文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
2020年から世界各国に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、世界経済は大きな影響を受けましたが、ワクチン接種などの感染防止策により、感染者数の減少も見られ、部分的には景気の持ち直しの動きも現れております。しかしながら、半導体不足や原材料費高騰に加え、エネルギー問題や大幅な円安、ウクライナ情勢の長期化などが国内外の経済に大きな影響を与えており、今後ともこれらの動きには注視していく必要があります。
このような中にあって、世界規模でのサステナブルな社会の実現に向けての取り組みが強化されて来ており、再生可能エネルギー設備の積極導入や5G等次世代型通信インフラ設備の需要増加が期待されます。また、情報通信技術ICT(Information and Communication Technology)を活用した様々なシステム化、気候変動に伴う甚大災害に対応した防災減災関連設備工事、さらには老朽化した社会インフラ設備更新や保守メンテナンス等は今後とも安定した成長が期待されます。
また、アセアンにおいてもインフラ投資やインフラメンテナンス需要の高まりにより、大きな成長が見込まれるため、日本の国土交通省主導による国内建設会社の海外市場への進出を後押しする動きが今後の経済政策の一環として期待されます。
こうした事業環境下、当社グループでは、国内では、長年培ってきた技術力と顧客からの信用力を活かし、太陽光発電設備、通信基地局関連設備、防災行政無線設備やETC設備工事等の受注拡大に取り組んでおります。また、海外市場においては、ベトナムにおける設計積算事業に加え、建設投資需要の取り込み、今後成長が期待される太陽光発電設備や防災減災関連設備、アセアンでの国際空港電気設備設計や電気設備工事等の受注拡大に努めてまいります。
(1) 経営基本方針
当社グループは、総合エンジニアリング会社として、社会インフラに関する各種の課題に対し、企画、調査、コンサル、設計、施工、保守メンテナンス等、社会インフラに関する各種の課題に対し、高度なサービスをワンストップで提供する体制を構築し、安心して暮らせる豊かな社会づくりに貢献してまいります。
また、当社グループでは、ニューノーマル時代に適応したDXによるビジネスプロセスの変革や生産性向上に取り組むとともに、2020年に開講したインターネットによる、いつでも、どこでも受講できる教育システム(JESCOアカデミー)により技術者の育成と国家資格保有者数の拡大に努め、経営基盤の強化に取組んでおります。
サステナブル経営のもと、環境保全、多様な人材活用と風通しの良いコミュニケーション、安全確保と品質向上、コーポレートガバナンスの強化、コンプライアンスの徹底、リスク管理の強化及びJESCOグループ行動指針の徹底により、企業価値の向上に努め、ステークホルダーの皆様から信頼・評価される企業を目指してまいります。
(2) 中長期的な目標
当社グループは、①再生可能エネルギー(太陽光発電設備)、②5G等次世代通信・防災減災関連設備、③アセアンEPC事業の拡大に加え、不動産事業(CRE)を大きな柱として、成長を加速してまいります。こうした施策に加え、新規受注の拡大、業務提携、M&A等の施策により、グループ全体の中長期的な売上目標を200億円としております。
(3) 会社の対処すべき課題
当社グループはサステナブル経営を掲げ、社会貢献活動と事業活動の両面から持続的経営を図るべく2023年8月期から始まる新中期経営計画(2023年~2025年)を策定してまいりました。本中期においては、以下の成長戦略の実現に向け、Challenge&Innovationを推進してまいります。
1)サステナブル経営
世界を取り巻く異常気象などから脱炭素への取り組みが喫緊の課題となっており、当社においては、森林の保有・維持管理によるカーボンニュートラルの推進や水資源確保とともに、使用電力の100%再エネ化(再エネ100 RE Actionに参画)など、SDGs実現に向け積極的に取り組んでまいります。
