業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国の経済は、引き続き新型コロナウイルス感染症による影響を注視する必要があるものの、厳しい状況が緩和され経済社会活動が正常化に向かう中で、持ち直しの動きが見られております。

一方で、ウクライナ情勢による地政学リスクの高まりや、原材料・エネルギー価格の高騰、為替相場の動向など、下振れリスクも懸念されており、先行きについては不透明な状況が続いております。

 

このような外部環境の中、当社グループでは、アーティストを中心としたエンタテインメント全般を事業領域とし、ファンクラブサイトを事業の軸に据えファンという強固な事業基盤を構築し、電子チケットやeコマース、キャラクター、音楽などの多岐にわたるデジタルコンテンツの配信など複合的な事業展開をしてまいりました。

加えて、エンタテインメントのデジタル化、DX化など事業環境の変化に対応すべく、アーティストアプリの提供とファンの行動データのDX化や、NFTなど今後の成長分野での新たな事業領域の開拓、新規サービスの提供などを行い、ファンエンゲージメントの強化とそれによる収益の拡大も推進してまいりました。

 

以上の結果、当連結会計年度における売上高は13,574百万円(前年同期比10.1%増)、営業利益は1,679百万円(前年同期比51.6%増)、経常利益は1,717百万円(前年同期比47.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は976百万円(前年同期比54.2%増)となりました。

 

 

セグメントごとの概要は、以下のとおりであります。

1)コンテンツ事業

①コンテンツ事業に係るファンクラブ・ファンサイト事業等

コンテンツ事業では、主にスマートフォン向けにファンクラブサイト運営や各種デジタルコンテンツ配信、動画サービス、アプリの提供などを行っております。

当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルス感染症によるライブやコンサートの開催自粛の影響から減少傾向が見られていたファンクラブ/ファンサイトの会員数について、ライブ、コンサートが徐々に再開されるに伴い会員数は上昇に転じ、加えて新規ファンクラブ/ファンサイトの開設と新規会員の獲得が順調に進んだことから、全体の会員数はコロナ禍以前より増加させることができました。

また、コロナ禍をきっかけとしたアーティストとファンの関わりの変化をはじめ、エンタテインメントのDX化を見据えた新たな価値の創出やファンエンゲージメントの強化によるアーティスト活動の支援を実現するため、ファン活動の発着点となるアーティストアプリも充実させてまいりました。

動画視聴専用アプリ「FanStream」や、VRでのライブ生配信や様々なVR映像コンテンツを提供する「VR MODE」を通じたライブ配信も継続し、ファンクラブ/ファンサイトのポータルメディア「Fanpla」や、ファンクラブのプラットフォーム「Fanpla Kit」の普及、利用拡大にも取り組んでまいりました。加えて、オンラインサロン「Fanpla Rooms」、ファンクラブ向けのオンラインくじ「Fanpla Chance」の新規サービスの提供を開始するとともに、クラウドファンディングやNFTなど新たなサービス展開の準備も進めてまいりました。

以上の結果、当連結会計年度におけるコンテンツ事業に係るファンクラブ・ファンサイト事業等の売上高は10,395百万円(前年同期比5.6%増)となりました。

 

②コンテンツ事業に係るEC事業

EC事業につきましては、主に当社グループの運営するファンクラブサイト等を通じて、アーティストグッズとCD、DVD及びブルーレイといった音楽映像商品の販売を行っております。

当連結会計年度においては、緊急事態宣言や自粛に伴い巣ごもり需要が増加したこと、アーティストグッズ等の販売がライブやコンサート等の会場からECへとデジタルシフトが進んだことから、EC事業の収益基盤も拡大しており、アーティストのオンラインストア等を積極的に開設してまいりました。上期においては、新型コロナウイルス感染症の影響により中止や延期となったコンサートグッズのEC販売という特需が剥落し、商品の取り扱いも減少しておりましたが、ライブやコンサートの再開に伴い、下期には商品の取り扱いは増加してまいりました。加えて、コロナ禍以後の新たなコンサートグッズの販売方法として、コンサート会場での電子決済や事前販売・会場受取サービスの需要の高まりも見られました。

以上の結果、当連結会計年度におけるコンテンツ事業に係るEC事業の売上高は999百万円(前年同期比2.6%減)となりました。

 

以上より、当連結会計年度におけるコンテンツ事業全体の売上高は11,394百万円(前年同期比4.8%増)、セグメント利益は1,911百万円(同5.6%増)となりました。

 

2)電子チケット事業

電子チケット事業には、電子チケット及びチケットトレード、並びにそれらに付随する各種サービスからの収益により構成されております。音楽のライブはもちろんのこと、プロ野球やフィギアスケートといったスポーツ、遊園地などのレジャー施設まで幅広く電子チケットサービスを提供しております。

