業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度(2021年4月1日~2022年3月31日)における我が国経済は、新型コロナウイルス感染再拡大への政策的対応および同懸念に引きずられ飲食・旅行業界を中心に内需関連は依然厳しいものの、製造業関連は外需に支えられ比較的順調な回復傾向を見せるなど、二極化傾向を見せながら推移しました。一方、目を海外に転じると、堅調に推移していた中国経済に鈍化の兆しが見られ始め、米国や欧州では景気は着実に回復しつつあるかに見えるものの、同感染症変異株による感染再拡大が一部でみられるなど予断を許さない状況となっています。また、エネルギーをはじめ各種原材料価格の上昇やサプライチェーンの混乱などによる部材供給不足を主因とする過度なインフレ圧力が懸念され始めている中、2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻が地政学リスクを現実のものとして認識させるとともに主要各国によるロシアへの各種制裁がインフレ圧力をさらに高めるなど、先行き大きな不安を残しながら推移しました。

 このような中、当社の主要顧客業界である電子機器関連業界は、事業の再編を進めつつも、新興国向けに機能・性能を絞った製品の開発を進める一方、競争力の源泉である優れたアルゴリズムを用いた映像・画像・音声の圧縮伸張技術を追求し続けております。

 具体的には、携帯型端末においてはワンセグ機能に加え、より高画質、大画面の方向に向かっていることから、映像・画像の圧縮伸張コア技術であるビデオコーデックにおける優れたアルゴリズムを市場が求めております。また、デジタル情報家電においても、高画質化に加え高音質化が求められており、低消費電力と合わせてそれらを実現するオーディオコーデックが期待されてきております。さらに、動画像の配信・伝送分野においても、低ビット・レートでも高画質、高音質、低遅延を実現する圧縮伸張技術が必要不可欠のものとなっております。

 このような状況下、DMNAアルゴリズムを用いて高画質、高音質、低遅延はもちろん、地球環境にやさしい省エネルギーなグリーン製品群を提供している当社は、国際標準規格に基づく圧縮伸張技術の機能強化ならびに受注活動を行うとともに、独自規格のオリジナル・コーデックや圧縮してもデータが劣化しないロスレス技術、ソリューション製品としての各種低遅延伝送装置などをさらに国内外の市場に投入すべく営業努力を重ねており、依然としてリモート勤務となっている顧客も多い中でも、中身の濃い商談が増えてきております。

 一方、費用・損益面では、売上高の伸び悩みにより販管費などのコストを賄うことができず、損失を計上することとなりました。

 なお、当社の売上高は、主要顧客の決算期末(主として9月と3月)に集中する傾向がある一方、販管費等のコストは、各四半期とも大幅な変動はない、という特徴を有しております。

 この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末より77百万円減少し、2,352百万円となりました。

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末より7百万円増加し、91百万円となりました。

 当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末より84百万円減少し、2,261百万円となりました。

 

b.経営成績

 当事業年度の売上高は569百万円(前期比36.7%増)となり、経常損失68百万円(前期は経常損失242百万円)、当期純損失70百万円(前期は当期純損失245百万円)となりました。

 

 部門別の業績につきましては、次のとおりです。

(ソフトウェアライセンス事業)

 営業活動におきましては、単体IPでのライセンス営業から複数IPをモジュール化してのライセンス営業に力をいれました。

 主要な案件としましては、次のとおりです。

 《量産ライセンス》

  ・デムラ技術:有機ELディスプレイ向け

  ・AACデコーダ ソフトウェア:DJ機器向け

  ・ハンズフリー ソフトウェア:車載機器向け

  ・AAC-LCデコーダ ソフトウェア:DJ機器向け

  ・H.264 エンコーダ ソフトウェア:住設機器向け

  ・H.264 エンコーダ ソフトウェア:衛星関連ビジネス向け

 《評価ライセンス》

  ・AI画像認識ソフトウェア:車載機器向け

  ・H.264 エンコーダ ソフトウェア他:サーバー向け

 以上の結果、当事業年度の売上高は121百万円となりました。

 

(ハードウェアライセンス事業)

