事業等のリスク

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 法的規制について

①「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等による規制について

 ファーマシー事業は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、医薬品医療機器等法)、健康保険法、薬剤師法をはじめとした各種許認可、免許、登録、届出等により、厚生労働省及び都道府県保健福祉部の監督の下、保険薬局及び調剤薬局(以下、2 事業等のリスクにおいて「保険調剤薬局」という。)を営業しております。
 また、リテール事業のコスメ&ドラッグストア事業においても、同様に医薬品医療機器等法に基づく医薬品の販売を行っております。

 その主要な内容は次のとおりであります。

許可、登録、指定、免許、届出の別

有効期間

関連法令

登録等の交付者

薬局開設許可

6年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事

保険薬局指定

6年

健康保険法

厚生労働省地方厚生局長

麻薬小売業者免許

3年

麻薬及び向精神薬取締法

各都道府県知事

高度管理医療機器販売業

6年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事

医薬品販売業許可(注)

6年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事等

(注)医薬品販売業許可は、医薬品医療機器等法第25条において、店舗販売業、配置販売業、卸売販売業の3つの許可に区分されております。当社グループのリテール事業は、店舗販売業の許可を受けております。

 万一、当社グループの保険調剤薬局及びコスメ&ドラッグストア事業において、医薬品医療機器等法第75条第1項、健康保険法第80条各号及び麻薬及び向精神薬取締法第51条第1項等に規定される法令違反等に該当する行為があり、監督官庁から業務停止命令及び取消し等を受けた場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

②医薬品の販売規制緩和について

 一般用医薬品の販売については、医薬品医療機器等法によってリスク区分に応じて要指導医薬品及び第1類医薬品は薬剤師のみが、第2類医薬品及び第3類医薬品は薬剤師または登録販売者が販売しなければならないと規制されております。

 今後においても、医薬品販売に係る規制緩和の動向により、異業種の同事業への参入等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) ファーマシー事業について

 当社グループのファーマシー事業では、保険調剤薬局のチェーン展開を行っております。

 当連結会計年度における売上高において、ファーマシー事業が占める割合は89.5%であり、今後も保険調剤薬局店舗を主軸とした多店舗展開を継続する方針であります。したがって、M&Aを含む保険調剤薬局の出店政策の成否や同業他社の出店動向により、当社グループの経営成績は影響を受ける可能性があります。

 保険調剤薬局店舗の売上は、処方箋を発行する医療機関に依存する割合が高く、主たる応需先となる医療機関の予測困難な院外処方箋の発行動向並びに休廃業により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、インフルエンザや花粉症(アレルギー性鼻炎)等季節性疾患の流行により処方箋応需枚数には季節変動の影響を受ける可能性があります。

(3) 業界動向について

 ファーマシー事業の収入は、処方箋に基づき医療用医薬品を調合投与する調剤行為であり、その薬剤の価格(薬価)及び報酬額は、厚生労働省により定められております。また、国民医療費の抑制策として、診療報酬及び薬価の改定が段階的に実施される傾向にあります。今後においても、診療報酬制度等の改定による収益構造の変化に伴い、当社グループの経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 資格者の確保について

 保険調剤薬局及びドラッグストア(第一類医薬品取扱店舗)は、医薬品医療機器等法の規定により薬剤師の配置が義務付けられており、また、薬剤師法では、調剤業務は薬剤師が行わなければならないと規定されております。

 当社グループは、積極的な出店による拡大政策を継続しておりますが、薬剤師確保が困難な状況になった場合は、出店計画及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 企業の信用を失墜させるリスクについて

①調剤業務について

ファーマシー事業では、人体に影響を及ぼす医療用医薬品を薬剤師が扱っており、調剤過誤による医療事故を引き起こす可能性を内包しております。
 当社グループは、医療事故が会社の社会的信用を著しく失墜させる可能性があるものと認識し、あらゆる側面から、当該リスクの回避に向けた取り組みを最重要課題と位置づけております。

