当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による悪化から、ワクチン接種の普及に伴う持ち直しの動きがみられましたが、新たな変異株による感染急拡大、そして、緊迫するウクライナ情勢や世界的なインフレの進行に伴う原材料価格の高騰などにより、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
当社が置かれていますEコマース市場は、経済産業省の電子商取引に関する市場調査では、2020年の国内小売販売に占める物販系のEC化率は8.08%(前年比1.32ポイント増)と推計され、これまでにない大きな伸長率となりました。スマートフォンの普及による消費者の購買行動の変化に加え、外出自粛により経済活動や身近な生活スタイルの変化が起きていることから、物販系分野でのオンラインを利用したBtoC取引が増加しており、今後もEC化率は一層上昇することが見込まれます。
このような経営環境のもと、当社はこれまで取り組んできたEC主軸のビジネスモデルを当社の強みとして、インターネット経由ですべての情報とサービスをお客様に提供し、取引が完結できる仕組みをさらに推し進めました。お客様と従業員の安全や感染症拡大防止の観点から、店舗での臨時休業及び営業時間短縮、ウイルス感染リスク低減のための環境整備、従業員に対しては特別休暇付与、テレワーク導入等の様々な対策を講じた一方で、不要不急の外出を控えているお客様にも当社ECサイトでは安心・安全にお買い物を楽しんでいただけるように取り組んでまいりました。
当事業年度におきましては、中長期目標の実現に向けて新たなビジョンとして4つの“シンカ”を掲げました。①最新のテクノロジーによるサービスの拡充を追求する「進む価値」の“シンカ”、②顧客のロイヤルカスタマー化のためのスタッフの専門性向上及びECサイトの質の向上を追求する「知識を深める価値」の“シンカ”、③ブランディング確立のための品揃え、お客様本位の対応、アフターサービス向上等を追求する「真実の価値」の“シンカ”、④新たな取り組みのために常に想像力を培い、チャレンジすることを追求する「新しい価値」の“シンカ”を掲げ、当社のすべての取り組みと全従業員の行動目標に紐づけております。具体的なものとしては、AIを活用した仕組みの第一弾として、前事業年度末に当社主力のカメラ事業において「AIMD」をリリースしました。需給に合わせたタイムリーな買取・販売価格の設定を可能とし、One To Oneマーケティングと組み合わせることで、多くの顧客へパーソナライズ化した情報をタイムリーに発信しています。そして第二弾では、当社Webマガジン「StockShot」の中から、AIが購買履歴・閲覧履歴等の様々なデータから顧客ごとに適切な記事コンテンツを導き出し、その記事を配信する「AIコンテンツレコメンド」を開始しました。また、今後の事業拡大に向けて2022年1月26日付けで国内最高水準のカメラ修理実績と技術力を有している株式会社フクイカメラサービスと資本業務提携し、中古商品の品質向上と供給安定及び人材育成のための体制を整えました。その他として、新たな情報発信の場として、すべての事業でLINE公式アカウントとYouTubeチャンネルを開設したことやLINE等の外部サービスのアカウントと当社アカウントを紐付けることにより、当社ECサイトへ簡単にログインできる機能を追加するなど新たな仕組みへの継続投資を実行したことで、EC売上高は31,350,044千円(前年同期比22.8%増)となり、店舗売上も回復したことで当事業年度の売上高は43,453,497千円(同28.0%増)となりました。
利益面では、「AIMD」による買取・販売価格の最適化の効果が顕在化し、売上高を大きく伸ばしながらも売上総利益率は前事業年度から引き続き高い水準を維持することができました。販売費及び一般管理費においては、売上高連動の販売促進費やクレジット利用手数料、新たなシステム開発投資に伴うソフトウェア減価償却費及び運用費等の増加があり、4,894,429千円(同4.5%増)となりましたが、その他の諸経費についてはジョブローテーションやシステム導入による業務フローの仕組み化を促進したことで生産性が向上したこともあり、販売管理費比率は前事業年度から2.5ポイント低減しました。これらによって、各利益段階ではそれぞれが過去最高益を大幅に更新し、営業利益は3,140,701千円(同94.7%増)、経常利益は3,187,055千円(同96.3%増)、当期純利益は2,207,886千円(同106.8%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という)等の適用により、売上高は569,825千円減少し、営業利益、経常利益は48,236千円減少しております。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
