(業績等の概要)
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が長引く中、ウクライナ危機を背景とした国際情勢の不安定化や資源価格の上昇により、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
当社グループの事業に関連する国内電子商取引市場は、「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によりますと、2021年のBtoC-EC市場規模が前年比7.35%増の20.7兆円、BtoB-EC市場規模が前年比11.3%増の372.7兆円となりました。
一方で、ECの普及率を示す指標であるEC化率(※1)は、BtoC-ECで8.78%、BtoB-ECで35.6%と増加傾向が続いており、商取引の電子化は引き続き進展していくものと見込まれます。そして近年では、人口減少などを背景に顧客獲得コストが上がり続けており、クラウド型のビジネスを始めとしたサブスクリプションビジネスの需要が高まっております。
このような経営環境のもと、当社グループは、経済環境が悪化した中でも安定した収益を確保しやすいサブスクリプションビジネスを総合的に支援し、成功させていくことが社会への貢献になると考え、新しく中期経営計画を策定いたしました。2022年9月期はその中期経営計画の初年度となり、当社グループのターゲット領域拡大のためのエンジニアへの投資や、支援領域の拡充のための人材採用といった投資を推し進め、さらなる成長に向けた事業基盤の強化を図ってまいります。
当社グループの経営成績は、次のとおりであります。なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、当連結会計年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。そのため、比較情報については、前事業年度の数値を当該会計基準等と同様の基準で試算し(非監査)、記載しております。
当連結会計年度は、「サブスクストア」及び「たまごリピート」のサービス利用アカウント総数や流通総額が減少したものの、システムの受託開発やカスタマイズとともにWebページ制作などのサービスも拡大し、売上高は2,253,812千円(前期比12.1%増)となりました。
売上原価は、ターゲット領域拡大を推進するため外注費等の開発費用が増加し、連結子会社としたAIS株式会社及び株式会社サックルの原価も加わったことなどから、959,846千円(前期比80.8%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、事業基盤強化のための人材投資により従業員数が増加し、給料手当などの人件費が増加したことや、AIS株式会社及び株式会社サックルに対する株式取得関連費用を支出したことなどから、1,489,607千円(前期比45.9%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、営業損失195,641千円(前年同期は営業利益458,303千円)、経常損失194,390千円(前年同期は経常利益457,906千円)、親会社株主に帰属する当期純損失175,715千円(前年同期は当期純利益290,299千円)となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
(a)EC支援事業
EC支援事業では、サブスクリプションビジネスに特化したECサイトを構成するシステムの提供や、サブスクリプションビジネスの運営を支援する集客、顧客対応、ロジスティクスなどに関連したサービスを提供しております。
EC支援事業におけるサービス別の業績を収益区分別に示すと次のとおりであります。なお、前述のとおり当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。この結果、当連結会計年度における売上高に大きな影響が生じるため、以下の表においては増減額及び前期比(%)を記載せずに説明しております。
以下の説明においては、前事業年度の数値を当該会計基準等と同様の基準で試算した業績(非監査)を、比較情報として記載しております。
a.「サブスクストア」及び「たまごリピート」のサービス利用アカウント総数は、1,030件(前期比9.6%減)となり、売上高は1,131,446千円(前期比9.2%減)となりました。
「サブスクストア」のサービス利用アカウント数は、上半期は堅調に推移したものの下半期に減少し477件(前期比2.7%減)となりましたが、上半期における収益への貢献が寄与し、通期でのリカーリング収益(※2)は398,345千円(前期比17.5%増)となりました。受託開発収益(※3)は、稼働までにかかる期間が長期化している影響で136,192千円(前期比10.0%減)となりました。また、「サブスクストア」を導入する顧客のマーケティング活動を支援するサービスの収益も減少し、その他収益は69,400千円(前期比39.2%減)となりました。
「たまごリピート」のサービス利用アカウント数は、後継サービスである「サブスクストア」に注力するため新規の販売を停止していることから553件(前期比14.8%減)となり、リカーリング収益は462,510千円(前期比13.9%減)となりました。また、オプションサービスである「チャットボット」の販売高も減少し、その他収益は64,998千円(前期比37.6%減)となりました。
b.当社グループの提供するサービスに係る流通総額は、「サブスクストア」及び「たまごリピート」のサービス利用アカウント総数が減少したことに加えて、主に化粧品の領域で消費者の離反も続いたことなどから、1,470億円(前期比5.6%減)となりました。また、手数料率の低い決済手段の利用割合も増加したこともあり、GMV連動収益(※4)は、536,775千円(前期比11.5%減)となりました。
c.その他の売上高は、254,379千円(前期比61.1%増)となりました。
リアル店舗向けのサービスである「サブスクアット」のアカウント数(契約法人数)が148件(前期比55.8%増)となったことや、商品配送代行サービスである「テモロジ」の収益貢献が開始したことなどから、リカーリング収益は42,869千円(前期比63.1%増)となりました。また、BtoB事業者向けのサービスである「サブスクストアB2B」のカスタマイズによる収益や、「サブスクアット」に付随するWebページ制作サービスの受注も伸びたことなどから、受託開発収益は165,624千円(前期比45.9%増)となりました。
以上の結果、EC支援事業の売上高は1,922,601千円(前期比4.4%減)、セグメント損失は138,394千円となりました。
(b)エンジニアリング事業
エンジニアリング事業では、株式会社サックルにおいて、システム開発を請け負うサービスや、顧客にソフトウェアエンジニアのスキルを提供するシステムエンジニアリングサービスを提供しております。
エンジニアリング事業の売上高は380,000千円、セグメント利益は1,399千円となりました。
※1 EC化率 :全ての商取引市場規模に対するEC市場規模の割合。
※2 リカーリング収益:利用した月に応じて定額で課金するサービスの収益。
※3 受託開発収益 :当社のシステムのカスタマイズなど、受託開発による収益。