その主要な内容は次のとおりであります。

・新卒薬剤師及び中途採用薬剤師を対象とした入社時研修制度

・勤務薬剤師のスキルアップを目的とした継続的な研修制度

・管理者育成のため、全薬局長が出席する薬局長会議の実施

・調剤機器メーカーとの共同開発による調剤過誤防止システムの配備、調剤業務のオートメーション化等IT技術を応用した調剤機器の開発及び導入

・調剤業務に関する自社マニュアルの利用及び内部監査室によるルール遵守体制

・調剤過誤防止対策を専門に扱う安全対策室の設置

②個人情報保護について

ファーマシー事業では、薬歴、処方箋に代表される患者情報を保持し、リテール事業においては、アインズ&トルペ公式アプリの運用に伴う顧客情報を保持しております。

当社グループは個人情報保護体制並びに取扱いに対するルールを徹底することにより万全を期し、主要事業会社である株式会社アインファーマシーズは「保健医療福祉分野のプライバシーマーク」を取得しております。

しかしながら、事故ならびに犯罪行為による個人情報の漏洩があった場合、経営成績のみならず社会的信用を失墜させる可能性があると考えております。

(6) 事業戦略上のリスクについて

当社グループは、保険調剤薬局の積極的な新規出店及びM&Aにより、事業規模の拡大を推進しております。

M&A戦略においては、対象会社を慎重に検討し、発生するのれんの償却額を超過する収益力を安定的に確保することが可能な買収額により行うことを基本方針としておりますが、買収後、計画どおりに進まない場合には、子会社株式評価損、のれんに係る減損損失等の損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(7) 金利変動リスクについて

 当社グループは、積極的な新規出店とともに、M&Aを活用した事業拡大を推進しており、通常の出店費用においては、営業キャッシュ・フローの範囲で自己資金により充当しておりますが、大型のM&Aに関しては、一部を金融機関からの借入れにより調達することがあります。

 当社グループでは、これらの資金需要に機動的に対応するため、一定水準の手元流動性を確保しており、当連結会計年度末における現金及び預金の残高597億2千9百万円に対し、当社グループの短期及び長期借入金の残高は84億5千8百万円となっております。

 M&Aの実施にあたっては投資回収可能性を重視し、効率的投資により有利子負債の圧縮に努めておりますが、M&Aに対する投資回収が十分に確保できない場合及び金融市場の動向等に伴う金利変動により、当社グループの財務状況及び支払利息等経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(8) 消費税等の影響について

ファーマシー事業の社会保険診療に関する調剤売上は、消費税法上非課税となりますが、一方で、医薬品等の仕入には消費税が課税されております。

この結果、当社グループが負担することとなる消費税は、調剤売上原価に計上しております。

過去の消費税の導入時及び調剤報酬改定時には、消費税率の上昇分が薬価の改定において考慮されておりましたが、今後、消費税率が改定され、その影響が薬価に反映されない場合は当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(9) 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うリスクについて

新型コロナウイルス感染症が拡大した場合、1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]に記載のとおり対応してまいりますが、ファーマシー事業においては、感染拡大防止のための外来受診抑制等による処方日数の長期化を要因として、処方箋単価は増加する一方で、処方箋枚数は減少することが考えられ、リテール事業においては、外出自粛、店舗の臨時休業及び営業時間短縮の実施、インバウンド需要の減少等による来店客数減少の影響が考えられ、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループにおける感染拡大防止策として、店頭での消毒薬の設置、マスク着用の啓発、接客カウンターへのパーティション設置に加え、集合研修・会議をオンライン開催とすることにより、3密の回避を行っております。

(10) 自然災害等に伴うリスクについて

当社グループは、保険調剤薬局店舗を主軸とした多店舗展開を行っており、全国各地の営業拠点及び営業店舗で事業を展開しています。各地域において、大規模な地震や風水害、気候変動を起因とする台風・豪雨等の自然災害等が発生した場合、社員や店舗・事業所への被害等により、当社グループの財務状況及び業績が影響を受ける可能性があります。

