文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「DX」と「不動産」で価値を創造する企業グループをコンセプトに、業務コアをDXしたDX不動産事業及びDXをサービスとして外販するDX推進事業の2事業をグループの事業の柱として、各社の経営理念達成に向け事業展開を行っております。2事業のうち、DX不動産事業は、当社グループにおける収益の柱として、今後も成長戦略をとっていくとともに、この事業にて売上高1,000億円、業界内における知名度№1を目指してまいります。また、DX推進事業は企業グループの成長の柱として、市場拡大の好機を的確にとらえ、成長していく方針であり、これとDX不動産事業の成長をもって企業価値の向上を図り、時価総額1,000億円を目指してまいります。
(2)経営環境
当社グループの収益の柱であるDX不動産事業において、大きな影響を与えるのは、賃料相場と金利(長期金利)、金融機関の融資量、建築費(資材価格)となります。賃料相場につきましては、都心の賃料相場は引き続き堅調に推移しており、それに基づく収益不動産の価格も堅調な状況となっております。金利(長期金利)につきましては、米国の利上げにより、国内の長期金利にも上昇圧力がかかっているものの、大きな利上げを許容できる経済環境になく、金融機関の融資量も大きく変化していない状況となっており、未だ新型コロナウイルスからの経済の回復が鮮明になっていない現況においては、この状況が継続するものと思われます。一方で、新型コロナウイルスや海外の地政学リスクの顕在化による建築費(資材価格)の上昇は、今後注視すべき事象であり、物件開発における事業収支では、このリスクを極力ヘッジすることが重要になってくると思われます。このような外部環境の中、当社は、DX不動産事業において業界トップへ向けた登頂を諦めることなく、“登頂ダイエット”という事業方針を維持し、事業拡大と組織力強化を継続する方針であります。
他方、当社グループの成長の柱であるDX推進事業においては、国内のDXは欧米諸国と比較して遅れており、それによって低い生産性、労働力不足という問題が発生しているのが現状であると言われております。そのため、これを解決すべく、今後国内のDXマーケットは加速的に成長していき、2030年度には今の約4倍の5兆1,957億円のマーケットになるとも言われております(富士キメラ総研調べ)。当社グループはこの成長著しいことが想定されるマーケットにおいて、自社DXで培ったノウハウ・知見を外部へ展開すべく、2021年度は他社DX領域へ踏み込んでいく体制整備を行ってまいりました。今後は、産業横断的な他社DX支援の拡大に注力し、この領域におけるリーディングカンパニーとなる方針であります。
(3)対処すべき課題
当社グループは、「収益不動産総合商社のリーディングカンパニー」、「利益創造力の最大化」、「進化・変革とサステナビリティの両立」という中期ビジョンを立て、売上高1,000億円、時価総額1,000億円、知名度№1という定量目標達成に向け、環境の変化に敏感に対応するとともに、以下の経営課題に取組んでまいります。
①DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
不動産業は非常に巨大なマーケットであるものの、その業態は古く、未だDXに取組まれていない企業が業界の半分以上を占めるとも言われる業界となっております。当社グループでは、ここに利益創造力最大化のチャンスが多く存在していると考えており、自社のDXを強く推進してまいりました。今後は、自社DXにて培ったノウハウ・知見を外部展開すべく、他社DXの支援・推進に注力するため、引き続き体制の強化とともに営業活動へ注力してまいります。
②物件調達力の強化
当社グループの主力事業であるDX不動産事業では、総会員数15万人という不動産投資会員を有しております。今後も、この会員の多様なニーズに応えることが当社グループの企業価値向上において重要なファクターであると考えており、会員ニーズに応える開発用地や中古物件の調達力が非常に重要になってまいります。そのため、この領域における人的リソース確保や関係業者とのリレーションの更なる強化などにより、圧倒的情報力を持つとともに、当社グループのノウハウによる強みや機動的な資金による強みを最大限に活用し、厳選した仕入による市況変動リスクへの耐性強化を図りながら、物件調達力を強化してまいります。
③優秀な人材の確保
