業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

2021年におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が進んだ結果、同感染症の新規感染者数は8月下旬をピークに減少し、持ち直しの動きが見られました。一方で年明け以降は、新たな変異株の感染拡大が続いていることから、引き続き景気動向を注視する必要があります。また、海外においても同感染再拡大が続いているものの重症化率は低下傾向にあるとの報告もあるほか、米国におけるテーパリング、ウクライナ情勢など引き続き経済動向に注意する必要があります。

当社グループが属する不動産及び不動産金融業界、特にB to Bのオフィス不動産マーケットにおきましては、同感染症の影響により空室率の上昇、賃料の下落傾向が見られます。三鬼商事㈱の最新オフィスビル市況(2021年12月時点)によれば、都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の既存オフィスビルの空室率は6.33%であり、前年同月比1.84%上昇しました。また、同地区の2021年12月末時点の坪当たり平均賃料は20,596円と前年同月比6.38%の下落となりました。

 一方、東京のオフィスビル売買市場は、国内金融機関の融資姿勢に大きな変化が見られないこと、東京は世界の主要都市と比較しても相対的に安定的で優位性を保っていると考えられることから、国内外の投資家や不動産会社及びファンドによる物件取得意欲が極めて高い状況が継続しております。

こうした環境の中、当社グループでは、コーポレートファンディング事業においては、当社保有物件の売却及び成長基盤となる物件の取得を進めました。

アセットマネジメント事業においては、受託資産の一部売却を実施したほか、都内大型オフィスビル2棟のアセットマネジメント業務を受託いたしました。本件受託は当社グループ最大規模となり、今後も積極的に案件の取得を進めることを予定しております。

不動産特化型クラウドファンディング事業においては、貸付型商品の組成が順調に進捗しました。また、エクイティ型商品の第1号案件について、投資対象不動産を信託財産とする信託受益権の売却を行いました。現状の試算結果によれば、当商品の出資者に対して、当初の想定投資利回り(IRR:内部収益率)である7.0%を大幅に上回る20%前後の利回りでの配当が見込まれております。なお、同事業に対する個人投資家の投資意欲は依然高いままであり、投資家会員数は25,779人となりました。

これらの活動の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、以下のとおりとなりました。

 

a. 財政状態

(資産)

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ5,827百万円増加し、56,983百万円となりました。

このうち、流動資産は、前連結会計年度末に比べ5,845百万円増加し、56,744百万円となりました。これは主に、事業活動により現金及び預金が595百万円、クラウドファンディング事業における貸付型による26件の融資を実行したことにより営業貸付金が628百万円、販売用不動産が取得により4,649百万円増加したことによるものであります。

(負債)

当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ2,701百万円増加し、46,136百万円となりました。

このうち、流動負債は、前連結会計年度末に比べ667百万円増加し、5,953百万円となりました。これは主に、預り金が816百万円増加したことによるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ2,034百万円増加し、40,182百万円となりました。これは主に、物件の取得に伴い長期借入金が1,312百万円、匿名組合出資預り金が698百万円増加したことによるものであります。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ3,126百万円増加し、10,847百万円となりました。これは主に、利益剰余金が3,062百万円(親会社株主に帰属する当期純利益による増加3,465百万円、及び配当の支払いによる減少401百万円)増加したことによるものであります。

 

b. 経営成績

(売上高の状況)

コーポレートファンディング事業における不動産の売却や不動産賃貸収入の増加等により、売上高は17,920百万円と前連結会計年度に比べ941百万円、5.5%の増収となりました。

主要なサービス別の概況は以下のとおりであります。なお、当社グループは単一セグメントであるため、セグメントごとに記載しておらず、サービス別に区分して記載しております。

ⅰ. コーポレートファンディング事業

イ. 不動産投資事業

10物件を売却した結果、不動産投資売上は14,806百万円(前連結会計年度比1.6%増)となりました。

ロ. 不動産賃貸事業

10物件を売却しましたが、新たに大型物件2件を含む5物件を取得した結果、不動産賃貸売上は2,390百万円(同19.9%増)となりました。

ⅱ. アセットマネジメント事業

新規案件の受託、既存の受託資産の運用及び受託資産の一部売却を実施した結果、アセットマネジメント事業売上は232百万円(同283.9%増)となりました。なお、当連結会計年度末における受託資産残高(AUM)は約290億円であります。

ⅲ. クラウドファンディング事業

貸付型において、26件、7,600百万円の融資を実行しました。その結果、営業貸付金残高は6,270百万円(前連結会計年度末比11.1%増)となり、クラウドファンディング事業の売上は465百万円(前連結会計年度比35.6%増)となりました。

