業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当連結会計年度(以下、当期)におけるわが国経済は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状況にあるものの、基調としては持ち直しました。ただし、第4四半期連結会計期間においては、1月に新型コロナウイルス感染症の第6波が到来し、2月にピークを迎えた後も期末まで高水準が続いたほか、2月下旬のロシアによるウクライナへの侵攻を受けて原油などの資源価格が上昇するなど、経済の先行き不透明感が増しました。

葬祭業界においては、コロナ禍においてお客様や従業員をはじめとする関係者の安全を確保しながら、故人との大切なお別れの場を提供し続けています。葬儀会場における密を避けるために、参列者の参列時間を分散させる、会場の会食を控える代わりに持ち帰りの食事やグルメのカタログギフト商品を用意するなどの工夫をしています。また従来対面式で行っていたセミナーや事前相談などはオンラインによる開催・実施が定着し、コロナ禍によって変わった生活様式や行動様式に合わせて、絶えず新しいサービスの在り方やスタイルを模索しお客様に提案しています。

このような外部環境の下、当社グループでは中期経営計画の最終年度となる2021年度は、特に「ライフエンディングサポート事業の拡充」、「葬儀事業の積極的な営業エリアの拡大」、「業務効率の改善」の3項目に注力しました。

ライフエンディングサポート事業については、ライフフォワード㈱において終活関連のWEBプラットフォーム事業をおこなっています。2021年4月にはサービスメニューを拡大し、新たに法事法要、相続、生前整理や遺品整理のサービスを開始しました。同社のサービスは首都圏に加えて関西圏でも展開しており、2022年度中に全国展開の予定です。また、同社が運営するコンタクトセンターの終活カウンセラーによる相談対応力を生かし、4月に外部の企業が運用する高齢者向け生活サポートサービスに提携企業として参画したほか、5月には外部企業と終活相談付きの葬儀保険を共同開発しました。11月からはグループ葬祭3社にてその葬儀保険の販売を開始しています。この葬儀保険は無料の終活相談サービスを受けることができ、万一の時に葬儀社を指定して直接保険金を葬儀の支払いにあてることもできるため、お客様の葬儀費用の準備や手続きの軽減につながる保険となっております。

葬儀事業の積極的な営業エリアの拡大については、2021年9月に「公益社会館 長居」(大阪市住吉区)、10月に「公益社 練馬会館」(東京都練馬区)、11月に「公益社 国分寺会館」(東京都国分寺市)を開設しました。さらに2022年2月に「公益社 生駒会館」(奈良県生駒市)、3月に「葬仙 東朝日町ホール」(島根県松江市)を開設し、2021年度の新規会館の開設は合わせて5会館となりました。

業務効率の改善については、2019年度に開始した「生産性向上プロジェクト」に基づく中核会社の㈱公益社における現場スタッフのオペレーション改善や役割の見直し等の取組み効果により、営業利益率の改善に結びつけることができました。

 

当期はグループ葬祭3社のいずれも葬儀施行件数が伸長し、グループの全葬儀施行件数は前連結会計年度(以下、前期)比8.5%の増加となりました。一方葬儀施行単価は、大規模葬儀の施行件数増による単価上昇要因があったものの、一般葬儀の単価低下により全体としては低下しました。この結果、グループ全体の葬儀施行収入は前期比6.4%の増収となりました。

また、葬儀に付随する販売やサービス提供による収入も、葬儀施行件数の増加を背景に前期比増収となりました。

事業に係る費用については、主に公益社グループにおける業務効率改善の取組みと人件費コントロールの徹底により、営業費用は前期比1.3%の増加にとどまりました。一方、販売費及び一般管理費は、主に政策的な取組みのためのコンサルフィーにより前期比9.3%増加しました。

 

以上の結果として、当期の営業収益は200億1百万円となり、前期比6.0%の増収となりました。また、営業利益は33億76百万円と前期比32.4%の増益、経常利益は33億86百万円と前期比33.5%の増益となりました。

