(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
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2021年3月期 (千円) |
2022年3月期 (千円) |
増減率 (%) |
売上高 |
22,669,577 |
29,178,789 |
28.7 |
営業利益 |
1,908,694 |
2,701,031 |
41.5 |
経常利益 |
1,975,394 |
2,778,908 |
40.7 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
974,492 |
1,780,699 |
82.7 |
当社グループを取り巻くデジタル関連市場においては、IoT(Internet of Things)の進展やDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速等を背景に、コンテンツやサービスの多様化が急速に進んでおります。その一方、各企業においては、その開発及び運用を支えるIT人材が慢性的に不足していることから、ソフトウェアの開発、テスト、保守・運用、セキュリティ等の支援サービスを提供している当社グループの収益機会は、今後も引き続き拡大するものと見込んでおります。
このような状況のもと、当社グループでは、注力事業と位置付けるエンタープライズ事業において、これまで構築してきた人材・技術・顧客基盤をより強固なものへと進化させることで、引き続き高い成長を目指しております。当連結会計年度においては、好況な市場環境を追い風に、ソフトウェアの品質向上に関する提案型の営業活動を積極化させることで、システムテストやセキュリティサービスに対する潜在的なアウトソーシングニーズの顕在化に努めて参りました。これらの取り組みが奏功したことにより、新規顧客開拓や既存顧客との取引規模拡大を実現し、売上高・営業利益が大幅に伸長致しました。また、積極的なM&Aを通じ、エンジニア人材プールの拡大やERP領域における専門性の向上を図ることで、競争力強化に努めて参りました。さらに、エンタープライズ事業の成長をより加速させることを目的に、2022年4月1日付けで、主要子会社の一事業部門であるエンタープライズ事業本部をスピンアウトし、株式会社AGEST(以下、「AGEST」)を組成するとともに、同日付けでエンタープライズ事業を行っている国内企業の一部をAGESTに統合するグループ組織再編を実施することを決議致しました。このため、当連結会計年度の下期より、本組織再編に向け、従来当社グループが有する“ゲーム・エンターテインメント”とは異なる新しいブランディングをAGESTに確立するための戦略の策定や、品質に関する先端技術の追求等、エンジニアにとって魅力的な環境を構築するための準備を進めて参りました。
一方、主力のエンターテインメント事業では、国内デバッグサービスにおいてコンソールゲーム向けの大型タイトル案件を複数獲得したことやテストセンターであるLab.の効率化等により、大幅増収増益を達成致しました。また、エンターテインメント事業における成長の柱と位置付けるグローバルサービスにおいては、2021年3月にM&Aにより子会社化したDIGITAL HEARTS CROSS Marketing and Solutions Limited (旧:Metaps Entertainment Limited、以下、「DIGITAL HEARTS CROSS」) とのシナジーの早期発現に向けグループ連携を強化して参りました。
その結果、当連結会計年度の売上高は、エンタープライズ事業・エンターテインメント事業ともに高い成長を実現し、29,178,789千円(前期比28.7%増)、営業利益は2,701,031千円(前期比41.5%増)と過去最高の売上高・営業利益を更新致しました。これに伴い、経常利益は2,778,908千円(前期比40.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,780,699千円(前期比82.7%増)となりました。
総資産は、前連結会計年度末に比べ3,226,568千円増加し、17,565,361千円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ1,964,982千円増加し、9,989,021千円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ1,261,586千円増加し、7,576,339千円となりました。
セグメント別の経営成績は、以下のとおりであります。
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2021年3月期 (千円) |
2022年3月期 (千円) |
増減率 (%) |
売上高 |
22,669,577 |
29,178,789 |
28.7 |
エンタープライズ事業 |
7,021,610 |
11,491,525 |
63.7 |
エンターテインメント事業 |
15,647,967 |
17,687,264 |
13.0 |
営業利益 |
1,908,694 |
2,701,031 |
41.5 |
エンタープライズ事業 |
188,452 |
649,872 |
244.8 |
エンターテインメント事業 |
3,077,109 |
3,668,034 |
19.2 |
調整額 |
△1,356,867 |
△1,616,875 |
― |
なお、各セグメントの売上高については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しており、セグメント利益は営業利益ベースとなっております。
Ⅰ.エンタープライズ事業
