当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う断続的な緊急事態宣言発令の影響により、経済活動の抑制を余儀なくされたものの、ワクチン接種の進展に伴い一時は経済回復への兆しがみられました。しかしながら、新たな変異ウイルスの急拡大、さらにはウクライナをめぐる不安定な国際情勢を受け原材料・エネルギー価格の高騰など、先行き不透明な状況が続くものと予想されます。
このような環境の中で、当社および当社グループはお客さま、地域社会、関係取引先、従業員およびその家族の安全と健康を確保することを最優先に、生活必需品である砂糖や、オリゴ糖をはじめとした機能性素材等の製品を、非常時においても安定して消費者の皆さまにお届けすることを第一義に考え、お客さまのおなかの健康に貢献する「おなかにやさしい会社」として、砂糖事業およびバイオ事業の計画達成に向けて全力で取り組んでまいりました結果、当期の業績は以下のとおりとなりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29 号2020 年3月31 日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。
海外原糖市況は、ニューヨーク市場粗糖先物相場(当限、1ポンド当たり)において14.71セントで始まり、砂糖主要生産国ブラジルの干ばつによる供給懸念に加えワクチン接種の進展による世界経済への回復期待から商品相場へ投機資金が流入し、相場は上昇傾向で推移しました。また、下期にかけてもブラジル減産の影響を受け、11月には一時20.69セントの高値を付けました。その後はウクライナ情勢に伴う原油高騰から粗糖相場も高値圏で推移し、19.49セントで当期を終了しました。
国内市中価格(日本経済新聞掲載、上白大袋1kg当たり)は、期初192円~193円で始まり、海外粗糖相場の高騰や海上運賃の上昇を受けた結果、8月上旬に198円~199円に値を上げました。さらに1月中旬には204円~205円に値を上げ、同水準のまま当期を終了しました。
精糖およびその他糖類など国内販売は、家庭用製品では昨年のような巣ごもり需要は見られず、低調に推移しました。一方、業務用製品は下期にかけて観光・外食産業からの需要回復を見越した動きから好調に推移し、売上高は前年を上回りました。
この結果、当期における砂糖事業全体の売上高は23,243百万円(前連結会計年度比7.0%増)、原材料コスト等の上昇に伴いセグメント利益は1,390百万円(前連結会計年度比23.1%減)となりました。
オリゴ糖部門は、コロナ禍における健康志向の高まりを受け、特定保健用食品「オリゴのおかげ」シリーズの販売が好調に推移、特に大容量タイプの伸張が著しく、販売数量は過去最高を達成しました。一方で当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用したことから売上高は前年同期を下回りました。
サイクロデキストリン部門は、受託加工品の販売が低調に推移したことから、売上高は前年同期を下回りました。
その他、「奇跡の野菜といわれるビーツをドリンクにしました」に続く新製品「ドライビーツチップ」などを「REDBEET」シリーズとして新発売、ビーツ製品のラインナップを拡充しました。引き続きビーツの国内認知度向上そして需要拡大に向け、積極的に取り組んでまいります。
この結果、バイオ事業全体の売上高は1,833百万円(前連結会計年度比3.4%減)、セグメント利益は491百万円(前連結会計年度比28.5%増)となりました。
その他の事業につきましては、ニューESRビル事務所の一部賃貸等を行い、所有不動産の活用に努めました結果、売上高は133百万円(前連結会計年度比1.9%減)、セグメント利益は59百万円(前連結会計年度比0.8%減)となりました。
以上の結果、当期の売上高は25,134百万円(前連結会計年度比6.1%増)、営業利益は807百万円(前連結会計年度比17.9%減)、経常利益は906百万円(前連結会計年度比18.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は609百万円(前連結会計年度比21.3%減)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末と比べて1,363百万円減少し、3,533百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は、1,082百万円(前連結会計年度比289百万円の増加)となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益906百万円、減価償却費655百万円による資金の増加があった一方で、棚卸資産の増加303百万円、法人税等の支払268百万円による資金の減少があったことによるものであります。
投資活動の結果支出した資金は、711百万円(前連結会計年度は481百万円の資金支出)となりました。
これは主に、有形固定資産の取得による支出491百万円による資金の減少、投資有価証券の取得による支出122百万円による資金の減少があったことによるものであります。
財務活動の結果支出した資金は、1,738百万円(前連結会計年度は1,880百万円の資金収入)となりました。