特別損益としては、固定資産に関して除却損19百万円、減損損失1億93百万円を特別損失として計上しました。減損損失の主な内容は「公益社 宝塚会館」を家族葬に適した規模の会館に建替える意思決定に伴うものです。

この結果、税金等調整前当期純利益は31億73百万円となり、税金費用を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は20億40百万円と前期比30.6%の増益となりました。

 

当社グループでは、葬祭3社および当社を中心とした会社グループ別の4つのセグメント、「公益社グループ」、「葬仙グループ」、「タルイグループ」、「持株会社グループ」を報告セグメントとしております。なお、「公益社グループ」には、2020年度に事業を開始したライフフォワード㈱の損益を含んでおります。

当期のセグメント別の経営成績は次の通り、タルイグループを除く3つのセグメントにおいて増収増益となりました。

 

ア 公益社グループ

公益社グループの中核会社である㈱公益社においては、一般葬儀(金額5百万円以下の葬儀)の施行件数が前期比8.8%増加しました(この増加件数のうち約4割は新型コロナウイルス関連葬儀の施行でした)。一方、葬儀施行単価は低下しました。これはコロナ関連葬儀の増加の影響に加え、小規模の葬儀が増えたことによるものです。

大規模葬儀(金額5百万円超の葬儀)は、徹底した感染防止対策を実施する等、安心して開催していただけるよう万全の施行体制を整えることにより施行件数が回復し前期比増収となり、コロナ前の前々期比75%超の水準となりました。

㈱公益社全体では、全葬儀施行件数は前期比9.1%増加しました。その葬儀施行収入は前期比7.7%の増収となり、コロナ前の前々期比95%超の水準まで回復しました。

また、葬儀に付随する販売やサービス提供も、葬儀施行件数の増加による販売機会の増加およびコロナ禍の下での営業体制の構築により、法事法要、後日返礼品等を中心に前期比増収となりました。

費用については、葬儀施行件数の増加に対して、効率的な人員配置を行ったことにより人件費率、人件費額ともに低下しました。また、直接費についても、直接費率の高い大規模葬儀の受託増加や供花、返礼品等の販売増加があったものの、中期経営計画の重点項目である業務効率改善への取組みの効果により概ね前期並みの直接費率を維持しました。

この結果、当セグメントの売上高は166億1百万円(前期比7.3%増)、セグメント利益は19億61百万円(前期比99.1%増)となりました。

 

イ 葬仙グループ

葬仙グループの㈱葬仙においては、主に米子エリア・境港エリアで葬儀施行件数が伸長し、全体では前期比10.6%増加しました。葬儀施行単価は、簡素化傾向が強まる中でもわずかな低下にとどまり、葬儀施行収入は前期比9.0%の増収となりました。葬儀に付随する販売やサービス提供では、料理販売等の伸びにより、前期比増収となりました。

この結果、当セグメントの売上高は13億67百万円(前期比7.9%増)、セグメント利益は75百万円(前期比94.5%増)となりました。

 

ウ タルイグループ

タルイグループの㈱タルイにおいては、小規模な葬儀に適したリニューアル会館を中心に葬儀施行件数が前期比3.6%増加する一方、葬儀施行単価はそれを上回る率で低下しました。このため葬儀施行収入は前期比5.1%の減収となりました。葬儀に付随する販売やサービス提供は、法事法要で伸びが見られたものの、前期比減収となりました。

この結果、当セグメントの売上高は16億48百万円(前期比5.7%減)、セグメント利益は2億99百万円(前期比8.6%減)となりました。

 

エ 持株会社グループ

持株会社グループの燦ホールディングス㈱においては、主に配当金収入の増加により増収となりました。

この結果、当セグメントの売上高は59億66百万円(前期比21.6%増)、セグメント利益は27億6百万円(前期比47.3%増)となりました。

 

