業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、個人消費や雇用情勢に弱さがみられます。内閣府は2021年12月の月例経済報告において、景気の先行きについては、経済社会活動が正常化に向かうなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待されるが、変異株をはじめ感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意する必要があると指摘しております。
 当社グループを取り巻く事業環境としまして、2020年のスマートフォン保有率が前年比3.4%ポイント上昇の86.8%となり、モバイルでのインターネット環境は引き続き発展を続けております(出所:総務省「令和3年版情報通信白書」)。当社が注力するインターネット広告市場についても、2021年の市場規模は前年比21.4%増の2兆7,052億円となり、継続して高い成長力を保っております(出所:電通「2021 日本の広告費」)。また、ゲーム総合情報メディア「ファミ通」によれば、国内eスポーツ市場規模は2020年に前年比9.2%増の66.8億円となり、2021年は同29.9%増の86.7億円へ拡大する見込みです。
 このような事業環境の中で、当社グループはより多くのユーザーに楽しんでいただけるよう良質なデジタルコンテンツを提供し続けております。その中でも、クライアントワーク、ゲーム、ゲームコミュニティ、ちいき資本主義の4つを主要サービスと位置づけ、相互にシナジーを図りながら事業を進めてまいりました。また、その他サービスとして、SNSブライダルプラットフォームなどの新規サービスの開発及び投資を行っております。
 以上の結果、当連結会計年度の売上高は12,566,341千円(前年同期比43.6%増)、営業利益は1,143,516千円(前年同期比53.6%増)、経常利益は1,266,465千円(前年同期比71.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は829,462千円(前年同期比64.2%増)となりました。

当社グループの事業セグメントは単一セグメントでありますが、サービス別の売上高の概況は次のとおりであります。

(a) クライアントワーク

新しい技術とアイデアに挑戦し、クライアントとその先にいるユーザーに新しい体験を提供することで、クライアントのマーケティング及びブランディングに資する広告を提供しております。スマートフォンの普及や新しい技術の出現を背景に、WEB領域にとどまらないリアルと連動した案件が増加傾向にあります。また、当社の企画力、技術力をもとにクライアントの新製品開発を支援する領域にも進出しております。この結果、クライアントワーク関連の売上高は、2,847,133千円(前年同期比32.2%増)となりました。
(b) ソーシャルゲーム

「ぼくらの甲子園!ポケット」、「キン肉マン マッスルショット」、ハイパーカジュアルゲーム、㈱カヤックアキバスタジオでの受託ゲーム開発が売上高の大部分を占めています。ハイパーカジュアルゲームにつきましては、2021年第3四半期に新作タイトル「Gun Sprint」および「Balloon Crusher」を正式にリリースしたものの、既存タイトルの一部にピークアウトの傾向が出てきたこともあり、ダウンロード数は直前四半期比6.5%減の5,697万件となりました。なお、2021年上期の世界のアプリダウンロード数ランキングは日本企業で1位となっております。また、㈱カヤックアキバスタジオでの受託事業は拡大基調にあります。この結果、ゲーム関連の売上高は6,225,604千円(前年同期比47.8%増)となりました。

(c) ゲームコミュニティ

ゲームファンに向けた一連のコミュニティサービスを展開しています。ウェルプレイド・ライゼスト㈱のeスポーツ事業、スマートフォンゲームに特化したコミュニティの「Lobi」、トーナメントプラットフォームの「Tonamel」が売上高の大部分を占めております。ウェルプレイド・ライゼスト㈱では大型のeスポーツ大会の運営の受託案件が当連結会計年度の増収に寄与しました。また、対戦形式の拡充等が追い風となり、2021年第4四半期におけるTonamelの大会開催数は直前四半期比11.7%増の3,089件となりました。この結果、ゲームコミュニティ関連の売上高は、2,332,281千円(前年同期比65.5%増)となりました。

 

(d) ちいき資本主義

地方公共団体や地域企業に対して、まちづくりに関するコンテンツの開発とサービスの提供を行っております。移住プラットフォームサービスの「SMOUT」、コミュニティ通貨サービスの「まちのコイン」、地域プロモーションの受託、鎌倉市内で展開するまちづくり事業などのサービスが売上高の大部分を占めております。2021年12月末時点で、SMOUTの累計登録ユーザー数は直前四半期末比8.9%増の3.42万人となり、順調に拡大しております。この結果、ちいき資本主義関連の売上高は、328,715千円(前年同期比13.4%増)となりました。

