当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による強い下押し圧力を受けながらも、持ち直しの動きがみられました。その動きは2022年2月からのロシアのウクライナ侵略に伴う世界的な資源価格・物価上昇の下でも維持しており、政府・自治体が「感染拡大防止優先」から「経済優先」に政策の舵を切ったことで、回復基調の継続が期待されております。ただし、ウクライナ情勢長期化による影響や国内外の感染症の動向、金融資本市場の変動等による経済の下振れリスクは大きく、依然として先行不透明な状況が継続しております。
当社が属するカジュアルファッション業界においては、かねてより国内人口減少、少子化等を背景とする市場の縮小、原材料や物流費の高騰等を背景とする生産コストの上昇、生産過多による過剰在庫の問題が起きるなど、構造不況の兆候がありました。店舗販売においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響からインバウンド需要の減少、外出自粛による店舗来客数の減少、衣料品需要の低下、時短営業等の要請などの影響があり、ネット販売においても、新規参入による競争激化や閉鎖的な生活環境を強いられたことによるファッション・アパレル需要の変容などから厳しい経営環境が続きました。
このような状況において、当連結会計年度における当社事業は、販売面においては、主力の店舗販売事業は新規出店や来店客数の回復などから増収となりましたが、もう一方の主力であるインターネット販売事業では、前述のとおり競合の増加とファッション・アパレル需要の変容などが影響し、引き続き減収となりました。
当社は、この状況を真摯に受け止め、コロナ禍に端を発した慢性化しつつある負の連鎖を断ち切るため、売上高の向上及び収益力の回復を目的として2022年8月に「Re-Born Plan」プロジェクト(注)を組成し、まずは再生計画策定のための現状調査に着手しました。本プロジェクトと並行して当連結会計年度より事業化した「メタバース関連事業」の強化を推進し、会社の新たな収益の柱として事業育成に取り組んでまいります。
財政面においては、株式会社商工組合中央金庫より2022年8月に財務基盤の安定と事業再生を目的とした資本性劣後ローン3億円の調達に加え、既存の取引金融機関からの借入契約継続が見込める状況となったことから、当面の資金繰りには支障がない水準を維持しております。
以上の結果、当社の当連結会計年度は、売上高5,059百万円(前年同期比0.4%減)、売上総利益は2,754百万円(前年同期比2.9%減、売上高総利益率は前年同期比1.5pt低下し54.4%)となりました。一方、販売費及び一般管理費は、3,179百万円(前年同期比8.7%減)と、前連結会計年度から継続して行ってきた収益体質への転換のための費用削減の取組み(役員報酬の削減、希望退職制度の実施、業務委託契約の見直し、物流倉庫の一部返還、本社・店舗の賃料見直し)の効果により前年同期比で301百万円圧縮したことで、営業損失424百万円(前年同期比219百万円改善)、経常損失447百万円(前年同期比186百万円改善)、親会社株主に帰属する当期純損失525百万円(前年同期比265百万円改善)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。
(インターネット販売事業)
インターネット販売事業につきましては、前述したとおりファッションECサイトのサービス競争激化の影響もあり売上高が減少しております。そのような状況を打開するために、当社ECサイトのリニューアルによる顧客利便性の改善、著名なインフルエンサーを起用したライブコマースに注力しております。
ライブコマースによる販売手法が集客のための広告効果も上げるなど、事業としての収益性を高める取り組みとして確かな効果が確認できております。
以上により、売上高は1,945百万円(前年同期比23.2%減)、セグメント損失は140百万円(前年同期のセグメント損失は203百万円)となりました。
(店舗販売事業)
店舗販売事業につきましては、前連結会計年度末より出店3店舗、退店1店舗を行った結果、当連結会計年度末における店舗数は39店舗になりました。売上高は前連結会計年度から出店による増収効果及び、まん延防止等重点措置解除により増加しております。
以上により、売上高は2,950百万円(前年同期比23.1%増)、セグメント損失は55百万円(前年同期のセグメント損失は168百万円)となりました。
(卸売販売事業)
卸売販売事業につきましては、既存の取引先に対する販売減少に伴い、売上高が減少しております。
以上により、売上高は100百万円(前年同期比13.8%減)、セグメント損失は22百万円(前年同期のセグメント損失は11百万円)となりました。
(ライセンス販売事業)
ライセンス販売事業につきましては、新規のライセンシーにおけるロイヤリティ収入増加に伴い、売上高が増加しております。
以上により、売上高は36百万円(前年同期比24.3%増)、セグメント利益は32百万円(前年同期比52.2%増)となりました。
(メタバース関連事業)
