業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の流行拡大が長期化する中、ワクチン接種の進展によって個人消費や経済活動が徐々に活発化し、一部で景気持ち直しの気運が見られたものの、新たな変異株(オミクロン株)拡大懸念から、再び景気の先行きが不透明な状況となりました。

 また、海外においても、オミクロン株拡大のリスクを抱えるとともに、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は地政学リスクを高め、世界経済への影響も予断を許さない状況となりました。

 こうした情勢のもと、国内株式市場は、堅調な米国市場を背景に上昇基調で始まりました。8月中旬には新型コロナウイルスのデルタ株拡大懸念から日経平均株価は弱含みとなりましたが、9月に入り菅首相(当時)が自民党総裁選への不出馬を表明したことで、新政権への政策期待から日経平均株価は上昇し、9月14日には31年ぶりの高値(終値ベース:30,670円10銭)となりました。その後、オミクロン株拡大の恐れや、ウクライナ情勢を巡る警戒感からリスク回避姿勢が強まり株価が下落する局面もありましたが、期末にかけてロシアとウクライナの停戦交渉の進展期待などから株価は回復基調を辿り取引を終了しました。3月末の日経平均株価(終値)は、前期末を4.7%下回る27,821円43銭となりました。

 一方、米国株式市場は、バイデン政権による巨額のインフラ投資計画や、雇用統計等の経済指標が市場予想を上回る回復を示したことから上昇基調で始まりましたが、9月に入ると中国の不動産大手企業の過剰債務問題などを背景に相場は軟調な地合いとなりました。更に、11月にはオミクロン株拡大懸念から株価が下押す局面も見られましたが、その後は好調な企業業績などを背景に堅調な展開となり、12月29日のダウ工業株30種平均(36,488ドル63セント)は終値ベースで史上最高値を更新しました。その後、ロシアのウクライナ侵攻に伴い欧米主要国がロシアへの金融・経済制裁を決定したことなどが嫌気され、株価は下落基調で推移しました。しかし、FRB(米国連邦準備制度理事会)による政策金利の引き上げが実施され、金融政策への不透明感が後退したことで、株価は戻り歩調となり、3月末のダウ工業株30種平均(終値)は、前期末を5.1%上回る34,678ドル35セントとなりました。

 

(当社グループの経営成績)

 当社グループの営業収益は前期比9.9%減少の207億8百万円、純営業収益は同9.5%減少の205億12百万円となりました。一方、販売費・一般管理費は、同2.3%減少の151億31百万円となり、経常利益は同23.0%減少の57億99百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同29.9%減少の37億56百万円となりました。

 なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。また、当該会計基準等の適用については、「収益認識に関する会計基準」第84項に定める原則的な取り扱いに従って、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用しているため、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。

 セグメント別の経営成績は、以下のとおりであります。

 

岩井コスモホールディングス株式会社

 岩井コスモホールディングス株式会社は、グループの経営戦略の策定及びその推進に取り組んでおります。営業収益は、子会社からの配当収入等の増加により前期比56.8%増加の27億60百万円となりました。一方、販売費・一般管理費は、当社グループの基幹業務システム移行に係る内部統制対応費用の発生を主因として同15.4%増加の1億46百万円となりました。営業外損益は、投資有価証券の配当金の増加を主因として同22.0%増加の2億64百万円の利益となり、以上の結果、経常利益は同55.6%増加の28億77百万円となりました。

 

岩井コスモ証券株式会社

 岩井コスモ証券株式会社は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、引き続き、Web会議システム「Zoom」によるお客様との面談やWebセミナーの開催をはじめ、「YouTube」による市況解説を日々配信するなど、デジタルを活用した金融情報サービスの提供に注力しました。また、5月には基幹業務システムを自社システムから株式会社野村総合研究所が提供する共同利用型のシステムに移行するとともに、BCP対策の強化などシステムの信頼性向上を図りました。

 この様な取り組みに加え、対面取引・コールセンター取引を中心に、中長期に安定した収益が期待できる債券型ファンド「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド」の販売に取り組んだほか、昨今注目されているSDGs・ESG関連の投資信託や、次世代に向けた革新的技術として注目されるメタバースに関わる投資信託の取り扱いを開始するなど、幅広いテーマからお選び頂けるよう商品の拡充を図るとともに、投資信託残高の増大に注力いたしました。

 一方、インターネット取引では、更なるサービス強化を図るべく、組織を「本部」に格上げするとともに、8月には若年層のお客様の資産形成をサポートするため「25歳以下株式手数料無料化プログラム」を導入するなど、新たなサービスを開始いたしました。

 この結果、営業収益は前期比9.9%減少の207億19百万円、純営業収益は同9.5%減少の205億23百万円となりました。一方、販売費・一般管理費は、基幹業務システム移行関連費用が発生したものの、業績に連動する賞与等の変動費の減少を主因として同2.0%減少の151億13百万円となり、投資有価証券の配当金などによる営業外損益1億53百万円の利益(対前期比17.9%増加)を加えた経常利益は、同24.7%減少の55億64百万円となりました。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①連結会計年度の財政状態の分析

