業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの世界的な流行の中、依然として厳しい状況で推移いたしました。足許においては、政府の各種政策の効果等により、景気の持ち直しが期待されるものの、新型コロナウイルスの世界的な蔓延や地政学リスク等が国内外の経済に与える影響に十分注意する必要がある状況です。

 不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場については、新型コロナウイルス感染拡大に伴うテレワークの普及等によるオフィスの在り方の変化等を背景にオフィスの統合・縮小傾向が進む中、空室率が高い水準で推移

し、賃料の低下が継続いたしました。不動産投資市場については、低金利等による良好な資金調達環境における不動産投資家の高い投資意欲を背景に、積極的な物件取得が継続いたしました。

 このような事業環境のもと、当社グループでは2020年4月30日に公表した中期経営計画「Challenge &

Progress」の事業戦略に沿い、再開発事業の推進、外部成長をはじめとしたビルディング事業、アセットマネジメント事業等に取り組むことにより、企業価値の向上に努めてまいりました。さらには、サステナビリティ経営の実践を戦略に掲げ、特に脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、温室効果ガス排出量削減の中長期目標を更新し、当社グループ全体の温室効果ガス排出量(Scope1+2)を2018年度比で2030年度までに50%削減とする新目標を設定いたしました。また、気候変動がビジネスにもたらすリスク・機会に関する情報開示を推奨する「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明し、今後も情報開示を拡充してまいります。引き続き、脱炭素の取り組みを一層強化することで、「街づくりに貢献する会社」として、サステナブルな社会の実現・持続的な企業価値の向上に努めてまいります。

 この結果、当社グループの連結業績につきましては、売上高は578億18百万円(前期比227億69百万円、65.0%増)、営業利益は126億15百万円(同13億86百万円、12.3%増)、経常利益は115億72百万円(同13億27百万円、13.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は87億5百万円(同15億86百万円、22.3%増)となり、過去最高益を更新いたしました。

 なお、当社は、2021年4月30日開催の取締役会において、2022年3月期からの報告セグメント区分の変更を決議いたしました。

 当社は、中期経営計画の戦略として「新規賃貸資産の取得によりポートフォリオを積み上げるとともに、ポートフォリオ入替えの過程において物件売却益を獲得」することを掲げております。その方針のもと、前連結会計年度末に賃貸資産2件を固定資産から販売用不動産に振替えており、ポートフォリオ戦略を推進しております。今後計画している事業展開を踏まえ、従来「アセットマネジメント事業」に属していた、販売用不動産の開発・売却・運用等及び固定資産の取得・売却を行っている不動産投資事業部を当連結会計年度より「ビルディング事業」に変更しております。

 また、子会社であります平和不動産プロパティマネジメント株式会社(2021年3月1日付で平和サービス株式会社より商号変更)は、従来の建物設備保守管理業務等を発展させ、ビルをトータルでマネジメントするプロパティマネジメント業務を展開することから、従来の「その他の事業」から当連結会計年度より「ビルディング事業」に含めております。

 今回の変更により、「ビルディング事業」は、証券取引所、オフィス、商業施設及び住宅等の開発、賃貸、管理ならびに売却等を行うこととなり、「アセットマネジメント事業」は、平和不動産リート投資法人の資産運用及びハウジングサービス株式会社による不動産の仲介等を行うこととなります。

 なお、前連結会計年度のセグメント情報は、変更後の区分方法に基づき作成したものを開示しております。

 また、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。

 

(単位:百万円)

セグメントの名称

前連結会計年度

当連結会計年度

比較

売上高

営業利益

売上高

営業利益

売上高

営業利益

ビルディング事業

32,306

10,975

54,433

12,399

22,127

1,423

アセットマネジメント事業

2,742

1,621

3,384

1,977

641

356

調整額

△1,368

△1,762

△393

35,048

11,228

57,818

12,615

22,769

1,386

 前連結会計年度及び当連結会計年度における主要な顧客ごとの売上高及び売上高に対する当該割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

日本オープンエンド不動産投資法人

8,160

23.3

銀座プロジェクト特定目的会社

18,000

31.1

平和不動産リート投資法人

11,430

19.8

 (注)当該割合が100分の10未満の金額及び割合については、記載を省略しております。

 

  (1)ビルディング事業

 ビルディング事業のうち、賃貸収益は、前期に取得した兜町第7平和ビル(東京都中央区)、新橋スクエアビル(東京都港区)及び平和不動産日本橋ビル(東京都中央区)、今期取得した兜町平和ダイヤビル(東京都中央区)、今期開業したKABUTO ONE(東京都中央区)の賃貸収益貢献、テナント解約違約金の計上等により、261億11百万円(前期比34億86百万円、15.4%増)となりました。また、物件売却収入は、販売用不動産の売却が大幅に増加したことにより267億70百万円(同186億10百万円、228.1%増)となりました。これにその他を含めた本事業の売上高は544億33百万円(同221億27百万円、68.5%増)、営業利益は123億99百万円(同14億23百万円、13.0%増)となりました。