メタバース関連事業につきましては、当連結会計年度より事業を開始しており、当社が獲得した同事業に関する知見を他社に展開するコンサルティング業務を中心に収益化を進めております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ253百万円増加し、919百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果支出した資金は580百万円(前連結会計年度は397百万円の支出)となりました。これは主に、減価償却費68百万円、投資有価証券評価損53百万円、売上債権の減少額9百万円、税金等調整前当期純損失505百万円、仕入債務の減少額69百万円、未払金の減少額55百万円、事業構造改善費用の支払額82百万円による減少の結果であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は43百万円(前連結会計年度は230百万円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入20百万円、投資有価証券の取得による支出12百万円、有形固定資産の取得による支出21百万円、無形固定資産の取得による支出28百万円による減少の結果であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果得られた資金は876百万円(前連結会計年度は435百万円の収入)となりました。これは主に、短期借入金の純増加額541百万円、長期借入れによる収入300百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入48百万円による増加、ファイナンス・リース債務の返済による支出12百万円による減少の結果であります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1) 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注2) 2019年8月期、2020年8月期、2021年8月期、2022年8月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオにつきましては、キャッシュ・フローがマイナスのため、記載しておりません。
(注3) キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
(注4) 有利子負債は、連結貸借対照表(貸借対照表)に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
当社グループにおける事業は、提供するサービスの性格上、生産実績及び仕入実績についてセグメント別の記載になじまないため、記載しておりません。なお、生産実績につきましては、取扱製品別に区分して記載しており、仕入実績につきましては、種別に区分して記載しております。また販売実績につきましては、セグメント別及び種別に区分して記載しております。
当連結会計年度の生産実績については、次のとおりであります。
(単位:千円)
(注) 一部のブランドにつきましては、外注加工先にて生産を行っております。
当連結会計年度の仕入実績については、次のとおりであります。
(単位:千円)
当社グループは、受注後遅滞なく出荷を行うため、受注残高の金額は僅少であり、当該記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績については、次のとおりであります。
(セグメント別販売実績)
(単位:千円)
(単位:千円)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、見積りが必要な事項につきましては、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因に基づき、見積りや判断を行っております。しかしながら、見積り及び判断は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる可能性があります。
重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
1) 財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は1,810百万円となり、前連結会計年度末に比べ252百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が253百万円、その他が8百万円それぞれ増加した一方で、受取手形及び売掛金が9百万円減少したことによるものです。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は758百万円となり、前連結会計年度末に比べ99百万円減少いたしました。これは主に、投資有価証券55百万円、敷金及び保証金8百万円、その他18百万円それぞれ減少したことによるものです。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は1,878百万円となり、前連結会計年度末に比べ330百万円増加いたしました。これは主に、短期借入金が541百万円、契約負債が21百万円それぞれ増加した一方で、買掛金が69百万円、未払金142百万円、ポイント引当金が22百万円、その他2百万円それぞれ減少したことによるものです。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は587百万円となり、前連結会計年度末に比べ292百万円増加いたしました。これは長期借入金が300百万円、繰延税金負債が11百万円増加した一方で、長期未払金が4百万円、リース債務11百万円、退職給付に係る負債が1百万円、資産除去債務が1百万円それぞれ減少したことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は103百万円となり、前連結会計年度末に比べ469百万円減少いたしました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ24百万円、収益認識に関する会計基準の適用により期首利益剰余金が3百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期損失計上に伴い利益剰余金が525百万円減少したことによるものです。