従来のサービスを活用した販売施策の他に、「AIMD」の本格稼働と独自機能やサービスを活用したOne to Oneマーケティングを掛け合わせることで、顧客との取引機会の増大を図りました。そして次に売上促進に繋げるための新たな仕組みとして「AIコンテンツレコメンド」を導入しました。当社「MapCamera」にはスタッフがこれまでに作成してきた最新機材のフォトプレビューやスタッフ自身の愛機による日々の撮影ブログなどが現在約25,000件あります。これらすべての記事の中から、AIが顧客ごとに最も興味があるものを導き出だし適時配信しています。また、当社が運営するフォトシェアリングサイト「EVERYBODY×PHOTOGRAPHER.com」では様々なイベントの開催と利便性の改善によって当事業年度半ばには写真投稿累計枚数が20万枚を突破、LINE公式アカウントではLINEに限定したイベントや情報発信等により、友だち登録数が順調に増加しております。これらにあわせ、カメラメーカー各社からの注目の新製品の発売もあったことで、EC売上高は大きく伸長、店舗でも回復傾向が現れてきており、全体での売上高は27,904,868千円(前年同期比16.2%増)となりました。セグメント利益については「AIMD」による売上総利益率の改善と販売費及び一般管理費を圧縮したことで3,154,959千円(同35.7%増)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は242,670千円減少し、セグメント利益は40,970千円減少しております。
前事業年度から取り組んでいる戦略的商品ラインナップの拡充として、人気ブランド「ROLEX」の買取強化による国内最大級の在庫量とECサイトでの圧倒的な品揃えに注力することでEC売上、店舗売上ともに大きな伸びとなりました。あわせて、店舗では短期滞在の外国人や一時帰国の日本人によるインバウンド需要の回復が顕著であり、売上高増加に寄与しています。また、腕時計専門店「GMT」としての開業15周年を記念した大々的なイベントによる集客、レディース腕時計専門店「BRILLER」ではSNSを中心とした情報発信によって認知度も高まっており、売上高は14,364,610千円(前年同期比65.5%増)となりました。セグメント利益については売上高増加に伴う販売費等の増加があったものの、市場動向を鑑みた販売価格のきめ細かな調整と新品に比べて売上総利益率の高い中古売上高の構成が上がったことによって全体の売上総利益率が改善したこともあり、1,129,162千円(同216.2%増)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は289,990千円減少し、セグメント利益は13,329千円減少しております 。
メーカーとの協業によるオリジナル商品の企画・販売については継続実施し、「KINGDOM NOTE」でしか手に入らない万年筆、インク、ペンケース等のアイテム数を増量させることで競合他店との差別化を図ったことや、移転リニューアル1周年記念セール等のイベントも実施してきました。一方で、緊急事態宣言発出の中、従業員の安心安全確保と営業戦略に基づいた業務時間の短縮を実行したことによる生産性の一時的低下と世界的なウイルス感染症拡大による海外ブランド万年筆の生産及び国内入荷量の減少も影響し、売上高は391,181千円(前年同期比4.1%減)となりましたが、適切な販売価格の設定による売上総利益率の改善と販売費及び一般管理費の圧縮により黒字転換させることができ、セグメント利益は5,577千円(前年同期は30,662千円の損失)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は14,071千円減少し、セグメント利益は3,886千円増加しております。
スマホアプリによる日常的な情報発信や自転車専門サイトでの広告宣伝とインドアトレーニング関連、人気メーカーの各種パーツやサイクルコンピューター等の商品仕入は継続的に注力し品揃えを充実させてきました。一方で自転車市場においては、ウイルス感染防止対策のために生活の中での移動手段として自転車の活用機会が増えたこと、また、運動不足解消を目的とした健康志向の高まりから、自転車自体の必要性が強く認識されてきましたが、その需要の拡大は一巡したこともあり、売上高は792,836千円(前年同期比6.5%減)となりました。セグメント利益については自社ECサイトでの各種施策とコンテンツの拡充で、自社サイト比率を上昇させたことによる利用手数料低減等もあり、販売費及び一般管理費が圧縮されたことで40,963千円(同1.0%増)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は23,092千円減少し、セグメント利益は2,177千円増加しております 。
(グローバル戦略について)