(e) その他サービス

ブライダルプラットフォーム「プラコレWedding」は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、2020年上半期に業績が悪化した後、緩やかな回復基調にあります。また、湘南地域への移住ニーズが追い風となり、子会社で展開する不動産仲介業が堅調に推移しております。この結果、その他サービス関連の売上高は、832,607千円(前年同期比21.9%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ54,799千円減少し、2,458,559千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動によるキャッシュ・フローは489,660千円の収入(前年同期間は1,295,450千円の収入)となりました。これは、税金等調整前当期純利益1,359,161千円の計上、売上債権の増加670,142千円、法人税等の支払額258,249千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動によるキャッシュ・フローは13,412千円の収入(前年同期間は223,831千円の収入)となりました。これは、投資有価証券の売却による収入121,464千円、有形固定資産の取得による支出106,116千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動によるキャッシュ・フローは572,148千円の支出(前年同期間は263,614千円の支出)となりました。これは、長期借入金の返済による支出983,644千円等の減少要因があった一方で、長期借入れによる収入310,000千円等の増加要因があったことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

該当事項はありません。

 

b. 受注状況

当連結会計年度における受注実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。

 

サービスの名称

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

クライアントワーク

3,121,819

37.8

809,777

51.3

合計

3,121,819

37.8

809,777

51.3

 

 

(注) 上記の金額には消費税等は含まれておりません。

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。

 

サービスの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

クライアントワーク

2,847,133

32.2

ゲーム

6,225,604

47.8

ゲームコミュニティ

2,332,281

65.5

ちいき資本主義

328,715

13.4

その他サービス

832,607

21.9

合計

12,566,341

43.6

 

 

(注) 1. クライアントワークの販売高のうち、カヤック単体の販売高は2,191,942千円となります。

2. ゲームについては、プラットフォーム手数料控除後の金額で販売高を算出しております。

3.上記の金額には消費税等は含まれておりません。

4.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

(株)バンダイナムコスタジオ

222,530

2.5

1,117,194

8.9

App Lovin corp

324,212

3.7

867,283

6.9

AdMob Google Inc.

343,854

3.9

574,565

4.6

 

 

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されています。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらと異なることがあります。当社グループの連結財務諸表で採用しております重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」の(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a) 財政状態の分析

(資産)

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ820,117千円増加し、7,844,591千円となりました。主な要因は、受取手形及び売掛金の増加777,461千円であります。

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ141,931千円減少し、4,252,680千円となりました。主な要因は、長期借入金の減少325,611千円および買掛金の増加150,491千円であります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ962,048千円増加し、3,591,910千円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加770,176千円および非支配株主持分の増加131,072千円であります。

 

(b) 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は12,566,341千円(前連結会計年度比43.6%増)となりました。これは、主要サービスであるゲーム関連の売上高がハイパーカジュアルゲームの躍進により大幅な増収となったことに加え、eスポーツ関連業務の拡大によりゲームコミュニティ関連の売上高が大きく成長したためであります。

(営業損益)

当連結会計年度の営業利益は1,143,516千円(前連結会計年度比53.6%増)となりました。ゲームとゲームコミュニティが大幅な増収となったことにより、事業規模の拡大(外注費・人件費・広告宣伝費等の上昇)及び投資領域(eスポーツ・地域関連サービス)への投資を補った上で、過去最高の営業利益額を達成しました。この結果、売上高営業利益率は9.1%(前連結会計年度は8.5%)となりました。

(経常損益)

当連結会計年度において、保険解約返戻金44,855千円及び助成金収入29,918千円等により営業外収益として135,860千円、支払利息8,224千円等により営業外費用として12,911千円を計上しました。この結果、経常利益は1,266,465千円(前連結会計年度比71.0%増)となりました。

(特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度において、投資有価証券売却益による特別利益92,696千円、法人税等合計として442,260千円を計上しました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は829,462千円(前連結会計年度比64.2%増)となりました。

 

(c) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの分析)

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。当社グループの運転資金・設備資金につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー、自己資金、銀行借入等により充当しております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は2,458,559千円、流動資産は5,220,307千円、流動負債は2,840,316千円であり、将来に対して十分な流動性を確保しております。なお、有価証券報告書提出日現在でオフィス新設等の有形固定資産の取得をともなう重大な資本的支出の計画はございません。

 