これは主に、借入金の純減額1,603百万円による資金の減少があった一方で、配当金の支払135百万円による資金の減少があったことによるものであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原料糖の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は13,076百万円となっております。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
受注生産は行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な判断に基づき、会計上の見積りを行なっております。実際の結果は、見積り特有の不確実性を伴うため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される見積もりと判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響については、先行き不透明な状況が続いており、収束時期等を確実に予測することは困難な状況にありますが、会計上の見積りにおいては、将来の事業に対する重要な影響はないと仮定しております。
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。計算は、将来の課税所得に関する様々な予測・仮定に基づいており、実際の結果がかかる予測等・仮定とは異なる可能性があります。当社グループでは、将来の課税所得や加減算などのスケジューリングに基づき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しておりますが、将来の課税所得の予測等・仮定に変更が生じ、繰延税金資産の一部または全部の回収ができないと判断した場合、当社グループの繰延税金資産は減額され税金費用が計上される可能性があります。
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)退職給付に係る負債」に記載のとおりであります。
減損の適用においては、減損会計適用資産の特定とグルーピングを行った後、減損の兆候判定を行います。
当社グループは、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産の帳簿価額を、回収可能価額まで減額する会計処理を適用しております。
同会計処理の適用に当たっては、営業活動から生ずる損益の継続的低下や地価の著しい下落等によって減損の兆候が見られる場合に減損の有無を検討しております。減損の検討には将来キャッシュ・フローの見積額を用いており、減損の認識が必要と判断された場合には、帳簿価額が回収可能価額を上回る金額を減損しております。なお、回収可能価額は将来キャッシュ・フローの見積額の現在価値、又は正味売却価額のいずれか高い金額によって決定しております。
将来の営業活動から生ずる損益の悪化、使用範囲又は方法についての変更、経営環境の著しい悪化、市場価格の著しい下落等により減損の認識が必要となった場合、また、見積りの前提条件の変更等により将来キャッシュ・フローの見積額が減少することとなった場合には、追加的な減損処理が必要となる可能性があります。
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べて1,125百万円減少し、26,114百万円となりました。
これは主に、現金及び預金1,363百万円の減少、商品及び製品267百万円の増加等によるものであります。
負債合計は前連結会計年度末に比べて1,582百万円減少し、15,735百万円となりました。
これは主に、有利子負債1,580百万円の減少によるものであります。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて456百万円増加し、10,379百万円となりました。
これは主に、利益剰余金454百万円の増加、その他有価証券評価差額金32百万円の減少であります。
経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載の通りであります。
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」で記載いたしました当社グループを取り巻く環境の他、今後の見通しといたしましては、コロナ禍の収束見通しが依然として不透明な状況に加え、ウクライナ情勢等地政学リスクの高まりを受け、原油価格、国際食料価格等の高騰が見込まれます。そのような環境下において、食品業界全体が予断を許さない状況におかれており、国際的なコスト高、物価高の早期解決が求められております。
砂糖業界といたしましては、原油価格高騰が燃料コスト等の上昇を招くとともに、原料糖の主要生産国であるインド、ブラジル等においてバイオエタノール需要が増加、砂糖向けサトウキビの供給が減少することでさらなる原糖相場の上昇が見込まれます。また、為替相場も大幅な円安状況にあり、これを含めて原料調達環境の一層の悪化が予想され、砂糖業界全体として厳しい環境が避けられない状況にあります。国民生活と直結する食品業界全体としても重要な時期を迎えていると認識しております。