ⅳ. その他事業

仲介手数料売上等により25百万円(同161.4%増)となりました。

(営業利益の状況)

販売費及び一般管理費は1,337百万円となり、前連結会計年度に比べ188百万円増加しました。これは主に事業拡大に伴う人件費の増加によるものです。この結果、営業利益は5,618百万円となり前連結会計年度に比べ1,134百万円、25.3%の増益となりました。

(経常利益の状況)

経常利益については、営業利益の増加などにより、5,327百万円と前連結会計年度に比べ1,158百万円、27.8%の増益となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益の状況)

親会社株主に帰属する当期純利益については、経常利益の増加などにより、3,465百万円と前連結会計年度に比べ765百万円、28.3%の増益となりました。

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ595百万円増加し、7,926百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動により使用した資金は450百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益5,031百万円により資金が増加した一方、物件仕入の先行投資が順調に推移したことによる販売用不動産の増加額5,107百万円及び法人税等の支払額1,436百万円等により、資金が減少したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動により得られた資金は12百万円となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動により得られた資金は1,013百万円となりました。これは主に、長期借入れによる収入が11,200百万円、長期借入金の返済による支出が9,843百万円、配当金の支払による支出が401百万円となったことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

b. 受注実績

当社グループは受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループは不動産関連事業の単一セグメントであるため、サービス別に記載しております。

サービスの名称

当連結会計年度

(自 2021年 1月 1日

至 2021年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

コーポレートファンディング(不動産投資)事業

14,806

1.6

コーポレートファンディング(不動産賃貸)事業

2,390

19.9

アセットマネジメント事業

232

283.9

クラウドファンディング事業

465

35.6

その他事業

25

161.4

合計

17,920

5.5

(注)1. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年 1月 1日

至 2020年12月31日)

当連結会計年度

(自 2021年 1月 1日

至 2021年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ジェイ・エム・オー・ピー・ツー・

ホールディング特定目的会社

-

-

7,973

44.5

特定目的会社Sharma

-

-

2,400

13.4

清和綜合建物株式会社

5,400

31.8

-

-

PG Investment合同会社

3,080

18.1

-

-

2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 財政状態及び経営成績の状況

当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析とそれらの要因につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

b. 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、事業運営体制等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人勢を確保し、市場のニーズにあったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応してまいります。

c. 経営戦略の現状と見通し

当社グループとしましては、これらの状況を踏まえて、コーポレートファンディング事業において、不動産賃貸から得られる利益のみで会社固定費を賄うべく不動産保有資産残高を増加させることで、安定的な経営基盤の確立を目指してまいります。また、アセットマネジメント事業における受託資産残高(AUM)の積み上げによるストック収益の獲得、クラウドファンディング事業における貸付型商品の案件多様化とエクイティ型商品の安定供給による新たな不動産投資市場の形成を目指してまいります。

d. 経営者の問題意識と今後の方針について

当社グループの経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、経営基盤となるコーポレートファンディング事業の持続的な成長とアセットマネジメント事業の強化、クラウドファンディング事業を通じた不動産市場の個人への開放を実践していくことが重要であると認識しております。

そのための優秀な人材の確保・育成や内部管理体制の強化を行い、長期安定的な事業展開を目指してまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析とそれらの要因につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b. 契約債務

2021年12月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

216

216

-

-

-

長期借入金

33,126

1,541

3,107

5,143

23,333

上記の表において、長期借入金は、1年内返済予定の長期借入金と長期借入金の合計金額を記載しております。

c. 財務政策

当社グループは、運転資金及び販売用不動産の取得資金につきましては、内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、原則として運転資金については短期借入金で、販売用不動産の取得資金については、長期借入金で調達しております。

また、現金及び預金と負債や自己資本の割合に応じてエクイティファイナンスも柔軟に検討し、最適な資本構成を目指してまいります。

一方、株価が業績等に比して不当に低いと判断する場合には自社株買いも検討いたします。

なお、2022年1月12日開催の取締役会において割安と考える水準で推移している当社の株価動向と当社の財務状 況等を総合的に勘案し、株主還元の充実と資本効率の更なる向上を図るために市場を通じた自己株式の取得を決議 しており、1月24日より取得を開始しております。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

なお、新型コロナウイルス感染症が会計上の見積りに与える影響については、同感染症が当事業年度末時点において当社グループの事業活動に重要な影響を与えていないことから、重要な影響は無いものとして見積りを行っております。

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

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