②財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末(以下、当期末)における流動資産は87億15百万円となり、前連結会計年度末(以下、前期末)比8億19百万円増加しました。これは主に、現金及び預金が4億円、営業未収入金及び契約資産が3億7百万円それぞれ増加したことによるものです。

固定資産は251億32百万円となり、前期末比6億39百万円増加しました。これは主に、新規会館の開設等に伴う建物及び構築物の増加、賃借していた既存会館の買い取りに伴う土地の増加により有形固定資産が5億8百万円増加したことによるものです。その他には、IT投資に係るソフトウエア仮勘定の増加により無形固定資産が増加し、繰延税金資産の増加により投資その他の資産が増加したことによります。

この結果、総資産は338億47百万円となり、前期末比14億59百万円増加しました。

 

(負債)

当期末における流動負債は30億26百万円となり、前期末比4億85百万円増加しました。これは主に、営業未払金が2億37百万円、未払法人税等が1億45百万円、会館施設の改修工事やテレビCM等に係る未払金1億2百万円がそれぞれ増加したこと等によるものです。

固定負債は11億91百万円となり、前期末比1億6百万円減少しました。これは主に、リース債務の減少と長期未払金の減少によるものです。

この結果、負債合計は42億17百万円となり、前期末比3億78百万円増加しました。

 

(純資産)

当期末における純資産合計は296億29百万円となり、前期末比10億81百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益20億40百万円を計上し、剰余金の配当3億77百万円を支払うこと等により利益剰余金が16億53百万円増加する一方、当期中に自己株式を5億99百万円取得したことによるものです。

この結果、自己資本比率は前期末比0.6ポイント低下し、87.5%となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当期末における現金及び現金同等物は、前期末より3億96百万円増加し、74億35百万円となりました。

当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは29億91百万円の増加(前期は20億93百万円の増加)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益31億73百万円、減価償却費8億68百万円を源泉として資金が増加する一方、法人税等の支払額11億19百万円により資金が減少したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは14億91百万円の減少(前期は9億83百万円の減少)となりました。

これは主に、新規会館の開設および既存会館の改修等に伴う有形固定資産の取得による支出13億49百万円、ソフトウエアの取得による支出1億49百万円により資金が減少したことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは11億3百万円の減少(前期は4億98百万円の減少)となりました。

これは主に、配当金の支払い3億77百万円、自己株式の取得5億99百万円により資金が減少したことによるものです。

 

④営業の実績

ア 営業売上実績

 当連結会計年度における営業売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

 

金額(百万円)

前年同期比(%)

公益社グループ

16,601

107.3

葬仙グループ

1,367

107.9

タルイグループ

1,648

94.3

持株会社グループ

5,966

121.6

合計

25,584

109.4

(注)上記の金額については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含んでおります。

 

イ 葬儀請負の実績

 当社グループのセグメントのうち主な事業である葬儀請負事業に係わる葬儀施行件数の、当連結会計年度における実績は次のとおりであります。

 

(公益社グループ)

区分

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

式場数(式場)

施行件数(件)

前年同期比(%)

稼働率(%)

大規模会館

千里会館、枚方会館、西宮山手会館

大式場

37

102.8

6.8

一般式場

11

1,578

106.4

78.6

支店・営業所付属会館

天神橋、東大阪、堺、吹田、用賀、

岸和田、玉出、城東、西田辺、

宝塚、豊中、高槻、守口、雪谷、

富雄、はびきの、たまプラーザ、

なかもず、明大前、田園調布、

住吉御影、学園前、森小路、高輪、

石橋、高円寺、仙川、江坂、日吉、

西大寺、六甲道、くずは、喜多見、

甲南山手、武庫之荘、甲子園口、

千里山田、東久留米、津久野、

上板橋、吉祥寺、香里園、

川西多田、枚方出屋敷、練馬、

長居、国分寺、生駒

一般式場

64

9,322

110.8

83.1

小計

 