海外での販売エリアの拡大を図るために、「Map Camera」として世界最大級のオンラインマーケットプレイス「eBay」へ、「GMT」として「eBay」及び高級腕時計マーケットプレイス「Chrono24」へ出店し、サービスの質を重視した越境ECを展開しつつ、各サイトの利用者は順調に増加しております。その売上高はカメラ事業、時計事業それぞれに含まれて計上されており、当事業年度ではカメラ事業は1,195,697千円、時計事業は352,515千円となっています。
(単位:千円)
当事業年度末における現金及び現金同等物は、1,173,407千円となり、前事業年度末と比較して653,602千円の減少となりました。
各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,297,707千円(前年同期比は△388,616千円の減少)となりました。これは、主として税引前当期純利益3,187,225千円、棚卸資産の増加額1,502,988千円、売上債権の増加額497,371千円、法人税等の支払額485,053千円、仕入債務の増加額331,333千円、減価償却費187,391千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、△390,470千円(前年同期比は△439,831千円の減少)となりました。これは、主として無形固定資産の取得による支出307,399千円、関係会社株式の取得による支出77,808千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、△1,560,838千円(前年同期比は△873,051千円の減少)となりました。これは、主として自己株式の取得による支出2,812,888千円、長期借入金の返済による支出1,009,840千円、配当金の支払額378,110千円、長期借入れによる収入2,810,000千円によるものであります。
該当事項はありませんが、代替的な指標として当事業年度の仕入実績を記載しております。
当事業年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:千円)
(注) セグメント間の取引はありません。
該当事項はありません。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:千円)
(注) 1.セグメント間の取引はありません。
2.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。
文中の将来に関する事項については、当事業年度末において判断したものであります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、第5(経理の状況)1(財務諸表等)(1)財務諸表 (注記事項) (重要な会計方針)に記載しております。
当事業年度末の資産につきましては、総資産が14,407,046千円となり、前事業年度末と比較して1,793,968千円の増加となりました。
流動資産は12,820,790千円となり、前事業年度末と比較して1,642,528千円の増加となりました。これは主として商品が1,502,988千円増加、売掛金が497,372千円増加、現金及び預金が653,602千円減少したことによるものであります。
固定資産は1,586,255千円となり、前事業年度末と比較して151,439千円の増加となりました。これは主として無形固定資産が91,196千円増加、関係会社株式が77,808千円増加したことによるものであります。
負債につきましては、8,937,448千円となり、前事業年度末と比較して2,729,037千円の増加となりました。
流動負債は6,124,240千円となり、前事業年度末と比較して2,134,253千円の増加となりました。これは主として、1年以内返済予定の長期借入金が1,205,463千円増加、未払法人税等が564,309千円増加、買掛金が331,334千円増加したことによるものであります。
固定負債は2,813,207千円となり、前事業年度末と比較して594,783千円の増加となりました。これは長期借入金が594,697千円増加したことによるものであります。
純資産につきましては、5,469,597千円となり前事業年度末と比較して935,069千円の減少となりました。これは自己株式が2,812,889千円増加、利益剰余金が1,869,954千円増加したことによるものであります。
当事業年度の売上高は、43,453,497千円(前年同期比28.0%増)となりました。内容としましては、前事業年度末にリリースした「AIMD」を本格稼働させ、カメラの需給に合わせた買取・販売価格の設定とOne To Oneマーケティングを組み合わせることで、多くの顧客へパーソナライズ化した情報をタイムリーに発信し、すべての事業でLINE公式アカウントとYouTubeチャンネルを開設したことや外部サービスのアカウントと当社アカウントを紐付け、当社ECサイトへ簡単にログインできる機能を追加したことなどで、EC売上高の伸長と店舗売上の回復が図られ、前事業年度を大きく上回りました。