いかなる状況下においても、社員の生命及び健康を守り、医薬品及び医療サービスの提供を遂行することが、社会のインフラのひとつとして、期待・要請されている役割であると認識し、BCPの強化・継続改善をはじめ、全社員・またその家族の安否報告訓練や避難訓練、物流強化、気候変動課題への取り組み、TCFD提言に基づく情報開示を推進しています。

TCFD:「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の略。G20 財務大臣及び中央銀行総裁の意向を受け、金融安定理事会(FSB)が設置。2017年6月に最終報告書「TCFD提言」を公表

 

<TCFD提言に基づく情報開示>

<ガバナンス>

気候変動課題、また気候変動課題に対するリスク管理や戦略、目標の設定等については、サステナビリティ委員会のもとに気候変動対応チームを設けて、データ集計や原案策定等にあたらせ、これを同委員会において議論し確定しています。サステナビリティ委員会は、グループ全社で横断的にサステナビリティ経営を推進するため、取締役会承認のもと設置された組織です。委員長である代表取締役社長をはじめとする経営陣や基幹グループ会社社長、各部門統括役員等で構成され、議論された内容については、取締役会に報告(年1回以上)し、取締役会が重要事項の決定と、同委員会の取り組みの監督を行っています。

<リスク管理>

サステナビリティ委員会のもとに設けている気候変動対応チームが、関連各部と協議の上、全社的なリスクの洗い出し(リスク評価)を行います(年1回以上)。取り組み、KPI、進捗等についても、気候変動対応チームが関連各部と連携して適正な管理(リスク管理)を行うことで、目標の達成を目指します。

また、気候変動対応チームが主導するリスク評価・管理の内容は、グループ全社の横断的課題を統括するサステナビリティ委員会に報告してグループ全体の共通認識とし、さらなる議論と検討を進めます。

 

<戦略>

1. 当社グループにおける重要なリスク・機会の特定

気候変動にともなうリスク及び機会には、低炭素社会への移行によって引き起こされるもの(移行リスク・機会※1)と、極端な気象現象の過酷さと頻度の増加や海面上昇その他の長期的な気象パターンの変化によって引き起こされるもの(物理リスク・機会※2)が考えられます。当社グループにかかわるすべてのリスク・機会項目の洗い出しを行った後、その中でも重要な影響を与えるリスク・機会を、次の通り整理しました。

 

 

当社グループにおける重要なリスク・機会

政策・規制・法

1.温室効果ガスに関する規制強化

2.その他エネルギー・資源に関する規制強化

市場と技術の転換

3.省エネルギー対策・再生エネルギープログラムの推進

評判

4.ステークホルダー(責任ある行動に対する期待と懸念)

5.お客さま・患者さま意識・行動の変化

急性

6.異常気象の激甚化(台風、ゲリラ豪雨等風水害)

7.気候変動に起因する感染症の流行

慢性

8.降水・気象パターンの変化(平均気温上昇、海面上昇)

※1  移行リスク・機会:低炭素社会への移行によって引き起こされるリスク・機会

※2  物理リスク・機会:気候変動をともなう、極端な気象現象、またその過酷さや頻度の上昇、海面上昇等の長期的な気象パターンの変化等によって引き起こされる機会・リスク

2. シナリオ分析

当社グループは、調剤薬局及びコスメ&ドラッグストアの経営、ジェネリック医薬品の卸売販売、化粧品の販売、売店の経営等の各事業を展開しています。中でもグループ全体の売上高の9割を占めるファーマシー事業 調剤薬局の国内全店舗と、リテール事業 アインズ&トルペの国内全店舗を対象として、IPCC※3(気候変動に関する政府間パネル)等が想定する複数のシナリオに基づき、考えられる気候変動に関連する物理リスク・機会、移行リスク・機会を幅広に検討しました。特に重要なリスクと機会における影響の分析に着手しています。

シナリオ

2℃シナリオ         4℃シナリオ

SSP1 RCP2.6    SSP5 RCP8.5

対象事業

ファーマシー事業 調剤薬局の国内全店舗、

リテール事業 アインズ&トルペの国内全店舗

対象期間

2030年、2050年

※3  IPCC:「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)」の略。WHO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)のもとに設立された組織。195の国・地域が参加。各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的とし、気候変動に関する最新の科学的知見(出版された文献)についてとりまとめた報告書を作成

