業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、未だに収束しない新型コロナウイルスの感染状況に加え、ロシアによるウクライナ侵略により高まる不安定な国際情勢に端を発する世界的なインフレへの懸念など、世界的にも国内的にも不透明な経済環境にあります。

一方で、SDGs、DXを始めとしたアフターコロナ時代に向けた社会の変化のなかで、多様性や包摂性などの価値観の醸成は一層進むことと思われます。そのなかで、あらゆる企業、そして個々人の社会性、人間性、効率性への追求は、一層に進むことが予想されます。

このような時代背景のもと、あらゆる企業活動において、顧客との本質的な相互理解や顧客との信頼関係の構築について、より一層の進化が見込まれております。折しも、欧州の個人情報保護規則(GDPR)に端を発する今後のインターネット上における個人情報保護強化の流れ、いわゆるポストクッキー(これまで広く利用できていたユーザーをWEB上で判別するための識別子を本人の同意なく使用不可とする)時代においては、従来活用できていた第三者のデータ(サードパーティデータ)や個人の行動履歴などの利用制限が進むことが予測されており、従来行なっていた顧客獲得、特に潜在顧客の発掘や関係性構築においては、大きな変化が起こりえます。

そのなかで、当社独自の企業と顧客の気持ちを繋ぐ感性メタデータ活用先、活用方法は広がってきております。

当社の既存の主力事業である感性メタデータを活用したエンターテイメント・テクノロジー分野に関しては、音楽・映像のインターネット配信の需要の広がりを受けて、堅調に推移する一方で、美容、健康、ファッション、食、飲料、旅、住、金融など日々の暮らしに関わる領域に、当社の事業機会が広がっております。具体的には、クッキーを使用しない新しいインターネット広告サービス、またあらゆる企業の自社保有のデータ(ファーストパーティデータ)の充実に向けた感性メタデータ生成サービスの開発と提供が進んでおります。これらの事業機会においては、従来の自然言語処理技術だけでは困難な曖昧な文脈(コンテキスト)を解釈する技術が極めて有効となります。そして、さらに重要なのは、当社技術は曖昧な文脈(コンテキスト)を解釈するだけではなく、さらにその文脈(コンテキスト)に接している人の感性や感情を推測することが可能とする点となります。この独自データ技術により、これからの時代、ひとりひとりが、自分らしく生きる、社会と共に生きる、ありたいライフスタイルにこだわる、そのようなニーズがさらに高まってまいります。このようなひとりひとりが自身の内面により深く向き合う時代ならではのマーケティング活動、コミュニケーション活動において、当社独自の感性・感情解釈のデータ技術は社会に役に立つことができます。ここが、当社が当期を通じて育成している新規事業の使命と存在意義となります。

そのうえで、当社の既存主力事業であるエンターテイメント分野と新規事業である感性マーケティング分野を繋ぎ、中長期的には、企業、生産者と生活者とのコミュニケーション活動とエンターテイメントが持つ共感を増幅する力を掛け合わせ、気づきと共感を繋げる社会の実現に貢献してまいります。

当社の強みは、音楽、映像を中心としたエンターテイメント分野を通じて人間が持つ感性や感情を体系的、網羅的、詳細にデータベース化を行い、国内最大級の感性データベースであるメディアサービスデータベース(以下「MSDB」といいます)として自社開発、運用しているところにあります。またさらにそれら「感性メタデータ」を活用した感性AI、感情分析などの「感性テクノロジー」を開発し、人間の感性と感情に寄り添う独自のサービス開発技術にあります。

当社は、「データベース・サービスカンパニー」として、創業以来『人の想像力をつなぐ』ことをミッションに、コンテンツに紐づく情報をデータベース化したオリジナルのMSDBを開発し、主に通信会社およびインターネットサービス会社を対象に、データ提供、検索機能提供、レコメンド・パーソナライズ機能提供、データ分析などの多様なデータベース関連サービスの開発および提供を行っております。