※4 GMV連動収益 :顧客の流通総額に連動して発生する収益。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、994,963千円となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、128,276千円の支出となりました。これは主に、減価償却費130,864千円、売上債権の減少額164,202千円等の資金の増加要因と、税金等調整前当期純損失196,775千円、法人税等の支払額127,140千円等の資金の減少要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、379,927千円の支出となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出157,394千円、投資有価証券の取得による支出50,000千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出170,267千円等の資金の減少要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、55,748千円の収入となりました。これは主に、短期借入れによる収入200,000千円等の資金の増加要因と、長期借入金の返済による支出145,452千円による資金の減少要因によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当社グループのサービス提供の実績は販売実績と一致しておりますので、受注実績に関しては「(3) 販売実績」をご参照ください。
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当連結会計年度における割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
2.エンジニアリング事業は当連結会計年度より発生しているため、前期比は記載しておりません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果とついての過去実績や状況に応じて合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として、当社は、売上高、営業利益及び経常利益を重視しております。
当社グループは、「サブスクで世の中を豊かに」をパーパスとして掲げ、ストック型のビジネスモデルをより普及させるべく、サブスクリプションビジネスに特化したショッピングカートシステム「サブスクストア」「サブスクストアB2B」「サブスクアット」の機能向上に注力し、ターゲット領域の拡大を進めてまいりました。また、「サブスクストア」や「たまごリピート」の提供を通して培ったノウハウを活用し、サブスクリプションビジネスを総合的に支援するべく、広告、コールセンター、物流といった様々な領域でのサービスを展開しております。
これらの経営戦略等に基づく業績予想の達成状況は以下のとおりであります。
なお、経営成績等の分析につきましては、「(4)経営成績の分析」に記載のとおりであります。
(単位:千円)
また、当社は投資対効果を適切に図る観点から1人当たり売上高20,000千円、売上高営業利益率20%の指標により経営上の目標達成状況を判断しております。
これらの指標に基づく目標の達成状況は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度における資産の残高は、前事業年度末に比べて117,179千円増加し、2,306,147千円となりました。この主な要因は、AIS株式会社及びサックル株式会社の株式取得などにより現金及び預金が452,455千円減少し、のれんを275,874千円計上したことなどによるものであります。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は、前事業年度末に比べて277,477千円増加し、1,105,113千円となりました。この主な要因は、株式会社サックルの連結子会社化に伴い買掛金が77,073千円増加したこと、短期借入金が200,000千円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が73,249千円増加したこと、未払法人税等が65,111千円減少したことなどによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は、前事業年度末に比べて160,297千円減少し、1,201,034千円となりました。この主な要因は、利益剰余金が175,715千円減少したことなどによるものであります。
当連結会計年度の売上高は、2,253,812千円となりました。
売上高の分析につきましては、「(業績等の概要) (1) 業績」をご参照ください。
当連結会計年度の売上原価は、959,846千円となりました。
この主な要因は、開発工数の増加などにより外注費が308,305千円増加したことであります。
以上の結果、当連結会計年度の売上総利益は1,293,965千円となりました。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、1,489,607千円となりました。
この主な要因は、給料手当が93,783千円増加したことに加えて、AIS株式会社及び株式会社サックルに対する株式取得関連費用を支出したことなどから支払手数料が102,029千円増加したことであります。
以上の結果、当連結会計年度の営業損失は、195,641千円となりました。
当連結会計年度の経常損失は、営業外収益15,137千円、営業外費用13,887千円を計上した結果、194,390千円となりました。
当連結会計年度は、法人税、住民税及び事業税4,570千円、法人税等調整額△25,630千円(△は益)を計上しております。
この結果、親会社株主に帰属する当期純損失は、175,715千円となりました。
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(業績等の概要)(2)キャッシュ・フロー」をご参照ください。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループは、事業運営上、必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
当社グループの主な資金需要は、システム開発等に係る人件費、サービスサポートに係る人件費、新規事業の拡大に係る人件費であります。これらの資金需要につきましては、自己資金によることを基本としておりますが、必要に応じて銀行借入で調達する方針であります。
なお、現在、支出が予定されている重要な資本的支出はありません。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。今後さらなる成長を実現するためには、「ターゲット領域の拡大」と「サブスクバリューチェーンの拡充」が必要であると考えており、中期経営計画で設定したARRとGMVの中期目標を達成するよう努めていく所存であります。
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