 営業活動におきましては、4K技術、ロスレス技術、H.265、スムージング技術を中心にライセンス営業活動、海外案件獲得活動を展開しました。

 主要な案件としましては、次のとおりです。

 《量産ライセンス》

  ・固定長圧縮技術:表示パネル用FPGA向け

  ・デムラ技術:有機ELディスプレイ向け

  ・JPEG-XS:映像機器用SoC向け

  ・固定長圧縮技術:プロジェクタ向け

  ・JPEG:重機向け

  ・HEVC/H264 Multi Codec:デジタルカメラ向け

  ・固定長圧縮技術:プロジェクタ向け

  ・固定長圧縮技術:医療用機器向け

 《評価ライセンス》

  ・H.265:映像伝送機器向け

 以上の結果、当事業年度の売上高は322百万円となりました。

 

(ソリューション事業)

 営業活動におきましては、当社の既存技術と開発力をベースに顧客のカスタム案件の獲得およびオリジナル・コーデックを用いて低遅延・高画質を両立させた小型版画像伝送システムや放送局向け低遅延送り返しシステムの販売活動を中心に展開しました。

 主要な案件としましては、次のとおりです。

  ・低遅延伝送装置関連:米国放送局リモート・スタジオ向け

  ・WiFi SyncViewer:株主総会向け

  ・低遅延伝送装置:国内CATV局向け

  ・画像音声記録再生システム:航空関連機器向け

  ・低遅延伝送装置コンパクト版:無人ヘリコプタ向け

  ・WiFi SyncViewer:教育機関向け

  ・H.264 エンコーダ ミドルウェア開発:車載機器向け

  ・DTV用MultiPlexer開発:車載機器向け

  ・JPEG IP制御回路開発:重機向け

  ・受託業務:民生機器向けカスタムソフトウェア改変作業

  ・H.264エンコーダ/トランスコーダ開発:車載機器向け

  ・デジタルTVミドルウェア開発:車載機器向け

  ・HEVCデコーダ仕様変更:民生機器向け

  ・映像伝送マルチキャスト対応:防衛装備向け

  ・小型送り返し用デコーダ装置開発:放送機器向け

  ・音声アルゴリズム研究業務:音声認識向け

 以上の結果、当事業年度の売上高は124百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、投資有価証券の償還による収入が252百万円発生した一方で、投資有価証券の取得による支出が299百万円発生したことや、売上債権が162百万円増加したことなどにより、前事業年度末に比べ279百万円減少し、当事業年度末には1,033百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は230百万円(前年同期は143百万円の使用)となりました。これは主に、売上債権が162百万円増加したことや、税引前当期純損失を68百万円計上したことなどによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は54百万円(前年同期は1百万円の獲得)となりました。これは主に、投資有価証券の償還による収入が252百万円発生した一方で、投資有価証券の取得による支出が299百万円発生したことなどによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は0百万円(前年同期は0百万円の使用)となりました。これは、自己株式の取得による支出が0百万円発生したことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度の生産実績について、当社は単一セグメントとしているため、部門別に示すと、次のとおりであります。

部門の名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

ソリューション事業(千円)

24,566

51.7

合計(千円)

24,566

51.7

 (注)金額は製造原価によっております。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績について、当社は単一セグメントとしているため、部門別に示すと、次のとおりであります。

 部門の名称

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

ソフトウェアライセンス事業(千円)

121,982

118.5

1,612

100.0

ハードウェアライセンス事業(千円)

325,257

214.0

10,306

135.4

ソリューション事業(千円)

166,264

114.8

46,245

973.2

合計(千円)

613,504

153.5

58,165

416.2

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績について、当社は単一セグメントとしているため、部門別に示すと、次のとおりであります。

部門の名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

ソフトウェアライセンス事業(千円)

121,982

118.5

ハードウェアライセンス事業(千円)

322,562

214.0

ソリューション事業(千円)

124,770

76.7

合計(千円)

569,314

136.7

 (注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

富士フイルム株式会社

67,689

11.9

セイコーエプソン株式会社

58,738

10.3

Novatek Microelectronics Corp.

50,007

12.0

Macnica Americas, Inc.