 当連結会計年度末の資産合計は1,824億76百万円となり、前連結会計年度末に比べて104億41百万円減少しました。主な要因としては、現金・預金が36億96百万円増加したものの、預託金が90億17百万円減少、信用取引資産が36億19百万円減少したことが挙げられます。

 一方、負債合計は1,259億79百万円となり、前連結会計年度末に比べて107億37百万円減少しました。主な要因としては、受入保証金が44億55百万円減少、預り金が27億32百万円減少したことが挙げられます。

 純資産合計は564億96百万円となり、前連結会計年度末に比べて2億95百万円の増加となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は138億76百万円と前連結会計年度末に比べて38億5百万円の増加となりました。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、63億61百万円の増加となりました。主な要因としては、受入保証金の減少による支出(△44億55百万円)や法人税等の支払額(△33億35百万円)があったものの、顧客分別金信託の減少による収入(+90億円)、信用取引資産の減少による収入(+36億19百万円)が挙げられます。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、11億36百万円の減少となりました。主な要因としては、長期前払費用の取得による支出(△7億20百万円)、無形固定資産の取得による支出(△2億55百万円)が挙げられます。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、27億50百万円の減少となりました。主な要因としては、配当金の支払額(△27億47百万円)が挙げられます。

 

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としています。これらの見積りについて、過去の実績や状況に応じて入手可能な情報を基に合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるためこれらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

繰延税金資産

 当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金について「税効果会計に係る会計基準」に基づき、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、当社グループの経営成績は経済情勢や市場環境の変動に大きく影響を受けるため、長期にわたる課税所得の見積りが困難であります。従って、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しておりますが、繰延税金資産の全部または一部について将来回収ができないと判断した場合には、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上する可能性があります。

 

④当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の営業収益は、前期比9.9%減少の207億8百万円、純営業収益は同9.5%減少の205億12百万円となり、経常利益は同23.0%減少の57億99百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同29.9%減少の37億56百万円となりました。主な要因は、オミクロン株拡大のリスクに加え、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が地政学リスクを高め、先行き不透明なマーケット環境となったことから、委託手数料及びトレーディング損益が高水準であった前連結会計年度を下回りました。なお、経営上の重要指標と位置付けるROE(自己資本利益率)は6.7%となり、比較する主要な証券会社16社(ネット専業証券会社を除く)の平均値(5.2%)を上回りました。今後も、業界平均を上回るROEの維持や経営課題の一つに掲げる安定収益拡大の取り組みとして、投資信託及び信用取引残高の増加に注力し、さらなる強固な経営基盤の構築に努めて参ります。

 

 なお、主な収益と費用の内訳は、以下のとおりであります。

 

(受入手数料)

受入手数料は前期比2.0%増加の93億55百万円となりました。内訳は以下のとおりであります。

 

①委託手数料

 委託手数料は前期比10.7%減少の48億34百万円となりました。同要因としては、国内外の先行き不透明なマーケット環境により、株券の委託手数料が同10.8%減少の46億11百万円となったことが挙げられます。

 

②引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料

 引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、株券の手数料が前期比41.8%減少の73百万円、債券の手数料はソフトバンクグループ社債の取り扱いなどによって同984.3%増加の2億38百万円となり、同手数料全体では同111.0%増加の3億11百万円となりました。

 

③募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料

 募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は、投資信託の販売増加を主因として前期比6.9%増加の15億55百万円となりました。投資信託の主な販売動向として、中長期に安定した収益が期待できる債券型ファンド「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド」のほか、昨今注目されているSDGsやESG関連の投資信託に加え、次世代に向けた革新的技術として注目されるメタバースに関わる投資信託が挙げられます。

 

④その他の受入手数料

 その他の受入手数料は、投資信託の信託報酬手数料の増加を主因として前期比23.2%増加の26億54百万円となりました。

 

(トレーディング損益)

 米国株式の国内店頭取引を中心とする株券等のトレーディング損益は、先行き不透明なマーケット環境を背景として、前期比21.8%減少の83億88百万円の利益となりました。一方、債券等のトレーディング損益は同15.6%減少の9億4百万円の利益となり、その他のトレーディング損益37百万円の損失(前期は74百万円の損失)を含めたトレーディング損益の合計は同21.1%減少の92億55百万円の利益となりました。

 

(金融収支)

 金融収益は、信用取引収益の増加を主因として前期比0.2%増加の20億97百万円となりました。一方、金融費用は同38.9%減少の1億95百万円となり、差し引き金融収支は同7.3%増加の19億2百万円となりました。

 

(販売費・一般管理費)

 販売費・一般管理費は、基幹業務システム移行関連費用が発生したものの、業績に連動する賞与や取引所協会費等の変動費項目の減少を主因として前期比2.3%減少の151億31百万円となりました。

 

(営業外損益)

 営業外損益は、受取配当金の増加などにより前期比20.4%増加の4億18百万円の利益となりました。

 

(特別損益)

 特別損益は、基幹業務システムの移行に伴う費用の計上を主として、2億45百万円の損失となりました(前期は3億36百万円の損失)。

 

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