 なお、当連結会計年度末における当社グループのビルの空室率は4.46%(再開発関連の貸し止め等を除く)となります。

 

<売上高の内訳>                                      (単位:百万円)

区  分

前連結会計年度

当連結会計年度

面積(㎡)

金額

面積(㎡)

金額

賃貸収益

土地賃貸面積   3,380.75

22,624

土地賃貸面積   3,380.75

26,111

建物賃貸面積 422,893.12

建物賃貸面積 425,431.57

物件売却収入

8,160

26,770

その他

1,521

1,552

32,306

54,433

 

  (2)アセットマネジメント事業

 アセットマネジメント事業のうち、アセットマネジメント収益は21億92百万円(前期比1億21百万円、5.9%増)、仲介手数料は11億91百万円(同5億20百万円、77.5%増)となり、本事業の売上高は33億84百万円(同6億41百万円、23.4%増)、営業利益は19億77百万円(同3億56百万円、22.0%増)となりました。

 

<売上高の内訳>                                      (単位:百万円)

区  分

前連結会計年度

当連結会計年度

比較

アセットマネジメント収益

2,071

2,192

121

仲介手数料

671

1,191

520

2,742

3,384

641

 

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ14億74百万円減少し、281億11百万円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益125億44百万円及び棚卸資産の減少185億78百万円等により、341億89百万円の資金の増加となりました。(前期は82億92百万円の増加)

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出182億18百万円、無形固定資産の取得による支出21億56百万円等により、207億5百万円の資金の減少となりました。(前期は302億円の減少)

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入250億10百万円があった一方、短期借入金の減少54億50百万円、長期借入金の返済による支出271億59百万円、社債の償還による支出18億91百万円、自己株式の取得による支出28億20百万円及び配当金の支払額31億76百万円等により、154億90百万円の資金の減少となりました。(前期は243億27百万円の増加)

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

項目

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

自己資本比率

 34.9%

 32.5%

 31.6%

 31.1%

 31.7%

時価ベースの自己資本比率

 27.2%

 24.6%

 31.2%

 33.7%

 38.4%

債務償還年数

11.6年

- 年

6.5年

26.0年

6.0年

インタレスト・カバレッジ・レシオ

 10.4倍

- 倍

 22.8倍

 6.2倍

 24.2倍

ネットD/Eレシオ

1.4倍

1.6倍

1.5倍

1.6倍

1.5倍

 (注)1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値を用いて、以下の計算式により算出しております。

              自己資本比率:自己資本/総資産
           時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
           債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
           インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
           ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現金及び預金・有価証券)/純資産
2.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている短期借入金、1年内償還予定の社債、1年内返済予定の長

   期借入金、社債、長期借入金、長期未払金であります。また、利払いは、連結損益計算書に計上されている

   支払利息を使用しております。

3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用し

  ております。

4.2019年3月期の債務償還年数及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナ

  スであるため記載しておりません。

 

③生産、受注及び販売の実績

 生産、受注及び販売の状況については、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの業績に関連付けて記載しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループでは2020年4月30日に公表した中期経営計画「Challenge & Progress」の事業戦略に沿い、再開発事業の推進、外部成長をはじめとしたビルディング事業、アセットマネジメント事業等に取り組むことにより、企業価値の向上に努めてまいりました。当連結会計年度においては、KABUTO ONE(東京都中央区)の開業、兜町平和ダイヤビル(東京都中央区)の取得等による外部成長及び賃料増額改定による内部成長等に取り組みました。当社グループの当連結会計年度の業績につきましては、上記に加え、ビルディング事業における物件売却益の増加及びテナント解約違約金の計上等により、営業利益は126億15百万円(前期比13億86百万円増)、政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益の計上等により親会社株主に帰属する当期純利益は87億5百万円(前期比15億86百万円増)となり、営業利益は3期連続、親会社株主に帰属する当期純利益は5期連続で過去最高益を更新いたしました。

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、特に主たる要因としては、国内経済の動向や賃貸オフィス市況及び不動産投資市場等の不動産市況の動向等が挙げられます。

 また、当連結会計年度末の資産、負債、純資産の状況は次のとおりであります。

 