47,125

11.3

 (注)前事業年度及び当事業年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満の場合は、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 当社においては、安定的な事業活動の遂行と積極的な研究開発活動のための資金を確保することが重要課題と認識しており、健全な財政状態を維持するよう取り組んでおります。

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末より77百万円減少し、2,352百万円となりました。流動資産は、売掛金が172百万円増加した一方で、現金及び預金が279百万円減少したことなどにより、前事業年度末より109百万円減少し、1,501百万円となりました。固定資産は、投資有価証券が21百万円増加したなどにより前事業年度末より31百万円増加し、850百万円となっております。

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末より7百万円増加し、91百万円となりました。流動負債は、未払消費税等が15百万円増加したことなどにより、前事業年度末より13百万円増加し、84百万円となりました。固定負債は、前事業年度末より6百万円減少し、6百万円となっております。

 純資産につきましては、当期純損失を70百万円計上したことなどにより、当事業年度末における純資産合計は2,261百万円となり、前事業年度末より84百万円減少しております。

 全体として、流動資産の比率が高く、有利子負債がないことなどから自己資本比率も96.1%と高い水準を維持しており、財政状態としては健全な状態を維持しております。

 

b.経営成績

 当事業年度の売上高につきましては、ソフトウェアライセンス事業が121百万円、ハードウェアライセンス事業が322百万円、ソリューション事業が124百万円となり、合計の売上高は569百万円と前事業年度より36.7%の増加となりました。

 なお、売上総利益は549百万円と前事業年度より177百万円増加し、売上総利益率は96.5%となっております。

 費用・損益面につきましては、販売費及び一般管理費が623百万円と前事業年度より1百万円の増加となり、売上高の低迷により販売費などのコストを賄うことができず、営業損失を74百万円(前事業年度は営業損失250百万円)、経常損失を68百万円(前事業年度は経常損失242百万円)、当期純損失を70百万円(前事業年度は当期純損失245百万円)、それぞれ計上する結果となりました。

 今後につきましては、品質を第一とする開発方針を徹底するとともに、開発日程の管理並びに営業活動の進捗管理を強化していくことにより、売上見込み案件の増大と受注確度向上を図り、また、ソリューション事業を本格的に推進することで、売上高の増加を図って参ります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当事業年度におけるキャッシュ・フローは、売上債権が162百万円増加したことなどにより、279百万円のマイナスとなりました。

 資本の財源及び資金の流動性については、当社は、当事業年度末において現金及び預金を1,134百万円有しており、また、長短借入金等の有利子負債はなく、自己資本比率は96.1%と極めて高い水準にあります。IPの開発を主業務とし、また、ファブレスメーカーである当社の資金需要は、運転資金需要が主なものであり、それにはすべて自己資金で対応可能となっております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当事業年度は、ソリューション事業売上の落ち込みやサプライチェーンの混乱等による顧客製品の生産・出荷減少等でライセンス事業でのロイヤルティ収入が減少したものの、第4四半期でハードウェアライセンス案件の獲得が数件あったことから、売上高は大幅な増収となりましたが、販管費等のコストを賄うことができず、損失の計上を余儀なくされました。

 今後とも、品質を第一とする開発方針を徹底するとともに、開発日程の管理ならびに営業活動の進捗管理を強化していくことにより、売上見込み案件の増大と受注確度向上を図り、また、ソリューション事業を積極的に推進することで、売上高の増加ならびに利益の確保を図ってまいります。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりまして、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 当事業年度の財務諸表においては、賞与引当金が見積りに基づき計上されており、従業員の賞与の支給に備えるため、支給見込額のうち当期に負担すべき額を計上しております。この見積りの仮定として、期末日後の当社の財政状態等に著しい変動がないことなどを前提としておりますが、期末日後に財政状態等の著しい変動などが生ずることによって実際の支給額が著しく増減した場合には、賞与引当金残高の過不足が生ずる可能性があります。なお、この過不足は翌事業年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるものではないと考えております。

 また、新型コロナウイルス感染症の状況が、会計上の見積りに重要な影響を与える可能性は現時点でないものと考えております。

 

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