78

10,937

110.1

79.4

その他(自宅、寺院等)

 

2,180

103.1

合計

13,117

108.9

 

(葬仙グループ)

区分

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

式場数(式場)

施行件数(件)

前年同期比(%)

稼働率(%)

支店・営業所付属会館

鳥取、吉方、岩美、米子、

安倍、福米、安来、境港、

余子、松江、比津、東出雲、

金持テラスひの、東朝日町

一般式場

16

1,095

109.2

40.4

その他(自宅、寺院等)

 

336

115.5

合計

1,431

110.6

 

 

(タルイグループ)

区分

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

式場数(式場)

施行件数(件)

前年同期比(%)

稼働率(%)

支店・営業所付属会館

舞子、大蔵谷、新明、大久保、

魚住、土山、東加古川、

神戸西、長坂寺、西明石、北大久保

一般式場

13

1,383

104.5

58.3

その他(自宅、寺院等)

 

63

87.5

合計

1,446

103.6

(注)1.稼働率=施行件数÷基準件数×100

なお、式場利用は通常、通夜と葬儀の2日間にわたるため、基準件数は1式場2日間に1件の施行を標準として算出しております。

2.葬儀施行件数は、法事・法要件数を除いた件数を記載しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度(以下、当期)は新型コロナウイルスの感染拡大の2年目となり、前連結会計年度(以下、前期)と比べると当該感染症の業績への影響が緩和し、前期比増収増益となりました。増収の主な要因は、一つは大規模葬儀(金額5百万円超)の回復、もう一つは一般葬儀の件数の大幅な増加にあります。

しかしながら、一般葬儀の単価の低下は、前期の状況と比べると緩和しているものの、継続しています。「家族葬」という言葉に象徴されるように、葬儀の小規模化は従来からの傾向ですが、コロナ禍によってその傾向がより強くなっていると捉えております。

一般葬儀の件数につきましては、公益社関西圏では通常の件数増加に、コロナ関連葬儀(陽性の方及び検査後陰性が判明した方の葬儀)の増加が加わりましたが、競合の出店等の影響でエリアシェアは低下しました。一方、公益社首都圏ではエリアシェアの上昇を伴って件数が増加しました。また、葬仙、タルイともに葬儀施行件数が前期比増加しましたが、参列者の少ない葬儀の構成比が顕著に高まったタルイでは、葬儀単価の大幅低下により減収となりました。

 

費用につきましては、採用の抑制を含む人件費コントロールの徹底及び業務効率改善への取り組みにより営業費用の増加を抑制し、一般管理費も政策的な取り組みのためのコンサルフィーを中心に増加しましたが、いずれも増収率を下回る増加率に抑えました。

この結果、達成すべき経営指標として掲げております「売上高営業利益率13%以上」については、実績値が16.9%となり大幅に上回ることができました。

 

中期経営計画の最終年度となる当期は、前期に引き続き次の3つのテーマに注力しました。

1つ目は「ライフエンディングサポート事業の拡充」です。2020年4月に子会社としてライフフォワード㈱を設立し、7月にシニア世代に向けた終活サービスのポータルサイト「みんなが選んだ終活」を開設し、以降メニューを拡充するとともに、対象エリアも首都圏から関西圏、中部圏へと展開しました。2022年度には全国展開を目指しています。また、グループ葬祭3社が提供する葬儀前後の商品・サービスについても、ラインナップを拡充し、より多くのお客様との関係を構築しました。

2つ目は「葬儀事業の積極的な営業エリアの拡大」です。立地と投資効率を重視しながら3ヵ年で9会館(首都圏2、関西圏6、山陰1)を出店しました。目標の13会館に対しては4会館の未達となりましたが、2022年度からスタートさせた新しい中期経営計画においてはより意欲的な目標を設定し、その達成を目指します。