当連結会計年度におきましては、非接触による精度の高い顔パス入場システムの導入など新たな取り組みを行ってまいりました。いまだ新型コロナウイルス感染症の影響は残りイベントへの動員制限等はあるものの、徐々に有観客でのライブ、イベントが増加する中で、電子チケットの強みを活かしマーケットシェアを拡大させ、電子チケット取扱枚数、トレード成立枚数ともに過去最高を達成いたしました。

 

また、ライブと連動する施策として展開する、アーティストのサイン入りのグッズなどの商品を提供するオンラインくじ「くじプラ」についても、案件数を大幅に増加させるとともに、キャッシュレス決済への対応などにより順調に販売を拡大させ、チケットとの連動によりチケット1枚あたりの顧客単価を上昇させてまいりました。

加えて、ライブの生配信やオンライン配信の視聴パスを販売するプラットフォーム「StreamPass」や、安心安全な1on1イベントを実現するライブトークアプリ「Meet Pass ライブトーク」などの提供により、収益の確保に努めてまいりました。

電子チケット周辺領域のサービスといたしましては、プロ野球等のカードコレクションアプリにおいて、新たに1球団のサービスを提供開始、球団間でのコラボの実施などにより利用者を増加させ、販売も堅調に推移いたしました。

今後もカードコレクションアプリのスポーツ以外への横展開やNFTなどのさらなる付加価値の提供により、選手カードを中心に周辺領域でのビジネスも拡大させていくことを計画しております。

以上の結果、当連結会計年度における電子チケット事業の売上高は2,110百万円(前年同期比54.1%増)、セグメント利益は301百万円(前連結会計年度は140百万円のセグメント損失)となりました。

 

3)その他事業

その他事業には、上記3つのセグメントに属さない連結子会社の収益等が計上されており、主にキャラクターグッズやアパレル、出版、プロダクション業務などが含まれております。

当連結会計年度におきましても、将来の収益獲得に向けた事業育成を行うとともに、アニメ作品の公式オンラインストアの運営、受託などを行い、売上高は69百万円(前年同期比18.8%減)、セグメント損失は0.9百万円(前連結会計年度は2百万円の利益)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

(a)キャッシュ・フロー及び流動性の状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,921百万円増加し、6,742百万円となりました。

各キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、2,569百万円のプラス(前連結会計年度は1,975百万円のプラス)となりました。

主な増加要因は、税金等調整前当期純利益1,711百万円の計上、仕入債務の増加1,618百万円、契約負債の増加859百万円であり、主な減少要因は未払金の減少510百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは459百万円のマイナス(前連結会計年度は1,656百万円のマイナス)となりました。

主な減少要因は投資有価証券の取得による支出2,630百万円及び投資有価証券の売却による収入2,868百万円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは191百万円のマイナス(前連結会計年度は403百万円のマイナス)となりました。

主な減少要因は配当金の支払207百万円であります。

 

 

2023年3月期は、営業活動によるキャッシュ・フローとして500百万円を見込んでおります。創出したフリー・キャッシュフローについては電子チケットやNFTなど新規事業におけるシステム、サービス開発に投じることで将来の事業育成をすすめるとともに追加的株主還元への機動的なアロケーションも検討していきます。

なお、株主還元については、2023年3月期についても引き続き連結配当性向30%以上を目安としておりますが、約255百万円の配当を見込んでおります。今後においても、株主の皆様に対する安定的な利益還元を経営上の重要課題としてとらえており、将来の事業展開に備えた財務基盤の強化や、今後の業績等を勘案の上、長期的視点から、配当政策を進めてまいります。

 

(b)資本の財源及び資金の流動性

1)財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、強固な財務体質のもとで、高い資本効率を追求し、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。財務体質に関しては、2019年3月期において会計上の手続きによる特別損失を計上したことで自己資本比率が一時的に低下いたしておりますが、2019年3月期以前の70%程度の水準に回復、維持することを目指し、リスク耐性の強化を図ります。資本効率に関しても同様に2019年3月期に一時的な低下が見られましたが、ROE(自己資本利益率)を10%以上の水準とすることを目安といたします。

設備及び新規事業への投資に関しては、企業価値の向上に資する成長のための投資を積極的に推進してまいります。一方で健全な財務体質を維持することも念頭に、各事業年度における投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則とし、十分な水準の手元流動性を確保してまいります。

2)資金需要の主な内容

当社グループの営業活動に係る資金支出は、販売に比例し発生するアーティスト等へのロイヤリティや販売手数料などがありますが、収益の認識後に生じるものが多く、資金が先行して支出されることはありません。この他、新規事業やサービス開発のための費用、人件費などがあります。また、投資活動に係る資金支出は、企業価値向上に資する企業への投資やM&Aに投じることも計画しております。

