業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び当社の関係会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により依然として厳しい状況が続き、経済活動や個人消費に大きな影響を与えております。ワクチン接種の進展や感染防止対策を講じることで経済活動の緩やかな回復が見込まれますが、変異ウイルス等による感染再拡大の懸念もあり、依然として先行き不透明な状況が続くと予想されます。

 不動産市場におきましては、2020年3月以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、首都圏中古マンション成約件数は前年比で減少傾向が続いておりましたが、2020年10~12月期、2021年1~3月期、2021年4~6月期はそれぞれ前年比11.8%、12.2%、55.4%のプラスとなるなど改善の兆しを見せております。(公益財団法人 東日本不動産流通機構 統計情報)

 このような事業環境の下、当社グループ(当社及び当社の関係会社)におきましては、主に前連結会計年度において金融機関の稼働減に伴う販売活動の停滞、管理会社の営業停滞に伴う仲介可能物件数減少及び仲介業界の冷え込みによる電子申込利用減等の影響が出ておりましたが、非対面販売体制の早期確立、自社メディアの強化及び賃貸業界のDXシフト等、長期的な業界変化を見据えたDX推進に注力しており、当連結会計年度において、これらの影響はほぼ発生しておりません。一方、中華圏の投資家向け不動産プラットフォーム事業におきましては、国境を越えた取引の困難化に伴う販売活動の停滞が継続しており、翌連結会計年度も一定程度影響が残るものの、2023年度以降徐々に回復見込みであり、当社グループの業績への影響は限定的であると考えております。

 但し、当社グループは2021年5月にデジタル改革関連法が成立したことに伴い、当社グループの事業領域における競争環境が変化するおそれが高まったことから、RENOSYマーケットプレイス事業※1、2 及びITANDI事業※2において、不動産取引のオンライン化及びDXの更なる推進、短期間での市場占有率獲得を目指す戦略を迫られることとなりました。当社グループは、創業より「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を。」という理念のもと、「世界のトップ企業を創る。」というビジョンを掲げて事業に邁進し、従来から小さなマーケットの獲得ではなく、日本及びグローバルの不動産取引をなめらかにすることで大きなインフラとなる事業を育てることを目指してまいりました。この度の当該事業環境の急速な変化を受け、事業規模拡大の加速を好機と捉え、短期間でRENOSYマーケットプレイス事業等の市場シェアを高めるべく、取引量を増やしました。取引量の増大に伴い、調達価格が高騰した商品が増加し、マージン(売上総利益)の低い取引が多く発生したため、マージンは当初の想定を下回って推移しております。

 ※1 RENOSYマーケットプレイス事業は、主に投資不動産の買取再販事業、不動産の売買・賃貸仲介・管理事業

 ※2 いずれも翌連結会計年度から適用する報告セグメント名

 

(a)財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ10,951百万円増加し、19,405百万円となりました。これは主に、現金及び預金が9,007百万円増加し15,393百万円となったこと、及び販売用不動産が1,409百万円増加し2,795百万円となったことによるものであります。また、固定資産は前連結会計年度末に比べ641百万円増加し、10,772百万円となりました。これは主に、のれんが792百万円増加し4,554百万円となったことによるものであります。

 この結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ11,593百万円増加し、30,177百万円となりました。

 

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ1,190百万円増加し、6,914百万円となりました。これは主に、1年内償還予定の社債が2,010百万円増加し2,050百万円となったこと、1年内返済予定の長期借入金が198百万円増加し1,147百万円となったこと、短期借入金が1,203百万円減少し300百万円となったこと、未払金が569百万円増加し1,558百万円となったこと、預り金が292百万円増加し1,366百万円となったこと、未払法人税等が660百万円減少し1百万円となったことによるものであります。また、固定負債は前連結会計年度末に比べ1,193百万円減少し、4,529百万円となりました。これは主に、社債が1,705百万円減少し405百万円となったこと、長期借入金が338百万円増加し2,722百万円となったこと、及び預り敷金・保証金が119百万円増加するなどその他固定負債が205百万円増加し461百万円となったことによるものであります。

 この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ2百万円減少し、11,443百万円となりました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ11,595百万円増加し、18,733百万円となりました。これは主に、公募増資、第三者割当増資の実施及び新株式発行に伴い、資本金が6,037百万円増加し7,219百万円となったこと、資本剰余金が6,795百万円増加し10,727百万円となったこと、及び利益剰余金が1,269百万円減少し770百万円となったことによるものであります。

 

(b)経営成績

 当連結会計年度の業績は、売上高85,388百万円(前年同期比35.4%増)、EBITDA※ 1,466百万円(前年同期比48.8%減)、営業損失△39百万円(前年同期は1,888百万円の営業利益)、経常損失△431百万円(前年同期は1,654百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失△1,269百万円(前年同期は903百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 なお、当社グループは、従前「RENOSY(リノシー)」事業を主要な事業としており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント別の記載を省略しておりましたが、翌連結会計年度より報告セグメントを「RENOSYマーケットプレイス事業」及び「ITANDI事業」の2つの報告セグメントに変更することといたしました。変更後のセグメント区分とした当連結会計年度におけるRENOSYマーケットプレイス事業の業績は、売上高83,616百万円、セグメント利益3,778百万円、ITANDI事業の業績は、売上高1,170百万円、セグメント利益14百万円となっております。