2) 経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高5,059百万円、営業損失424百万円、経常損失447百万円、親会社株主に帰属する当期純損失525百万円となりました。
(単位:百万円)
(売上高)
当連結会計年度は通年を通じて新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けました。緊急事態宣言発令による外出自粛など、経済活動が制限された影響で減収となり、前連結会計年度比0.4%減となりました。
(単位:百万円)
(注) 「その他」の区分は、報告セグメントに含まれていない事業セグメントであり、重要性が乏しい構成単位であります。
・インターネット販売事業
インターネット販売事業につきましては、ファッションECサイトのサービス競争激化の影響もあり売上高が減少しております。業務効率化や人員の適正配置など事業効率を上げる取り組みを進めておりますが、効果波及までに時間を要しており、セグメント全体の売上高は前連結会計年度比で23.2%減となりました。
・店舗販売事業
当連結会計年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、新規出店を進めた結果、セグメント全体の売上高が増加し、前連結会計年度比で23.1%増となりました。
・卸売販売事業
当連結会計年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により引き続きアパレル業界全体が厳しい状況となり、セグメント全体の売上高は前連結会計年度比で13.8%減となりました。
・ライセンス事業
当連結会計年度は新規のライセンシーにおけるロイヤリティ収入増加に伴い、セグメント全体の売上高は前連結会計年度比で24.3%増となりました。
・メタバース関連事業
当連結会計年度より事業を開始しており、当社が獲得した同事業に関する知見を他社に展開するコンサルティング業務を中心に収益化を進めました。
(営業損失)
コストダウンは進めましたが、収益率の悪化等により、営業損失は424百万円となりました。
(経常損失)
上記の営業損失の計上に加え、円安の影響による為替差損の計上により、経常損失は447百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損失)
上記の経常損失の計上、また、店舗資産における減損損失計上に伴い、親会社株主に帰属する当期純損失は525百万円となりました。
当社グループは、売上高、収益性に関する経営戦略上の指標として売上高営業利益率を重要な指標として位置付けており、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載しております。
当連結会計年度の売上高は5,059百万円(前連結会計年度比0.4%減)、営業損失は424百万円(前連結会計年度は営業損失644百万円)となり、売上高営業利益率は△34.0%(前連結会計年度は△12.7%)となりました。当連結会計年度は主に新型コロナウイルス感染症の影響を強く受け、各指標が前連結会計年度を下回る結果となりましたが、引き続きこれらの指標について、改善・向上されるよう経営に取り組んでまいります。
c.経営成績に重要な影響を与える要因
「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、919百万円となりました。当連結会計年度の区分ごとのキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フロー△580百万円、投資活動によるキャッシュ・フロー△43百万円、財務活動によるキャッシュ・フロー876百万円であります。
当社グループの主な資金需要は、仕入先等の売上原価の支払、販売費及び一般管理費の支払、新規出店に対する投資、借入金の返済及び法人税等の支払等であります。
当社グループは、これまで事業活動に必要な資金は営業活動によるキャッシュ・フローから生み出される自己資金により賄うことを基本原則としておりましたが、当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、4期連続のマイナスを計上するに至りました。
当社はこの状況を重く受け止め、本年8月に「Re-Born-plan」プロジェクトを立ち上げ、コロナ禍からの脱却と事業再生により営業キャッシュ・フローの最大化・早期の黒字化に取組んでおります。
他方資金繰り面では、8月末に㈱商工組合中央金庫から3億円(資本性劣後ローン)及び10月末に第三者割当増資等による175百万円(新株式発行167百万円、新株予約権発行8百万円)の資金調達が実現したことで、当面支障はないものと考えております。
お知らせ