(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染状況が第6波のピークを越え、緩やかな回復傾向となりましたが、半導体・部品供給不足の解消や原材料価格の高騰等の収束が見通せないことをはじめ、ロシアのウクライナへの軍事侵攻等の影響から、先行きの不透明感が強まっております。
情報サービス産業におきましては、事業の強化や変革を推進するDX関連の需要が増加しており、IT投資が底堅く推移しております。〔経済産業省特定サービス産業動態統計(2022年2月分確報)より〕
こうした環境下、当社グループでは、中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)の基本方針に「ODKグループ経営元年」を掲げ、「グループ内各事業の収益力最大化」「グループ全体での事業ポートフォリオ設計」「グループガバナンス構築」を本年度の重点課題として様々な施策に取組んでまいりました。
その方策として、カスタマーサクセスオートメーションツールである『pottos®(ポトス)』事業のさらなる競争力確保を目的として、2021年8月2日に新会社「株式会社ポトス」を設立したほか、同年9月17日には、広島地区での事業基盤及び幅広いネットワークを有する株式会社ECS(以下、「ECS」という。)が新たに当社グループに加わりました。
当社は、東京証券取引所の新市場区分について「プライム市場」を選択し、2021年12月29日付で「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を公表いたしました。本計画書に記載のとおり、最優先課題である適正な市場評価獲得に向けて、IR強化をはじめとする各種取組みの推進と併せ、中長期的な成長戦略に応じた流動性向上施策を実施してまいります。なお、当社は2022年4月4日をもって「プライム市場」へ移行しております。
当社単体としては、中期経営計画の基本方針に「データビジネスによる新たな価値の創造」を掲げ、「アライアンス・M&Aの推進」「各事業領域における提供サービスの拡充」「事業横断サービスの開発」を本年度の重点課題として取組んでまいりました。
その方策として、『UCARO®』をデータのプラットフォームとして各事業領域をつなぐハブに育成するとともに、外部接点強化やサービス拡張等により保有するデータ量・種類の拡大を目指しております。なお、導入校数は、前年より13校増えて88校に拡大しております。
また、コロナ禍によって対面のコミュニケーションが困難となっている今、学生間の気軽なコミュニケーションの機会を創出することを目的とした大学生限定のSNSプラットフォーム『cataro(カタロ)』β版の提供を開始しました。新大学生が投稿やリアルイベントへの参加をすることで、友達作りなど新たな人間関係の構築を図ることができます。将来的には行動履歴を可視化してどのような学生生活を送ったか見える仕組みを構築することで、就職活動時にも活用できるような機能の追加を予定しております。当社は、『cataro』を通じて、なりたい自分や夢に向かって挑戦する人に寄り添い、応援することで、その人の人生をより豊かにするお手伝いをしたいと考えております。
そのほか、コーポレート・ガバナンス体制をより一層充実させるため、2022年3月30日に指名・報酬委員会を設置いたしました。今後も持続的な企業価値の向上を目指すべく、実効的なコーポレート・ガバナンスを追求し、その改善に継続的に取組んでまいります。
業績面では、教育業務の入試制度変更にともなうシステム改定の減少があったものの、当連結会計年度から新たに連結子会社となったECSの売上が寄与したほか、2021年4月より提供を開始した「入試・リメディアル ソリューションサービス」、マイナンバー運用業務の増加及び医療システム機器の販売等により、売上高は5,500,750千円(前年同期比 1.6%増)となりました。また、退職給付費用の増加や前期から続く取引深耕や新規受託にともなう要員費用の増加、株式取得にともなう費用の発生等により営業利益は436,549千円(同 34.8%減)となりました。受取配当金や保険解約返戻金の増加等により経常利益は509,035千円(同 26.8%減)、無形固定資産の減損損失を計上したこと等により親会社株主に帰属する当期純利益は194,186千円(同 59.1%減)となりました。
売上高の内訳は、次のとおりであります。
なお、当社グループは、情報システムの運用、開発及び保守等、総合的な情報サービスを提供しており、当該事業以外に事業の種類がないため、セグメント毎の記載に代えてサービス別の内訳を記載しております。
内訳 |
当連結会計年度売上高内訳 |
|||||
教育業務 (千円) |
前年同期比 (%) |
証券・ほふり 業務(千円) |
前年同期比 (%) |
一般業務 (千円) |
前年同期比 (%) |
|
システム運用 |
3,491,502 |
△2.9 |
1,029,218 |
8.5 |
572,444 |
△4.5 |
システム開発及び 保守 |
- |
- |
49,816 |
△39.5 |
67,287 |
△21.6 |
機械販売 |
- |
- |
- |
- |
102,425 |
483.5 |
合計 |
3,491,502 |
△2.9 |
1,079,034 |
4.6 |
742,157 |
5.6 |
内訳 |
当連結会計年度売上高内訳 |
|||
その他 (千円) |
前年同期比 (%) |
合計 (千円) |
前年同期比 (%) |
|
システム運用 |
95,867 |
- |
5,189,032 |
0.8 |
システム開発及び 保守 |
92,187 |
14.2 |
209,292 |
△15.9 |
機械販売 |
- |
- |
102,425 |
483.5 |
合計 |
188,054 |
132.9 |
5,500,750 |
1.6 |
〔システム運用〕