 ※ EBITDA=営業利益+減価償却費(営業費用)+のれん償却額

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ8,956百万円増加し15,275百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な増減要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により使用した資金は、390百万円(前年同期は2,312百万円の獲得)となりました。これは主に、たな卸資産の増加額1,274百万円、税金等調整前当期純損失1,183百万円、減価償却費968百万円、減損損失621百万円及び、のれん償却額537百万円によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、1,958百万円(前年同期は3,766百万円の使用)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出1,076百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出492百万円、敷金及び保証金の差入による支出124百万円及び、有形固定資産の取得による支出227百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により得られた資金は、11,305百万円(前年同期は3,545百万円の獲得)となりました。これは主に、株式の発行による収入11,975百万円、長期借入れによる収入2,180百万円、長期借入金の返済による支出1,907百万円及び、短期借入金の純減額1,220百万円によるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

(a)生産実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

(b)契約実績

当社グループは、契約実績と販売実績が概ね同じであるため、記載を省略しております。

 

(c)販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社グループは、従来「RENOSY(リノシー)」事業を主要な事業としており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント別の記載を省略しておりましたが、翌連結会計年度より報告セグメントを「RENOSYマーケットプレイス事業」及び「ITANDI事業」の2つの報告セグメントに変更することとしましたので、以下、当該報告セグメント別の情報も併せて記載いたします。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年11月1日

至 2021年10月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

「RENOSY(リノシー)」事業

85,307

135.5

その他の事業

81

62.7

合計

85,388

135.4

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。

※翌連結会計年度から適用するセグメント別では以下の通りです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年11月1日

至 2021年10月31日)

金額(百万円)

RENOSYマーケットプレイス事業

83,616

ITANDI事業

1,165

その他の事業

607

合計

85,388

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。一般に公正妥当と認められる連結財務諸表の作成においては、期末日における資産及び負債の報告額や、報告対象期間中の収益及び費用の報告額に影響する判断及び見積りを行うことが求められております。当社グループの連結財務諸表作成においては、過去の実績等を勘案し合理的に判断及び見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 なお、新型コロナウイルス感染症の影響については「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a)財政状態

当連結会計年度の財政状態につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 (a)財政状態」に記載のとおりであります。

 

(b)経営成績

(売上高及び売上総利益)

売上高は、「RENOSY(リノシー)」の認知度向上等により、RENOSY会員数が増加したことなどにより、85,388百万円(前年同期比35.4%増)となりました。一方、2021年5月にデジタル改革関連法が成立したことに伴う当該事業環境の急速な変化を受け事業規模拡大の加速を好機と捉え短期間でRENOSYマーケットプレイス事業等の市場シェアを高めるべく取引量を増やしたことにより、調達価格が高騰した商品が増加し、マージンの低い取引が多く発生しました。そのため、売上総利益は11,447百万円(前年同期比16.1%増)にとどまっております。

 

(販売費及び一般管理費、EBITDA及び営業利益)

販売費及び一般管理費は事業規模の拡大に伴い、主に人件費、広告宣伝費、減価償却費及び地代家賃の増加により、11,487百万円(前年同期比44.1%増)となりました。

この結果、EBITDA※1,466百万円(前年同期比48.8%減)、営業損失△39百万円(前年同期は1,888百万円の営業利益)となりました。

 ※EBITDA=営業利益+減価償却費(営業費用)+のれん償却額

 

(営業外損益及び経常利益)

営業外収益が24百万円(前年同期比35.8%増)であったのに対して、営業外費用が主に資金調達関係の手数料により416百万円(前年同期比65.2%増)となり、営業外損益は△391百万円(前年同期比△157百万円)となりました。

この結果、経常損失は△431百万円(前年同期は1,654百万円の経常利益)となりました。

 

(特別損益、法人税等及び当期純利益)

主にRENOSYマーケットプレイスの一部ソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む。以下同様)の利用方針及び開発方針の変更により、事業の用に供されないことが明らかとなったソフトウエアの減損損失及び投資有価証券評価損を特別損失として計上し、特別損益は△752百万円(前年同期比690百万円減)となりました。また、法人税等は、主に税金等調整前当期純利益の減少により、85百万円(前年同期比87.6%減)となりました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純損失は△1,269百万円(前年同期は903百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

 

(c)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社の主な資金需要は自社保有投資不動産の取得、販売費及び一般管理費の広告宣伝費及び人件費、ソフトウエアの開発投資及びM&A等であります。これらの資金需要に対しては、営業活動から獲得する自己資金及び金融機関からの借入や社債による調達を基本としており、経済・金融環境の変化に備えた十分な手許流動性の確保により、安定した財務基盤の維持に努めております。また、資金調達の機動性及び流動性確保の補完機能を高めるため、取引銀行と当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を有しております。

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