 

3. 事業インパクトの評価

2030年+2℃の世界では、低炭素・脱炭素が推進されることにより、特に温室効果ガスに関する規制強化(主に炭素税の課税や排出量取引制度等)の移行リスクが高まる可能性が考えられます。

当社グループのCO2(GHG)排出量(Scope1、2)の多くは、電力に由来するものです。よって、電気使用量や調達時の価格・CO2排出係数等により、追加のコストが発生する可能性があります。ただし、省エネルギー・再生エネルギーの取り組みによって、炭素税による影響を最小限にするとともに、電気使用量を削減することで、財務、事業戦略等に重大な影響を及ぼさないことを確認しています。

そして2030年+4℃の世界では、異常気象の激甚化・気象パターンの変化(店舗・事業所の被災やパンデミック発生等)による物理リスクが高まる可能性が考えられます。

当社グループでは、いかなる状況下においても、社員の生命及び健康を守り、医薬品及び医療サービスの提供を遂行することが、社会のインフラのひとつとして、期待・要請されている役割であると認識しています。この役割を果たすためにも、災害対応については、BCPの強化・継続改善をはじめ、全社員・またその家族の安否報告訓練や避難訓練、物流強化等、気候変動に適応するための取り組みを推進しています。今後は、さらにリスクの高い地域・店舗の分析を進め、さらなる防災対策を検討します。

また、気候変動を起因とする感染症等が流行した場合、特にファーマシー事業においては、処方箋応需枚数等に影響を受ける可能性があります。自然災害における対応と同様、医療サービス提供のための体制づくりを強化していきます。

このように、増大するリスクを見通した対策を進めることにより、財務・事業戦略等へ重大な影響を及ぼさないよう、備えることが可能であると考えています。同時に、さらにレジリエンスの強化・向上を図ることが、お客さまや患者さま、地域住民の方等が必要とする医療の継続提供につながり、事業の発展に大きく貢献すると考えています。

<指標と目標>

当社グループは、2050年カーボンニュートラル(自社の事業活動にともなう、CO2(GHG)排出量(Scope1・2)の実質ゼロ)の実現に向けて積極的に取り組むこととし、気候変動の評価指標として、CO2(GHG)排出量と再生エネルギー由来電力への転換率等を選定しました。さらに2030年目標として「CO2(GHG)排出量(Scope1・2)2021年度比 30%削減」、「再生エネルギー由来電力への転換率 30%」を設定しています。またScope3の排出量の削減に向けては、卸会社と協業した取り組み「医療用医薬品の配送回数の削減のトライアル」等を実施します。

指標と目標

進捗及び取り組み状況

2021年度

あるべき姿

2030年度

グループ全体のCO2(GHG)排出量を把握し、

適切に管理・監督ができる業務体制を構築する

(1)Scope1・2におけるCO2(GHG)排出量

(2)Scope3におけるCO2(GHG)排出量

(1)21.0千t-CO2※4

(2)684.5千t-CO2※5

Scope1・2における

CO2(GHG)排出量

削減率 30%※6

カーボンニュートラル実現に向けて、適切な目標

設定と取り組みを実施する

・再生エネルギー由来電力への転換率

0%

30%※7

※4・5 総排出量  ※6 基準年(2021年度)排出量に対する削減率  ※7 基準年(2021年度)使用電力全体に対する再生エネルギー転換率

今後も、TCFD提言に基づく情報開示の充実を図るとともに、気候変動に関わる政策や法規制の制定等の変化にも対応した、事業戦略・気候変動の緩和策及び適応策の実施を進めていきます。気候変動課題に適切に対応することで、ステークホルダーの皆さまの期待や要請にお応えし、企業の持続的な成長と、社会・環境・経済価値を創出するサステナビリティ経営を実現します。

※詳細は、下記アイングループ公式HP「CSR・ESG 環境保護・負荷低減」ページよりご確認ください。

https://www.ainj.co.jp/csr/protection2.html

 

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