2021年4月より提供を開始した「入試・リメディアル ソリューションサービス」やマイナンバー運用業務の増加等により、5,189,032千円(前年同期比0.8%増)となりました。
〔システム開発及び保守〕
証券業務におけるマイナンバー関連のシステム開発、学研グループ会社向けのシステム開発及びウェブサイトリニューアル案件があったものの、証券業務におけるサーバーリプレイス開発案件や医療システム用タブレットのアプリ開発案件の剥落等により、209,292千円(同 15.9%減)となりました。
〔機械販売〕
医療システム機器の販売等により、102,425千円(同 483.5%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ38,423千円減少し2,375,832千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、917,192千円の収入(前年同期は715,174千円の収入)となりました。これは主に、売上債権の回収がすすんだことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、533,407千円の支出(同 621,937千円の支出)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出があったことによるものであります。無形固定資産では『UCARO®』の外部接点強化やサービス拡張等への投資を実施しております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、422,208千円の支出(同 234,772千円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、情報システムの運用、開発及び保守等、総合的な情報サービスを提供しておりますが、その特性上、サービス別に生産規模を金額あるいは数量で示すことはいたしておりません。
b.受注実績
当社グループは、情報システムの運用、開発及び保守等、総合的な情報サービスを提供しておりますが、その特性上、サービス別に受注規模を金額あるいは数量で示すことはいたしておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、下表のとおりであります。
なお、当社グループは、情報システムの運用、開発及び保守等、総合的な情報サービスを提供しており、当該事業以外に事業の種類がないため、セグメント毎の記載に代えてサービス別の内訳を記載しております。
内訳 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
システム運用(千円) |
5,189,032 |
0.8 |
システム開発及び保守(千円) |
209,292 |
△15.9 |
機械販売(千円) |
102,425 |
483.5 |
合計(千円) |
5,500,750 |
1.6 |
(注)最近2連結会計年度の主要な販売先及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
販売先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
㈱ファルコバイオシステムズ |
565,267 |
10.4 |
551,935 |
10.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて246,197千円減の8,030,087千円となりました。これは主に所有する株式の時価評価等による投資有価証券の減少によるものであります。
(負債)
前連結会計年度末と比べて114,531千円減の2,294,844千円となりました。これは主にリース債務や借入金の支払いによる減少によるものであります。
(純資産)
前連結会計年度末と比べて131,665千円減の5,735,242千円となりました。これは主に所有する株式の時価評価による評価益の減少にともない、その他有価証券評価差額金が減少したことによるものであります。
b.経営成績
(売上高)
当社グループの当連結会計年度の売上高は、教育業務の入試制度変更にともなうシステム改定の減少があったものの、当連結会計年度から新たに連結子会社となったECSの売上が寄与したほか、2021年4月より提供を開始した「入試・リメディアル ソリューションサービス」、マイナンバー運用業務の増加及び医療システム機器の販売等により、売上高は5,500,750千円(前年同期比 1.6%増)となりました。
教育業務につきましては、入試制度変更にともなうシステム改定の減少が影響し、売上高が3,491,502千円(同 2.9%減)となりましたが、データビジネスの中心となる『UCARO®』は、外部接点強化やサービス拡張等によって導入校数が前年より13校増えて88校となり、保有するデータ量・種類が拡大しているほか、学生間の気軽なコミュニケーションの機会を創出することを目的とした大学生限定のSNSプラットフォーム『cataro(カタロ)』β版の提供を開始しております。
証券会社向けの証券・ほふり業務につきましては、サーバーリプレイス開発案件の剥落があったものの、マイナンバー運用業務の増加等により、売上高は1,079,034千円(同 4.6%増)となりました。
一般業務につきましては、医療システム用タブレットのアプリ開発案件の剥落があったものの、医療システム機器の販売減等により、売上高は742,157千円(同 5.6%増)となりました。
その他の業務につきましては、当連結会計年度から新たに連結子会社となったECSの売上寄与等により、売上高は188,054千円(同 132.9%増)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価につきましては、前連結会計年度に比べ159,516千円増の3,891,114千円(同 4.3%増)となりました。これは、退職給付費用の増加や、取引深耕や新規受託にともなう要員費用の増加等によるものであります。
