課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営方針・経営戦略等

 海運業は、さまざまな物資や人の輸送を通じて世界中の国々と地域を結び、人々の暮らしを豊かにするという使命を担っており、経済のグローバル化に伴い、その役割はますます重要なものとなりました。こうした認識のもと、当社グループは、以下のグループ企業理念を掲げ、誠実で良質な海上輸送サービスをお客様に提供できるよう、創意工夫を重ねています。

 

〔基本理念〕

 NSユナイテッド海運グループは、誠実で良質な海上輸送サービスの提供を通じて社会の発展に貢献します。

 

〔経営理念〕

 1(信用・信頼)

   信用・信頼される堅実な経営を実践し、グループ全体の企業価値を高めます。

 2(安全運航・環境保全)

   常に船舶の安全運航に努めるとともに、船舶運航技術の向上に向け日々研鑽を積むことにより、海洋をはじめ

  とする地球環境保全の一翼を担います。

 3(お客様への即応・自己変革)

   お客様の要請に即応しつつ自らも変革に努め、さらなる進歩を目指して挑戦します。

 4(人を育て活かす)

   人を育て活かし、働く喜びを実感できる活力溢れるグループを築きます。

 

 当社はこの理念の具現化を目指し、鉄鋼原料をはじめとする資源・エネルギー・製品などの海上輸送分野における創立以来の長年の伝統と、2010年の合併後の構造改革や船隊整備による経営基盤の強化により、内外航に亘る専門性と総合力を兼ね備えた海運会社としてさらに大きな安心と信頼を獲得して参りました。持続可能な社会の実現に向けた機運がますます高まっているなか、2020年に策定した中期経営計画「FORWARD 2030 ~Driving U forward over the next decade~」ではESGの取り組みを中核に据え、その実践を通じて事業環境の変化に適応し収益性と社会性を兼ね備えた企業を目指します。

 

(2)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題、目標とする経営指標

 次期の事業環境は、引き続きコロナ禍からの回復局面が続くこと、穀物やマイナーバルクの輸送量増加、豪州と中国の政治的対立の影響を受けた供給フローの変化による輸送トンマイルの増加等により、堅調な海上荷動きが見込まれております。加えて、これまでの長年にわたる海運市況の低迷や環境船対応の不透明感により新造船発注が抑えられてきたことから、ドライバルカーすべての船種において新造船供給量が低水準に留まる見通しとなっており、これによる需給の引き締まりから、2022年度のドライバルク市況は堅調に推移することが予想されます。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染状況によっては船舶の円滑な運航への影響が懸念されることや、今後のウクライナ情勢によってはエネルギー価格など広範におよぶ資源価格が高止まりすることで世界経済が減速し、海上荷動きに影響を与える恐れがあります。当社ではかかる事業上のリスクに対し細心の注意を払うことが求められています。
 また、10年後を見据えて策定した中期経営計画「FORWARD 2030 ~Driving U forward over the next decade~」では、「ブランド力の向上」「サステナブルな事業構造の構築」「レジリエントな経営基盤の確立」の3つを重点戦略として、以下のような取り組みを進めています。

 

《中期経営計画の取組状況》

①ブランド力の向上

 東京証券取引所の市場区分再編に伴い、当社は2022年4月より「プライム市場」に移行しました。高いガバナンス水準を備え、ステークホルダーとの建設的な対話を通じて持続的な成長と中長期的な企業価値向上に努めて参ります。また、2021年度には事業運営の重要な方針となる「サステナビリティ基本方針」を策定するとともに、全社員参加の討論を経て「海上物流で、共に世界の今をつくる責任、未来へつなぐ責任を果たす」というパーパスも決定いたしました。今後もこれまで築き上げてきたUブランドの向上に向けて、安全運航と環境保全への取り組みを強化するほか、先進技術の導入や人への投資促進、ガバナンスの強化など、ESGの取り組みを進めて参ります。

 

②サステナブルな事業構造の構築

 外航部門では、5社共同で応募したアンモニア燃料船の共同プロジェクトが、2021年10月に国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「グリーンイノベーション基金事業」に採択されました。また、2022年3月には日本製鉄株式会社向け大型鉱石船で、バイオディーゼル燃料による試験航行を実施いたしました。バイオディーゼル燃料は既存の舶用エンジンで使用可能であり、汎用性の高い低炭素燃料とされています。今後成長が期待されるアンモニア輸送につきましても、事業ポートフォリオをレビューし事業化に向けて検討を開始いたしました。内航部門では、天然ガス専焼エンジンとバッテリーを組み合わせたハイブリッド推進システム船の建造が決定し、環境省と国土交通省による「社会変革と物流脱炭素化を同時実現する先進技術導入促進事業」に採択されました。当社では、今後も将来のゼロエミッション燃料の実装化に向けた検討や準備に取り組み、収益性と社会性を兼ね備えた企業を目指し尽力して参ります。

 

 

③レジリエント(強靭)な経営基盤の確立

 外部環境の不確実性が高まる中、投資につきましては、投資リターンとともに社会性を追求する方針のもと、資本コスト(WACC)を勘案した投資基準に基づく収益性評価に加え、ESGに関するリスクと機会を適切に把握するなどの社会性の観点からも投資の妥当性を判断しております。財務戦略としては、自己資本利益率(ROE)など資本効率を重視した事業運営や有利子負債の削減により、さらに堅固な財務基盤を構築して参ります。

 

《中期経営目標(2023年度)》

 中期経営計画「FORWARD 2030」では最終年度である2023年度達成を目指して以下の目標を掲げておりましたが、2021年度に前倒しでこれを達成することができました。

   営業利益: 100億円以上

   ROE目標: 10.0%超

   ネットD/Eレシオ目標: 1.0倍以下

 

《株主還元策》

 当社は、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置づけ、将来における安定的な企業成長と経営環境の変化に対応するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた利益還元として、連結業績に対する配当性向は概ね30%と掲げております。次世代燃料船の建造など将来の成長に必要な内部留保資金を確保しつつ、安定配当の継続的な実施により、株主をはじめステークホルダーの皆様にとって魅力的な事業会社になることを目指して参ります。当事業年度(2022年3月期)については「第4提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。

 

 

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