3)資金調達

当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、内部資金にて賄うことを原則としており、創業以来、金融機関からの借入や社債の発行等の有利子負債はございません。今後についても同様の方針です。

③生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 当社グループは、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績は記載しておりません。

(2)仕入実績

 当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(千円)

前年同期比(%)

コンテンツ事業

5,845,297

1.0

電子チケット事業

540,279

66.8

報告セグメント計

6,385,576

4.5

その他

5,816

△72.6

合計

6,391,393

4.3

(注)1.金額は、仕入価格によっております。

 

(3)受注実績

 当社グループは、受注生産を行っていないため、受注実績は記載しておりません。

 

(4)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

コンテンツ事業

11,394,725

4.8

電子チケット事業

2,110,341

54.1

報告セグメント計

13,505,066

10.3

その他

69,228

△18.8

合計

13,574,294

10.1

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来生じる実際の結果とは異なる可能性がありますので、ご留意ください。

 

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a)財政状態の分析

(資産の部)

当連結会計年度末の総資産は14,185百万円(前連結会計年度末比20.6%増)となりました。

流動資産は10,063百万円(同32.9%増)となりました。主な内訳は現金及び預金6,732百万円(同42.0%増)、売掛金1,950百万円(同36.2%増)となっております。

固定資産は4,122百万円(同1.6%減)となりました。主な内訳は建物564百万円(同4.7%減)、のれん546百万円(同28.6%減)、顧客関連資産282百万円(同15.4%減)、投資有価証券1,410百万円(同17.3%減)となっております。

 

(負債の部)

当連結会計年度末における負債は8,789百万円(前連結会計年度末比20.3%増)となりました。

流動負債は8,642百万円(同21.7%増)となりました。主な内訳は買掛金4,407百万円(同58.0%増)であります。

固定負債は147百万円(同27.6%減)となりました。主な内訳は繰延税金負債98百万円(同36.8%減)であります。

 

(純資産の部)

当連結会計年度の純資産の合計は5,396百万円(前連結会計年度末比21.2%増)となりました。主な内訳は資本金317百万円(同2.3%増)、資本剰余金3,709百万円(同0.6%増)、利益剰余金1,816百万円(同73.4%増)であります。

 

(b)経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度における売上高は13,574百万円(前連結会計年度比10.1%増)となりました。これは、株式会社Fanplusが、通期で収益貢献したことにより、コンテンツ事業売上が増加したことによるものであります。

 

(売上原価)

売上原価は9,225百万円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。主な増加要因はコンテンツ事業売上の増加に伴う費用増加によるものであります。

 

(販売費及び一般管理費)

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、2,669百万円(前連結会計年度比3.1%増)となりました。これは主に、広告宣伝費、及びコンテンツ事業における売上高に応じて発生する販売手数料を計上したものです。この結果、営業利益は1,679百万円(同51.6%増)となりました。

 

(営業外損益)

当連結会計年度における営業外収益は44百万円(前連結会計年度比34.3%減)となりました。主な内訳は、投資有価証券売却益13百万円であります。営業外費用は5百万円(前連結会計年度比10.9%減)となりました。主な内訳は支払手数料5百万円であります。この結果、経常利益は1,717百万円(同47.0%増)となりました。

(特別損益)

当連結会計年度における特別損失は7百万円となりました。主な内訳は固定資産売却損6百万円であります。この結果、税金等調整前当期純利益は1,711百万円(前連結会計年度比52.8%増)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純損益)

当連結会計年度における法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む)は633百万円となり、非支配株主に帰属する当期純利益は102百万円となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は976百万円(前連結会計年度比54.2%増)となりました。

 

(c)キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(d)資本の財源及び資金の流動性についての分析

1) 資金需要

 当社グループの資金需要のうち主なものは、人件費を中心とした当社グループ全体の販売費及び一般管理費や、売上高に応じて発生するコンテンツホルダーへ対するロイヤリティ及び販売手数料、新規事業開発のための人件費です。売上高に応じて発生する費用の多くは、販売代金の回収後に支払いが行われるため、販売が拡大する局面にあっても運転資金が増加することはありません。

 

2) 財務政策

 当社グループは、事業活動を適切に維持するための資金確保、及び資金の流動性の維持を図るため、営業活動で得られた自己資金により事業活動の維持、設備投資の資金を賄うことを基本にしており、資金の借り入れは行っておりません。今後においても、当社グループの事業拡大に必要な運転、設備資金は自己資金で充当可能であると考えております。

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

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