これらのサービスについては、ユーザーベースをもつパートナー企業への技術ライセンス提供として、

KDDI株式会社、株式会社レコチョクを通じた株式会社NTTドコモ、ヤフー株式会社、楽天グループ

株式会社、LINE MUSIC株式会社、HJホールディングス株式会社(サービス名「Hulu」)、

株式会社サイバーエージェント(サービス名「ABEMA」)、資生堂ジャパン株式会社、株式会社集英社などのサービスにて利用されております。

 

開発・運用型売上ではなく、技術ライセンス収入主体への事業モデルの転換に向けたデータ・テクノロジーライセンス事業に一段と主力事業がシフトする一方で、研究開発やデータ開発を引き続き、売上の25%を目処に積極的な投資を実行しております。開発・運用型売上は減少する一方で、新規分野である非エンターテイメント分野向けのデータ・サービスに広がりの兆しが見えてきております。それら事業活動の結果として当期の売上高は前事業年度比87.8%の873,194千円、売上原価は、ライセンス事業の収益力向上が進んだことから原価率の低減及び粗利率の向上が進み、前事業年度比85.4%の447,706千円となりました。販売費及び一般管理費については、将来成長に向けた先行投資としての研究開発活動を積極的に継続しつつ、インフラ費用など外部委託コストの削減などの効率化を図った結果、前事業年度比108.6%の527,385千円となりました。この結果、営業損失101,897千円(前事業年度は営業損失15,780千円)、経常損失101,506千円(前事業年度は経常損失15,503千円)、また、投資有価証券売却益25,803千円の計上及び開発計画の変更に伴うソフトウエア仮勘定の固定資産除却損41,828千円の計上並びに固定資産の減損に係る会計基準に基づき、保有する固定資産の減損損失22,959千円を特別損失に計上などにより当期純損失は150,237千円(前事業年度は当期純損失51,440千円)となりました。

 

当事業年度末における総資産は、1,054,642千円(前事業年度末比153,359千円減)となりました。流動資産につきましては964,527千円(同72,142千円減)となりました。増減の主な要因としましては、現金及び預金の減少(同5,858千円減)、回収による売掛金の減少(同64,571千円減)があったことによります。固定資産につきましては、減損損失計上による有形固定資産の減少(同13,483千円減)、減価償却などによるソフトウエアの減少(同23,672千円減)、固定資産除却損を計上したことによるソフトウエア仮勘定の減少(同37,077千円減)などにより、90,114千円(同81,216千円減)となりました。

負債は、200,006千円(同3,751千円減)となりました。増減の主な要因としましては、未払金の減少(同2,791千円減)、未払消費税等の減少(同4,766千円減)、退職給付引当金の増加(同5,092千円増)などがあったことによります。

以上の結果、純資産は、854,635千円(同149,608千円減)となり、自己資本比率は、前事業年度末の80.0%から76.7%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます)は前事業年度末に比べ、5,858千円減少し、788,107千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は、14,056千円となりました。主な収入要因としては、減価償却費18,724千円の計上、売上債権の減少64,571千円などがありました。一方で主な支出要因としては、税引前当期純損失147,947千円の計上などであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果獲得した資金は、15,524千円となりました。主な収入要因としては、投資有価証券の売却による収入35,813千円、主な支出要因としては、投資有価証券の取得による支出10,500千円、無形固定資産の取得による支出8,928千円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、7,326千円となりました。支出要因としては、配当金の支払額7,326千円であります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社は、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。

 

b.受注実績

当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

当事業年度の販売実績において、当社は単一セグメントとしているため、サービスライン別に示すと次のとおりであります。

名称

前事業年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

金額(千円)

前年同期比(%)

メディアビジネス

992,154

81.1

872,474

87.9

コンテンツビジネス

2,140

53.5

720

33.6

合計

994,295

81.0

873,194

87.8

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、KDDI株式会社に対する販売実績は、各通信事業者の情報料回収代行サービスを利用して、一般ユーザーに有料情報サービスを提供するものが含まれております。

 

相手先

前事業年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

LINE MUSIC株式会社

203,544

20.5

144,300

16.5

楽天グループ株式会社

127,988

12.9

137,194

15.7

株式会社レコチョク

118,803

11.9

105,877

12.1

KDDI株式会社

107,834

10.8

92,752

10.6

 

