研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当社は、グループ全体の技術向上を図るため、髙松コンストラクショングループ技術研究所を設けております。中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱は、当研究所内で、その他の子会社は自社施設で、各社が得意とする技術分野において研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は528百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。

 

(1) 髙松建設㈱

① 流動化コンクリートによる施工品質向上技術の研究開発

近年、建物の形状の複雑化や鉄筋量の増加など、コンクリートを密実に充填することが難しくなっています。2019年に新たにJIS規格化された流動化コンクリートは、施工現場においてコンクリートに流動化剤を添加するものであり、施工性の大幅な向上が期待できます。そこで、髙松建設㈱では、2020~2021年度に流動化コンクリートの実大施工実験を行い、その施工性と品質を検証しました。実験で得られた知見を基に施工マニュアルを整備し、今後、実用化を拡大していきます。

② コンクリートのひび割れ低減対策に関する研究開発

建物の主要な材料であるコンクリートにおいては、様々な要因でひび割れが発生し、美観や耐久性が問題となるケースがあります。多くの検討課題がある中で、特に、マスコンクリートといわれる大断面コンクリートを対象とした研究開発を実施しております。マスコンクリートでは、表面と内部の水和熱による温度差により体積変化に差が生まれ、表面上のひび割れが早期に発生しやすくなります。事前の温度応力解析により温度分布性状を予測できれば、材料・調合の設定変更、打設量の制限などにより、良質なコンクリートが実現できます。髙松建設㈱の実現場において、コンクリート内部温度の実測値と温度応力解析値との比較により、解析の有用性を検証しております。

③ 限界耐力計算に基づく耐震設計高度化研究

髙松建設㈱では、建築基準法で定められる地震力を15%上回る厳しい耐震設計基準を設けています。しかし、10階を超える中高層建物では、配筋が過密化し、杭の設計に苦慮する場合が多くなっています。この問題を解決するために、限界耐力計算の導入を検討しております。限界耐力計算は、従来の保有水平耐力計算と比べて高度で難解な計算方法ですが、10階建て程度以上では保有水平耐力計算よりも合理的な耐震設計が可能であると言われています。限界耐力計算に関する技術ノウハウを蓄積し、地震応答変形に立脚した耐震性能の明確化と配筋設計の適正化を図っていきます。

④ スラブ重量低減技術の開発

設計地震力は建物の重量に比例するため、建物の重量を減らすことができれば、柱・梁をスリム化し、鉄筋量を削減することが可能になります。そこで、スラブの軽量化に着目し、集成材とコンクリートの合成構造によるスラブを開発します。本来コンクリートだけが担う曲げモーメントとせん断力を集成材にも負担をさせることで、コンクリートを減らし、建物重量を削減します。合成構造の細部の検討をすすめ、各種性能(構造・耐火・遮音)試験を実施していきます。

⑤ サイホン排水システムの開発

サイホン排水とは、1つ下の階に排水を落とすことでサイホン力を発生させて、強い水流により排水性能を向上させる技術です。従来の重力式排水システムと異なり、小口径で無勾配の配管システムであるため、水回り設備の自由な配置が可能となります。将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能です。満流で高速に排水されるため自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性にも優れた排水システムです。髙松建設㈱の賃貸マンション仕様に適合するシステムの構築、実験検証を進めております。

⑥ 配筋検査システムの開発

近年、熟練工の減少や品質管理の厳格化から、ICT技術活用による省人化、生産性向上が急務となっています。髙松建設㈱では、他社ゼネコンと共同で、AI(人工知能)および画像解析を活用した配筋検査システムを開発しております。撮影された画像より、鉄筋の径と本数、ピッチ等を算出、図面データと照合し、配筋検査の半自動化を図るものです。現在、試作デバイスによるテスト運用段階であり、2022年度中の完成をめざしております。

 

 

(2) 青木あすなろ建設㈱

(建築事業)

① 制震ブレースを用いた耐震補強工法

日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております(累計施工実績 97件)。

2022年3月期は、実施済みの適用物件に対する補強効果の確認およびデータの蓄積をはかるとともに、新築建物の制震化に摩擦ダンパーを適用するための繰返し性能確認試験をおこないました。

② 折返しブレースを用いた耐震補強工法

折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。2022年3月期は、制震部材としての適用性を検討するため、多数回繰り返し実験をおこない、限界性能を確認しました(累計実績 8件)。

③ 耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発

大地震時の大空間建物の天井脱落被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでおります。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しております。2022年3月期は、建物の柱、梁、壁との隙間をなくした天井の性能確認をおこない、建築技術性能証明の取得に向けた審査を開始しました(累計施工実績 2件)。

