業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社グループは、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しています。

 なお、経営成績の状況の当連結会計年度の各数値は、収益認識会計基準等を適用した後の数値となっていることから、前連結会計年度と比較した増減額及び対前期増減率は記載していません。収益認識会計基準等の適用に関する詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご覧ください。

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ① 財政状態の状況

 当連結会計年度末における「資産の部」は133,337百万円となり、前連結会計年度末に比べ14,070百万円(△9.5%)減少しました。これは主に、受取手形・完成工事未収入金等が10,326百万円、未成工事支出金が3,742百万円それぞれ減少したことによるものであります。

 また、「負債の部」は61,415百万円となり、前連結会計年度末に比べ19,027百万円(△23.7%)減少しました。これは主に、短期借入金が15,072百万円、支払手形・工事未払金等が4,834百万円それぞれ減少したことによるものであります。

 一方、「純資産の部」は71,921百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,957百万円(+7.4%)増加しました。これは主に、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の44.8%から53.2%となりました。

 

 ② 経営成績の状況

 当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響に加え、鋼材をはじめとした資材価格や輸送コストなどの上昇が続いており、これまで以上に不透明で厳しい状況が予想されます。

 鉄構セグメントの鋼製橋梁事業や土木セグメントに大きく影響する公共投資は、中長期的には新設橋梁の発注量の減少が見込まれる一方で、政府の経済対策に「防災・減災、国土強靭化の推進」が盛り込まれたこともあり、高速道路会社の床版取替を中心とした大規模更新や補修・保全などの発注は引き続き堅調に推移すると思われます。そのような中、大規模更新市場は市場規模の拡大と発注金額の大型化で、ゼネコンの参入が顕著となっており、受注競争が激化してきています。当社グループとしてはこのような環境変化に対応すべく、受注戦略の再検討や経営資源の配分の最適化を図ってまいります。

 鉄構セグメントの鉄骨事業や建築セグメントが関わる民間投資につきましては、建設コストの高騰により今後計画の見直しや中止が危惧されるものの、鉄骨事業においては首都圏・関西圏ともに大型再開発案件が一定程度見込まれていることや建築事業においては物流施設をはじめとした当社が得意とするシステム建築の需要が底堅く見込まれています。しかし鋼材をはじめとした調達コストの急騰が続いていることから、手持工事に加え、今後受注する案件においても損益管理を今まで以上に強化してまいります。

 ソリューションセグメントは、国土交通省がDX政策推進の一環として取り組んでいるBIM/CIMの適用拡大を受け、ソフトウエア関連事業が堅調に推移すると思われます。

 こうした中、当社グループは2020年6月に「KAWADA VISION~10年後のあるべき姿~」を策定し、その実現に向けた「第2次中期経営計画(2020年度~2022年度)」を公表し、すべての目標達成に向けグループ一丸となって取り組んでいます。

 その結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高103,760百万円(前連結会計年度は115,545百万円)、営業利益6,412百万円(同5,565百万円)、経常利益7,689百万円(同8,048百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,176百万円(同6,340百万円)となりました。受注高につきましては119,584百万円(同118,978百万円)となりました。

 

 当連結会計年度より「その他」に含まれていた「ソリューション事業」について量的な重要性が増したため報告セグメントとして記載する方法に変更しています。

 セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)

 

 

(鉄構セグメント)

 当セグメントの中の鋼製橋梁事業につきましては、受注高は第3四半期までの高速道路会社発注の大型工事に加え、当第4四半期においても国土交通省発注の大型工事を積み重ねることができましたが、前連結会計年度において大型特定更新工事の受注があった反動で前連結会計年度を下回る結果となりました。売上高は大型特定更新工事をはじめとした保全工事は概ね順調に進捗したものの、新設の大型工事が前連結会計年度に集中的に竣工したことで、前連結会計年度より減少いたしました。営業利益は保全工事の原価改善に加え、今期竣工を迎えた案件を中心に設計変更が獲得できたことで前連結会計年度を大幅に上回る結果となりました。