森林につきましては、2022年9月に那智勝浦の保安林(16.7ha)が、都市に立地する企業の緑地管理による地域への社会貢献として評価され、(公財)都市緑化機構の社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES) Excellent Stage2の認定を受けました。更なるステージアップを目指すと共に、当社グループ国内の排出CO2(約470トン/年)の100%吸収を図るべく森林の保有(現在約27ha)を拡大してまいります。
また、国内においては出生率低下による人口減とともに、特に建設業においては、高度技術者の不足が大きな課題となっています。当社においても持続的発展を目指すためには、人材確保と教育が不可欠の課題であります。当社では、2022年10月に独立行政法人国際協力機構(JICA)と「ベトナム国BIM(注1)理論を活用した産学連携による電気技術者育成のための案件化調査」を正式締結しました。工学院大学やSOBA Project、ベトナム国ダナン工科大学との産学連携のもと高度技術者の育成を図ると共に、当社グループの人材紹介会社であるJESCOエキスパートエージェント社を通じて当社だけでなく国内外企業の人材不足のニーズに対応してまいります。
2)成長戦略
①再生可能エネルギー関連設備
脱炭素社会実現に向けて、企業自らが再生可能エネルギーを創出する自家消費型の太陽光発電システムを中心に市場の拡大が予測されています。当社グループは引き続きPPAモデルの自家消費型案件に注力するとともに、O&Mやパネルのリサイクル事業など、ライフサイクルに亘りワンストップでサービスを提供する新たなビジネスモデルを展開してまいります。
②無線通信インフラ関連設備
国土強靭化計画に基づき、激甚化する風水害や大規模地震への対策に向けてデジタル化が推し進められる中、当社グループは引き続き河川監視や防災無線、インフラ改修工事などの防災減災分野に注力してまいります。
移動体通信システムにおいては総務省のデジタル田園都市国家インフラ整備計画により2030年度末5G人口カバー率99%実現へ、さらに2030年代の社会におけるBeyond5G(6G)推進等が掲げられており、あらゆる産業・社会活動の基盤となるSociety5.0の未来社会実現に向けて当社グループも積極的に取り組んでまいります。
③アセアンEPC
ベトナムをはじめとするアセアン地域では、新型コロナウイルス感染症の影響も徐々に回復がみられます。ベトナムの設計積算部門では、コロナ禍で取り組んできたDXを進化させるとともに、2020年12月のロンアン支店開設に続き、カントー支店を2022年10月に開設し、現状の190名から早期に300名への増員を実行し、事業の拡大を図ってまいります。建設部門では、公共インフラ整備、民間設備投資ともに大きく拡大する可能性があり、再生可能エネルギー、ベトナム国際空港(ロンタイン、ノイバイ、タンソンニャット)、防災減災関連工事や高層コンドミニアム設備工事などの事業拡大に取り組んでまいります。また、2022年6月にM&AいたしましたJESCO PEICO 社は、ハノイ近郊で日系企業からの工事受注実績を多く有しており、JESCOグループ傘下に入ることにより、北部ハノイでのEPC事業強化を目指してまいります。
④CRE(不動産)
経営戦略の一環として、従来より企業価値向上を目的に不動産の保有又は賃貸により収益を確保してきました。駅近の高付加価値のオフィスビルを所有することにより常に高い収益性を確保してきましたが、更なる収益向上を目指し、2022年1月に不動産仲介会社JESCO CRE株式会社を設立しました。今後とも、高い収益性を維持しながら、高品質のサービスを提供し、顧客満足の向上に努めてまいります。
3)資金面での取り組み
資金につきましては、保有不動産の適切な運用により流動性の確保を図りつつ、アセアンにおける事業拡大、国内外でのM&A資金等に活用する方針であります。また、金融機関や証券市場を通じた資金確保も可能であります。
こうした人材資源開発及び資金資源の最適配分を進め、業績拡大を目指してまいります。
(注1)BIM(Building Information Modeling): ICTを活用し、3次元の建設デジタルモデルに建築物のデータベースを含めた建築の新しいワークフローを提供するモデル(ソフトウェアを含む)
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