(2)経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

これらの財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、過去の実績などを勘案して合理的な見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、当社の財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5経理の状況(1)財務諸表〔注記事項〕(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②経営者の視点による経営成績等の状況及び資本の財源、資金の流動性についての分析

当事業年度においては、開発収入や運用収入による売上依存度を下げ、独自技術資産を活用したデータライセンス提供に関連する事業を主体に事業構造の変革を引き続き進めてきました。結果、データライセンス事業売上が売上の約7割を占める水準まで伸長しておりますが、この事業構造の変化により売上は12.2%減少しましたが、一方前事業年度より引き続きのデータライセンス事業が伸長したことにより、売上総利益率が前年度47.3%から48.7%まで上昇するなど収益構造が継続的に向上しております。

また、当社の主な資金需要は運転資金および研究開発費用であります。

運転資金は人件費支払いに充てるためのものであり、原則として営業活動による収入で賄うこととしております。

研究開発費用は、感性や感情を解釈する感性AI関連の技術開発、社内で使用するソフトウエアや、ソフトウエア開発に使用するサーバー等が主なものであり、基本的には営業活動による収入を主たる財源としておりますが、無借金であることや資金繰り、金融情勢を勘案し、良好な関係にある金融機関から借入による資金調達も必要に応じ、検討可能な状況であります。

 

(3)経営戦略の現状と見通し

インターネット関連業界は、AIやDXなどのますますの普及やコロナ禍をきっかけとしたリモートワークのみならず、あらゆる生活分野でのインターネット活用による効率化など、大きな変化の潮流のスピードはさらに上がってきております。さらに、スマートフォンやPC、タブレットのみならず家電や自動車、ロボット、産業機械などあらゆる端末機器がインターネットに接続されるIoTの進展は今後ますます急速に進んでいきます。

また、クラウドコンピューティングの発展にあわせて大量データの超高速処理環境の発展も進んでいきます。一方で、欧州に端を発するインターネット上における個人情報の保護についてはクッキーの利用制限も含め、今後より規制の強化が見込まれています。

 

当社は、エンターテイメント分野で培った人の感性や感情を解釈するデータ関連技術を更に進化させ、その関連技術を非エンターテイメント分野にも広げてまいります。そのうえで、①エンターテイメント分野の発展への貢献、②非エンターテイメント分野での感性・感情の解釈に基づく感性マーケティングの実現をいたします。AI技術、データ分析技術などは普及化が進む状況ですが、その中で当社は「人間の曖昧な感性や感情を理解するテクノロジー」に特化しており、通常のAI技術では解釈しきれない文脈(コンテキスト)、背景、潜在意識、感情的な動機の理解などにおいて、当社が独自開発を行う感性AIにて実現する関連市場の開拓余地は大きくあります。

 

当社はまずエンターテイメント関連のデータサービスにおいて、国内を代表するエンターテイメント・データベースを目指して、一層の充実と普及を目指します。

エンターテイメント関連市場においては、

①ネットワーク経由で音楽や映像を聴取・視聴する機会が、コンテンツやライブ共に増大が見込まれます。

②インターネットを活用したエンターテイメントサービスの発展に伴いエンターテイメントに特化したデータ利用、レコメンド(推薦)、検索、分析などさらなる聴取・視聴機会拡大、およびコンテンツや番組制作などクリエイティブに際してのデータの利活用へのニーズの高まりが見込まれます。

③IoT、AI技術の進展によりスマートフォンやタブレット、パソコンのみならず自動車や家電など、よりエンターテイメントサービスを体験する環境が広がることが見込まれます。

そのような環境のもと、当社は

①当社独自の「感性メタデータ」を活用した新たなレコメンド体験、ひとりひとりの嗜好性をより理解するパーソナライズ体験を実現するエンジンの開発・改善によりライセンス先サービスの発展に寄与し、音楽・映像分野を中心にエンターテイメント産業に貢献します。