④ レンズダンパーの設計合理化

レンズダンパーは建物の耐震性を高める制震部材の一つであり、これを広く普及させることを目的とした改良と応用技術の開発に取り組んでおります。使用材料の変更を試行し、限界性能の評価や建物の設計を汎用ソフトで実施するなどの検討をおこなっております。2022年3月期は、レンズダンパーを組み込んだ建物の設計方法をマニュアル化し、関連する特許を1件出願しました。また、第三者機関による構造性能評価書を取得しております。

⑤ 鉄骨梁の横補剛材省略構法の開発

鉄骨造建物の施工合理化およびコストダウンを図るため、鉄骨梁にとりつくスラブによる補剛効果を適切に評価することによって小梁を省略できる構法を開発しております。2022年3月期は既往の研究結果を整理して設計指針を作成し、第三者機関による技術評価取得に向けた審査を開始しました。

(土木事業)

① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究

2013年6月より首都高速道路株式会社と、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する共同研究を実施しています。その成果により、これまで1000kN摩擦ダンパー4基および650kN摩擦ダンパー2基が首都高速道路11号台場線において設置され、初めて実工事での採用に至りました。2023年3月期は首都高速道路1号上野線において1200kN摩擦ダンパー24基、800kN摩擦ダンパー2基が設置される予定です。また、橋軸方向の地震動の直角方向への影響を解消する新たなメカニズムの開発に取り組み、あらゆる支承部への設置を可能にします。2023年3月期は大型振動台を用いた実橋梁に近い条件での動的載荷実験により、実際の地震動に対して開発したメカニズムが適正に可動することを検証する予定です。

② トンネル覆工コンクリートの充填性向上技術の開発

当社開発の「排気排水・注入ホース」を使用した技術により、覆工コンクリートの充填性が良くなり品質が向上します。国土交通省発注の立野ダム仮排水路工事、掛田トンネル工事やニューマチックケーソン基礎等において効果が検証され、当技術をNETIS(新技術情報提供システム)へ登録申請しております。

③ アワビ種苗生産及び陸上養殖の実用化に向けた技術開発

アワビ種苗生産プロセスにおけるエネルギーコスト低減を目指し、玉川大学との共同研究を実施しております。実証試験により「半循環システムによる飼育方法」は、従来の「かけ流しによる飼育方法」に対して使用電気料金を大幅に削減可能という研究結果を得ることができました。2023年3月期以降は、松江市・玉川大学の産官学共同で実用化に向けて展開する予定です。

④ 拡幅トンネル技術の研究

国立研究開発法人土木研究所との「トンネルの更新技術に関する共同研究」において、施工性がよく経済的に既設トンネルの断面を拡大する工法を研究しております。施工中にトンネル内を走行する一般車両を防護するプロテクタを改良し、出願中の関連する特許2件において、国内優先権主張出願をおこないました。

 

⑤ AI(人工知能)を用いた省力化技術の開発

AIを用いたトンネル施工の省力化技術を開発しております。AIの学習には教師データ(訓練データ)の質と量が重要となるため、施工現場での各種データ蓄積後にデータ間の解析、紐づけをおこないディープラーニング(深層学習)に供する予定です。

(3) みらい建設工業㈱

① 発泡ウレタンによる空港プレストレストコンクリート版下面の空洞充填技術の開発

国土交通省国土技術政策総合研究所との共同研究として、発泡ウレタンによる空港プレストレストコンクリート版下面の空洞充填技術の開発に取り組んでおります。

空港の抱える課題の一つとして、コンクリート舗装版の下に数mmの空洞が生じ航空機の滑走によって目地部から水が噴き出す現象があります。その対策としてコストのかかるコンクリート舗装版の打ち換えや空洞にグラウトを充填する方法がありますが、グラウトが割れて泥化してしまい再度空洞が発生する場合があります。

そのため、空洞に強度が大きく割れにくいウレタン樹脂を充填することで、航空機の荷重が繰返し加わっても空洞ができないようにする技術を開発し、特許を出願しております。

(4) 東興ジオテック㈱

① 高圧噴射撹拌工法の開発

近年、高圧噴射撹拌工法は適用範囲が広がりつつあり、河川水域部や大径化、大深度での適用例が多くなってきております。これらに対応するため、当社の独自工法であるウルトラジェット工法の基本技術をベースにバージョンアップをはかり、受注機会の拡大を目指しております。

河川水域部への対応としては、ゲルタイム(注入材と湧水が触れてから固化するまでの反応時間)を有する硬化材を使用した新たなウルトラジェット工法の実用化を目指しております。また大径化については、同工法の特徴である2方向噴射方式を二重管化し、硬化材+エアーあるいは硬化材+高圧水による工法の改良実験を進めております。

② 新型乾式吹付工法(改良型ニュージャストショット工法)の開発

岩盤接着工法であるニュージャストショット(NJS)工法の受注拡大を目指し、曲げ接着強度や凍結融解などに対する耐久性向上のため、コンクリート補修・補強分野で実績のあるポリマーセメントモルタル技術を取り入れた改良型NJS工法の開発に取り組んでおります。

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