当セグメントでは、主に、エンタープライズシステムの不具合を検出するシステムテストサービス、システムの受託開発や保守・運用、セキュリティ検査・監視の提供を行うITサービス・セキュリティサービスを提供しております。
エンタープライズ事業におけるサービス別の売上高は以下のとおりであります。
なお、第1四半期連結会計期間より、報告するサービス区分を変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいて実施しております。
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2021年3月期 (千円) |
2022年3月期 (千円) |
増減率 (%) |
システムテスト |
3,581,870 |
4,954,022 |
38.3 |
ITサービス・セキュリティ |
3,439,739 |
6,537,502 |
90.1 |
エンタープライズ事業 合計 |
7,021,610 |
11,491,525 |
63.7 |
(ⅰ)システムテスト
システムテストサービスでは、主に、エンタープライズシステムの不具合を検出するサービスを提供しております。
当連結会計年度は、従来得意とするマニュアルテストや脆弱性診断に加え、テスト自動化といった付加価値の高いサービスを組み合わせた、品質向上に関するトータルソリューションの提案を積極化させることで、新規顧客開拓及び既存顧客との取引規模拡大を実現致しました。また、エンジニア増員に向けた継続投資のほか、ベトナム拠点のエンジニアやフリーランスエンジニア等の活用といったグループ連携等を推進することで受注体制の強化を図るとともに、新たに採用した営業やマーケティング等の専門人材を中心に、サービスの認知度やブランディングの向上に努めて参りました。さらに、米国子会社のLOGIGEAR CORPORATIONでは、2022年1月に英国企業のDEVELOPING WORLD SYSTEMS LIMITEDを子会社化し、Oracle製品を導入している企業との取引拡大を図るなど、CRMやERP領域におけるテスト事業の拡大に努めて参りました。
その結果、当連結会計年度のシステムテストサービスの売上高は、4,954,022千円(前期比38.3%増)と大幅な増収を達成致しました。
(ⅱ)ITサービス・セキュリティ
ITサービス・セキュリティサービスでは、システムの受託開発や保守・運用支援サービス、セキュリティ検査・監視サービス等を提供しております。
当連結会計年度は、システムの受託開発、保守・運用、セキュリティサービスすべてにおいて増収を達成致しました。特に、受託開発サービスが、2021年6月に子会社化した株式会社アイデンティティーの業績寄与もあり、前期比2.5倍以上と大幅に伸長致しました。さらに、需要が急増しているSAP関連市場に対して幅広いサービスを提供できる体制を構築することを目的に、2022年3月にSAPの導入及び運用コンサルティングを行う株式会社CEGBを子会社化するなど、次期以降の事業拡大に向けた取り組みを推進致しました。
その結果、当連結会計年度のITサービス・セキュリティサービスの売上高は、M&Aの効果もあり、6,537,502千円(前期比90.1%増)と大幅に前年を上回る結果となりました。
以上の結果、当連結会計年度のエンタープライズ事業の売上高は11,491,525千円(前期比63.7%増)と前期に続き高い成長を継続するとともに、セグメント利益は、649,872千円(前期比244.8%増)と大幅な増益を達成致しました。
Ⅱ.エンターテインメント事業
当セグメントでは、主に、コンソールゲーム、モバイルゲーム、パチンコ・パチスロ等の不具合を検出する国内デバッグサービス、ゲームの翻訳・LQA(※)や2D/3Dグラフィック制作、マーケティング支援等を行うグローバル及びその他サービスを提供しております。
※Linguistic Quality Assuranceの略で、翻訳されたテキストや構成の品質を確認すること。
エンターテインメント事業におけるサービス別の売上高は以下のとおりであります。
|
2021年3月期 (千円) |
2022年3月期 (千円) |
増減率 (%) |
国内デバッグ |
11,536,375 |
12,123,492 |
5.1 |
グローバル及びその他 |
4,111,592 |
5,563,771 |
35.3 |
エンターテインメント事業 合計 |
15,647,967 |
17,687,264 |
13.0 |
(ⅰ)国内デバッグ
国内デバッグサービスでは、主に、国内のコンソールゲーム、モバイルゲーム、パチンコ・パチスロ等を対象に、ソフトウェアの不具合をユーザー目線で検出し顧客企業に報告するサービスを提供しております。
当連結会計年度は、コンソールゲーム市場を中心に顧客企業における新規タイトルの開発が活発化致しました。このような市場環境のもと、当社グループでは、流動的な開発スケジュールに柔軟に対応した質の高いサービスを提供することで、新規大型タイトル案件を多数獲得致しました。また、テストセンターであるLab.のオペレーション改善やデバッグ工程における独自の効率化を推進するなど、収益性の改善にも取り組んで参りました。
その結果、当連結会計年度の国内デバッグサービスの売上高は、12,123,492千円(前期比5.1%増)となりました。
(ⅱ)グローバル及びその他
グローバル及びその他サービスでは、ゲームタイトルを海外展開する際に必要な翻訳・LQAやマーケティング支援等を行うグローバルサービスのほか、ゲームの受託開発・2D/3Dグラフィック制作を行うクリエイティブサービス、総合ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の運営等を行うメディアサービスを主に提供しております。