 鉄骨事業につきましては、当第4四半期における半導体関連施設の大型案件や関西圏を中心とした受注に加え、漸く動き始めた首都圏再開発案件の受注を積み上げることができたことで、前連結会計年度を上回る結果となりました。売上高は、首都圏再開発案件の一部工事の工程が大幅に延伸した影響により前連結会計年度を下回ったものの、営業利益は大型工事での工場での原価改善に加え、設計変更契約交渉を粘り強く続けた結果、採算性の改善が図れたことで前連結会計年度を上回ることができました。

 セグメント全体では売上高50,033百万円(前連結会計年度は61,287百万円)、営業利益5,425百万円(同4,406百万円)となりました。また、受注高は59,006百万円(同65,193百万円)となりました。

(土木セグメント)

 土木セグメントにつきましては、受注高は第3四半期までは特に新設事業と更新事業で苦戦していましたが、当第4四半期において、国土交通省発注の新設事業と高速道路会社発注の更新事業を積み上げることができたことで31,405百万円(前連結会計年度は31,315百万円)と前連結会計年度と同水準の受注を確保することができました。

 売上高は、更新事業及び保全事業を中心に工事が順調に進捗したものの、新設事業での減少を補うまでに至らず、33,037百万円(同34,625百万円)となり、また営業利益につきましても2,380百万円(同2,524百万円)といずれも前連結会計年度実績に届きませんでした。

(建築セグメント)

 建築セグメントにつきましては、第3四半期に大型物流施設2件を受注できたことに加え、当第4四半期においても大型倉庫を受注できたことにより、受注高は15,715百万円(前連結会計年度は10,390百万円)と前連結会計年度を大幅に上回ることができました。売上高は繰越工事の減少に加え、当連結会計年度前半での受注が伸び悩んだことにより9,607百万円(同10,647百万円)となり、また営業利益につきましては、厳しい受注競争が続く中で、手持ち案件の採算性の低下に加え、一部採算性の厳しい工事で工事損失引当金を計上したことで56百万円(同648百万円)という結果となりました。

(ソリューションセグメント)

 ソリューションセグメントにつきましては、当第4四半期においてもソフトウエア関連事業及び設計受託事業が順調に推移したことに加え、収益認識会計基準等の適用により収益認識方法を一部変更した影響もあり、受注高6,276百万円(前連結会計年度は5,119百万円)、売上高5,603百万円(同4,760百万円)、営業利益1,252百万円(同749百万円)といずれも大幅に改善いたしました。

(その他)

 その他につきましては、航空関連事業において改善が見られたものの、橋梁付属物の販売が前連結会計年度を下回ったことで売上高は7,159百万円(前連結会計年度は6,973百万円)、営業損失297百万円(前連結会計年度は営業損失317百万円)となりました。

 

 ③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,907百万円増加し13,674百万円(前連結会計年度比+27.0%)となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、20,391百万円の資金増加(前連結会計年度は2,547百万円の資金減少)となりました。これは主に、売上債権の減少によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、1,948百万円の資金減少(前連結会計年度は4,183百万円の資金減少)となりました。これは主に、設備投資による固定資産の取得等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、15,811百万円の資金減少(前連結会計年度は8,220百万円の資金増加)となりました。これは主に、借入金の返済によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

鉄構

59,006

77,869

土木

31,405

47,256

建築

15,715

17,965

ソリューション

6,276

2,734

その他

7,181

508

合計

119,584

146,334

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。

2 当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しています。受注高、受注残高は当該会計基準等を適用した後の金額となっているため、前期比(%)は記載していません。

3 当連結会計年度から、「その他」に含まれていた「ソリューション事業」について量的な重要性が増したため報告セグメントとして記載する方法に変更しています。

 

b.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

鉄構

50,033

土木

33,037

建築

9,607

ソリューション

5,603

その他

7,159

合計

105,441

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。

2 当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しています。販売高は当該会計基準等を適用した後の金額となっているため、前期比(%)は記載していません。

3 当連結会計年度から、「その他」に含まれていた「ソリューション事業」について量的な重要性が増したため報告セグメントとして記載する方法に変更しています。

 

 

 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。

 

 なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。

 

a.生産実績

セグメントの名称

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

金額(百万円)

鉄構

61,605

49,830(19.1%減)

建築

10,575

9,506(10.1%減)

その他

105

147(40.0%増)

合計

72,287

59,484(17.7%減)

(注)1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。

2 生産高には、外注生産高が含まれています。

 

b.受注実績

期別

セグメントの名称

前期繰越工事高(百万円)

当期受注工事高(百万円)

(百万円)

当期完成工事高(百万円)

次期繰越工事高(百万円)

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

鉄構

68,689

65,107

133,797

61,380

72,416

建築

12,114

10,390

22,505

10,647

11,857

その他

164

164

164

合計

80,803

75,663

156,467

72,192

84,274

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

鉄構

68,896

58,948

127,845

49,975

77,869

建築

11,857

15,715

27,573

9,607

17,965

その他

156

156

156

合計

80,754

74,821

155,575

59,740

95,835

(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。

2 当事業年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しています。当事業年度の前期繰越工事高は当該会計基準等を適用した後の金額となっています。

3 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額60億円以上の主なものは、次のとおりであります。

西日本高速道路㈱

中国自動車道(特定更新等)吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事

2024年6月完成予定

首都高速道路㈱

高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事

2025年7月  〃

㈱竹中工務店

八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業新築工事

A-1街区

2022年6月  〃

西日本高速道路㈱

新名神高速道路 高槻高架橋西(鋼上部工)工事

2027年2月  〃

清水建設㈱

鉄骨関連その他工事

2022年7月  〃

 

 

c.販売実績

セグメントの名称

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

金額(百万円)

鉄構

61,380

49,975(-)

建築

10,647

9,607(-)

その他

164

156(-)

合計

72,192

59,740(-)

(注)1 当事業年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しています。販売実績は当該会計基準等を適用した後の金額となっているため、前事業年度と比較した増減率は記載していません。

2 前事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。

西日本高速道路㈱

新名神高速道路 八幡ジャンクションBランプ1号橋他4橋(鋼上部工)工事

中日本高速道路㈱

名古屋第二環状自動車道 西蟹田第一高架橋他6橋(鋼上部工)工事

国土交通省

国道45号 気仙沼湾横断橋小々汐地区上部工工事

国土交通省

福岡208号 筑後川橋上部工(P4-P8)工事

東急不動産㈱

(仮称)浅草二丁目計画新築工事

当事業年度の完成工事高のうち請負金額40億円以上の主なものは、次のとおりであります。

首都高速道路㈱

(修)上部工補強工事1-207

中日本高速道路㈱

名古屋第二環状自動車道 服部高架橋他2橋(鋼上部工)工事

中日本高速道路㈱

名古屋第二環状自動車道 大西南第二高架橋他10橋(鋼上部工)工事

国土交通省

平成30-32年度 新町川橋上部工事

中日本高速道路㈱

新東名高速道路 上粕屋高架橋他5橋(鋼上部工)工事

3 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。

前事業年度

 100分の10以上の相手先はありません。

当事業年度

 西日本高速道路㈱ 9,590百万円 16.1%

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(イ)財政状態

 財政状態の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりでありますが、当連結会計年度におきましては前連結会計年度終盤から当連結会計年度にかけて鉄構セグメントの中の鋼橋事業において複数の大型案件が竣工を迎えたことから運転資金が大幅に減少しました。その結果、資産の部では売掛債権(受取手形・完成工事未収入金等)が10,326百万円、未成工事支出金が3,742百万円、負債の部では短期借入金が15,072百万円、いずれも前連結会計年度に比べ減少いたしました。

 また、関係会社株式が同じく604百万円増加していますが、これは持分法適用会社に係る持分法による投資利益を883百万円計上したことによるものであります。

(ロ)経営成績

 当連結会計年度は第2次中期経営計画の2年目でしたが、当連結会計年度においても新型コロナウイルス感染症の影響で民間設備投資が抑制されたことで民間関連事業の受注が低迷し、引き続き厳しい事業環境となりました。