当社および当社グループは、こうした極めて厳しい環境の中、国民の生活を支える基礎的食品である砂糖事業の安定強化とともに、主力事業として成長してまいりましたオリゴ糖事業の一層の拡充・事業基盤強化に全力を注ぎ、役職員一体となり、経営の安定に努めてまいります。
また、お客さまのおなかの健康に貢献する「おなかにやさしい会社」を中長期的な経営ビジョンと位置付け、以下の各事業を推進してまいります。
a.砂糖事業
砂糖事業につきましては、原料調達環境のさらなる悪化が見込まれること、コロナ禍の収束見通しが依然として不透明であることに加え、砂糖制度の不均衡に起因するその他の甘味料への需要シフトや、砂糖に対する根強い誤解により国内需要が減少しており、今までに経験のないほどの厳しい販売環境となることが予想されます。こうした事態に対応すべく、適正価格での原糖買付、効率的販売に全力を挙げるとともに、最大限の生産効率向上に取り組み、事業基盤の強化に努めてまいります。
また、かねてより、漸減する砂糖需要を受け、当社は同業他社との共同生産を進めてまいりましたが、こうした環境変化に対応すべく、今後他社とのさらなる連携を含め、積極的な事業改善に努めてまいります。
昨今、歴史的にも全く害の無い安全安心な素材である砂糖が、不健康な食品であるとの誤った情報から消費者の皆さまの誤解を招いております。
一方、ウクライナ情勢等の危機に際し、国際的には、砂糖は貴重な食料として見直されつつあります。近い将来、国内においても砂糖の本来の価値が必ず見直されるものと予測されます。当社および当社グループは引き続き砂糖の有用性、新たな可能性を訴え、一層の拡販に努めてまいります。
b.オリゴ糖事業
オリゴ糖事業につきましては、当社の主力事業として、その拡大強化に全力を注ぎます。中でも、特定保健用食品である「オリゴのおかげ」のさらなる飛躍を期し、業容拡大を強力に進めてまいります。
昨年度、長引くコロナ禍において健康志向の高まりを追い風に、「オリゴのおかげ」は1992年の事業立ち上げ以来最高の売上を達成いたしました。ご愛顧いただいているすべての皆さまに感謝を申しあげますとともに、腸内環境改善が免疫力向上につながることから、免疫力の大切さが再認識されている今般の状況を絶好の販売機会と捉え、さらなる認知度向上、一層の拡販につなげるべく、幅広いメディアを積極的に活用し、消費者の皆さまへ訴求し、売上増進を図ってまいります。
さらに海外展開も視野に、生産拡大も含めた事業強化に全力で取り組んでまいります。
c.その他バイオ事業
ビーツ部門につきましては、第一弾として発売した「ビーツドリンク」に続き、昨年、RED BEETシリーズとして、料理に毎日手軽にとりいれやすい「ドライビーツチップ」を筆頭に、新たに商品ラインナップを拡充いたしました。
ビーツの国内認知度向上に向けた施策として、前期に引き続き、箱根駅伝の名監督原晋氏を起用し、同氏の勝利に向けた飽くなき闘志を同商品の販売拡大に活かすべく、積極的な広告宣伝活動を行ってまいります。
ビーツは欧州をはじめ世界各国にて栄養豊富な「スーパーフード」として普及し親しまれております。中でもウクライナの郷土料理ボルシチは特に有名なビーツ料理として世界各国に浸透しており、現在、ウクライナで戦禍に苦しむ方々にとっても大切な活力の源となっております。
国内においても、ビーツの鮮やかな赤色を活かした各種料理がSNSに掲載されるなど徐々に浸透しております。未だ市場規模は小さい状況にありますが、当社はこのビーツ商品が今後必ず健康に役立つ食材として国内においても高い評価を受けるものと予測しており、次の主力商品として成長させるべく、引き続きビーツ関連商品の開発・販売に注力し、積極的に拡充を図ってまいります。
d.新商品開発
新商品開発につきましては、オリゴ糖関連商品の新規開発、ならびにビーツ関連商品の開発・販売を推し進めてまいります。また、近年、砂糖の様々な機能が着目され、肌によい素材としても評価されており、化粧品等、食品以外の様々な用途に使用されていることを踏まえ、当社の原点である「砂糖」の新たな可能性を探り、食品・非食品を問わず高付加価値分野の開発、商品化・事業化に向け、全社を挙げて積極的に進出してまいります。
e.砂糖制度運営の適正化
精製糖企業は、国の基本的政策である国産糖振興のため、海外原料糖の輸入にあたり毎年約500億円(38年間で約2兆円)の膨大な調整金を負担し、砂糖制度の維持と円滑な運営に大きく貢献してまいりました。
しかしながら、これは一定の砂糖需要を前提とした制度であり、長期間に亘り砂糖需要が減少する中では、もはや輸入糖の負担によって国産糖を保護するという仕組みは根本的に見直さなければならない時期に来ていると言わざるを得ません。
当社および当社グループは、かねてより砂糖需要回復への積極的対応、国内産糖保護財源の今後の在り方、「調整金」負担割合の抜本的な見直し等、不公平・不平等な砂糖制度の改善・是正を、立法機関、行政当局に強く求めておりますが、その改善・改革には、今後も砂糖業界一体となって、より一層厳しく対処してまいります。
現状を黙認し、国の政策の犠牲となることは、砂糖業界として到底容認できるものではありません。
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