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

比較

資産

381,353

376,210

△5,143

負債

262,713

256,931

△5,782

純資産

118,639

119,278

638

有利子負債

215,727

206,236

△9,490

(注)有利子負債は、短期借入金、1年内償還予定の社債、1年内返済予定の長期借入金、社債、長期借入金、長期未払

   金であります。

 

(資産)
 当連結会計年度末における資産合計は3,762億10百万円となり、前連結会計年度末比51億43百万円の減少となり

ました。これは兜町平和ダイヤビル(東京都中央区)の取得、KABUTO ONE(東京都中央区)の建築費の支払い、非連結子会社であった合同会社エルエー3及び兜町12合同会社の連結子会社化等に伴う有形固定資産106億41百万円の増加等があった一方、販売用不動産106億38百万円の減少、投資有価証券41億99百万円の減少等によるものです。

 なお、当連結会計年度末における賃貸等不動産及び賃貸等不動産として使用される部分を含む不動産に関する連結貸借対照表計上額は2,767億14百万円(期中増額122億25百万円)、時価は3,889億80百万円(期中増額120億83百万円)となっております。

 

(負債)
 当連結会計年度末における負債合計は2,569億31百万円となり、前連結会計年度末比57億82百万円の減少となりました。これは未払法人税等29億62百万円の増加等があった一方、有利子負債94億90百万円の減少等によるものです。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は2,062億36百万円、ネットD/Eレシオ1.5倍となりました。中期経営計画「Challenge & Progress」の計数目標としてネットD/Eレシオ1.8倍以下を掲げておりますが、当該水準の範囲内となっております。

 

(純資産)
 当連結会計年度末における純資産合計は1,192億78百万円となり、前連結会計年度末比6億38百万円の増加となりました。これは自己株式の取得等による28億10百万円の減少及びその他有価証券評価差額金21億19百万円の減少があった一方、利益剰余金55億17百万円の増加等によるものです。

 なお、当連結会計年度において自己株式636,600株の取得を実施し、資本効率の向上に努めるとともに、安定的な株主還元の実現に向けた具体的な対応を実行いたしました。

 

 また、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(財政状態の分析)

 当連結会計年度末におけるセグメントごとの資産の状況は、ビルディング事業の資産は兜町平和ダイヤビル(東京都中央区)の取得、KABUTO ONE(東京都中央区)の建築費の支払い、非連結子会社であった合同会社エルエー3及び兜町12合同会社の連結子会社化等に伴う有形固定資産の増加等があった一方、物件売却に伴う販売用不動産及び仕掛販売用不動産の減少等により、前連結会計年度末比で9億60百万円減少し、3,100億89百万円となりました。また、アセットマネジメント事業においては平和不動産リート投資法人投資口の追加取得に伴う投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末比で7億85百万円増加し、248億54百万円となりました。

 

<セグメントごとの資産の状況>                               (単位:百万円)

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

比較

ビルディング事業

311,050

310,089

△960

アセットマネジメント事業

24,069

24,854

785

調整額

46,234

41,265

△4,968

連結財務諸表計上額

381,353

376,210

△5,143

 

(経営成績の分析)

 セグメントごとの経営成績の状況については、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの業績に関連付けて記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 当社グループの資本の財源については、主に事業活動から生じるキャッシュイン、金融機関からの借入及び社債発行等による資金調達となっており、これら調達した資金を運転資金、再開発事業やビルディング事業等の成長投資、株主還元及び安定的な経営のための内部留保にバランス良く配分いたします。なお、当社グループの運転資金需要のうち主なものは、事業資産の運営費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用及び支払利息等の営業外費用であります。

 また、ネットD/Eレシオを財務規律の指標と位置付け、資本政策、財務規律の適切な水準を維持することを基本方針としており、当連結会計年度末における借入金及び社債等の有利子負債残高は2,062億36百万円、有利子負債から現金及び預金・有価証券を減じたネット有利子負債残高は1,780億9百万円、ネットD/Eレシオは1.5倍となっております。

 なお、当社は、再開発事業やビルディング事業をはじめとする長期的な事業を安定的に展開し、株主価値を向上させるために必要な内部留保の確保を前提とした上で、株主還元を実施しております。資本コスト及び資本効率を意識しつつ、事業投資リターン水準を踏まえ、2020年度から2023年度においては連結総還元性向70%程度を目標に利益還元することを基本方針としております。当該方針に基づき、当連結会計年度の配当金の総額は34億89百万円を見込んでおり、また、当社は、当連結会計年度において総額24億99百万円の自己株式取得を行いました。その結果、当連結会計年度の連結総還元性向は68.8%を見込んでおります。

 

③重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。なお、連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

 また、特に、固定資産の減損及び販売用不動産の評価については重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。

 

 

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