 当連結会計年度の経営成績の具体的な内容としましては、売上高は、鉄構セグメントは鋼橋事業において前連結会計年度終盤から当連結会計年度にかけて複数の大型新設工事や大規模更新工事が竣工した反動で大きく減少しました。また、土木、建築セグメントも繰越工事の減少で減収となりました。この結果、売上高は103,760百万円(前連結会計年度は115,545百万円)となりました。営業利益は、売上高が減少した土木や建築セグメントで減益となりましたが、鉄構セグメントが鋼橋事業で工事竣工に際しての設計変更が想定以上に獲得できたことや工場における採算性の改善で増加したことに加え、当連結会計年度より独立させましたソリューションセグメントが好調に推移したことで、6,412百万円(同5,565百万円)となりました。経常利益は持分法による投資利益が前連結会計年度より1,633百万円減少したことなどで、7,689百万円(同8,048百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失などの特別損失が352百万円発生したことなどで、5,176百万円(同6,340百万円)となりました。

 なお、セグメントごとの経営成績の状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。

(ハ)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの事業は基本的に個別受注方式でありますので、それぞれの事業の市場環境や発注状況が事業ボリュームや採算性に大きな影響を与えますが、その具体的な内容は以下のとおりです。

 鉄構セグメントにおける鋼橋事業及び土木セグメントにおけるPC橋梁事業の市場は、その相当部分が公共事業となる国や地方自治体からの発注と、同様の色彩が強い高速道路会社からの発注であるため、政策や財政状況の悪化などにより発注状況が変化します。次に鉄構セグメントにおける鉄骨事業及び建築セグメントの建築事業が対象とする市場は、民間設備投資に係るものであるため、景気動向に左右される傾向にあります。

 また、当社グループの損益においては持分法適用関連会社である佐藤工業株式会社を筆頭とする佐藤工業グループの持分法投資損益が大きく影響する傾向にあります。すなわち当社グループは佐藤工業株式会社の49.9%の株式を保有しており、佐藤工業グループの資本及び対応する期間損益が持分割合に応じて当社グループの損益に反映されることになりますが、佐藤工業グループの事業規模が当社グループより大きいこともあり、その資本及び対応する期間損益の状況によって当社グループの経常損益以下に影響が生じる可能性があります。

 その他の影響を与える要因やリスクにつきましては「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

(ニ)セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容について

 当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることでありますが、セグメント別の認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 鉄構セグメントの鋼橋事業では、当面は関西方面での大型案件や「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に係る道路の4車線化に向けた発注等が見込まれることから、一定程度の発注量が見込まれていますが、新設は長期的には緩やかな減少が想定されています。そのため、今後ますます受注競争が激化することが見込まれますが、当社グループでは受注力の強化に向けて入札における技術提案力を向上させ、適切な入札価格の設定を行うことで適正な事業量と収益の維持・拡大を目指します。また、新設鋼橋市場の縮小により工場製作する鋼構造製品の減少に備え、複合構造橋梁・合成床版の拡販と土木・海洋構造物市場等への展開に努力してまいります。

 次に同セグメントの鉄骨事業では、首都圏を中心とした大型再開発案件を中心に事業展開を行っていますが、五輪後の大型案件までの端境期が長引いていました。しかしながら前連結会計年度の終盤より漸く商談が本格化する兆しが出てきています。今後、鉄骨の製作とともに鉄骨建方まで一貫して対応できる強みを生かしつつ、事業収益の拡大を目指してまいります。

 土木セグメントではPC橋梁市場において「新設」・「更新」・「保全」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクト・マネジメントを取り入れ、受注と利益拡大、固定費圧縮、原価低減の徹底を図っています。

 そういう中、高速道路会社の床版取替えを中心とした更新工事市場は近年急速に拡大したことに伴いゼネコンの進出が顕著となってきており、また案件の大型化に伴い、選別受注を余儀なくされる事態となっています。

 今後はJVでの受注を含め受注戦略を再検討するなど、受注の安定的な確保と採算性の向上で一層の収益拡大を目指してまいります。

 建築セグメントでは、新型コロナウイルス感染症の影響を色濃く受けていましたが、当連結会計年度の後半には得意とするシステム建築で複数の大型案件を受注することができました。今後は技術提案等によるコスト削減を進め、収益性の高いセグメントを目指します。

