課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社を中核とする京王グループは、運輸、流通、不動産、レジャー・サービス等幅広い事業を通じて、お客様のより良い暮らしを創造していくことにより、地域の発展と幸せな暮らしの実現に貢献することを基本方針としております。グループとしての存在価値を明文化した「京王グループ理念」を制定し、この理念を具現化するため、「京王グループ経営ビジョン」に基づき、当社グループの競争力の強化に取り組むとともに、法令・倫理を遵守し、地域社会貢献活動を行うなど、企業価値・株主共同の利益および沿線価値の向上に努めております。

  <京王グループ理念>

私たち京王グループは、

 つながりあうすべての人に誠実であり、環境にやさしく、

「信頼のトップブランド」になることを目指します。

そして、幸せな暮らしの実現に向かって

生活に溶け込むサービスの充実に日々チャレンジします。

 

 

また、多くのお客様の人命を預かる鉄道事業者である当社は、「輸送の安全性」の確保という、極めて重要な公共的使命を担っております。当社はこの使命を果たし続けていくことで、お客様に「安心」を提供し、当社グループ全体の信頼性を向上させてきたと自負しており、このことは当社の企業価値の根幹をなすものと考えております。当社は、今後もその使命を果たすため、より一層「経営の安定性」を高め、鉄道事業における安全対策をはじめ、「事業の継続性」を確保するための中長期的な視点に立った設備投資を積極的に行う等、「信頼のトップブランド」を確立してまいります。

 

(2) 経営戦略等

当社グループでは、「京王グループ理念」の中に掲げる「信頼のトップブランド」の確立を目指して、当社グループの競争力の強化、財務健全性の確保、法令・倫理の遵守、地域社会貢献活動の実施など、企業価値・株主共同の利益の向上に資する経営に努めております。今後もグループ全体の持続的な成長のため、当社グループが長年培ってきた有形・無形の経営資源を維持・活用しながら、以下の施策に取り組んでまいります。

第一に、社会に不可欠なインフラを提供する公共輸送機関として安全確保を最重要課題とし、中長期的な視点で社会的責任を果たしてまいります。

第二に、当社沿線が将来にわたって活力を維持できるよう、拠点開発の推進や地域活性化に多角的に取り組んでまいります。

第三に、お客様の多様化するニーズや生活スタイルの変化を捉えた施策を継続的に実施することで、将来にわたり発展、成長する企業グループを目指してまいります。

第四に、法令の遵守、地球環境への配慮など、企業の社会的責任を果たす取組みを当社グループ全体で続けてまいります。

第五に、企業価値の源泉である「輸送の安全性」の実際の担い手である当社グループの従業員を中長期的な視点で育成するとともに、「安全の確保」を最重要事項と考える企業文化を堅持してまいります。

第六に、事業の継続性に留意した資本政策のもと、成長に向けた投資や事業の選択と集中など様々な取組みの実施と完遂を目指してまいります。

 

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

当社グループにおいては、新型コロナウイルス感染症による生活様式変容の渦中にあります。テレワーク等の定着により鉄道・バスの輸送人員はコロナ禍以前の水準に回復することは想定しにくい状況で、インバウンド需要に支えられてきたホテル業や百貨店業、駅を中心にビジネスを展開してきたグループ各事業についても極めて厳しい状況が続いているなど、当社グループを取り巻く環境が劇的に変化しております。

これらの変化に対応するとともに、今後の大規模投資の本格化を見据え、事業の選択と集中の推進により各事業の利益水準を改善し、ポストコロナ社会に適応した事業構造への抜本的な変革を完遂することが、優先的に対処すべき課題であると捉えております。

このような状況を踏まえ、当社グループでは2022年度を初年度とする「京王グループ中期3カ年経営計画」を策定しました。社会における存在意義を見つめ直し、鉄道会社の原点である、お客様のニーズを捉えた移動需要の創出、新しいライフスタイルを牽引しつつ、魅力あふれる住みたくなる「まちづくり」を推進し、沿線力向上に取り組んでまいります。地域社会の課題解決に全力で取り組んでいくことが、当社の事業を持続可能なものにしていくという視点に立ち、本中期3カ年経営計画を推進してまいります。