販売費及び一般管理費につきましては、株式取得にともなう費用の発生などにより、前連結会計年度に比べ161,863千円増の1,173,085千円(同 16.0%増)となりました。
その結果、営業利益は前連結会計年度に比べ232,681千円減の436,549千円(同 34.8%減)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
受取配当金や保険解約返戻金の増加等により営業外損益は72,486千円となり、経常利益は前連結会計年度に比べ186,017千円減の509,035千円(同 26.8%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、無形固定資産の減損損失を計上したこと等により、前連結会計年度に比べ280,058千円減の194,186千円(同 59.1%減)となりました。
c.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、コアコンピタンスを活用できる新たな領域への進出も視野に入れてさらなる事業拡大を目指し、収益のトップラインを高めていく時期だと認識しております。そのため営業収益及び経常利益を重要指標と位置付けております。
指標 |
2022年3月期(計画) (千円) |
2022年3月期(実績) (千円) |
増減(千円) |
計画比(%) |
営業収益 |
5,500,000 |
5,500,750 |
750 |
0.0 |
経常利益 |
510,000 |
509,035 |
△964 |
△0.2 |
(注)2022年3月期(計画)は、2022年2月24日に公表した業績予想値であります。
また新たに、2023年3月期~2025年3月期中期経営計画の業績目標を踏まえ、投下資本利益率(ROIC)7.0%以上を目標値とし、新規投資及び収益性改善をすすめてまいります。なお、中期経営計画は毎年度改定するローリング方式であることから、ROIC目標値も毎年必要に応じて見直します。
2022年3月期のROICは、5.0%となっています。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
(資金需要)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、システム開発・運用費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、有価証券の取得等によるものであります。
(財務政策)
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は営業活動から得られるキャッシュ・フローにより賄っており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、需要が発生した時点で自己資金及び金融機関からの借入等、その時点でのコストバランスを検討し対応しております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は737,052千円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,375,832千円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、当社グループが採用している会計方針において重要と考える会計上の見積りは、ソフトウエアの評価、固定資産の減損会計であります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、今後も一定期間続くものの、ワクチンの普及にともない緩やかに改善すると仮定しております。影響には不確定要素が多く、仮定に状況変化が生じた場合には、会計上の見積りに影響を及ぼす可能性があるものの、重要な影響はないと判断しております。
(ソフトウエアの評価)
当社グループは、開発したソフトウエアに係る将来キャッシュ・フローに基づき、将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合または確実であるかどうか不明な場合には、費用処理しております。なお、減損の兆候がある資産グループについて、資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額の算定は、使用価値により測定しておりますが、将来キャッシュ・フローに基づく使用価値がマイナスとなる資産については、回収可能価額を零として評価しております。当該資産性の判断に際して、当社グループは可能な限り客観的かつ入念に回収可能性等を評価いたしますが、見積り特有の不確実性があるため、当該資産に追加的な損失が発生する可能性があります。
(固定資産の減損会計)
当社グループは複数の固定資産を保有しておりますが、事業の収益性が低下した場合等、将来キャッシュ・フローが著しく減少する要因が生じた場合には、固定資産の減損会計の適用による減損損失が発生し、重要な影響を受ける可能性があります。
その他の会計上の見積りは、以下の通りです。
(退職給付債務)
当社の退職給付債務は退職一時金制度に係る期末自己都合要支給額を基に簡便法により計算しております。また、退職給付に係る負債は退職給付債務から確定給付企業年金資産評価額を控除して算出しております。そのため、期中に想定外の退職者があった場合や、評価時点の景況、市況によって確定給付企業年金資産評価額が変動した場合、重要な影響を受ける可能性があります。
なお、連結子会社である株式会社エフプラスは、退職給付制度を採用しておりません。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、親会社株主に帰属する当期純損益額が変動する可能性があります。
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