3つ目は「業務効率の改善」です。葬儀施行サービスにおける人員数の適正化及び人件費コントロールの徹底、並びに業務内容や役割の見直し、及びIT化等による業務改善の実施等により、事業部門において2020年度以降営業費用を年間約1億円削減することができました。この成果が当期の営業利益率16.9%にも寄与しました。

 

なお、特別損失として葬儀会館等事業用資産に係る減損損失を1億93百万円計上しましたが、その主なものは「公益社 宝塚会館」の建替えの意思決定に伴うものであり、現在の葬儀ニーズに適した規模にダウンサイジングするという前向きな意味を持つものです。

 

(新型コロナウイルス感染症の影響について)

新型コロナウイルス感染症の影響(以下、「コロナ影響」と略記)には、大きく二つがあり、それぞれ次のとおり影響額を推計しております。

 

一つは、一般葬儀における参列者減少による一般葬儀の小規模化です。グループ葬祭3社について、一定の前提条件(注1、注2)をおいて試算した結果、3社合計で17.7億円、うち㈱公益社で13.5億円の葬儀施行収入の減収がコロナ影響によるものと推計されます。

もう一つは、社葬・お別れの会を中心とする大規模葬儀に関して、感染拡大状況やその防止施策の影響を受けて、開催が見合わせられるケースがあることです。

当期については、5百万円超の大規模葬儀の施行収入における、コロナ前の4年間の平均値と当期実績値との乖離として試算した結果、㈱公益社において約3.8億円の減収と推計されます。

 

以上の二つが葬儀の受託・施行に係る主要なコロナ影響ですが、このほか葬儀に付随する料理や返礼品の販売、法事法要の施行等も影響を受けて減収となっておりますが、当期はコロナ前の前々期対比7~9割程度まで回復しています。

 

(注1)一定の前提条件とは、コロナ影響のない2019年4月から2020年1月までの累計実績に基づく葬儀規模別の《件数構成比》と《葬儀施行単価》のもとで2020年度の各月の葬儀施行件数があったと仮定した場合の葬儀施行収入をベンチマークとして、これと実際の葬儀施行収入との差額を影響額とするもの。

(注2)コロナ関連葬儀(陽性の方の葬儀及び検査結果が不明ながらも陽性の方と同様の葬儀)の取り扱いを除いて試算しております。コロナ関連葬儀の受託は、基本的に㈱公益社の受入体制が評価されたものと考えられ、コロナ影響がないと仮定した場合に、そもそも㈱公益社が受託できたとは限らないためであります。

 

2年にわたるコロナ禍が葬儀の小規模化を加速させたことは事実であり、葬儀単価を中心にグループ業績への影響が残ると想定しています。その一方で、わが国もようやく感染対策と経済社会活動の両立をはかる方向に進みつつあります。経済社会活動が徐々に正常化することを期待しつつも、感染再拡大のリスクを念頭において事業運営にあたります。

当社グループでは、「(1)経営成績等の状況の概要」でもふれましたように、感染防止対策と式運営の工夫などにより、コロナ禍にあっても安全・安心なセレモニーをリアルで開催できるよう最善のサポートをご提供する体制を整えております。

 

(財政状態)

総資産は、前期末比14億59百万円増加して338億47百万円となりました。

資本の調達源泉からみると、主に利益剰余金の増加により純資産額が10億81百万円増加するとともに、業績の回復を反映して営業未払金や未払法人税等が増加するなど流動負債が増加しました。資本の運用からみると、5つの葬儀会館の新規出店や賃借していた既存会館の土地を含む買い取りを中心に、減価償却費を上回る設備投資の実施により、有形固定資産が増加したことにより固定資産も増加しました。流動資産では業績の回復を背景に営業未収入金及び契約資産が増加しました。そして現金及び預金は、設備投資額や株主還元(配当金支払い、自己株式取得)に係る資金をまかなってなお4億円の増加となりました。

 