 

(中期計画における取り組み)

①  鉄道事業では、輸送人員がコロナ禍以前の水準までは戻らないという前提のもと、効率化を進めながら必要な投資を積極的に行い、安全・安心の確保、利便性の向上、環境への取組みの強化をはかるとともに、日本一の安全・サービスレベルの実現を目指します。具体的には、京王線(笹塚駅~仙川駅間)連続立体交差事業やホームドアの整備、座席指定列車の運行拡大や駅施設リニューアルによるサービス向上に取り組みます。

また、2021年10月31日に京王線布田駅~国領駅間を走行中の列車内において傷害事件が発生しました。当社では、事件の発生を重く受け止め、鉄道事業本部内に、「鉄道テロ・災害対策担当」を新設し、現場再現調査も含めた事件の検証を踏まえ、警備員による駅構内や列車内の巡回を強化したほか、異常時における乗務員・駅係員の判断力向上のため、様々なトラブルを想定した訓練を警察・消防と共同で実施するなど、対応の強化にあたりました。今後も、リアルタイム伝送機能を持つ防犯カメラの全車両、全駅への設置等の対策を推進します。

将来にわたってより高度な安全・サービスを提供するための設備投資を継続し、公共交通機関の社会的責任を果たし続けていくために、コスト削減等の経営努力を続けるとともに、運賃の改定についても検討を行ってまいります。

②  不動産業では、沿線拠点の価値創造をはかるため、鉄道会社の原点である「まちづくり」に地域社会と連携して取り組みます。新宿駅西南口地区開発計画や京王線(笹塚駅~仙川駅間)連続立体交差事業で創出される駅前や高架下空間の開発計画のほか、聖蹟桜ヶ丘地区や橋本駅周辺、京王多摩川駅周辺地区での賑わいあふれるまちづくりを推進します。また、㈱サンウッドと共同事業を実施するなど、新築分譲マンション事業を拡大するとともに、保有不動産売却の受け皿となる不動産ファンドの設立の検討を行い、不動産投資・販売業を強化します。
③  ホテル業では、ホテル全社で早期の営業黒字化を実現するため、法人・団体営業の推進やインターネット販売の強化により国内需要の取込みをはかる一方、京王プラザホテル多摩の閉館や、不採算部門の縮小、要員の見直しなど、運営体制の再構築とコスト削減の徹底をはかります。
④  専門性の高い人材の採用・育成と、各事業の特性に応じた人事・組織体制の構築を行うとともに、サステナビリティの考え方を経営方針や事業戦略に反映させ、事業継続が可能な盤石な経営推進体制を構築します。

 

(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標)

中期3カ年経営計画については、ポストコロナ社会に適応した事業構造への変革を進めたうえで、コロナ前水準の利益金額、EBITDAを目指します。最終年度である2024年度には、営業利益340億円、EBITDA675億円を目標とします。

財務指標に関しては、ネット有利子負債残高4千億円以下、ネット有利子負債/EBITDA倍率6倍以内、自己資本比率38%程度を目標とし、格付けを維持し、2030年代の大規模投資本格化によるキャッシュアウトに備えます。

 

 

〔2024年度目標〕

営業収益

営業利益

親会社株主に帰属

する当期純利益

EBITDA

資本的支出※

(3カ年累計)

3,880億円

340億円

240億円

675億円

1,983億円

 

※目標の設定にあたっては、鉄道輸送人員はコロナ禍以前の水準と比べ、2022年度で20%減程度、2024年度で15%減程度の水準を前提としております。一方で、国内レジャー需要は2023年度、訪日外国人旅行客による需要は2024年度中にそれぞれコロナ禍以前の水準まで達することを想定しております。

 

 

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