課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

1.会社の経営の基本方針

 当社グループは「暮らしと社会の明日を紡ぐトーア紡」を経営理念とし、トーア紡クオリティの追求と新しい

価値の創造、環境負荷の低減に積極的に取り組むことを通じて、モノづくりの伝統を未来へつなげることを基本

方針としております。

  そして社会に貢献し、必要な存在として認められる企業集団となり、常に自らも成長・発展し続ける「暮らし

と社会の明日を紡ぐ企業」として、事業の永続性を確かなものとする努力をしております。

2.経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(1)目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略

 当社グループを取り巻く経営環境は、コロナ禍を契機としたデジタル化の加速、SDGsによる世界的な規

模での環境や人権リスクへの意識の高まり、原燃料高などによるコスト増など、様々な要素が複雑に絡み合

い、困難かつ柔軟なかじ取りが必要になってきております。そのような環境背景に対応すべく、既存の基幹

5事業(衣料・インテリア産業資材・エレクトロニクス・ファインケミカル・不動産)については新領域へ

の展開も視野に入れた効率的かつ持続可能な仕組みの再構築を行い、一方で次世代を見据えた新事業の創出を

喫緊の課題と捉え、令和4年度を初年度とする中期経営計画(令和4年12月期~令和6年12月期)を策定しま

した。

 当社グループでは、中期経営計画の達成に向け下記の5点を重点施策とし取り組んでまいります。

1.強み、成長分野を見据えたポートフォリオの再構築

ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた環境変化に対応するため、衣料事業・インテリア産業資材事

業・エレクトロニクス事業・ファインケミカル事業・不動産事業の基幹5事業については、新領域への展開

も含めたセグメント内での選択と集中を行い、収益基盤を確実なものにしてまいります。

2.持続的な成長に資する重点的な設備投資

この3か年を持続的な成長へ向けた準備期間と位置づけ、新規事業創出と育成に注力するとともに、環境

負荷低減を実現する投資を積極的に行います。

3.環境に配慮したバリューチェーンの構築などサステナビリティへの取り組み

原材料から製品までのサプライチェーン全体で快適な製品の供給と環境負荷低減の両立を実現させる仕組

み「TOABO GREEN VALUE CHAIN」の構築を足掛かりに、サステナビリティへの取り

組みを加速させます。

4.SDGs、機能性を切り口にした新領域への展開

持続可能な環境に配慮した事業活動と快適性を追求した機能素材開発を通じて、新たな価値を生み出し、

新領域への展開を目指します。

5.DXによる業務改善、改革の継続的推進

モノづくりを始め、あらゆるシーンでITの活用を推進し、ビジネスモデルや組織を変革、企業の優位性

を高めます。

 これらの施策により、安定的な事業基盤の確立を目指してまいります。

 なお、中期経営計画の詳細につきましては、令和4年2月15日に発表いたしました「中期経営計画の策定に

関するお知らせ」をご覧ください。

 当社グループの目標値を次のように設定しております。

 

令和4年12月期

令和5年12月期

令和6年12月期

売上高

16,000

16,500

17,000

営業利益

450

550

630

経常利益

380

480

550

親会社株主に帰属する

当期純利益

220

280

330

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

新型コロナウイルスの感染は新変異株の出現により再拡大しており、経済活動の回復にはまだ時間がかかる

ものと思われますが、一方ではニューノーマル下において新たなビジネスチャンスも出現しております。

このような変化の激しい状況下、中期経営計画の初年度となる令和4年度は計画達成の足固めとし、各事業

分野において以下の取り組みを進めてまいります。

 