当社グループでは、企業成長と共に、社内の業務レベルが上がってきており、また、組織の拡大、組織機能の拡充、新規部署の創出なども多く発生しております。このような状況においては、合理性と柔軟性をもってレベルアップを率先して図れる、また、組織をけん引できる人材が必要となってまいります。今後、中期ビジョン達成を前提とした場合には、このような状況が継続すると想定され、優秀な人材がこれを支えることになると考えております。そのため、新卒採用、中途採用問わず、より多くの優秀な人材確保のため、あらゆる採用手法の活用や人事制度の整備等に取組んでまいります。
④マーケティング力の強化及び知名度の向上
当社では、ウェブ広告を中心とするデジタルマーケティングにより新規顧客の拡大を推進しております。また、2019年度には、不動産投資型クラウドファンディングのサービスサイト「Rimple」をオープンし、このサイトが新しい顧客層の獲得に貢献している状況にあります。これらの取組により、当社及び当社開発のマンションブランド「クレイシア」のブランドは業界内において一定程度知名度が高まってまいりましたが、今後はこれをより一層加速させ、集客拡大のみならず東京都心エリアでの収益不動産総合商社としての地位向上も図るため、これらを軸としたマーケティングに引き続き注力するとともに、様々な手法で更なる顧客層の拡大、新規顧客の獲得を推進し、安定した顧客基盤を構築するとともに効果的なクロスセル戦略をとることで、事業の安定性と発展性を向上してまいります。
⑤組織力の強化
当社グループでは、毎年人員規模が拡大しており、各部署の人員増加だけではなく、新たな会社の追加や新たな組織の追加によりファンクション数も増加しております。拡大する人員・組織・グループ規模に対し、何の施策も打たない場合には、コミュニケーションが希薄になり、組織の統制と従業員のシナジー発揮に支障をきたす可能性もあると考えております。そのため、ビジョンやミッション、方針等の共有をさらに図り、役割と責任をより一層明確化し、業務の仕組化・ルール化などを行うことで組織力を強化し、一貫した指揮命令系統の構築とシナジーの発揮を図ってまいります。
⑥グループ会社の成長とグループ管理能力の強化
当社グループは、当連結会計年度において、アヴァント株式会社を子会社化し、バーナーズ株式会社を設立いたしました。中期ビジョンの一つにある「進化・変革」の実現に向け、DX推進事業の中核にこれらの会社がなってまいります。そのため、これらの会社の成長が当社グループの企業価値向上の重要なファクターの一つになることから、その事業成長へのテコ入れと当社のグループ会社管理能力の向上に取組んでまいります。
⑦財務体質の強化
新型コロナウイルスの影響や海外の地政学リスクの顕在化、米国の利上げなどによる国内経済の回復の不透明さが増している中、現状において問題はないものの、今後の金融機関の融資姿勢の後退についても不透明な状況が継続しているものと認識しております。仮に融資環境が後退局面に入ったとしても、安定した資金調達を実現することで継続的に中期ビジョン達成に向かって邁進出来るよう、自己資本の確保やキャッシュ・ポジションの維持・向上、優良資産の確保、ストック収入の確保などに取組み、財務体質の強化を図ってまいります。
⑧新規事業の開発
中期ビジョンにおける「進化・変革とサステナビリティの両立」という観点及び将来の成長性確保という観点において、新規事業の創出は継続的に行っていく必要があると考えております。そのため、新規事業の創出に向けた事業開発等を積極的に検討していくことに取組んでまいります。
⑨コンプライアンス経営の強化
当社の属する業界は、過去の歴史上、景気後退局面などでは、コンプライアンスの問題が発生しやすいため、当社の事業領域におけるコンプライアンス体制は、より一層重要性が増しているものと考えております。当社では、予てよりコンプライアンス経営の重要性を認識し、重要な経営課題の1つとして、コンプライアンス体制及びコーポレート・ガバナンスの強化に努めております。そのため、内部統制基本方針を定め、同方針の適切な運用を行うのみならず、セールスポリシーの公表やこれの社内周知の徹底・教育の実施、コンプライアンス研修の強化なども継続的に行っております。今後も、役員・従業員におけるコンプライアンス関連規程の共有、遵守はもとより、倫理観と社会的良識をもった行動をとることで、社会から信頼される会社として認識されるよう努めてまいります。
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