当連結会計年度は、グローバル・クリエイティブ・メディアすべてのサービスで2桁増収を達成致しました。特にグローバルサービスでは、コンテンツのグローバル展開が活発化していることから、中国をはじめとする海外ゲームメーカーからの翻訳・LQAを中心としたローカライズ案件の獲得が進んだことにより、売上が好調に推移致しました。また、2021年3月に子会社化したDIGITAL HEARTS CROSSと連携を強化し、翻訳・LQAからマーケティング支援までワンストップでサービス提供できる体制を構築することで、新規案件獲得に努めて参りました。
その結果、当連結会計年度のグローバル及びその他サービスの売上高は、M&Aの効果もあり、5,563,771千円(前期比35.3%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度のエンターテインメント事業の売上高は、17,687,264千円(前期比13.0%増)、セグメント利益は、3,668,034千円(前期比19.2%増)と増収増益を達成致しました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、5,173,746千円となり、前連結会計年度における資金5,041,396千円に対し、132,349千円の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローとそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は3,077,118千円の収入(前連結会計年度は1,416,917千円の収入)となりました。
これは、主として税金等調整前当期純利益2,749,310千円、売上債権の増減額393,148千円等の資金増加項目によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は2,537,418千円の支出(前連結会計年度は1,813,519千円の支出)となりました。
これは、主として連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,813,502千円等の資金減少項目によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は546,569千円の支出(前連結会計年度は1,730,291千円の収入)となりました。
これは、主として連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出664,456千円等の資金減少項目によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
(ⅰ)生産実績
事業の特性上、該当事項はありません。
(ⅱ)受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高 (千円) |
前期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前期比 (%) |
エンターテインメント事業 クリエイティブ |
1,419,138 |
48.6 |
1,331,471 |
82.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当社グループの「エンタープライズ事業」及び「エンターテインメント事業」に含まれるクリエイティブ以外の事業は、受注から役務提供までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しています。
(ⅲ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
区分 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(千円) |
前期比(%) |
||
エンタープライズ事業 |
システムテスト |
4,954,022 |
38.3 |
ITサービス・セキュリティ |
6,537,502 |
90.1 |
|
小計 |
11,491,525 |
63.7 |
|
エンターテインメント事業 |
国内デバッグ |
12,123,492 |
5.1 |
グローバル及びその他 |
5,563,771 |
35.3 |
|
小計 |
17,687,264 |
13.0 |
|
合計 |
29,178,789 |
28.7 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、本項に記載した将来事象に関する予測・見通し等は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、それらには不確実性が内在し将来の結果とは大きく異なる可能性があります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討結果につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載の通りであります。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「2 事業等のリスク」に記載しております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては次のとおりであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成にあたりましては、部分的に資産・負債、収益・費用の数値に影響を与えるような見積り等の介在が不可避となりますが、当社グループの経営陣は過去の実績や提出日現在の状況等を勘案し、会計基準の許容する範囲内かつ合理的にそれらの判断を行っております。
なお、会計上の見積り及び当該見積りに用いた重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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