②音楽・映像分野における分析サービスを広げ、日本におけるエンターテイメント分野のデータアナリティクス(データ分析)分野を開拓します。

③エンターテイメント分野に特化したAI技術を活用した新たな人とコンテンツの接触機会、聴取・視聴機会を生むサービス機能をスマートフォンやタブレット、パソコンのみならず自動車や家電を通じて様々な企業と連携し提供します。

 

非エンターテイメント関連市場においては

①効率や生産性が求められる時代背景の中で、各企業・商品・サービス・ブランドが、「消費者との感情的な結びつき」を差別化または独自性の要素として活用することの増加がさらに見込まれます。

②各社導入が進んだDMP(Data Management Platform)などの生産性、効果の可視化がより積極的に行なわれ、そのための分析精度の定量的のみならず定性的な分析も進むことが見込まれます。

③その一方でクッキーレスなど、個人情報の保護の機運の高まりの中で、従来活用できていたDMPなどの第三者データ(サードパーティデータ)の利用制限が予測される中で、業種業態問わずあらゆる企業が自社データ(ファーストパーティデータ)の充実を今後図っていくなかで、当社の感性メタデータは、各企業の自前データだけでは不足している詳細な特徴情報を捕捉するなど、行動履歴だけに頼らない分析や情報および商品の購入機会の増加、自社の顕在的かつ潜在顧客の感性的な理解による顧客との関係性強化へのニーズが高まることが見込まれます。

 

そのような環境のもと、当社は

①エンターテイメント分野で培った感性メタデータの開発・利活用など「人の感性・感情を理解する技術」を美容、健康、ファッション、食、飲料、旅、住、金融など暮らし全般の非エンターテイメント分野において応用し、世の中のあらゆる商品・サービス・体験を「感性メタデータ」化し各企業に提供してまいります。

②エンターテイメント分野で培った感性や感情の可視化、体系化を実現する自然言語処理、データ開発技術をより進展させ、文脈(コンテキスト)を解釈し、さらに感性や感情までを解釈する「独自のマーケティングサービス」「インターネット広告サービス」を開発します。

③共通する感性・感情的な結びつきによる消費者と関係構築を望む企業同士が連帯して、消費者に働きかける「クロスプロモーション」「ブランドパートナーシップ」の実現、および企業、消費者、クリエイター、アーティストなどが垣根を超えて感性を軸に共同でマーケティング(商品開発・販売・宣伝など)を行なう「共感パートナーシッププラットフォーム」に向けたデータおよび技術開発を進めてまいります。

 

これらすべての当社独自データベース関連サービスにおいて重要な要素として創業以来の当社の注力領域である人間の持つ「感性」や「感情」のデータベース化およびその利活用にあります。当社は「人の感性や感情を理解する技術」の開発をより一層進めてまいります。そのための土台となるのが、当社独自感性データベースおよび感性AIの技術となります。

 

そのうえで、中長期的に自社にてユーザーベースを持ちうる当社独自のデータベース活用サービスを展開し、国内外で一人でも多くの利用者を増やしていくことで、当社ミッションである世界中の『人の想像力をつなぐ』ことに寄与していきます。

 

(4)経営者の問題意識と今後の方針について

当社の経営陣は、現在の事業環境および入手可能な情報に基づき最善の経営戦略を立案し、実行するように努力しておりますが、当社の属するインターネット業界は開発スピードが速く、その内容も複雑化してきております。また、提供するサービスについても、ユーザーの嗜好や流行の変化を捉え、柔軟な事業展開が必要となり、競合他社との競争が激化する事も予想されます。

そのような事業環境の中で、当社は、人の感性と感情を解釈する技術およびサービス開発に特化し集中することで、徹底的に独自性を磨き、感性メタデータを基盤とした事業モデルにて収益体質を強化してまいります。また独自技術を活用した収益モデルの多様化を図り、エンターテイメント分野、非エンターテイメント分野、インターネット広告分野と収益の柱を増強、確立してまいります。

あわせて収益力拡大に向けた当社の課題である営業・販売体制の強化を外部連携も含めて進めてまいります。

また将来を見据えたリーダー層の育成、企業文化のさらなる熟成、浸透などの人材育成およびマネージメント面の強化を行っていきます。

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