 当連結会計年度より独立させましたソリューションセグメントにつきましては、国土交通省が推進するDX化の流れに乗って、設計から工事までのBIM/CIMが本格化する中、3次元CADを基軸とした当社グループの製品群が好調に推移したことに加え、これまで行ったM&Aの効果等もあり好調に推移しました。この事業環境は当面続くと想定されることから、当社グループとして引き続き積極的に取り組んでまいります。

 その他では航空関連事業は前連結会計年度からの新型コロナウイルス感染症の影響で業績の低迷が続きましたが、徐々に改善してきています。また、受注の伸び悩みで業績が悪化した橋梁付属物販売事業につきましては今後受注の確保と固定費の圧縮を行うことにより採算性の向上を図ります。

 

 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

・キャッシュ・フロー

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 その中で、当連結会計年度のキャッシュ・フローの特徴的な点として税金等調整前当期純利益が7,359百万円に止まったにも関わらず、営業活動によるキャッシュ・フローは20,391百万円のプラスとなっています。これは前連結会計年度において、鉄構セグメントの鋼橋事業で長期の大型案件が複数進行していたことで膨れ上がった運転資金が、それら案件の竣工に伴い売上代金が順調に回収されたことが主な要因です。これに伴い、短期借入金を15,072百万円減少させて対応しましたので、財務活動によるキャッシュ・フローは15,811百万円のマイナスとなりました。

・資金需要

 当社グループの事業活動における資金需要には大きく分けて運転資金と設備資金があります。

 運転資金需要の主なものは橋梁やビル用鉄骨製作に係る原材料費、外注費、労務費、一般管理費等があります。当連結会計年度におきましては上述のとおり特に鉄構セグメントで減少いたしました。

 また、設備資金需要としては橋梁及び同関連製品やビル用鉄骨を製作・加工する工場用の土地や建物、機械設備のほか、航空関連事業を営むに必要なヘリコプターの機体や整備工場や格納庫等があります。当連結会計年度におきましては全体で2,554百万円の設備投資を行っていますが、その内訳は「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりであります。

・財務政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、内部資金の活用とともに金融機関からの借入を中心とした資金調達を行っています。

 運転資金需要については当社グループのコア事業が個別受注型の事業形態であるため、受注した案件の金額や工期、回収条件によって必要となる運転資金の額や時期が異なります。そのことを踏まえ、その時々の受注内容を全体として管理しながら必要な運転資金を調達しています。また基本的には複数年に亘る案件がほとんどであるため、調達に際しては必要金額の全体を俯瞰した上で、短期借入と長期借入を組み合わせ、資金調達の弾力性を確保しています。短期資金については金融機関15行との間で総額210億円の当座貸越契約を個別に締結し、十分な借入枠を確保するとともに、長期資金については年間の調達計画を作成の上、その計画に沿って随時調達を行っています。

 金融機関に対しては平素より業績や資金の状況について説明を行うことで信頼関係を維持し、財務の安定性と弾力性を確保しています。

 また、金利面につきましては過度の金利変動リスクを回避すべく、一部の借入については金利スワップなどの手段で金利の固定化を図り、変動金利部分と固定金利部分のバランスを取っています。

・経営資源の配分

 当社グループでは事業活動から得られる営業キャッシュ・フローについては将来に向けての「設備投資」と「株主還元」、「財務体質強化」に適切なバランスをもって配分する方針としています。そういう中で現在の当社グループの置かれた状況を踏まえ、2020年度を初年度とする第2次中期経営計画においてはその期間中の配分計画は以下のとおりとしています。

営業キャッシュ・フロー(3年間計)                           150億円

 

設備投資      100億円

株主還元       15億円

財務体質強化     35億円

 2年目となります当連結会計年度までの累計といたしまして、設備投資5,878百万円、株主還元1,064百万円を実施しており、概ね順調に推移していると判断しています。引き続き、上記配分計画の達成を目指してまいります。

 

 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる結果となる可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

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