このように総資産は増加しましたが、営業利益及び経常利益はコロナ禍2年目の当期、コロナ前の2019年度の過去最高益を更新する大幅増益となりました。その結果、達成すべき経営指標(資本効率目標)として掲げております「総資本事業利益率(注)(ROA)」については10.4%と前期比2.4ポイント上昇し、中期経営計画最終年度(2021年度)の目標値「ROA8.5%以上」を上回りました。

(注)事業利益=営業利益+営業外収益

 

なお、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」にも記載のとおり、新たな中期経営計画においては、資本効率目標を「投下資本利益率(ROIC)」としております。資本コストを上回るROICの達成による企業価値の創造に取り組んでまいります。

※ROIC=税引後営業利益/投下資本

(投下資本=有利子負債+純資産、税引後営業利益=営業利益×(1-法定実効税率))

 

一方、財務の状況は、総資産に占める固定資産の比率が高いものの、その固定資産は純資産によってまかなわれており、当期末において自己資本比率は87.5%と高水準です。また、流動資産の8割超を現金及び預金が占め、手元流動性比率4.3ヵ月(コロナ影響を除くため、2018年3月期~2020年3月期の営業収益の平均値に基づいて算出)であることから短期的な支払能力も高いと言えます。これらの点から、今般の新型コロナウイルス感染症クラスの外的ショックが再び発生しても、それに耐えうる財務の健全性を有すると判断しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

資金の最大の源泉である税金等調整前当期純利益が、大規模葬儀の回復及び一般葬儀の件数増加による業績向上を反映して前期比約3割増加したため、営業活動によるキャッシュ・フローが29億91百万円の増加となりました。

一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、5つの葬儀会館の新規出店及び既存会館のリニューアル等による有形固定資産の取得を中心に、前期を上回る14億91百万円の支出となりました。さらに、前期は実施しなかった自己株式の取得を当期は2回にわたって実施したことにより、財務活動によるキャッシュ・フローは、11億3百万円の減少となりました。

この結果、現金及び現金同等物は前期末比3億96百万円増加して74億35百万円となりました。

 

これにより、以下の資金使途や資金需要に対する原資の一部として、さらに万が一のダウンサイドへの備えとして、資金の流動性は十分に確保できていると判断しております。

 

当社は新たな中期経営計画(2022年度~2024年度)において、強固な財務基盤をベースに成長のための積極的な投資を行うことを明らかにしました。

その中でキャピタル・アロケーションの枠組みを次のように示しました。それは、営業キャッシュ・フローをまず、《既存設備への投資》と《成長投資》とに配分し、その余を株主還元に充当するというものです。

ここで《既存設備への投資》とは葬儀会館を中心とする既存設備のリニューアルや改修であり、減価償却費の範囲内を基本とします。《成長投資》とは、葬儀会館の積極的な新規出店やライフエンディングサポート事業の強化といったオーガニックな成長のための投資とM&Aやアライアンスによるインオーガニックな成長のための投資からなります。

 

葬儀の小規模化や家族葬ニーズの高まりという外部環境をふまえ、成長のための新規出店は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、新葬儀ブランドを中心とする計画ですので、3ヵ年で31会館の出店を目指す投資資金は、営業キャッシュ・フローを中心とした自己資金でまかなうことができる見込みです。ライフエンディングサポート事業に係る投資資金に関しても、同様と考えております。

 

なお、会館用地については賃借(事業用定期借地)を原則とする中で、首都圏においては元々候補物件自体が少ないことから、稀少な好物件については土地の取得という判断をすることもあり得ます。その場合、土地を賃借する場合と比べて、一時的に多額の投資資金を要する可能性があります。また、M&Aやアライアンスに係る投資においては、予期せぬ投資案件に対する機会損失を回避することが重要であると考えます。

これらのケースを含む緊急多額の資金需要に対しては、高い水準にある資金の流動性で対応するほか、取引銀行3行と締結している総額10億円のコミットメントライン契約に基づく借入れによって資金調達をすることがあります。なお、同契約に基づく当期末の借入実行残高はありません。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

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