそれぞれ設立いたしました。また、当社の連結子会社であるFVC Tohoku株式会社は、いわき信用組合、全国信用協同組合連合会、いわしんRITAパートナーズ株式会社と共同で磐城国地域振興ファンドの後継ファンドとして磐城国地域振興第2号投資事業有限責任組合を設立いたしました。

 これにより、運用中のファンド総額は23,432百万円と、前連結会計年度から2,729百万円増加いたしました。投資業務においては、国内スタートアップへの投資、事業承継支援のための投資を中心に行い、投資残高は367社、8,789百万円と、前連結会計年度から69社、1,777百万円増加いたしました。

 当連結会計年度における経営成績を見てまいりますと、新規ファンドの設立や既存ファンドからの追加出資などファンドから受領する管理報酬を中心とした安定的収入は増加しましたが、営業投資有価証券の売却が前年同期と比べて減少したことや前年同期に投資先企業が上場し当該株式の売却で成功報酬を獲得したこと等により、売上高は546百万円(前連結会計年度860百万円)と減収となりました。一方、管理報酬の増加、原価改善による固定的経費の減少等により、個別投資先企業に対して減損が発生した前連結会計年度に比べて大幅な改善となり、営業利益は64百万円(同14百万円の営業損失)と黒字に転換、経常利益は165百万円(同94百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は143百万円(同20百万円)と過去最高益となりました。

 なお、持分法による投資利益として100百万円を営業外収益に計上しております。これは当社持分法適用関連会社である株式会社デジアラホールディングスに係るものであります。

 

 

① 売上高の分析

 当連結会計年度における営業投資有価証券売上高は、上場、及び、未上場の営業投資有価証券の売却が前年同期に比べて減少したことにより、前連結会計年度の231百万円から減少して8百万円となりました。投資事業組合管理収入は、ファンドの新規設立により、管理報酬は増加しましたが、キャピタルゲインに対する成功報酬が減少したことにより、前連結会計年度の544百万円から減少して452百万円となりました。コンサルティング収入による売上高は、前連結会計年度の36百万円から増加して37百万円となりました。また、コワーキング収入による売上高は、前連結会計年度の41百万円から横ばいとなりました。

 また、最近2連結会計年度の主な相手先別の連結売上高及び当該連結売上高に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度
(自  2020年4月1日
 至  2021年3月31日)

当連結会計年度
(自  2021年4月1日
 至  2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

エネルギープロダクト株式会社

169

19.7

 

② 売上原価の分析

 当連結会計年度における売上原価は、287百万円(前連結会計年度678百万円)となりました。

 売上原価の内訳は、上場、及び、未上場株式の売却原価1百万円(同76百万円)、営業投資有価証券の減損等0百万円(同302百万円)、投資損失引当金繰入額4百万円(同繰入額4百万円)、その他売上原価281百万円(同295百万円)となっております。

 

③ 販売費及び一般管理費の分析

 当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、193百万円(前連結会計年度196百万円)となりました。

 当該減少は、投資管理業務の効率化による経費削減努力等によるものであります。

 

 

<ベンチャーキャピタル事業>

a.営業投資関連損益の状況

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自  2020年4月1日

至  2021年3月31日)

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

増減

営業投資有価証券売上高

231

8

△223

営業投資有価証券売却額(上場)

11

3

△7

営業投資有価証券売却額(未上場)

204

1

△202

営業投資有価証券利息・配当金

16

3

△13

営業投資有価証券売上原価

378

1

△376

営業投資有価証券売却原価(上場)

1

0

△0

営業投資有価証券売却原価(未上場)

74

0

△74

営業投資有価証券減損額

302

0

△301

投資損失引当金繰入額

4

4

△0

投資損失引当金繰入額

5

4

△0

売却に係る投資損失引当金戻入額(△)

△0

△0

△0

減損に係る投資損失引当金戻入額(△)

△0

0

営業投資関連損益

△151

2

153

(注) 当連結会計年度末における営業投資有価証券に対する投資損失引当金の割合は、9.0%(前連結会計年度末7.0%)となりました。

 

b.投資損失引当金の状況

 当社は、投資先企業の経営成績及び財務状況を個別に精査し、さらに投資実行の主体である各ファンドの解散時期を勘案した上で、それぞれの営業投資有価証券を四半期ごとに評価し、償却処理又は投資損失引当金を計上しております。なお、新型コロナウイルスの感染拡大による投資先企業への影響など、昨今の急激な外部環境の変化が投資先企業に及ぼす影響も、極力タイムリーに反映した評価を行っております。

 当連結会計年度においては、投資損失引当金繰入額は4百万円(前連結会計年度は繰入額4百万円)、当連結会計年度末における投資損失引当金残高は12百万円(前連結会計年度末7百万円)となりました。なお、投資損失引当金の戻入額と繰入額は相殺し、純額表示しております。

 また、当連結会計年度末における営業投資有価証券に対する投資損失引当金の割合は、9.0%(前連結会計年度末7.0%)となりました。

 

c.投資の状況

 当連結会計年度における当社の投資実行の状況は、95社、2,345百万円(前連結会計年度83社、1,896百万円)となり前連結会計年度に比べ12社、449百万円増加しております。また、当連結会計年度末における投資残高は367社、8,789百万円(前連結会計年度末298社、7,012百万円)となりました。

 

① 証券種類別投資実行額

証券種類

投資実行額

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

投資企業数(社)

金額(百万円)

投資企業数(社)