売上総利益は、カメラ・時計の需要増による確保と「AIMD」稼働によってカメラ中古品の売上総利益率が高い水準を維持できたことで、8,035,130千円(同27.6%増)となりました。
販売費及び一般管理費におきましては、売上高連動の諸経費とシステム開発投資に伴う減価償却費及び運用費等の増加があり、4,894,429千円(同4.5%増)となりましたが、その他の諸経費についてはジョブローテーションやシステム導入による業務フローの仕組み化を促進したことで抑制され、販売管理費比率は前事業年度から2.5ポイント低減しました。
この結果、営業利益は3,140,701千円(同94.7%増)となりました。
営業外収益は、雇用調整助成金の特例措置の適用を受けたことで78,716千円(同140.1%増)となりました。営業外費用は、支払利息等の計上により32,362千円(同46.5%増)となりました。
この結果、経常利益は3,187,055千円(同96.3%増)となり、売上高経常利益率は7.3%(同2.6ポイント増)となりました。
特別利益は、新株予約権戻入益の計上により292千円(同9.5%減)となりました。特別損失は、不要備品等の固定資産除却損を計上したことにより122千円(同99.8%減)となりました。
この結果、当期純利益は2,207,886千円(同106.8%増)となり、売上高当期純利益率は5.1%(同1.9ポイント増)となりました。
売上高経常利益率につきましては、長期的には8%以上を目標としております。ROE(株主資本利益率)につきましては、長期目標として30%以上を目指しております。
売上高経常利益率
前事業年度から取り組んできましたOne To Oneマーケティングと当事業年度から本格稼働させた「AIMD」を活用することで売上高は拡大しつつも、中古商品の需要と供給を適切な状態に維持することで、売上高総利益率は前事業年度と同水準を維持することができました。一方で売上高販売管理費は、売上増加に連動した諸経費は増加しながらも、業務フローの仕組み化を促進したことで生産性が向上し、販売管理費比率は前事業年度から2.5ポイント低減しました。この結果、売上高経常利益率は前事業年度より2.6ポイント増加し7.3%となりました。
ROE(株主資本利益率)
経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行および株主還元策の一環として、自己株式取得を実施しま した。当期純利益につきましては、各種諸施策が奏功し前事業年度から大きく増加しました。これにより、ROE(株主資本利益率)は前事業年度より19.5ポイント増加し37.2%となりました。今後も引き続き、経営効率の向上に寄与する諸施策を実施いたします。
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、第2(事業の状況)2(事業等のリスク)に記載しております。
財務・資本政策の基本的な方針
当社の経営者は、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性確保、財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本方針としており、主に銀行等から長期及び短期の借入金を中心とした資金調達を行っております。事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応のため、各金融機関とは幅広く良好な関係を構築し、綿密な連携を実施しております。また、売上高経常利益率向上、ROE向上に向けた諸施策に伴う投資については、フリーキャッシュフロー(FCF)を注視しながら、中長期的な視点を持ち、実施しております。2022年3月期も手元現預金及び今後創出するフリーキャッシュフロー、有利子負債の活用により創出された配分可能な経営資源については、将来の成長に向けた投資や株主還元のさらなる充実等に活用する予定です。
資金需要の主な内容
当社の資金需要は、営業活動に係る資金支出では、事業規模拡大に伴う商品仕入やメンテナンス作業及び配送作業スペース拡充に伴う賃借料、人員増加に伴う人件費、さらにEC販売強化に伴うシステム関連費用などがあります。また、投資活動に係る資金支出は、事業規模拡大に伴う事務所等の拡充による有形固定資産の取得、システム投資による無形固定資産の取得、敷金保証金等の差入などがあります。
資金調達
当社の事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、各金融機関と緊密な連携を図り、機動的な対応を可能にする関係性を構築しております。設備投資額は、営業キャッシュフローの範囲内とすることを原則としておりますが、営業キャッシュフローを超える投資を行う場合は、金融機関等からの借入を実施し、有利子負債を活用しております。
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