・衣料事業

コロナ禍によって加速されたライフスタイルの変化、原材料価格やエネルギーコスト上昇圧力の中、以下の

施策を進めていきます。

1. 持続可能なバリューチェーンの構築

メーカーとして、自社グループをはじめ、協力会社を含めた持続可能なバリューチェーンを構築し、環境

負荷低減と経済合理性の両立を実現していきます。

2. 適地生産強化と生産性向上

国内外の適地生産体制の強化、それに伴う物流の合理化をさらに進めます。また、DXやFAの積極的導

入による生産性の向上や、管理業務の効率化を図るなど、コスト削減を徹底していきます。

3. 開発の強化

SDGsに対応した素材や高付加価値商品の開発を強化し、収益性の向上を図ります。また、ファッショ

ン衣料素材に依存した商品構成から、ヘルスケア分野の素材開発を展開することで、収益の安定化を図り

ます。

4. スクール部門の強化

収益拡大に向け、グループのニット製品子会社および制服縫製子会社と連携した総合的な対応によるシェ

ア拡大や、周辺商材の開発による拡販を進めていきます。

・インテリア産業資材事業

インテリア産業資材事業は以下の3つの戦略を推し進めていきます。

1. 生産の効率化

国内、中国子会社とも新規商材の立ち上げ、および効率化を図るため既存設備の改修、改造および工程の

見える化による生産の効率化を進めていきます。

2. 品質へのプライド・ものづくりへのこだわり

すべての分野で新規商材の受注獲得のための新規開発を進めていきます。ポリプロファイバーでは、細番

化、高機能綿の開発・販売、カーペット不織布では、高付加価値機能商材の開発・販売を目指します。

3. 環境に配慮したものづくり

導入済みの環境に配慮した排水処理設備の適切な運用と更新を実施するとともに、工場で使用するエネル

ギーの低炭素排出へのシフトを実現し、環境負荷低減を推し進めます。また、リサイクル事業では、産官学共同研究による「リサイクル炭素繊維の連続繊維化および製布化」に取り組んでおり、リサイクルカーボンファイバーの高付加価値製品化に繋げていきます。

・エレクトロニクス事業

昨年は、巣ごもり需要や半導体不足による大幅な受注増により増収・増益となりました。

 本年は、反動による減速が懸念されるとともに、原材料、人件費、物流費の値上げが収益を圧迫することが予想されます。このような環境下、主要分野において以下の重要施策を推進していきます。

1. ACコントローラー分野

生産部材の調達を安定的に確保するため、無錫東亜紡織有限公司にエレクトロニクス関連部門を新設して生産地中国での現地調達比率を高めるとともに、中国外注先の管理体制を強化します。また、DXを有効に活用することで、日本からの生産管理および品質管理を強化して生産効率を高めていきます。

2. 電子デバイス分野

主要半導体においては、サプライヤーと中長期購入契約を締結して安定確保を図ります。その上で、今まで参入できなかった事務機や衛生家電分野への積極的な営業を行います。

3. 成長期待分野

ロボットに使用される減速機は、主要部品のベアリングの質を高めて安定的な生産を確立して販売に結びつけます。

電子棚札や個人向けビールサーバー用のコントロール基板は、生産部材の調達が比較的容易であるため、拡販による販売増を目指します。

・ファインケミカル事業

原油価格の高騰や新型コロナウイルスの影響など厳しい事業環境ではありますが、将来の成長軌道を確かな

ものとするために、今年度は以下の重要戦略を推進していきます。

1. デジタル機器やEV用途などで市場拡大が続く電子材料分野の旺盛な需要に対応するために、設備増強投

資を年内着実に進め売上・利益拡大に向けた取り組みを強化します。またフォトレジスト材料向け生産能力および品質の向上に努めユーザーの要望にしっかり応える体制強化に注力します。

2. 新型コロナウイルスやジェネリック業界における品質問題の影響を受けたヘルスケア分野では、引き続き

コスト削減に徹するとともに、国内回帰の趨勢が見られる新規受託材料獲得に向け積極的な営業活動を推進します。

3. 今年度も省エネ・リサイクル・廃棄物排出削減への積極的な取り組みを充実させ、人類共通の社会課題解

決に貢献しながら、持続可能かつ社会に必要とされる化学品製造事業への発展を追求します。

・不動産事業

事業部全体として、資産の有効活用をより促進し安定収益の確保を目指します。事務所賃貸については、設

備のリニューアルを行うことでオフィス環境の満足度を高め、魅力あるオフィスを提供していきます。経年により資産価値が低下している商業施設については、計画的に修繕し付加価値を高めることで稼働率と収益性の向上に努めます。老朽化した施設については、新規テナント誘致のため建て替えなど新たなスキームを検討していきます。また、SDGsを意識した資産の活用を促進し、環境負荷低減への貢献を図ります。

当社グループは、創業者の訓示である「顧客満足」「重点主義」「公平性」を脈々と受け継ぎ、人々そして暮

らしの「アメニティ=快適・ここちよさ」を追求する「暮らしと社会の明日を紡ぐ」企業グループであり続けるという理念のもと、以上のような取り組みを通じて持続的な成長と企業価値の向上に尽力していきます。

また、法令順守や危機管理を一層徹底するため、「トーア紡グループ企業行動憲章」のさらなる定着と実践を

推進し、より実効性のある内部統制の整備、運用に取り組んでまいります。

(3)新型コロナウイルス感染症の今後の見通し

新型コロナウイルス感染症の今後の収束時期を正確に予測することは困難ですが、当社グループでは、ワクチン

の追加接種をはじめとする各国の感染防止策等により徐々に収束に向かい、社会活動や経済活動への影響も令和4年12月期末に向けて緩やかに回復していくものと見込んでおります。

 

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