株式

1,612

70

2,042

78

社債等

284

16

302

17

合計

1,896

83

2,345

95

(注)1.投資企業数の合計値は、株式、社債等双方に投資している重複社数を調整しております。

2.金額及び投資企業数は、連結グループ間の取引及び持分法適用の投資事業組合によるものを含めております。

 

② 証券種類別投資残高

証券種類

投資残高

前連結会計年度末

(2021年3月31日)

当連結会計年度末

(2022年3月31日)

金額(百万円)

投資企業数(社)

金額(百万円)

投資企業数(社)

株式

5,871

269

7,668

328

社債等

1,140

41

1,121

50

合計

7,012

298

8,789

367

(注)1.投資企業数の合計値は、株式、社債等双方に投資している重複社数を調整しております。

2.金額及び投資企業数は、連結グループ間の取引及び持分法適用の投資事業組合によるものを含めております。

 

d.投資先企業の上場状況

 当連結会計年度において上場した投資先企業はありません。

 

 

e.投資事業組合の状況

 

前連結会計年度末

(2021年3月31日)

当連結会計年度末

(2022年3月31日)

投資事業組合出資金総額(百万円)

20,703

23,432

投資事業組合数(組合)

45

50

(注) 「投資事業組合出資金総額」は、コミットメント総額であります。

 

 

① 出資金総額が増加した投資事業組合

 当連結会計年度において出資金総額が増加した投資事業組合は、以下の9組合であります。

(単位:百万円)

 

投資事業組合名

増加した出資金額

増加の理由

ロボットものづくりスタートアップ支援投資事業有限責任組合

300

追加出資

もりおかSDGs投資事業有限責任組合

1

追加出資

京葉銀事業承継投資事業有限責任組合

1,500

新規設立

東日本銀行地域企業活性化投資事業有限責任組合

300

追加出資

京信イノベーションC2号投資事業有限責任組合

500

新規設立

磐城国地域振興第2号投資事業有限責任組合

1,000

新規設立

おおさか創業2号投資事業有限責任組合

500

新規設立

おおさか社会課題解決2号投資事業有限責任組合

500

新規設立

日本スタートアップ支援2号投資事業有限責任組合

60

新規設立

合計(9組合)

4,661

 

 

② 出資金総額が減少した投資事業組合

 当連結会計年度において出資金総額が減少した投資事業組合は、以下の4組合であります。

(単位:百万円)

投資事業組合名

減少した出資金額

減少の理由

あおもりクリエイトファンド投資事業有限責任組合

1,772

全財産の分配完了

日本スタートアップ支援1号投資事業有限責任組合

10

契約解除

WAOJE海外進出支援投資事業有限責任組合

50

脱退

投資事業有限責任組合えひめベンチャーファンド2013

100

組合総額の減少

合計(4組合)

1,932

 

 

(2)財政状態

資産、負債及び純資産の分析

 総資産額については、当連結会計年度末は、3,142百万円(前連結会計年度末3,199百万円)となりました。その内訳は流動資産2,221百万円(同2,335百万円)、固定資産921百万円(同863百万円)です。

 負債額については、当連結会計年度末は、393百万円(同398百万円)となりました。

 また、純資産額については、親会社株主に帰属する当期純利益143百万円を計上したこと、非支配株主持分が165百万円減少したこと等により、2,749百万円(同2,801百万円)となりました。なお、純資産には投資事業組合の組合員の持分である非支配株主持分等が含まれるため、これらを控除して算出した自己資本は2,746百万円(同2,620百万円)であることから、自己資本比率は87.4%(同81.9%)となっています。

 

(3)キャッシュ・フロー

当社グループの資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、売上原価、販売費及び一般管理費の人件費、営業費用、管理費用であります。また、投資を目的とした資金需要は、ファンドへの投資資金、M&A等による関係会社株式の取得等によるものであります。当社及び当社が管理運営するファンドが保有する株式及び社債は、ベンチャーキャピタルの特質上、そのほとんどが未上場の株式及び社債であり、時価もなく流動性が極めて限定されています。そのため、自己資本の充実と安定的な収益を確保することに努めております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入及び資本による資金調達を基本としております。当社グループは、調達コストとリスク分散の観点から、低コストかつ安定的な資金を確保するよう努めております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高はなく、手元資金により賄われております。

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「キャッシュ」という。)は、前連結会計年度末より18百万円増加し、2,058百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりであります。

 

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動によるキャッシュ・フローは228百万円のキャッシュインフロー(前連結会計年度277百万円のキャッシュインフロー)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益173百万円、持分法による投資利益100百万円、営業投資有価証券の増加29百万円、売掛金の減少164百万円、前受金の増加38百万円、未払消費税等の減少30百万円、利息及び配当金の受取額54百万円、法人税等の支払額49百万円によるものであります。

 

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動によるキャッシュ・フローは42百万円のキャッシュアウトフロー(前連結会計年度12百万円のキャッシュアウトフロー)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出3百万円、投資有価証券の取得による支出50百万円、投資有価証券の売却による収入10百万円によるものであります。

 

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動によるキャッシュ・フローは167百万円のキャッシュアウトフロー(前連結会計年度19百万円のキャッシュアウトフロー)となりました。これは、非支配株主に対する分配金の支払によるものであります。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や適切な仮定に基づいて合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 なお、新型コロナウイルスの感染拡大による事業への影響については不確実性が大きく、投資先企業の業績や資

金繰りの悪化による投資損失引当金や減損損失が増加する可能性があります。今後の事業に対する影響につきまし

ては、注視していく必要があるものと考えております。

 

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