(d) 経営戦略の現状と見通し

 当社グループをとりまく事業環境については、ワクチンの普及による期待感が高まってはいるものの、新型コロナウイルス感染症の脅威は依然として続いており、景気の先行きは不透明な状況が続くと予想されます。他方、スマートフォンの世界的な普及や、SNS等のコミュニティツールの拡大、浸透により、世の中のインタラクティブ化が進むとともにデジタルコンテンツ市場がさらなる成長期を迎えると考えております。
 そのような状況の中、当社グループは、ユーザーに「面白い」と感じて頂ける新規コンテンツを積極的に市場に投入することで収益基盤の拡大に取り組んで参ります。また、「面白い」コンテンツを生み出す土台として、社内の組織体制や組織制度を引き続き重視し、創造的な職場環境の整備に努めます。また、事業領域の拡張状況をふまえて、「クライアントワーク」を「クリエイティブプロデュース」に、「ゲーム」を「ゲームエンタメ」に、「ゲームコミュニティ」を「eスポーツ」にサービス名を変更いたします。
 「クリエイティブプロデュース(旧クライアントワーク)」については、引き続き、新しい技術と新しいアイデアの追求によるクリエイティブの高いサービスの提供により収益の拡大および安定化を図って参ります。また、広告制作受託のみならず、話題性のある商品開発やR&Dなど事業領域を広いフィールドで捉え、企業アライアンス等も行っていきながらさらなる成長を目指します。
 「ゲームエンタメ(旧ゲーム)」については、ハイパーカジュアルゲームの開発・運用体制の強化に取り組む一方、当社子会社である株式会社カヤックアキバスタジオでのゲームの受託開発に当社グループ内のリソースを集約し、リスクを抑制した形での収益拡大に努めるとともに、アニメやWebtoonなどの新規性の高い周辺領域への拡張も進めます。
 「eスポーツ(旧ゲームコミュニティ)」は、ウェルプレイド・ライゼスト株式会社、「Lobi」、「Tonamel」、「ゲムトレ」を通じて、ゲームファンコミュニティへ向けたサービスを拡大させて参ります。ユーザー(コミュニティ)にとって付加価値の高い機能を追加していくことでユーザー数の拡大を目指すとともに、収益獲得手段の多様化とコミュニティとしての価値を高めることで収益基盤の確立を図って参ります。また、eスポーツのリーディングカンパニーとして、eスポーツ大会の企画・運営のみならず、タレントマネジメント、コミュニティ向け施策、教育事業などを通じて、業界のさらなる発展に寄与して参ります。
 「ちいき資本主義」については、プラットフォーム事業である「まちのコイン」と「SMOUT」の導入自治体数の拡大に努めることに加え、コミュニティ再生やSDGs、移住促進や関係人口創出などの分野のサービス提供を通じて収益拡大を目指して参ります。
 「その他サービス」については、「プラコレ」の成長をさらに加速させるとともに、引き続き、新規サービスの創出、成長または売却(選択と集中)に取り組んで参ります。その中で、新規事業としてメタバースの専門部隊を設立し、メタバースの事業領域に本格的に参入いたします。
 なお、上記した各サービスは、サービス単独での収益拡大のみならず、人材やノウハウの相互共有によるシナジー等の効果を取り込むことにより全社としての収益拡大を目指します。また、当社グループ全体での事業ポートフォリオの最適化と適切なリソース配分に努めます。
 次期の連結業績見通しにつきましては、売上高15,000,000千円(当期比19.4%増)、営業利益1,500,000千円(当期比31.2%増)、経常利益1,500,000千円(当期比18.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,000,000千円(当期比20.6%増)を見込んでおります。

 

(e) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、当社グループでは、①売上高、②売上高営業利益率、③クリエイター数を重視しております。売上高は当社グループの成長性、売上高営業利益率はその成長の持続可能性、クリエイター数は当社の企業価値の源泉であるクリエイティブ力を測る目安として重要視しております。クリエイター数については、優秀な人材を定期的に採用することの難しさや経営環境によって適正な水準が変わるため、具体的数値目標は設定しておりませんが、従業員数のうち90%以上をクリエイターとすることを目指しております。

 

指標

2020年12月期

(実績)

2021年12月期

(計画)

2021年12月期

(実績)

2022年12月期

(計画)

売上高

8,749百万円

12,000百万円

12,566百万円

15,000百万円

売上高営業利益率

8.5%

8.3%

9.1%

10.0%

クリエイター数

289人

346人

 

(注) 1.2021年12月期は2021年11月15日公表の「通期業績予想の修正に関するお知らせ」の通り修正しております。

2.クリエイター数の実態を適切に把握するため、当連結会計年度より集計範囲の見直しを行っております。

3.カヤックアキバスタジオおよびカヤックボンドは、カヤックの秋葉原拠点の位置づけで一体的な運営を進めているため、クリエイター数の集計範囲に含めております。

 

(f) 経営者の問題認識と今後の方針について

当社の経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループが今後さらなる成長と発展を遂げるためには、厳しい環境の中で様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。

そのためには、コーポレートブランド価値の向上、新技術への対応、環境に合わせたリソース配分の最適化、健全性・安全性の維持、内部管理体制の充実を行って参ります。

 

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